兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
「みなさん、集まって。さあ、集まって!みなさん、私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?結構、結構!」
集まった生徒たちに向かってロックハートが呼びかけた。
いつもなら長机が四台並べられている大広間だが、今は長机は消え、そのかわりに一方の壁に沿って金色の舞台が用意されている。
舞台の上で生徒たちの注目を受けるロックハートは完璧な笑みを見せた。ここに集まった生徒は四年生までの半分くらい、だろうか。誰もが杖を片手に舞台上のロックハートの方を見る。やっぱ高学年は決闘クラブなんて興味ないのかなー。
「ダンブルドア校長先生から、私がこの小さな決闘クラブを始めるお許しをいただきました。私自身が、数えきれないほど経験してきたように、自らを護る必要が生じた万一の場合に備えて、みなさんをしっかりと鍛え上げるためにです。──詳しくは、私の著書を読んでください」
完璧なウインクをしたロックハートに、彼のファンらしき一部の女性が「きゃあ」と黄色い悲鳴をあげる。
そう、秘密の部屋編での大きなイベントとの一つ、決闘クラブがついに開催されたのだ。
魔法は完璧、決闘だって余裕な俺には勿論、決闘クラブなんて必要ないが、ハリポタファンとしてこのビックイベントを見逃す事はできない!
セドリックも嫌がらずに乗り気だったし、こうして一緒に決闘クラブに参加したのだ。
「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」
ロックハートは満面の笑みを振りまき、後ろに向かって手を広げる。少し離れた場所で待機していたセブルスはいつも通りの無愛想で不機嫌そうな顔で舞台に上がり、セブルスを見た何人か──主にグリフィンドール生だ──が、嫌そうに顔を歪めた。
「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずか、ご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに勇敢にも手伝ってくださるという御了承をいただきました。さてさて、お若いみなさんにご心配かけたくはありません。──私と手合わせしたあとでも、みなさんの魔法薬の先生はちゃんとご存在します。ご心配なさるな!」
セブルスはすっと目を細めロックハートを睨むが、ロックハートはセブルスを見てもにこりと屈託なく笑うだけで全く気にしていない。この人の能天気さと空気の読めなさは、まじですごいと思う。
「むしろ闇の魔術に対する防衛術の先生がいなくなる心配をした方がよさそうじゃね?」と隣にいるセドリックに囁けば、セドリックは少し意外そうに目を瞬かせた。
「スネイプ先生って、決闘強いんだ?」
「そりゃ、ロックハートよりは強いだろ」
「へぇ。あんまりそんなイメージないかなぁ。薬を作ってるところしか見た事ないし……フリットウィック先生ならわかるけどね、昔決闘チャンピオンだったって聞いた事あるから」
そうか。俺は知識としてセブルスが元死喰い人だったり、闇の魔法使いまくっていたり、陰でハリーを護るために何だかんだ戦闘してるって知ってるけれど、他の一般生徒からしてみればただのインドアな魔法薬の先生、なのか。
「先生達の決闘とか、ちょっと見てみたいよな」
「すごい魔法を知ってそうだよね。……もし戦ったら、誰が勝つかな?ダンブルドア校長は参加しないとして」
セドリックは楽しげに笑う。
ホグワーツの教師は一部を除き殆どがハイスペックである。ヴォルデモートを複数人で足止めできるくらいだし。そんな先生の中で一番強いのかぁ。
「やっぱ呪文学のエキスパートのフリットウィック先生じゃね?それか、マクゴナガル先生とか。えぐい変身術とか知ってそう」
「魔法植物有りなら、スプラウト先生も良い線いってそうだよね。スネイプ先生は……どっちかというとこっそり毒殺とかしそうじゃない?」
セドリックは声を潜め、珍しく悪戯っぽい顔をした。
めちゃくちゃわかる!どの先生もやっぱり自分の得意分野の魔法が強そうだし、セブルスは絶対毒殺するタイプだ。
そう考えたらどの先生も強いよなぁ、ホグワーツ魔法学校って、結構エリート校なのかも。
そうしてひそひそ話している間に、ロックハートとセブルスは舞台の上で距離をあけて向かい合って立っていた。
一礼をし、剣のように杖を突き出して構える。ぴん、と張り詰めた空気の中、誰かがごくりと生唾を飲んだ音が聞こえた。
「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています。三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません。
1──2──3──」
二人とも肩より高く杖を振り上げる。「エクスペリアームス!」と先にセブルスが鋭く呪文を唱え、目も眩むような紅色の閃光が走った。
瞬きをするほどの一瞬でロックハートは舞台から吹っ飛び、壁に激突したかと思うとずるずると滑り落ちて床に大の字になる。
ロックハートの残念な姿に、彼のことをよく思ってない生徒たちは歓声を上げ、セブルスに向かって拍手を送った。
「……エクスペリアームスにあんなに威力あったっけ。杖ごと吹っ飛んだよ」
「ちょっと勢いあまりすぎだな。フリットウィック先生の試験でやったら追試だ」
肩をすくめて冗談っぽく呟く。
セドリックはくすくすと笑っていたが、俺の声が聞こえたのか偶然か、セブルスがこっちを睨んでいるのを見て慌てて口を閉じ、ロックハートを心配していると見えるように取り繕った。
ロックハートは暫く伸びていたが、フラフラと立ち上がり逆立った髪を撫で付けながら笑った。
「さあ、みんなわかったでしょうね!あれが武装解除の術です。ご覧の通り私は杖を失ったわけです。──ああ、ミス・ブラウン、ありがとう。スネイプ先生、確かに生徒にあの術を見せようとしたのは素晴らしい考えです。しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をしようとしたかがあまりにも見え透いていましてね。
それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せた方が教育的に良いと思いまして……」
素晴らしい言い訳をするロックハートだったが
流石にセブルスの目が殺気立ち、もう一度魔法を繰り出しそうに手がぴくぴくと動いていたからか「ごほん」とわざとらしく咳をして話を中断した。
「模範演技はこれで十分!これからみなさんのところへ下りていって、二人ずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか……」
セブルスとロックハートは生徒の群れに入り、二人ずつ組を作っていく。生徒仲を考えてはいないのか、適当に近くにいる生徒で組んでいるようだった。
「ノア、お願いだから吹っ飛ばさないでよ」
「わかってるって」
セブルスは変な嫌がらせをする事なく俺とセドリックを二人組にした。
周りにいる生徒が多すぎて、どこにハリー達がいるのかわからないなぁ。時々人混みの隙間からハーマイオニーのふわふわの髪とかロンの赤毛が見えているから、多分そう遠くない場所にいるのだろうとは思うけど。
セブルスとロックハートの手本を見るために舞台側にいた生徒たちは、組を作ったペアから大広間中に広がっていく。近くの人の邪魔にならないように生徒たちが移動する中、気がつけば俺とセドリックは舞台の中央のすぐ横のにきていた。
「あ、ノア!やっと会えた!」
「ハリー、ドラコ。二人がペアなのか?」
すぐそばには偶然ハリーとドラコがいて嬉しそうに駆け寄ってきた。数メートル離れた場所にロンとハーマイオニーが居るが二人がペアになっているわけではなく、ロンは同じグリフィンドール生と、ハーマイオニーは大柄なスリザリンの女生徒と組まされていた。
「ああ、クラッブやゴイルでは練習相手にならないからな」
「ロンとハーマイオニーが組む予定だったんだけど、別の人と組まされたみたい。ノアはセドリックと?すごいなぁ。僕、ノアに杖を向けるなんてできないや」
ハリーは心から純粋にそう思っていたようだったが、セドリックは少々違った意味で捉えたのか、むっと眉を寄せていた。
「ノアに攻撃したいわけじゃないさ。でも、呪文学でもペアだから慣れているんだ」
「そうなんだ」
セドリックと俺は呪文学でペアになり、互いに魔法を掛け合ったり防いだりした事が何度もある。俺はどんな奴の魔法でも防ぐ事ができるが、そうするとセドリックの練習にならず呪文を受ける時は大体ノーガードだ。
セドリックも一年生の初めこそ俺に魔法をかけることに対しかなり申し訳なさを感じていたが、四年以上続いていれば流石に慣れる。
ハリーは「僕とロンみたいな感じなんだね」と納得して頷き、ドラコに向き合い好戦的な目でドラコを見る。
「ドラコ、僕は遠慮しないから」
「おっと、僕のセリフを取らないでもらえるかい?」
憎しみではなく、いい感じのライバルっぽい雰囲気を出すドラコとハリーはとても楽しそうだった。
ハリーはロンに対する時とそれほどテンションや対応の差があるわけではないが、ドラコはクラッブとゴイルといった取り巻き集団の中にいる時よりもやや幼く──年相当に青春しているように見えるなぁ。
「相手と向き合って!そして礼!──杖を構えて!」
と、ロックハートが号令をかけ、ハリーとドラコは互いに頭を下げ、杖を構えた。
俺もセドリックと向き合い礼をする。セドリックは至って普通に礼をしたが、俺はローブを摘み、恭しく腰を下り片足を軽く後ろに引く──舞踏会でのダンスの挨拶のようにすれば、セドリックは呆れ顔をしたが楽しそうに声もなく笑った。
「私が三つ数えたら、相手の武器を取り上げる術をかけなさい。武器を取り上げるだけですよ、みなさんが事故を起こすのは嫌ですからね。
1──2──3──!」
「エクスペリアームス!」
セドリックの呪文に合わせ、紅色の光が杖から勢いよく飛び出す。それが俺に当たる前に「プロテゴ」で弾き、そのまま流れでセドリックに杖を向ける。
「エクスペリアームス」の無言呪文は問題なくセドリックにあたり、セドリックの杖が手から弾き飛ぶ。くるくると回りながら飛ぶ杖をアクシオで引き寄せキャッチした。
「やっぱ無言呪文を使われたら勝てないよ」
「セドリックが無言呪文を使えるようになった後が楽しみだな」
「……言わなきゃよかった」
セドリックは杖がなくなった手を軽く振りながら肩をすくめた。杖を投げ返し辺りを見れば──まあまあ酷い事になっていて、生徒たちを監督していたロックハートは「あわわわ」というように表情を引き攣らせ、セブルスは床の上に転がっている生徒たちを冷たい目で見つつ、くすぐり魔法や硬直魔法を解除していた。
素直にエクスペリアームスを唱えた生徒はまあまあ多かったのかもしれない。
とはいえ、エクスペリアームスを使えるかどうかはまた別問題であり、緊張してどもって魔法が失敗したり、そもそも違う魔法を唱えたり、杖を投げ出して掴みかかったり。
緑がかった煙がどこからか上がり、それが晴れた頃には決闘のとんでもない結末に流石のロックハートも言葉を失ったようだ。
ロックハートは衝撃を乗り越えると素早く生徒たちを見て回り、血を流していたり目を回している生徒一人一人に声をかけた。
「なんとなんと……マクラミン、立ちあがって……気をつけてゆっくり。ミス・フォーセット、しっかり押さえてなさい、鼻血はすぐ止まるから……。むしろ、非友好的な術の防ぎ方をお教えするほうがいいようですね」
重症な生徒が居ないとわかると、ロックハートは大広間の中央あたりでポツリと呟きセブルスをチラリと見たが、セブルスはロックハートの視線を無視しわざとらしく顔を背けた。
「さて、誰か進んでモデルになる組はありますか?──ああ、そうだ!ノアとディゴリーはどうかな?二人は気絶もしていないようだし!」
ロックハートは満面の笑みを浮かべ中央から俺とセドリックを見つけると生徒たちをかき分けて進む。俺たちの後ろに回ると肩に手を置き、そのままぐいぐいと押した。
生徒たちはすぐに俺たちが通れるように場所を空け、期待と興奮が満ちた目で見つめ、激励をこめて拍手を送る。促されるままに階段を登り、舞台の上に立った俺たちは沢山の生徒たちを見下ろした。
ハリーやドラコはキラキラとした目で俺を見ているし、俺のファンらしき生徒たちはどこから取り出したのか俺の引き伸ばした写真を振ったり、杖先に灰青色の光を灯したりコンサート会場のようになってしまった。
みんな俺とセドリックの決闘を期待しているようで、セブルスが余計な口を挟む事もない。
「……やべ」
「……ノアは気にしなくても大丈夫でしょ。僕はみんなの前で醜態を晒す事に……」
セドリックは小さな声で嫌そうにぼそぼそと呟く。
いや、セドリックの屈辱からの闇堕ちがやばいのではない。本来ならば手本を見せるのはハリーとドラコだったはず。それで、ドラコがセブルスに唆されて蛇を出して、その蛇が誰かを襲おうとしたからハリーが咄嗟に蛇語で止めて、ハリーが蛇語が使えるのだと周りが知る流れなはず。
……え、俺とセドリックでやるの?その流れを?ハリー、うまく止めてくれるかな。
確かにハリーは俺が手本を見せるからか、かなり舞台に近づいているし、蛇が誰かを襲いそうになったら咄嗟に蛇語が出る──かな?
「……よし、セド。ちょっと派手に決闘しようぜ?」
「それって、武装解除はすぐしないって事?……僕、プロテゴ使えないんだけど……」
「怪我はさせないさ、どうだ?」
「うーん……まあ、どうせ負けるのなら足掻いてみようかな」
ひそひそと話し合い、すぐに武装解除をしない流れに持っていく事ができた。よかった乗り気で!優等生なセドリックは何も言わなければさっきみたいに武装解除して即終了だ。
間違っても俺に「サーペンソーティア」なんて唱えるわけないし、かと言って俺がセドリックを裏切って勝手に蛇出したら──セドリックかなり怒りそうだし。
「先ほどのように、私が三つ数えたらですよ?それでは、いいですね?向かい合って、礼──構えて──1──2──3──」
俺とセドリックから少し離れた場所で、ロックハートが開始を告げる。俺とセドリックは構えてた杖を、ほぼ同時に肩上まで振り上げた。先制攻撃というように、セドリックが叫ぶ。
「インカーセラス!」
「インセンディオ」
「エイビス!──オパグノ!」
「おっと──エクスパルソ!」
「うわっ!」
セドリックは杖から出した縄で俺を縛ろうとしたが、俺の魔法により縄は燃えて消えた。全てが燃え尽きる前にセドリックはすかさず壁に沿って片付けられていた椅子を鳥に変え俺を襲うように命令したが、鳥は俺を突く前に爆破してしまい、飛び散った羽が空をひらひらと舞う。
観客から息を呑んだり、声援を送る声が聞こえる。セドリックも応援されていることに気づき、表情を引き締めつつ楽しさや嬉しさが抑えきれていないようだった。
セドリックは俺を捕えようと何度も魔法を放つが、俺に届く事はなく弾かれてしまう。
互いに決め手に欠ける魔法の応酬に、そろそろ終わらせるべきかとくるりと杖を回し握り直した。
「サーペンソーティア」
杖が僅かに震え、先から光と共に白い蛇が飛び出す。
真っ白な──いや、光の加減で薄らと水色に色を変える長い蛇は俺とセドリックの間の床に落ち、悠々と鎌首をもたげ、つぶらな真っ黒な瞳を周りに向けた。突然の蛇の出現に、舞台近くに居た生徒は引き攣ったような悲鳴を上げ一歩後ずさる。
蛇は赤い舌をちらちらと出しながら俺を見上げた。
『命令を』
シュー、としか殆どの人は聞こえなかっただろう蛇の鳴き声に、さらに何人かが後ずさる。
うーん、これ、答えたら多分俺も蛇語使えるってなってややこしくなるかなぁ。セブルス先生には昔蛇語が話せるって伝えたから知ってるだろうけど。周知はされてなさそうだし。
どうしようか。
と考えていると、不思議に思ったのか蛇は「襲いますか?」と言いながら俺に滑り寄って来た。「危ない!」と何処からか悲鳴が上がったその時、俺の前に長いローブをさっとはためかせ現れたのはロックハートだった。
「私にお任せあれ!」
ロックハートが片腕を広げヒーローよろしく俺を庇うようにして立ち、杖を大袈裟までにぐるぐる振り回す。完璧なキメ顔を作りながら杖を振り下ろした瞬間、大きな破裂音が響き、蛇が二メートル程宙を飛んだ。
蛇を倒した──のではなく、蛇はただ飛んでびしゃんと舞台の上に落ちる。
怪我はなさそうだが、ロックハートに挑発されたと思った蛇は苛立ち「誰でもいいんですね!!」と怒り狂いながら一番近くにいたジャスティン目掛けて滑り寄り、再び鎌首をもたげ大きく口を開き鋭利な牙を見せつける。
『手を出すな、去れ!』
叫び声が聞こえた。
しかし、その言葉を理解したのは俺と蛇だけで、ロックハートやジャスティン、近くにいるセドリックまでも顔色を恐怖で変えて叫んだ相手、ハリーを見る。
明らかな蛇語、人ではない言葉。
サラザール・スリザリンが習得していた言葉。
蛇は口を閉じ、じっとハリーを見る。
蛇は同じ言葉を話すことができる相手には友好的である──いや、蛇だけじゃないのかもしれない。誰だって自分と同じ言語を話す人には警戒が緩むというものだろう。
ハリーはこれで危険は去ったのだと理解し、襲われそうになったジャスティンを安心させるためににっこりと笑ってジャスティンを見る。
しかし、ジャスティンは恐怖に引き攣った顔でハリーを見ていて、馬鹿馬鹿しいと無理やり笑い、顔を振った。
「い、いったいなんの悪ふざけをしているんだ?」
ジャスティンは吃りながらそれだけを言うと、ハリーが何かを言う前に──その口から二度目の蛇語を聞きたくないとばかりに背を向け、生徒たちを押し退けて大広間から出て行ってしまった。
しん、と沈黙が落ちる。
誰もがハリーを探るような目で見つめ、ヒソヒソと不吉に囁き合う。
何が何だかわからないハリーの腕を引いたのはドラコであり、反対側の腕をロンが引き、その後に顔を伏せながらハーマイオニーが続く。
四人がドアへ向かう道は、ハリーを避けるように人垣が割れ、ハリーが通った後も閉じる事はなかった。
「あー……さて、そろそろお開きの時間のようですね。とても素晴らしい決闘士であった二人に拍手を!もちろん、私ならばお二人まとめて相手できますけどね?」
ロックハートの言葉に、思い出したようにパチパチと拍手が起こる。
セドリックはなんだか複雑そうな顔をしたまま軽く頭を下げ、観客の拍手に答えた──が、拍手が止む前に舞台の上でトグロを巻いている蛇を刺激しないようにそっと俺に近づいた。
「蛇、どうするの?」
「んー?」
あれ?セブルス先生消してくれないのか?ま、俺も消せるけど。
蛇に手を差し出せば、蛇は大人しく俺の腕にするすると登って来た。セドリックは引いたような顔をして「噛まない?」と囁く。
「噛まないさ。多分毒ないし、多分。触ってみたら?結構スベスベで気持ちいいぞ」
「うーん……。うわ、本当だ……それによくみたら結構綺麗な色だね」
俺の腕と肩にぶら下がってる蛇は先ほどまでの獰猛さはさっぱりと消えておとなしくなっている。セドリックは恐々とだが尻尾の先に触れ、思ったよりも滑らかな肌触りに興味深そうに呟いた。
「飼おうかなー」
「えっ……同室に蛇がいるのはちょっと……」
「そうか?じゃあ……」
周りを見渡す。
怪我をしてしまって医務室に行った人以外の大部分が大広間に残っていた。
セブルスがもう用はないとばかりに大広間の扉へ向かうのが見える。ロックハートは、自分の決闘の戦歴を彼の取り巻きに語るので忙しいようだ。
「俺が出した蛇、飼いたい人ー?」
片腕に巻き付いた蛇を腕ごと高く掲げる。
蛇はきょとんとして舌をちろちろとさせていたが、幾百もの目が自分を強く射抜く視線に驚いて身を縮こまらせた。
一呼吸おいて集団が一斉に動き、我先にと舞台の前に駆けつける。ロックハートの取り巻きですら、ロックハートを押し退け舞台前に駆け寄った。
「最高級の暮らしを約束します!」「一生幸せにします!」「餌のネズミでもモルモットでもカエルでもお望みの物を用意します!」と、誰もが叫び獰猛な獣のようにギラついた目で蛇を見る。俺が出した蛇を飼いたくて仕方のない生徒たちは必死の形相で手を伸ばし蛇に自分の元へ来てもらおうと懇願した。
叫び合い押し合い喧嘩まで起こってしまい、流石に近くにいたロックハートは何とか止めようとしたが、生徒たちの勢いは収まることはなくロックハートは生徒の肘でどつかれてしまい、集団の中から追い出されていた。
最終的に騒ぎを聞きつけ引き返したセブルスが、憤怒の表情で蛇を消したことで騒ぎはなんとか収縮した。飼いたかったと小さく文句を言う生徒も、流石にセブルスに睨まれたら黙って大広間から退場するしかなかった。