兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

83 / 180
83 ドビーと準備と

 

ハリー・ポッターは魔法界で疎まれている蛇語使いだった。

蛇語を使える魔法使いは、闇の魔法を使うものが多い。スリザリン自身も蛇語を使え闇の魔法使いでもあったし、ヴォルデモートは闇の印に蛇を模している。

ヴォルデモートを赤ん坊の時になんらかの力を使い倒すことができたハリー・ポッター。まさか、ヴォルデモートをも上回る闇の魔法を持つのか?彼がスリザリンの継承者なのだろうか?

 

という噂が囁かれて数時間後には首なしニックとマグル生まれのジャスティンが石化した状態で発見された。しかも、その現場にはハリーがいた。

同じハッフルパフの仲間であるジャスティンが襲われた事に、ハッフルパフ生はかなり悲しみ、ハリーに対し不安感を持っているらしく、廊下ですれ違いそうになると回れ右をして去ったり、わざとらしく避けていたりした。

寮の特徴として、どちらかというとのんびりしていて穏やかなハッフルパフ生達も、流石に今回の事件で恐怖を身近に感じたのだろう。

 

今回の事件により、ジャスティンよりもゴーストであるニックをも石化──半透明ではなく黒く煤けたようになり、動く事はなかった──させてしまう事が何よりも恐怖を煽ったらしい。

クリスマス休暇に帰宅しようと、かなりの数の生徒がホグワーツ特急の予約をしていた。マグル生まれ、半純血、純血に関係なく誰もがこんな場所に残りたくはないらしい。

 

 

「ハリー、蛇語使いだったんだね。ノアは知っていたのかい?」

「んー?……聞いてなかったけど。蛇語使いってそんなにやばいのか?俺どんな魔法生物とでも話せるからなぁ……」

「蛇語使いには、闇の魔法使いが多いのは事実だからね。別の種族の言語を習得するのは難しくて、生まれ持った能力として使える人が殆ど……ハリーがスリザリンの遠い子孫の可能性もあるよね」

 

 

ハッフルパフの自室でセドリックは自分のベットに寝転び、枕の上に広げた魔法史の教科書を見ながら答える。

そうは言うが、セドリックが話す声音には他のハッフルパフ生ほどハリーを恐れ嫌悪している響きはない。

俺は自分のベットの上で横向きに寝転び、フレッドから借りた動く漫画を見ていたが、視線を外してセドリックの方を見た。

 

 

「マジでそんな可能性あるか?」

「ゼロではないでしょ。でも、ハリーはスリザリンの子孫だとしても後継者ではない。ハリーがマグル生まれに危害を加える事なんてありえないからね。魔法界の常識が覆されても、これだけは不変だ」

 

 

セドリックは俺を見て静かに伝える。

うん、やっぱりセドリックは後継者だなんて考えてないな。「わかってるな」と軽く笑いながら言えば、セドリックは同じようにニヤリと笑ったが、すぐに「でも……」と付け足した。

 

 

「噂で、ノアをたった一人の尊い存在にするために他のマグル生まれを消そうとしているんじゃないか。──っていうのがあるんだ」

「……ホグワーツで唯一のマグル生まれだからってなんかいいことでもあるか?」

「ノアと同じ存在がいるのが許せないとか。マグル生まれの子たちが影で君と一緒だということを自慢しているのは本当の事だしね。まあ、あくまで噂だけど」

「血が繋がってるわけでもないのになぁ……俺が世界で一番尊くて美しいばかりに!」

 

 

冗談めいて言えば、セドリックは「ほんとにね」とマジトーンで返した。

マグル生まれの魔法使いは多くはない。どちらかと言えば少ない方だ。そんな彼らが「あのノア・ゾグラフも僕と同じマグル生まれなんだ!マグルの世界で育ったから、同じ気持ちを真に理解できるのはマグル生まれである僕だけさ!」だなんて言っている、とは勿論知っている。

血統に拘るのは純血一族だけだったはずが、今のこの世界ではマグル生まれが一種の自慢要素、だった。最も、今のホグワーツにおいてはマグル生まれは後継者に狙われる立場でかなり危険ではあるけど。

 

 

「そういえば、ノアは今年のクリスマス休暇はどうするんだい?僕は帰るけど。……僕の家に遊びに来る?」

「うーん。今年もここで過ごすかな。卒業するまでは先約があるから」

 

 

休暇中はハリーの元へ行かなければならない。それが俺とハリーが数年前にうっかりと交わしてしまった魔法契約だ。

ハリーがホグワーツに残るのならば、俺も残らなきゃいけない。セドリックの家に遊びに行くのはなかなかに楽しそうだけど、こればっかりは仕方がないかな。

セドリックも俺が断るとわかっていたのか、それほど落胆する事はなくあっさりと「わかった」と答え、再び視線を本に移した。

 

 

 

 

そうしてハリーにとって微妙な空気のまま学期が終わり、クリスマス休暇がやってきた。

クリスマス休暇自体は残ったフレッドとジョージと過ごしてそこそこゆっくりと過ごせたかな。チャンスとばかりにハリー達が遊びに誘ってくるかと思ったけど、ハリー達は忙しいらしいのかあまり俺のところには来なかった。途中からハーマイオニーの姿が見えなくなったし、多分原作どおりポリジュース薬の件を行ったのだろう。

 

 

クリスマス休暇で予想外な出来事が起きたのは、休暇もそろそろ終わりに近づいた頃、宿題やらなきゃやばいなーなんて思いつつ寝落ちして白紙の羊皮紙の上で目覚めた時の事だった。

 

 

「う……んーっ……首いて……」

 

 

自室のベッドの隣にある個人の机の上に突っ伏して寝てしまっていて、首が変に痛む。

部屋の中はぼんやりと薄暗くて、机の上に置いたランプの中には数時間前に灯した魔法の焔がまだ揺らめいていた。

 

体を起こし首をごきりと動かしつつ、欠伸を噛み殺す。うーん、休暇は後二日なのに宿題の進捗は三割程。後でセドリックに泣きつくしかねぇなこれ。

フレッドとジョージは明日ホグズミード行ってセドリックに献上するお菓子を買うって言ってたし、ついていこうかなー。

 

 

「ノア・ゾグラフ様」

「──っ!?痛っ!」

 

 

いきなり後ろから声をかけられ、びびって体が飛び跳ね足を思いっきり机にぶつけてしまった。痛い!

太ももをさすりながら椅子をずらし、声がした後ろを見れば、薄暗い部屋の中央の闇深い中から身を縮こまらせたドビーが静々と現れた。

でかい目だけがランプの灯りを反射して光っていてめちゃくちゃ怖い。ってか普通にホラー出現だからやめてくれ!不意打ちは心臓に悪い!

想像もしていなかったホラー要素に心臓はドキドキと早鐘を打ち、耳の奥の方でドドドドって反響している。

こんなに心臓がドキドキするなんて初めてだぞ!まじでジョジョ並にドドドドドってなっていて疲れる……。

 

 

「お前……びびった……まじで……」

「ああっ!申し訳ございません!ノア・ゾグラフ様を困らせてしまった!ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!」

 

 

胸の上に手を置き、ふーと鼻から息を吐けばようやく心臓は平静を取り戻したようだった。

ドビーは俺の言葉に悲鳴のような金切り声で叫ぶとセドリックが使ってるベッドの足部分に頭をぶつけ始めた。……血とかつかなきゃ別にいいか。

 

 

「今度からびっくりさせないでくれ、心臓に悪すぎる。反省したならもういいから……何でここに来たんだ?」

「それは……。ノア・ゾグラフ様、どうか、どうかハリー・ポッターと一緒にホグワーツを去ってくれませんか?」

 

 

ドビーは頭を打つのをやめ、赤黒くなった額をこちらに向ける。祈るように指を組みながら睫毛の薄い大きなガラス玉のような目で俺を見上げた。ドビーは色々な方法でハリーをホグワーツから出そうとしていたが、どの方法も上手くいかなかった。今年の初めに頼みに来たみたいに、また俺にダメ元だと知っていて頼みに来たわけか。

 

 

「ハリーはそれを望んでないだろ?大丈夫だって、死ぬ事はねぇよ」

「本当に、恐ろしい存在が近くまで来ているのです……!名を言うのも憚れる程の脅威が!」

 

 

ドビーはがたがたと震え、長い耳をぎゅっと掴み強く引っ張る。継承者が怖いというよりも、主人であるルシウス・マルフォイの命令なく自分がハリーを逃がそうとしている事実を恐れているようだな。ドビーは言葉が足りず──ってか、縛られて言えない事が多すぎるけど、ハリーのいい友人になるし、あんま冷たくするのもなぁ。

 

 

「そういや、ドラコにも黙ってここに来てるんだ?」

「は……はい。ドビーめは、ご主人様の許可なくご主人様のご家族との会話を禁止されております」

「ふーん?あのさ、ハリーをここから逃がしたいのはめちゃくちゃわかるけど。ここにはダンブルドアと俺がいる。今年の初めにも言ったけどさ、世界で一番安全な場所だぜ?」

「で……ですがっ!ドビーめは……ドビーめは、勇敢にも名前を呼んではいけないあの人を倒し魔法界を闇から救ったハリー・ポッターに、く、苦しい思いをして欲しくないのです。だから──ノア・ゾグラフ様の言う事なら、ハリー・ポッターは喜んで頷くでしょう、全てが終わるまで、一時でいいのです。どうか避難していただけませんか?」

「んー……」

 

 

椅子から立ち上がり、ドビーの前にしゃがみ込む。哀れな小さな体はがたがたと震えて、目は涙の幕が張っている。打ちつけた額は紫色になりぷっくりと腫れてきていた。

痛々しい額に手を伸ばす。ドビーは「ドビーめに、触れるなんて──」とモゴモゴ言っていたが姿を消すことはない。腫れた額をひとなでして怪我を治せば、ドビーはぴしりと固まり息を呑んだ。

 

 

「ドビー。ハリーは自分一人が助かるのなんて望んでない。ハリーは勇敢で、優しい奴だからな」

「……」

「ハリーを助けたいなら、脅威から逃すんじゃなくて、手助けしてみたらどうだ?」

「ドビーめに──そんな……」

 

 

ドビーの耳が垂れる。ドビーは迷うように視線を揺らし、不安げな表情をしたまま小さく頷いた。

 

 

「ドビーは、ハリー・ポッターを助けたい……。ドビーが、ハリー・ポッターを助けたい……」

 

 

その言葉は小さく、震えていた。屋敷僕が自分の意思を持つことは、やはり許されていないんだろうなぁ。自分で言った言葉に驚愕しているように体をぶるりと震わせたドビーは、先ほどの哀れな目とはまた違った目をして俺に向かって丁寧に頭を下げるとそのままその場から消えた。

 

 

「……あれ。ドビーが直接ハリーを助けてたっけ……」

 

 

なんかちょっと原作と違う流れになっちゃいそう。とは思いつつ、まあ大幅に変更がなければいいだろう。

そもそも、ドラコとハリーが友人な時点で数年後の未来が結構変わりそうだし。

穢れた血云々は別キャラで代用されたし、世界は決められた流れにある程度修正されるっぽいけど。

 

修正されたくない未来が確定するまでは、ちょっと油断できないしなぁ。

 

 

ドビーが消えた後の、いつもと変わりない絨毯の模様をぼんやりと見ながら考える。

俺としては大きく原作を変えたくはない。未来が全く不明瞭になるのは避けたいし、原作キャラが生まれない世界はそれはそれで申し訳ない。

しかし、死なせたくない奴がいる。それにはただその時に守るだけでは──多分、無理だろう。

 

頭を掻き、ため息を一つ。

机に向かい椅子に座って、机の奥にあった封筒と手紙を取りだす。

羽ペンにインクをつけて、一瞬悩んだが──すぐに手紙を書き始めた。

 

 

「こう言う時に、俺の知名度と顔を使わなきゃな」

 

 

一度書いた内容を読み、失礼のない文面になっていることを確認した後封をして、ぐっと腕を上に伸ばす。

 

 

「……本当は俺が全部の分霊箱を破壊して、ヴォルデモートを飼うのが平和的ではあるんだけどなぁ」

 

 

ハリーしか、ヴォルデモートを殺すことはできない。それもかなりの幸運と偶然と策略を持ってようやく殺すことができる。

だが分霊箱を全部壊してほぼ赤ちゃんみたいなヴォルデモートを目の届く範囲に置いて半分ペットみたいにしたら、ヴォルデモートは復活しないから戦争は起きず死ぬ人間は減る。

 

それはそれで犠牲は少ないけど幸福かどうかと言われると微妙だな。シリウスは冤罪のままだし、ペティグリューは罪を償わないし、リーマスとトンクスは出会わないし。ロンとハーマイオニーも結婚しなさそうだし……。

……あ、セドリックを生存させたらハリーとチョウのイベント無くなるのか?

 

 

「……ま、あとで考えよ」

 

 

真っ白な課題も、遠い課題もとりあえず置いといて、俺は柔らかなベッドにダイブして目を閉じた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。