兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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85 ヴォルデモートによろしく

 

「ノア。トム・リドルって知ってる?」

「誰だって?」

「トム・リドルだよ」

「なぞなぞか?」

「リドルだけど、違うよ!」

 

 

ある日、セドリックが見知らぬモブ女子と空き教室に行ってしまい──あれは告白だな──バジルに餌でもあげに行こうかと廊下を歩いていたら、ハリーに腕を掴まれ空き教室に引き込まれた。

まさかこっちも告白か?と思っていたら、冒頭のようになったわけだ。

 

トム・リドル。めっちゃ知ってますけど?

知ってると正直に言ったら面倒な事になるから、勿論言わないが。

 

 

「誰だ?何年生?俺、流石に全校生徒は知らないからなー」

「昔にホグワーツにいた人なんだけど、ノアは何か知ってるかなって思って」

「ハリーは何でそいつを知りたいんだ?」

「えーっと……」

 

 

迂闊にぽろりと言ってしまわないように、ハリーにばかり質問していたらハリーは喉の奥で「えー、うー」と唸り視線をきょろきょろと彷徨わせた。

明らかに挙動不審な動きをしつつ「えーと」と小さな声で呟く。

 

 

「えーと……この日記を拾ったんだけど、どうやら五十年前にホグワーツにいた人みたいで……それで……気になって……」

 

 

ハリーはカバンの中から黒い日記を取り出し、途中で止まったり、言い淀んだりしながら話し出した。

日記を見つけただけで過去の人を探そうとするか?五十年も前ならとっくに卒業していて、本人に日記を返すことはできないのに?何で気になるんだ?──と、ハリーは俺に問い詰められないかと緊張しているようだった。

 

頑なに継承者を探しているから手伝って欲しいと言わないハリーに疑問を感じつつ、まあ意地悪く突っ込む必要もないか。

俺は俺でちょーっとやる事もあるし。

 

 

「日記を読んだら何か手がかりがあるんじゃないか?」

「あー……えっと、これには当時のトム・リドルの記憶が閉じ込められてるんだ。だからトムがどんな人なのかはわかってるんだけど……」

「日記に話しかけたら喋るのか?」

「ううん、書いたら返事がくるんだ」

「へー。やってみていい?」

「うん!勿論だよ。変な魔法はかかってないと思うんだ。ロンは嫌がってるけど……もうずっと持ってるけど、呪われたりもしてないし」

 

 

指パッチンをして空き教室をどんよりと漂っていた埃っぽい空気や、机と椅子に分厚く積もっていた綿埃を一掃して新品のように滑らかになった椅子に座る。

ハリーは驚くこともなく俺の隣に座り、俺の前に日記を広げて「どうぞ」と差し出した。

 

 

「何で書こうかなー……」

「何でもいいよ」

「じゃ、とりあえず……」

 

 

──ヘイ、リドル!パーティに相応しい曲を教えて!

 

 

手首をくるりと回して出現させた羽ペンでさらさらと書く。書かれた文字は一瞬輝き、紙の中に溶けるようにして消えた。

うわー!まじもんのリドルの日記!マホウドコロで売ってたやつじゃない!本物!!

 

感動していると、ハリーは得意げな顔をして「見ててね」と大切な物を自慢するように囁いた。

しばらく待つと、何も書かれていなかった箇所にじわじわと文字が浮かび上がる。

 

 

──当時流行っていたのは、ワルプルギスワルツだね。

 

 

「え──円環の理……」

 

 

帰ってきた言葉に思わず呟けば、ハリーはきょとんとしながら「何それ?有名な曲なの?」と俺に聞く。

いや、ぜんっぜん知らない。ぜんぜん知らないけどワルプルギスって聞いたらついつい。

ってか魔法界にも懐メロっていう概念あるのかな?まあバンドとかあるくらいだし、あるか……あーでもテレビってないからな……アニメとかゲームとか映画とかの概念はないんだよな……マグル生まれとかハーフの子から伝わってはいるけどそこまで広まってないんだよなぁ、面白いのに。ラジオはあるけど。

その辺魔法界のマグルにもある電子機器状況不明すぎるよなぁ。

 

 

──君は、ハリーじゃないね。誰かな?

 

 

少ししてからまた文字が浮かび上がった。

まあ……ここで名乗っても大丈夫だろうけど。

 

何となく悪戯心がむくりと湧いて、羽ペンをくるりと回し名前を書いた。

 

 

── I am Lord Voldemort

 

 

「ノアってブラックジョーク好きだっけ?」

「まあまあ。ほら、ヴォルデモートっていつからいるのか……この五十年前のリドルの反応気になるだろ?」

「……たしかに」

 

 

ハリーは怪訝な顔をしつつも、五十年前からヴォルデモートが存在するのかは気になるらしく。リドルの反応を期待しながら待っていた。

しかし、先ほどとは打って変わって返事はなかなかに遅い。俺とハリーが顔を見合わせた時、じわりと文字が浮かび上がった。

 

 

──そうなんだ。よろしくね、ヴォルデモート卿。

 

 

「──ぶふっ!ヴォルデモート卿に、よ、よろしくだって!」

 

 

姿が見えないけどわかる。絶対リドルはブチギレてる!

リドルがヴォルデモートによろしくとか世界線がおかしなことになるし、俺の腹筋が崩壊するからやめて欲しい。ヴォルデモートに軽々しく「よろしく!」なんて言えるやつこの世界にいるのか?

 

思わず吹き出してしまえば、ハリーもいたずらっ子のようにニヤニヤと笑いつつ、「知らないみたいだね」と言いながら俺から羽ペンを取った。

 

 

──やあトム、ハリーだよ。彼はユニークな人なんだ。ところで、今の名前に聞き覚えはない?

──どういう意味かな?

 

 

「どうやら、トムの時代にはヴォルデモート卿は脅威じゃなかったみたいだね」

「ヴォルデモート卿って何歳なんだろうなぁ」

「そういや写真とかもないし……調べた事もないなぁ……どんな姿なんだろうね。去年クィレルに取り憑いていたのを見たけど一瞬でよくわからなかったし。ダンブルドアなら知ってるかな?」

「敵を知る事も大事だし、いつか聞いてみてもいいかもな」

 

 

ハリーはこの年度末にヴォルデモートが過去トム・リドルという少年だったと知る事になる。何年か後にはその生い立ちも知る旅に出るだろう。

そういや、ヴォルデモートはトム・リドルだったとか、実は純血じゃなくて半純血だとか、マグルの孤児院に捨てられて孤児院育ちだとかを世間に公表すればヴォルデモートの怖さは半減する気がするけど。流石のダンブルドアも、凶悪犯とはいえ人のプライバシーな部分を公表する気はないのかな?

マグル世界だったら特定班が大忙しになってネットで過去から何から晒され祭り状態になるけど。いやー……ここが魔法界でよかったなぁ、ヴォルデモート。

 

 

「ハリー、この日記数日……一週間くらい貸してくれないか?ちょっと調べたい事があって」

「うん、いいよ。じゃあ……来週もここで待ち合わせでいい?」

「オッケー」

 

 

この日記はいずれ破壊される。

破壊されずに持ち続ける事できないかなーと思ってちょっと考えてみたが、この日記が分霊箱である限りそれは難しい。

この日記破壊しないと、ヴォルデモートは不死だしなぁ。

 

ハリーはすぐに頷き、俺に日記を手渡した。

触ってみても、なんの変哲もないただの日記で不気味な気配もないし、何かが侵入してくるような雰囲気もない。

 

鞄の中に日記を入れていると、ハリーは俺を覗き見てにこっと笑う。

 

 

「こうやってノアと二人きりなの久しぶりだね。ホグワーツに来る前を思い出すなぁ」

「そうだな。なんだかんだ……いつも誰かいるし」

 

 

ハリーは椅子の上で膝を抱えて座り、頭を膝にこてんと乗せつつ、俺を上目遣いで見上げる。

眼鏡の奥の綺麗な緑色の目が、すっと細められて口先はかすかに微笑んでいた。

 

 

「ノア」

「何だ?」

「僕、たまにノアを閉じ込めたいなって思う時があるんだ」

「ほぉー……それはそれは」

「今はすごく楽しいけど。昔は僕だけのノアで、ノアとずっと一緒だったのに。今はセドリックとか、フレッドとジョージの方とばかり遊んで……」

 

 

ハリーは拗ねたようにぼそぼそと呟く。

その言葉に、少し──驚いた。

 

昔から独占欲が強めではあった。だけどそれもロンやハーマイオニー、ドラコといった友達ができていつのまにか俺に執着する事は無くなっていった。

ま、学年も寮も違う。ハリーはハリーで青春した方がいいと思っていたし気にはしてなかった。自分に懐いていた野良猫が別の場所に甘えに行くような少しの寂しさがあったのは、事実だけど。

 

 

「ハリーもまだまだ子どもなんだなぁ」

 

 

昔と比べてかなり背が伸びたとはいえ、ハリーはまだ子どもだ。かわいいなーこいつ!

くしゃくしゃの髪を撫でてやれば、ハリーは「子どもじゃないよ」と言いながらも満更ではないのか嬉しそうにはしていた。

 

そうしていると、休み時間終了のチャイムの音が響き渡った。

俺は次の授業は空きだけど、ハリーはそういうわけではなかったようで名残惜しそうに立ち上がる。

 

 

「じゃ、またなハリー」

「うん。また一週間後に、ここで」

 

 

 

ハリーは手を振って空き教室から出ていき、俺はそれを見送ってからゆっくりと立ち上がる。

 

 

「さて、これを調べるとしますか」

 

 

これは誰にも邪魔されたくないし、誰かにバレたら厄介だ。

よし、必要の部屋で調べるか。

 

 

 

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