兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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87 将来のお仕事

 

イースター休暇が始まり、クリスマス休暇と同じくらいの大量の課題が出された。

来年からついに五年生であり、魔法界で重要なO.W.L試験がある。これは将来の職業を決めるにあたってかなり重要な試験で、いつもは馬鹿騒ぎしている生徒もそろそろ自由時間に自主勉強を始めだしている。

とはいえ、まだ十五歳程度の子どもに将来の進路を考えろと言われても難しいもので、殆どの生徒がぼんやりと得意科目を優先的に勉強しているだけにすぎない。勿論優秀なセドリックとか一部の生徒は早めに将来の職を見据え、それに必要な教科を勉強しているが。

フレッドとジョージは言わずもがな。なーんにもしてない。

 

俺もなーんにもしてなかったが、セドリックが「そろそろ勉強しないとまずいよ」「結果がトロールになるよ」とちくちくと言い続けるため、仕方なくセドリックに付き合って自主勉強時間を増やしている。

休暇の課題はセドリックが進んでスケジュールを立ててくれたおかげでなんとか終わりそうではある。休暇明けにはクィディッチの試合があるから、一日おきにクィディッチの練習があって課題と練習とで「休暇 とは」と検索したくなりそうなほど、まあまあ予定が詰まった休暇を過ごしていた。

 

 

そんなある意味学生らしいイースター休暇の午前中。昼食をとりに大広間へ向かう途中にセドリックはしとしとと小雨が降る窓の外を見ながら呟いた。

 

 

「ノアはこのままモデルをするの?」

「んー。まあ暫くはそうしようかな、セドリックは?」

「うーん……親は魔法省勤務を望んでるんだよね、将来安定しているし。その中でもすごく重要だしエリートなのは闇祓いだ。危険があるけどやりがいもある仕事だよね」

「セドリックの本心は?」

 

 

軽く聞いたら、セドリックは足を止めた。

そんな変な聞いてないぞ、と思いつつ事振り返ってみれば、セドリックは珍しく俯き言い淀んでいるようだった。

 

 

「どうした?」

「あー……誰にも言わないでね」

「言うわけないだろ」

 

 

セドリックは何度か視線を彷徨わせた後、ぽつりと呟いた。

 

 

「……クィディッチ関係の仕事に就きたいかな」

「へえ、良いんじゃねえの?」

 

 

俺はセドリックの将来や、セドリックが何を目指しているかだなんて知らない。

だけどそれは起こりうる未来がないセドリックの話であり、今のセドリックには多分、当てはまらないのだろう。

セドリックは親の望み通り闇祓いにもなれそうな成績優秀さだが、本人は穏やかで優しいし真面目だし真剣に考えがちなところもあるし、性格的には闇祓い向きではない気もする。犯罪者とはいえ人を殺したりは気が病んで出来なさそうだ。クィディッチ関係、というのはまた想像もしていなかったけど、かなり人気のある仕事ではあるだろう。

 

 

「クィディッチの選手って事か?」

「勿論、そうなれたなら最高だけど」

 

 

セドリックはクィディッチが上手い。

今のキャプテンが卒業したら、きっとセドリックがキャプテンになるんだろうなぁという雰囲気がチーム内にあるし、セドリックもチームメイトをまとめたり、キャプテンと作戦を話し込む事も多い。

とはいえ、選手になれるほどの技術か?と言われると微妙なところだ。

 

セドリックもセドリックで、選手になるのは難しいと思っているのか苦笑して「まあ、まだ考え中かな」と言葉を濁した。

 

 

「セドリックは監督向きな気がするけどな」

「監督?」

 

 

セドリックはきょとんとした顔をして俺を見る。小雨を降らせていた薄雲が時々途切れ、セドリックの頬に白い光が差していた。

 

 

「人のことよく見てるし、教えるの上手いだろ?作戦立てる時生き生きしてるし。今はキャプテンが監督も担ってるけど、社会人チームとか代表選手軍団だったら監督がいるのが普通らしいぜ。まあ、選手経験がある方が監督になりやすいかもだけどなぁ」

「監督かぁ……」

 

 

俺はクィディッチに興味がないからあまり詳しくは知らないが、セドリックは目から鱗が落ちたような、急に視野が広がったかのようなさっぱりとした顔をしていた。

 

 

「ま、どっちにしろどんな仕事でも目指せるように勉強は必要だね」

「俺はこの外見だけで生きていくから大丈夫」

 

 

ハリポタファンとしてホグワーツの教師や闇祓いに憧れがないわけではない。とはいえ、教師や闇祓いになるにはかなりの成績が必要だろうし、俺は筆記テストはそんなに良くない。勉強で苦労するのなら、チート的な外見の良さで人生を気軽に過ごしたい。

 

 

「ノアは何にだってなれそうな気がするよ」

 

 

セドリックはそう笑いながら言った。

その言葉には嫌味や冗談はなく、ただの尊敬のようなそんなしみじみとした響きがあって、俺は頭の後ろで手を組みながら「世界最強だしな」と笑った。

 

 

雲が晴れ柔らかく白い光が差す中、俺とセドリックは何でもない学生らしい話をしながらゆっくりと歩く。

大広間にはぱらぱらと生徒が集まっていて、昼食をとりながら談笑していた。

長机の後ろの方で分厚い教科書片手に黙々と食事をしているのは間違いなく五年生と七年生だろうな。

 

サンドイッチやフルーツサラダを摘みつつ、セドリックのクィディッチ話を右から左に聞き流す。じんわりと満たされた胃に、ぽかぽかと暖かい大広間と程よい雑音。──これはまさに眠気を誘う三銃士と言ってもいい気がする。

ふわ、と欠伸を一つこぼし、ぼんやりと紅茶を飲んでいるとぴょんぴょんと跳ねた黒髪が目の前で揺れた。

 

 

「ノア!起きてる?」

「んー。……ハリー?」

 

 

机を挟んだ向こう側に来たのはハリーとドラコとロンだった。

三人は周りのジロジロ見てくる視線をまるっきり無視してセドリックに軽く挨拶をすると椅子に座った。

周りの視線の半分は俺の前に座ることができる嫉妬と羨望。もう半分はハリーへの恐怖と好奇心かな。

 

 

「眠そうだな。夜更かしでもしたのか?」

「あ、そうだ!ママからのイースターエッグがノアにも届いてたんだ。めちゃくちゃ大きいから、今日の晩御飯の時に持ってくるよ」

「ノア、選択科目は何がいいと思う?ノアと同じにしようかな、宿題は多い?」

「俺は聖徳太子じゃないんだよなぁ」

「ショートクタイシ?」

 

 

一気に三人が同時に喋るから部分的にしか理解できなかったぞ。

聖徳太子、と言っても魔法族の──そもそもイギリス人には全く馴染みがないのか、三人とも頭の上にハテナを飛ばして不思議そうな顔をした。

 

ロンとドラコはそこまで重要な話ではなかったのか、会話の切り出しをハリーに譲り、ハリーはベリーパイを食べながら「選択科目、僕たち悩んでるんだ」と言った。

 

 

「選択科目はなぁ……セドリックの方が詳しいと思うけど。俺は占い学と魔法生物飼育学しか選択してないし」

 

 

目を擦りながらいえば、三人の視線はセドリックに向いた。セドリックは「そうだなぁ」と少し考えながら自分が選んだ科目のことや、科目がどんな形で職業に影響するかを簡単に説明しだした。三人は真面目な表情で聞いていたが、セドリックの言い回しはどれもかなり難解な授業である、と言っているようで三人とも少々嫌そうだ。

 

 

「ノアはなんで占い学と魔法生物飼育学を選んだの?」

「一番課題が楽だから」

「そうなんだ!うわーパーシーのやつそんなこと一言も教えてくれなかったぞ!僕もその二つにしようかなぁ」

「将来使えるかどうかは微妙だけどな」

「占い学と魔法生物飼育学か……僕は古代ルーン文字学を選ぼうと思っていたんだ」

「ドラコ、君正気かい?それってセドリックが難しいって今言ってたばかりじゃないか!」

 

 

ロンは信じられないとばかりに素っ頓狂な声を上げる。ドラコはロンの言葉を気にせず真顔で「古の魔法や書物は古代ルーン文字で書かれている物が多いからな」と答えたが、ロンはその答えすらも信じられないのか「マーリン!」と嫌そうに舌を出した。

 

 

「よし、僕はノアと同じにするよ!」

「ハリーがそうするなら僕も。課題は少なけりゃ少ない方がいいし」

「僕は、占い学は興味はないから……古代ルーン文字学か数占い学と、魔法生物飼育学しよう」

 

 

いくら重要な選択科目とはいえ、三年生にもなっていない三人には未来の職業のことなんてよくわからないのだろう。

宿題の多さや何となくの好みで決めた三人は、そのままここで昼食を食べることにしたらしくクィディッチの事を楽しそうに喋り出した。

勿論クィディッチ大好きのセドリックもその話に乗っかり、競技場を飛ぶブラッジャーのような会話のラリーを続ける。

 

俺は頬杖をついて、少年らしく頬を赤く染めて目を輝かせる四人を見ていた。

 

 

 

 

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