兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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89 宗教のような

 

クィディッチの試合が中止になった次の日。

ホグワーツでは犠牲者が二人出たこと以上に衝撃的な事が朝の朝食時に全生徒に伝えられた。

アルバス・ダンブルドア校長が、このホグワーツから追い出されたのだ。

 

ホグワーツに実は存在していた理事会という議会で校長よりも権限のある理事十二名が「ダンブルドアを停職処分」にしたのだ。

生徒が何人も石になっていてその犯人の手がかりもないのは校長として責任を問わなければいけないのは確かだろう。勿論理事の意見──というよりはダンブルドアを陥れたい者の意見だろうが、それはまあそれとして、だ。

 

ダンブルドアがいなくなった事は、ホグワーツに通う生徒にとって、そして教師たちにとってまさに急所への大打撃といえるだろう。

 

 

あの、ダンブルドアが。

ヴォルデモートも手を出さなかったダンブルドアがいなくなった。

きっと、犯人はこの機会にさらに悪行を重ねるに違いない!

ついに、ノア・ゾグラフが狙われるに違いない!

 

 

誰もがそう思い、初夏とは思えないどんよりと暗い恐怖感がホグワーツに漂っていた。

見知らぬ敵への恐怖心だけではなく、学生生活の娯楽である部活動も禁止されているし、まだ日が明るいうちに寮に戻らなければならないしで、みんな暗い顔をしてこそこそひそひそと毎日を過ごすようになっていた。

 

そんな中、ノアはとくにいつもと変わらず──教室を移動する時には付き添いの教師がつくが──日々を過ごしていた。

廊下で俯いて背を縮めて歩いていた生徒たちはノアを見て驚きのような、羨望のような眼差しを向ける。

その目は今までとは違う色を持っていたが、ノアは全く気にせずいつも通りファンサービスと称してにこりと微笑んでいた。

むしろ城の中が重苦しく鬱々としているのなら、それを明るく照らすのは自分の役目だというように、いつも通り百万ガリオンの笑顔を振り撒いた。

 

 

そうする事二週間。

ノアは流石に周りの変化に気付いた。鈍感なノアでさえ、自分を見る生徒たちの視線とポーズの不自然さに気づかないわけがない。

 

いつしか、誰もが「ノア様」と囁き、ノアが通り過ぎる時に足を止め祈りを捧げるようになっていた。

神への祈りのように、胸の前で指を組み、震える唇で「ノア様」と呟き恍惚の目でノアを見つめる。

ノアは違和感に気づいていたが、「まあ嫌な気はしないし」と持ち前の適当さで流し、いつものように美しい完璧な笑みで堂々と廊下を闊歩した。

教室を移動する際に付き添う教師もその光景を見ていたが──人の信仰を否定することはできず、黙認していた。

 

 

ホグワーツでは部活動は禁じられている。だが、人の宗教や信仰は何があったとしても他者に阻害されてはならない。

魔法界でも宗教や信仰は存在し、それはマグル界で広まっている物と同じ物や、やや魔法界寄りに言い回しを変えているもの、全く異なる異種信仰、など様々であり自分の神が他人の神とは限らない。

 

マグル界でもそうであるように、ホグワーツでも──魔法界でも──宗教関係の話は献身で熱心な教徒に対しては気軽にできるものではない。

 

元来の美貌と魅力を持ったノアは、偶然にもホグワーツで最後のマグル生まれとなっていた。

つまり次に犠牲者が出るのなら、これまでの傾向的にノアしか考えられない。

 

 

そんなノアは、今までのマグル生まれや半純血のように怯え恐怖し見えぬ敵に屈する事はなかった。

 

ダンブルドアが停職になって、とある半純血の一年生が耐えきれずノアに聞いた。「ノアさん、あなたは怖くないんですか?」と、その疑問は誰もが持っていたが誰もが口にする事ができなかった事であり、その生徒はある意味今後のノアを取り巻く未来を変えてしまったのだが、本人も、勿論ノアもその時は気づかなかった。

 

ノアは振り返り少しだけきょとんと目を瞬かせた。そして全く知らないその勇気ある少年の顔が蒼白な色をしていて、目の下に隈もあり体が震えているのを見た。

ノアは目の前の少年の名前も知らず、顔も見た事がなかった。つまりノアが愛している世界において重要な人間ではない。それでも、少年の様子から今の現状を恐れ自分を気遣ってくれたのだろう事はわかり、ふっと優しく笑った。

 

 

「大丈夫だ。俺は世界最強の魔法使いだからな」

 

 

いつものように堂々と胸を張り、当然のことのようにそう言うと輝かしく美しい顔で笑った。

 

その言葉を聞いた途端、少年は胸の奥を燻っていた霧が晴れた気がした。いや、少年だけではない、周りに聞き耳を立てていた生徒はそれを聞いて今まで何を恐れ怖がっていたのだろうか、と思った。久しぶりに息をしたかのように、誰もがはっと息をこぼしたのだ。

 

全てとは言わないが、祈りは困難な状況に縋ってしまうもので、宗教は疲弊した心に水のように染み渡っていく。

ノアの言動は、まさにそれだった。

 

 

堂々と胸を張り、自信に満ちた輝かしい笑顔で笑っていたのだ。

そう、まるで混沌と苦痛に満ちた世界を救う救世主だ。──そうだ、きっとノアこそがこの世界の光なのだ。

そんな歪な連想ゲームが生まれたのは、ホグワーツという特殊な閉鎖的空間と犯人すらわからない事件でのストレスが原因だろう。

 

 

いつしかその笑顔を見て、彼らはノアを「ノア様」と呼び祈りを捧げていた。

勿論、今までも「ノア様」と呼んでいた者はいただろう。しかしそれはモデルのノアに対するきゃっきゃとした浮かれがまじった愛称であり、今のような畏敬や崇拝のみの者は限りなく少なかった。

だが今では生徒の半数以上がノアに祈りを捧げているのだ。──もちろん皆が同じ祈りを捧げているわけではないが。

 

 

どうか、この事件が収束に向かいますように。

どうか、世界で一番お強いノア様が原因を解明してくれますように。

どうか、ノア・ゾグラフ様は石になりませんように。

どうか、我らの光が消えませんように。

 

 

 

そんな幾百の祈りと願いを一身に受けているノアは、何となく祈られてるなーとは思っていたが、きっと最後のマグル生まれの自分の無事を祈ってくれているだけだろう。とあまり気にしていなかった。

隣にいるセドリックはここ数週間の周囲の異変に気付き若干引いていたが、フレッドとジョージはこの集団催眠のような異常事態を面白がり「我らがノア様!お慈悲を!」などとふざけながら茶化し、ノアはノアで「迷える哀れな子羊たちよ……」と同じようにふざけながら演技かかった口調で返事をしていた。

これはノアとフレッドとジョージの仲であるから通用する戯れであるが、もちろん周りのノア信者達は恍惚に満ちた目でそれを見ていたのは言うまでもない。

 

熱狂的なノアのファンが親衛隊になり、さらにノアに陶酔し信者になっていく。

 

──信者達が勢力を強め数を増やして行くのは、まだ少し先の話になるだろう。

 

 

 

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