兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します! 作:八重歯
目の前の金の皿がすっかり空っぽになった頃、ダンブルドアが立ち上がって新年度の挨拶っぽいものを言った。校長の話ってのは長いのが当たり前だけど、ダンブルドアの話は簡潔に要点だけを述べているとっても生徒にとって優しい。
まぁ、お腹いっぱいになった生徒達がうつらうつらしてる中長時間話したところで、右耳から左耳だろう。
解散の合図と共に大広間中の生徒が立ち上がる。
新入生はまだ寮の場所がわからないから、監督生によって案内される。俺もセドリックと立ち上がって集団の中に入ろうとした。
「ノア、ちょっと来てくれんかのう」
「へ?」
さっきまで上座に座ってたダンブルドアが、いつの間にか俺の後ろに居た。セドリックはビビって飛び上がるし、近くにいた生徒達は何事かと二度見してる。
姿現しか?いやーでも独特の音しなかった…よな?
「なんですか?夜這いなら寝室に夜の12時以降にお願いします!」
「違う!──ごほん、ちょっと聞きたいことが2.3…いや、5.6…10.11…」
「多くないですか?」
「なに、すぐに終わるじゃろう」
数がどんどん増えていってるぞ。何がそんなに聞きたいんだ?えーと、好物とかスリーサイズかな?
ダンブルドアは白くて長い髭を撫でながら俺を見下ろす。この人ってめちゃくちゃ背が高いよな。縦に長いというか、ひょろってしている。
まぁ、ダンブルドアは好きだし!なんでも質問には答えよう!
質問に答えたらご褒美にツーショット撮らしてくれないかなぁ。
「いいですけど、後でハッフルパフ寮まで送ってくれますか?場所、知らないし…」
「おお、勿論じゃとも」
スリザリンとグリフィンドールはともかく。
ハッフルパフとレイブンクローってどこにあるんだっけ?…あーなんかレイブンクローはロウェナの髪飾りを探すときに…なんか塔の頂上だったような、ハッフルパフは──全然覚えてない。残念ながら最も影の薄い寮だな。
まぁ、それも!このノア様がハッフルパフに入ったからには全ての寮の中で目立つ寮ナンバーワンに君臨させてやる!落ちこぼれの寮だなんて通説をぶっ潰せ!…ただしスタートはマイナスだけど。
心配そうな顔をするセドリックにひらりと軽く手を振って、ダンブルドアに促されるまま後ろをついていく。
校長室かな?校長室だといいな!見てみたいし!
とワクワクしながら無言でついて行ったら──おお!これって校長室前のガーゴイルじゃね?
ガーゴイルの像が並んでいる廊下に来た。
確かここの前で合言葉言うんだよな?レモンキャンデーとか、タフィー・エクレアとか、最後はダンブルドアだっけ?
早く動くところみたいな、と期待を込めて隣に立つダンブルドアを見上げたら、ダンブルドアは「ふむ…」とか言いながら髭を撫でて首を傾げている。
「…はて、合言葉はなんじゃったかのう」
「ええー」
ダンブルドアはキラキラした目を細めて「ふぉっふぉっ」って楽しそうに笑うけど、笑い事じゃねーだろ!痴呆か?いやいや、たしかにいいお歳だけどさ…。最後の最後まで思考はシャンとしてたよな…?
「この先って校長室でしょ?どうするんですか?」
「──おや、校長室だと知っておるのか」
「そりゃ、ダンブルドア校長が行くのなら校長室でしょ?3階女子トイレに行くわけないでしょうし」
何言ってんだこの人。
きょとん、として見上げたらダンブルドアは目を細めて「おお、そうじゃのう」と軽く言った。
ダンブルドアってこんな人だっけ?前会った時はもうちょっとギラついてたけど、流石に俺に対して警戒心はもうないのかな?
「どうしたもんかのう」
「もー!合言葉忘れないように気をつけてくださいよ!」
ダンブルドアが合言葉を忘れてしまったのなら校長室が開かない、開かないと校長室に入れない、ハリポタオタクの俺は校長室に入りたい!
こんなチャンスもう無いかもしれないし。
いや、だって校長室なんてなかなか入らないよな?俺小学校の時入ったことなんて一度もないぞ。
仕方ない、開けてやるしかないかー。
数歩踏み出して、並ぶガーゴイルを見上げた。
「もー仕方ないですねぇ──
大きなガーゴイルの石像の側面に手を当てて、そのままぐいっと横に滑らせるようにして押し込む。半ば無理矢理押していけば、ガーゴイルはぐるぐると軋むような音を立てて回転する。
その動きに合わせて壁が左右にぱかりとわかれ、校長室への螺旋階段がパタパタパタンと降りてきた。
「──さ、行きますよー?」
くるりと振り向いてダンブルドアに声をかけたが。
「ノア・ゾグラフ。──君は一体何者じゃ」
ぴたりと喉元に杖先を当てられていました。
…は??意味不明すぎなんだけど何のブラックジョーク?俺が知らないだけで魔法族は実はお礼に杖先突きつけたりするの?──んなわけねーよな。
ダンブルドアの声音は硬いし、何より目がキラキラしてない。どうみても冗談の類で俺の喉に杖を向けていない。鋭く俺を睨め付けていて、少しでも俺が変なことをすればすぐにアバダられそうだ。
「何者って…」
「…この前ホグワーツに現れた時…魔力の暴走だと言っておったが、帰る際は至って当然のように姿くらましをしておったの」
「…えーと」
「校長室への扉は、合言葉を言わなければ開かぬ。──力づくでどうこうできるものじゃない」
「──騙したな!?」
酷い!
好きなキャラが困ってる姿を見たくなかったから扉を開けたのに、何たる仕打ち!痴呆おじいちゃんなのかなーとか思ってたけど、とんでもねぇ狸爺じゃねーか!
「君は、一体何者じゃ」
再度問われる。
ぐぬぬ、転生者でチートです!なんて言ってもわけわからんだろうしな。
オブリビエイトで記憶を消すか?…いや、でもいつから消す?俺と会ったところから?
俺のことだけを消しても、絶対他の教師が変に思うだろう。
教師全員の記憶を消す?…いや、もう組み分けが終わってしまった、せめて組み分け前なら記憶を消して素知らぬ顔でこの大広間に登場出来たのに!
俺は世界一の美貌を持つ。つまり、一回見たら忘れられない奇跡的な美貌だ!
そんな俺の組分けを教師全員が覚えてないって事になったら、流石に不審がられてしまう!
この答えは、何が正解なんだ?
とりあえず、敵意はないんだよ!
魔力は世界一で最強でも、ちょっと知能が──ほら、一般人レベルだから。ちょっと可愛いミスくらいしちゃうよな?
この場を和ませることが出来るような、会心の一言…えーと、えーと。
「──セブルス先生の愛人ですっ!!」
「…それが最後の言葉でいいのかね?──アバダ──」
「冗談です!ただの世界一の美貌を持つ世界最強の魔法使いなだけです!」
すぐに撤回する。
おいおいおい、疑わしきは罰せずじゃよ、セブルス。──じゃねえの?
普通にアバダろうとしてなかった?そんなに俺って即死させないといけないくらい要注意人物!?人に死の呪文使ったらアズカバンじゃないのか?ダンブルドアだけ特例で許されたりしてる?ただの脅しのつもりにしては笑えないんだけど。
せ、せめてクルーシオかインペリオにしてくれ…防ぐから!
「何の目的でここに来た?」
「ええ…目的って、俺に入学許可証出したのはそっちでしょ…」
「……何か細工──」
「出来るわけないでしょう!俺はただ学生生活満喫したいだけですって!ちょっと…ほら、最強で、特別なんですよ俺って!」
「……」
「俺は闇の帝王になる気なんて全く!これっぽっちも無いです!平穏に生きたいだけですって!」
どれだけ必死に訴えても、ダンブルドアは無言だった。
いやー。え、でも。普通に考えてこの人も割と規格外の魔法使えるんだよな?自分だけが特別だと思ってんのか?──俺が幼過ぎるから?
俺がマグルの孤児院で暮らしているからか?…魔法の事知らないのに、使えすぎるから…それでここまで警戒してるのか?
トム・リドルより危険人物とか思われてる?
「ダンブルドア校長。本当に俺はただ平穏に暮らしたいだけです」
「……わしの目が光っておる間は、良からぬ企みは全て把握されると…思っておくがよい」
「──はいはい。わかりましたよ!どうぞ自由に俺を見定めて下さい!」
何を言っても警戒心を緩めなさそうなので、諦めて肩をすくめた。
まぁまだホグワーツ1日目だし、あと7年ある間に俺のことをある程度は信頼するだろう。だって悪いことする気無いしな!
やっぱ、トム・リドルの再来とか…思われてるのかなぁ。…俺ほど愛を知ってる人はいないぜ?童貞だけど。
「質問はもう終わりですか?それともまだあります?」
「おお、まだ有るとも。さあ中に入りなさい」
ようやくダンブルドアは杖先を俺から外してポケットの中に杖をしまった。
校長室に入るように言われてるけど、入りたいような、入りたく無いような。ファンとしては入りたい──けどなぁ、帰りたいなぁ。
──前言撤回。
「す、す、すげぇーー!!」
映画でみたままの校長室だ。
半円状の作りで、壁の高い位置には歴代の校長達の肖像画がかかっている。どの校長もぐっすりと眠っていてお喋りはしていない。
部屋の中央奥には広い机があり、色々な魔法器具や羊皮紙が山のように積み重なっている。一見すると、割とごちゃごちゃしてる校長室だが、壁に貼ってある棚にはハリポタファンとしては見逃せないものばかりある。
校長室は別格だ!
あっ!これ憂いの篩にいれる記憶の小瓶が入ってる棚だよな?レモンキャンデーの缶もある!ああ!不死鳥フォークスまでいる…!
「ね、ダンブルドア校長!写真撮ってもいい?」
「…まぁ、構わんが…」
「やったー!」
手をくるりと回してマイカメラを出現させ、パシャパシャ撮っていく。
校長室にある、なんか豪華な椅子…こ、これは校長先生しか座れない椅子ではないですか…流石に座るのはダメだよな?
座りたかったけどグッと堪えて豪華な肘掛け椅子の背に腕を乗せてパシャリ。
ついでに大きな机の近くにある止まり木に止まってうとうとしているフォークスともツーショットを撮った。
フラッシュが白く光った瞬間、フォークスは眩しそうに瞬きをし、高く美しい声で嫌そうに鳴いた。
「なぁに?眩しいわぁ…」
「あ、ごめんごめん。写真撮っちゃった…起こした?」
「……別に構わないけれど…私の言葉がわかるなんて、珍しいわねぇ」
「だろうなぁ。俺はあなたと話せて嬉しいけど。…あなたの名前は?俺はノア」
「フォークスよ。──あ、ねぇ、ノア。ダンブルドアに伝えてくれない?…いちごクッキーはもう飽き飽きなの、明日からバナナチップスにしてくださる?って」
「ああ、わかった!」
写真を撮らせてもらったし、簡単な伝言くらいなら伝えよう。
「ダンブルドア先生、フォークスがいちごクッキーはもう飽きたから明日からバナナチップスが良いみたいですよー?」
「フォークスが…?そう言ったのか?」
「はい── 他に何か伝えることはあるか?」
くるりとフォークスの方を見れば、フォークスは少し考えるように首を傾げた後、足元にある水の入った薄いトレイをつんつんと嘴で指した。
「お水、冷たいのじゃなくてぬるめがいいわ。いつもキンキンなのよね」
「お水、冷たいのじゃなくてぬるめが好きらしいです。いっつもキンキンで嫌だって言ってますねぇ」
ダンブルドアは驚愕したまま、ちらりとフォークスを見て「…本当か、フォークス?」と囁く。フォークスは羽を広げ自分に伸びるダンブルドアの腕にふわりと羽ばたき、止まるとクルクルと甘えるように鳴いた。
今のは言葉で聞こえなかったから、本当に甘えてるだけなのだろう。
「…明日は、バナナチップスと、ぬるめの飲み水を用意しようぞ」
ダンブルドアの言葉に、フォークスは嬉しそうに指を甘噛みしていた。
なんかめちゃくちゃ平和なシーンだったから思わずシャッターを押して、パシャリ。
ダンブルドアは少し驚いて目を見張ったけど、何も言わなかった。
…おお?さっきの俺に対する刺々しい雰囲気が何故かマシになってる。
まだ目は何かを探るように俺を見ているけど──悩んでるような、そんな目だろう。…フォークスが、俺を警戒してない事に、もしかしたら関係あるのかも。
雰囲気が少し丸くなったのなら、今ならツーショット撮ってくれるかな?
「ダンブルドア先生!俺とも写真、撮りませんか?」
「…ふむ、まぁ…──いいじゃろう」
「やったー!俺、色んな人と写真撮るのが目標なんです。──ほら俺には楽しい思い出がないから…」
ついでに、ちょっとそれっぽいことを言って同情を誘ってみる作戦に変更しよう。
孤児で天涯孤独アピってたら、多少は可哀想に思って色々見逃してくれるかもしれないし!
美少年かっこ女の子よりかっことじの儚い笑顔が効かない人間などいない!!
──と思ったが、まだ警戒心増し増しのダンブルドアにはそんなお涙頂戴話が聞くわけがないのか、普通に「そうか」としか言わなかった。
隣に並んで写真を撮れば、満面の笑みの俺と、微妙に微笑んでるように見える…いや、真顔のダンブルドアが並んでいる。後ろにはフォークスが翼を広げていてなかなかに豪華な顔ぶれだ。
うん、真顔のダンブルドアはある意味レアだろう。
「満足かね」
「はい!…あ、俺に質問あるんでしたっけ」
写真を眺めながらふと思い出した。
ダンブルドアは杖を軽く振り、部屋の中央に机と椅子を二脚出した。机の上には紅茶セットが並び、温かな湯気をふわりと浮かせている。
…ここに座れという事かな。写真を撮らせてくれたし、まぁ…疑惑を晴らすためにも、付き合おうかな。
すぐにフカフカした椅子に座れば、ダンブルドアは対面側に座る。
フォークスはひらりと舞い飛び、机の上に止まると白い平皿の上にあったクッキーを美味しそうに啄み始めた。
「さて、ノア。…君は…誰から魔法を学んだのかね?」
「え?──独学です。セブルス先生が来るまでは魔法…というよりも超能力かなーって思ってましたし」
「…フォークスとも会話をしていたようじゃが。…本当にどんな生き物とも話せるのかのう?」
「多分。魔法動物ペットショップに居た動物の言葉はわかりましたね。あー…虫とかは無理でしたけど」
「……そうか」
ダンブルドアは深く考え込み沈黙してしまったので、俺はなんとなく白くて薄いカップを持ち美味しい紅茶を飲みながら校長室を見渡した。
うーん、この微妙に古い物が混ざってる感じの独特の匂い、嫌いじゃないなぁ。
それから幾つかの質問をされ──主に俺の出生に関する事だったが、わからないことも多く素直に知らないと言っておいた──俺はようやく解放され、ハッフルパフ寮があるホグワーツのキッチンの側へ案内された。
キッチンの側には樽が積み上げられており、それを杖先でハッフルパフ・リズムと呼ばれる一定のリズムで間違いなく叩けば樽が開くらしい。
ダンブルドアに教えられたままに樽を叩き、漸く俺はハッフルパフの談話室に足を踏み入れた。