兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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90 原作沿い別ルート

 

 

もうすぐ六月、というある日の朝。

マクゴナガル先生がついにマンドレイクの収穫時期になり今夜石にされた人を蘇生できると伝えた。

石になった人が蘇生されたなら、きっと誰か一人は犯人の顔を見ているだろう。誰がスリザリンの継承者なのかわかり犯人は逮捕されるはず。この暗い一年がようやく終わることに大歓声があがり、久しぶりに皆が笑顔になった。

特にハッフルパフ生とグリフィンドール生の喜びが強く、早く夜になって欲しいとばかりに窓の外をちらちらと見る者もいた。

 

 

数ヶ月ぶりに、ホグワーツが活気に溢れ誰もが笑顔で廊下を歩く。

俺とセドリックは本当なら二時間続きの薬草学の授業があったが、スプラウト先生がマンドレイク収穫のため中止になってしまった。それはまあ仕方がないし、大人しく寮に戻ろうかと、ゆっくりとハッフルパフ寮へ向かった。

今までは暗く落ち込んでるかこそこそしてるか祈ってるかの奴らが、楽しげに笑い合い会話し時々祈りながらそれぞれの授業を受ける教室へ向かう。そんな生徒達を見てセドリックは表情を綻ばせた。

 

 

「ようやく終わるんだね」

「長かったなー」

 

 

セドリックがしみじみと呟き、俺は欠伸をしながら答えた。

 

 

「でも、まだ逮捕されてないから油断しちゃだめだよ。ノアは最後のマグル生まれだし。犯人が自暴自棄になって大変な事をする可能性もあるし」

「確かにな、俺なら口封じで石になった奴を破壊しに行くし」

「え……。……あり得る。そのチャンスは今日しかない!どうしよう……マクゴナガル先生に忠告しにいかないと」

 

 

セドリックが真剣な顔でそう言った時、始業を告げる鐘の音が響き渡った。

授業が始まってしまったのなら、マクゴナガル先生とは話せない。セドリックは眉根を寄せ「仕方ないか……」と心配そうに呟いた。

 

 

「次の休み時間に伝えることにして……。ノア、君が良ければ一緒に医務室に行かないか?犯人が来るかもしれないから、見張りたいんだ」

「んー。オッケー。別に暇だし」

 

 

指で丸を作れば、セドリックはホッとして医務室に向かいかける、しかしすぐに「あ」と呟くとくるりと振り返った。

 

 

「僕、ちょっと部屋に一度戻るよ。ノアは先に向かってて!」

「りょーかい」

 

 

セドリックはそう言いながら俺の「りょーかい」の「りょー」のあたりではもうすでに走り出していて、「かい」を言い終わった頃には曲がり角を曲がって姿が見えなくなっていた。

 

暇つぶしに試験勉強道具でも持ってくるのかな、なんて思いつつ医務室へ向かう。

授業が始まったホグワーツの廊下は人気がなく、継承者にとってはまさに格好の餌食、のような状態になってしまっている。

この時間に授業が無い生徒は俺とセドリック以外にも沢山いるはずだが、彼らは寮か図書館、大広間あたりで時間を潰しているのだろう。

俺のストーカー達もいる気配はないし、と思いながら静かな廊下を歩く。響いているのは俺の足音と、何かを引き摺るような異音。

 

 

『我が主よ……』

 

 

姿は見えないが、俺の左側の壁からバジルの声が聞こえてきた。この壁の奥に太いパイプがあるのだろう。そういえば、もう少し先にトイレあるし。

 

壁に背中をつけて、鞄から教科書を取り出す。本を見ているふりをしながら『どうした?』と聞けば、バジルも俺が足を止めたとわかったのか、動きを止め しゅー と言葉にならない息を吐いた。

 

 

『腹が、減った…』

『よし、餌を探そう』

 

 

店はなさそうだから。と言えばバジルは『アクロマンチュラを出す店があれば嬉しい』とうっとりとした声で言った。

 

 

『あー。なんか森の奥にアクロマンチュラの食べ放題があるらしいぜ?』

『ほ、本当か?いきたい。食い尽くしてやる』

『そうだなぁ。……四年後くらいに行こうか』

 

 

そのくらいにアクロマンチュラのアラゴグは死んでるはずだ。アラゴグが死んだらアクロマンチュラは無法地帯になって人間襲いまくるし、将来ヴォルデモート側につくし。その前に数を減らしていても無問題。むしろいいことしかないだろう。

ハグリッドも、アクロマンチュラが好きだとは言え自然の食物連鎖に口を出すような馬鹿な男ではないはずだ。人間の手により滅ぼされるのは黙ってなさそうだけど。

 

 

『バジル。そろそろ外に出ようか』

『森に行くのか?』

『森でも、どこでもいこう。お前は俺のペットだからな。近々餌を持って会いに行くよ』

 

 

こつん、と壁を叩く。

バジルは嬉しそうに しゅー と鳴いた後、満足したのかずりずりと這いながらお散歩を再開させた。バジルが這う音が少しずつ遠ざかっていき、ついに消えた。

 

バジリスクは危険だけど、あり得る未来を考えると生存させたい。そうすれば数年後のホグワーツの戦いで戦力となり騎士団側がかなり楽になる。アクロマンチュラはバジリスクを恐れるからホグワーツに来なそうだし。バジリスクの目を見ただけで敵を無力化できるし。何より分霊箱破壊することが可能だし。めんどくさいから全部バジリスクに噛んでもらいたい。

 

まーハグリッドあたりを味方につけたら「あいつは悪くねぇ!本能だ!」ってバジリスクを庇ってくれるだろう。寝床と食事くらいは提供してくれるかもしれない。

 

そう考えながら医務室に向かっていると、ぱたぱたと走り寄る音が聞こえてセドリックが現れた。

かなり急いだのか額には薄ら汗が滲んでるし、頬も赤い。何か持ってきたのか、と思ったがさっきと同じカバン一つしか持っていなかった。

 

 

「はあっ!はあー……お待たせ……」

「んな爆走しなくても……」

「いや、大丈夫だとは思うけど、ノアを一人にさせたことに気づいて……それで……」

 

 

それで、セドリックは大慌てで帰ってきたというわけだ。セドリックはほっとした顔で笑って、何度か深呼吸して息を落ち着かせてから「よし、じゃあ行こうか」と切り出した。

 

 

「で?何を取りに行ってたんだ?」

「これだよ。一応、念のためにね」

 

 

セドリックは歩きながら鞄の口を開く。覗き込んだ俺は納得して「ああ、そういやあったなぁ」と呟く。

確かに後継者がどんな手段で人を石にしているかセドリックは知らない。ならばこうして備えるのも当然と言えるだろう。

 

 

「これなら、石化魔法も防げるかもしれないしね」

「そもそもさ、人が使ってる石化魔法なのかな」

「え?そうでしょ。ダンブルドア先生が解けなかったのは気になるけど、マンドレイク回復薬が解くのはアンチ魔法がない呪いだし……継承者は秘密の部屋を開いて、その中の恐怖を解き放つって言われている……ノアみたいに、今は使われない古代魔法を知ったんじゃない?それを使って石化させているとか」

「ああ……スリザリンの秘密の部屋の報酬で?」

「うん、僕らがそうであったようにね」

 

 

セドリックは鞄をぽん、と叩きながら頷く。

なるほど、セドリックは前に俺とフレッドとジョージと一緒に創設者達の秘密の部屋を攻略して魔導書や珍しい品を報酬として受け取った。だからそういう考えになっているんだな。流石に、まさか千年近くバジリスクが生きているとは思ってないか。

 

 

「こんなことになるって知ってたら、本当に僕たちで部屋を探せばよかったね。今更だけど」

 

 

何ヶ月か前に、フレッドとジョージとふざけて「スリザリンの秘密の部屋を探してみるか?」という話になっていた。その時はここまで深刻な事態になると思っていなかったのだろう、セドリックは悔やむような、そんな声音で苦笑した。

 

 

「──さ、早く行こう、石化した人が壊されたら大変だ」

 

 

セドリックは足早に進み、俺はその後ろをついていった。

医務室の前はしーんとしていて物音ひとつしない。扉は魔法で閉じられていて開かないが、試しにセドリックがノックしてみればバタバタと足音が聞こえた。

カチャリと鍵を開ける音と共に僅かに扉が開き中からマダム・ポンフリーがほんの数センチだけ顔を覗かせた。

 

 

「面会謝絶です」

「あ……もちろんわかっています。その、今日の夜にはマンドレイク回復薬ができると聞いて。継承者が口封じのために現れないかと心配で……僕たち、ここを見張っててもいいですか?」

「……」

 

 

セドリックが成績優秀で誰よりも優しく模範生であるとマダム・ポンフリーも知っているのだろう。セドリックをじっと見たマダム・ポンフリーは後ろにいる俺のこともじっと見つめた。

 

 

「……ご忠告感謝します。いいでしょう。しかし、必ず二人で!一人きりになってはなりませんよ。あなたはともかく……ノア・ゾグラフ。あなたは今一番狙われていると聞きましたから」

 

 

マダム・ポンフリーは早口でそう言うと、俺とセドリックが医務室前で待機する許可を出し、すぐに扉を閉めた。

セドリックはまだ石化した生徒達が無事だとわかると安堵した表情になり、近くの窓枠に腰掛けた。

 

 

「よかった、まだ無事だね。ここで見張って、休憩時間になったら職員室かマクゴナガル先生の研究室に行こう」

「後一時間はあるけど、どーする?」

「勿論、試験勉強だよ」

 

 

セドリックは当然、と言うように鞄の中から教科書を取り出し窓枠に腰掛けたまま読み出した。

 

 

……あれ、もしかしてこのままセドリックも原作に関わるパターン?

 

 

 

一時間が経ち、そろそろ休憩時間のチャイムがなるだろうかと思った時、遠くの方からぱたぱたと走る複数の音が聞こえた。

 

セドリックは教科書から顔を上げ、真剣な顔でポケットに手を伸ばす。ローブの下でバレないように杖を握りいつでも反撃できるようにしながら、静かに立ち上がった。

 

 

「──あれ?ノア、セドリック!」

「どうしてここに君たちが?」

 

 

現れたのはハリーとロンであり、セドリックはまさかの二人に怪訝な顔をした。

二人もまさか俺とセドリックがいるとは思わず、不思議そうにしながら駆け寄る。

 

 

「えっと、ハーマイオニーのお見舞いに来たんだ。もうすぐマンドレイク回復薬ができるから、それを伝えようと思って。──あ、マクゴナガル先生から許可はもらったよ」

「ノアとセドリックこそ、なんでこんなところにいるんだ?」

 

 

ハリーはマクゴナガル先生からもらった許可書をセドリックに見せ、ロンはホグワーツに駆け巡った色々な噂を聞いて少しだけ不安そうに俺とセドリックを見た。

 

 

「僕たちは、口封じのために継承者が石化した人を襲うかもしれないと思ってね、ちょうど授業がなかったから見張りに来たんだ」

「今日の夜には石化が解かれるだろ?継承者からしたら厄介な目撃者がいる可能性があるからな」

「マーリン!まじかよ……ハーマイオニー大丈夫かな?」

 

 

ロンは中にいるハーマイオニーを心配してそわそわと落ち着きなく医務室の扉と俺たちを見た。「今は無事だよ。きっとハーマイオニーに君たちの声が伝わるよ」とセドリックが優しく言い、ロンの背をポンと叩けばロンは小さく頷き、医務室の扉を叩いた。

 

 

「ほら、ハリーも行っておいで」

「うん。……あ、ノアとセドリックもくる?同じハッフルパフ生もいたでしょ?」

「いや、ここで見張りを続けるよ。それにマクゴナガル先生も探さなきゃいけないし」

「わかった。じゃあ──気をつけてね。ノア、絶対一人にならないで」

 

 

ハリーとロンは医務室の扉をノックし、先ほどのように用心深く少しだけ扉を開けたマダム・ポンフリーに見舞いの許可書を見せ医務室の中に入って行った。

 

俺とセドリックは再び静かになった医務室の前で顔を見合わせる。セドリックは掴んでいた杖をポケットの中に入れると、肩に入っていた力を抜いた。

 

 

「まあ、あの二人が継承者なわけないか」

「そろそろ、マクゴナガル先生を探しに行くか?」

「そうだね、もう授業が終わって人通りも増えるだろうし」

 

 

口封じをしたい継承者も、流石に人通りの絶えない場所で目立った行動はしないだろう、と考え俺とセドリックは職員室へ向かった。

授業が終わって間もないからか、廊下では付き添いの教師や移動する生徒が行き交いざわざわとしている。誰もがこそこそとしていないのは、やはり朝のマクゴナガルの報告が効いたのだろう。

 

 

職員室の扉をノックして開けてみたが、教師たちはそれぞれ生徒の引率で手が空いていないのか無人だった。うーん、マクゴナガル先生ここに戻ってこない可能性もあるよなぁ。次も授業受け持っているのなら、少しの休憩時間のためにわざわざ戻ってくるよりも研究室とかで時間潰した方が良さそうだし。

 

セドリックもそう思ったのか、「変身術の教室に行こう」と言い、すぐに職員室から出た。

変身術と職員室はホグワーツ城の一階にあるけど、ちょっと距離あるんだよなぁ。ま、天文学とか占い学の教室よりは近いけど。

 

他の生徒と同じく廊下を移動していると、突如、耳元でベルを煩く鳴らしたような轟音が響き渡った。

 

 

「うわっ!」

「な、なんだ?」

 

 

俺とセドリックだけでなく、殆どの生徒が反射的に身をすくめ耳を押さえる。

その轟音はホグワーツ城の壁や窓、至る所から聞こえていて誰もが足を止め身を屈め、不安気にキョロキョロと見回した。

 

 

「生徒は全員、それぞれの寮にすぐ戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集まりください」

 

 

轟音のベルの後、マクゴナガル先生の声が先ほどのベルよりも大きく響き渡った。声音は硬く緊張を孕んでいて、足を止めていた生徒たちはさっと表情を変え蜘蛛の子を散らすように慌てて走り出す。

 

 

「まさか!」

「また誰か襲われたのかもしれないな」

「でも、ノアの他に──と、とにかく、戻ろう」

 

 

セドリックは不安と緊張が混ざったような顔で俺の手を取り、無理やり引っ張って走り出した。

廊下を忙しなくばたばたと走る生徒たちはみんな暗くて不安そうな顔をしている。さっきまでの明るい雰囲気は一瞬で消え、また少し前のホグワーツに戻ったようだった。

 

 

 

ハッフルパフ生はみんな談話室に集まっていて、俺が現れた途端、あからさまにほっと胸を撫で下ろした奴らがいた。きっとあの放送で最後のマグル生まれの俺が襲われたのだと思ったのだろう。

ノアが無事なのは何よりも喜ばしいけれど、なら何が起こったのか?と、答えのない予想をみんながひそひそと話し合っている中、悲痛な面持ちをしたスプラウト先生が現れた。

 

 

「みなさん、揃っていますね?監督生の人たちは確認しましたか?──ええ、ありがとう。──みなさん、とても、残念で悲しい事が起こりました。生徒が一人、秘密の部屋そのものの中へ連れ去られました」

 

 

息を呑んだような小さな悲鳴が上がった。

ハッフルパフ生は揃っている。マグル生まれのノアもいる。なら誰がそんな残酷な目に遭ったのか、とみんなが沈黙しスプラウト先生の次の言葉を恐々と待った。

スプラウト先生は、この先の言葉を伝えるのがとても辛い、というように険しい表情で口先を怒りと悲しみで震わせながら開いた。

 

 

「スリザリンの継承者が、最初に残された文字のすぐ下に『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』と書き残しました」

「だ──誰ですか?それは……」

 

 

思わず、といった様子で一人が声を上げる。

スプラウト先生はしばらく沈黙し、その名を告げるべきかどうか悩んでいたが、その連れ去られた生徒の最後の目撃情報を得るために、ややあって口を開いた。

 

 

「グリフィンドール生の、ジニー・ウィーズリーです」

「そんな!あの子は純血なのに!」

「ええ、継承者は、もう見境がないのかもしれません。明日一番のホグワーツ特急で皆が一時帰宅することとなります。再開の目処は……まだわかりません。

誰か、犯人の心当たりがある人はすぐに報告しなさい。それと、ジニー・ウィーズリーを今日の朝食後、見た人は居ませんか?」

 

 

ざわざわと不穏なざわめきが走る。

ジニーは目立つ子ではない、その他の兄弟はなかなかインパクトがあり、目撃情報が多いが彼女を覚えている者は少なく、特に別の寮であるハッフルパフ生の記憶には留まらなかった──だからこそ狙われたのだろう、とスプラウト先生は大きく悲しみに染まったため息をこぼす。

 

 

「みなさん、寮の外に出てはいけません。──今から残っている生徒がいないか見廻りに行きます。くれぐれも、大人しくしていなさい」

 

 

スプラウト先生はそういうと、肩を落として寮を出て行った。

先生が居なくなってすぐひそひそざわざわと生徒たちが話だし、継承者は誰なのか、秘密の部屋はどこにあるのか、など今まで何回も議論されていた話題で盛り上がる。

 

俺は唖然としているセドリックの肩をトントンと叩き、無言で寝室の方を指差した。セドリックも俺の意図を汲み、黙って寝室へと上がっていった。

 

 

寝室へ入り、セドリックはそのままベッドに腰掛ける。俺も自分のベッドに座れば、セドリックは辛そうに顔を手で覆って大きくため息を吐いた。

 

 

「……フレッドとジョージ、きっとすっごく辛いよね」

「ああ、そうだろうな」

「酷いよ、本当に……」

 

 

セドリックは自分の事のように苦し気に呟く。

きっと、もうジニーは死んでいると思っているのだろう。まあ、たぶん原作通りならギリギリ生きてるはず。

ハリーとかいつ出発するんだっけ?すぐだったかなぁ。

 

 

「自暴自棄になってなきゃいいけどな」

「……うん、あの二人なら飛び出しかねない。──そうだ、あの隠し部屋に行ってみよう。いろんな本があるから何か使えそうな魔法を探して二人が来るかもしれない!」

 

 

セドリックは「こうしちゃいられない」と言うように立ち上がりながら杖を抜く。

俺はその背中を見るだけですぐに動くことはできなかった。

 

セドリックはめちゃくちゃ優しい。

本来の世界とは違い、フレッドとジョージと友達になったセドリックはきっと今の状況に胸を痛め、どうにかしてあげたいと考えているんだろう。ジニーの安否がわからないから下手な慰めはできないが、支えてやりたいとかは考えているはず。

良いやつなんだよ、本当に。

それはわかってるけど、この後セドリックが来ることになるとややこしい。フレッドとジョージが来るとさらにややこしい!

うーん。どうするかなぁ。

 

 

「ノア?どうしたんだい?早く行こう!」

「おー……」

 

 

セドリックは俺を急かした。

ここで渋るのも変だし、セドリックを止める良い理由も思い浮かばない。

仕方がなくセドリックの隣に並べば、セドリックはすぐに寝室の扉に向かい、試練のクリア報酬のあの隠し部屋の事を考えながら円を描くように杖で撫で、そのまま扉を開けた。

 

その先は、いつもの澄んだ空気が流れる隠し部屋で、煌々とした灯りがついていた。

いつも違うのは、強盗にでも遭ったのかと言いたくなるほど部屋が荒れていた事だろう。

 

 

セドリックは驚いて凍りつくように停止した。

部屋には壁を隠すように本棚があり、何百冊という本がきっちりと収められていたが、今は机や床やソファに乱雑に放置され、今まさに目の前を本がぽーんと飛んでいった。

フレッドとジョージが、必死な形相で本を読み「違う!」「書いてない!」と叫び苛立ちを隠さず本を投げていたのだ。

俺の「良い魔法を探してこの部屋に来るかも」というのは見事に当たっていたが、それにしても荒れに荒れまくっている。

 

 

「フレッド!ジョージ!」

 

 

明らかに様子がおかしい二人に、セドリックが慌てながら駆け寄る。二人は俺とセドリックが来たことも気づいていなかったようで、肩を大きく震わせると勢いよく俺を見た。

 

 

「ノア!」

 

 

二人分の叫びが響く。

フレッドがセドリックを押し退け、ジョージが俺の肩をがしりと掴み強く握る。身長差もあってか、俺を見下ろした二人の表情は逆光になっていて見づらく、それでも目がギラギラと奇妙に輝いているのが見えた。

 

 

 

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