兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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93 VSリドル

 

 

 

「僕がなぜ逃れたのか、どうして君が気にするんだ?ヴォルデモート卿は君よりあとに出てきた人だろう」

 

 

ハリーは化けの皮が剥がれたリドルを警戒しながら言う。

何故、リドルがこうもヴォルデモートと自分の間に何があったのかを聞き出そうとしているのかが理解できなかったのだ。

 

リドルはすっと目を細め、下等なものを見るような視線でハリーを見下ろす。何故こうも察しが悪いのか、こんな程度の知能しかない人間に、死の魔法を跳ね返す力などあるわけがない。

 

 

「ヴォルデモートは、僕の過去であり、現在であり、未来なのだ……ハリー・ポッターよ」

 

 

リドルは静かな声で言いながらポケットからハリーの杖を取り出し、空中に文字を書いた。

 

 

──TOM MARVOLO RIDDLE 

 

 

三つの言葉が淡く光りながら不吉に揺らめく。

リドルがもう一度杖をひと振りすれば、名前の文字がふわりと並びを変えた。

 

 

──I AM LORD VOLDEMORT 

 

 

空に現れた言葉を見た途端、ハリーは周りの空気が一層冷たく重くなり、背中をぞくりとした嫌なものが通って行ったのを感じた。

 

 

「わかったね?この名前はホグワーツ在学中にすでに使っていた。もちろん親しい友人にしか明かしていないが。汚らわしいマグルの父親の姓を、僕がいつまでも使うと思うかい?

母方の血筋にサラザール・スリザリンその人の血が流れているこの僕が?

汚らしい、俗なマグルの名前を、僕が生まれる前に、母が魔女だというだけで捨てたやつの名前を、僕がそのまま使うと思うかい?

ハリー、ノーだ。僕は自分の名前を自分でつけた。ある日必ずや、魔法界のすべてが口にすることを恐れる名前を。その日が来ることを僕は知っていた。僕が世界一偉大な魔法使いになるその日が!」   

 

 

初めは赤子に言い聞かすような囁き声だったが、徐々に熱を帯び最後は怒りと屈辱に任せてリドルは叫ぶ。

ハリーは脳が停止したような気がした。麻痺したような頭でリドルを見つめる。この孤児の少年がやがて大人になり、ハリーの両親を、そして他の多くの魔法使いを殺したのだ。外見にその片鱗はないが、凶悪に歪んだ顔は確かに邪悪そのものだった。

 

しばらくしてハリーはやっと口を開いた。  

 

 

「違うな」

「何が?」

「君は世界一偉大な魔法使いじゃない」

 

 

ハリーの心臓はバクバクと激しく打っていた。しかし、それよりも脳の裏の方からちりちりとした怒りが溢れ、気がつけばハリーの呼吸は酷く乱れていた。

 

 

「君をがっかりさせて気の毒だけど、世界一偉大な魔法使いはアルバス・ダンブルドアだ。みんながそう言っている。君が強大だった時でさえ、ホグワーツを乗っ取ることはおろか、手出しさえできなかった。ダンブルドアは、君が在学中は君のことをお見通しだったし、君がどこに隠れていようと、いまだに君はダンブルドアを恐れている」

 

 

リドルの余裕と蔑みの微笑みが消え、ハリーを睨む。

それでもハリーは止められなかった。杖は奪われている、それでも一度溢れ出した思いと怒りは止められなかった。

 

 

「それに、このホグワーツにはノアがいる!誰よりも気高くて、美しくて、偉大な力を持つノアが!」

 

 

ハリーの言葉に、リドルは長く息を吐き、苛立ちを抑えながら指先で杖を弄んだ。

ダンブルドアの事を言われると腑が煮え繰り返るんじゃないかと思う。しかし、この場でノアの名前を聞くとは思わず──リドルは、ハリーが何も知らないのだとわかると崩れかけていた表情を戻し、再び余裕の顔で微笑んだ。

 

 

「……まあ、確かにノアは僕の次には優秀だろう。だが、ハリー。君はノアが何をしていたか知らないだろう?」

 

 

内緒話をするように低く囁く。

ハリーは何も知らないのだ。

ノアが継承者であるこの僕を受け入れ、賛同していたと言う事も、その心の奥深くに隠されている深い闇も。

これを知っているのが自分だけだと思うと、リドルはハリーの屈辱的な皮肉も笑って流せるような気がした。

みんなの羨望の眼差しを受け、太陽のように輝き愛されているノア。そんなノアの秘密にしていた暗く底のない闇を知っているのは自分だけだ。あの、人を人とも思っていないような眼差しも、微笑んだまま簡単に人を虐げることができる事実も、きっとこの馬鹿なガキは知らないんだろう。

 

 

リドルの想像通り、ハリーは狼狽え目を見開いた。

 

 

そうだ、ノアには一度日記を貸した。

まさか、ジニーのように操った事があるのか?記憶がなくなるのを良いことに、ノアに、ひどい事をしたのか?もしかして、誰かを襲わせた?そんな、ノアだけは巻き込まないと決めたのに──!

 

 

 

「何を──」

「おーっと、俺の噂話は俺がいないところでしてくれないか?」

 

 

突然、ここで聞こえるはずのない声が聞こえた。

ハリーとリドルは驚いて振り返り、幻聴でもなんでもなくノア本人が悠々と歩いてきているのを信じられない思いで見つめる。

 

 

「やあハリー、リドル。……それで、何がどうなってるんだ?」

 

 

ノアは手に杖を持ち、右斜め下あたりに向け意味なく上下しながらハリーの隣に立ち、二人を順に見た。ハリーの少し離れたところには真っ白な顔をして気絶しているジニーがいて、リドルはハリーに杖を向けている。どう見ても友好的な関係ではないだろう。

 

 

 

ノアは何でもない風な表情を取り繕っていたが、実際は心臓がバクバクと鳴っていたし、「セーフ!」と内心で叫び自分のタイミングの良さに運までチート級なのかと感謝したくなったほどだった。

 

扉を開けて入った途端リドルとハリーの話し声が聞こえ、リドルは過去のヴォルデモートである。と告白している場面だとわかり今すぐ駆けつけたいフレッドに「待て」をし静観していたが、途中でリドルが余計なことを言い出しそうな雰囲気を感じ取り慌てて口を挟んだのだ。

もちろんそうとは思えないような、堂々たる態度でいつものような美しく自信ありげな笑みを浮かべているのだが。

 

 

ハリーは何故ここにノアがいるのか、そんな事よりノアに再びリドルの魔の手が伸びるのではないかと本気で思い、焦ってノアを守るようにリドルの前に立ちはだかった。

 

 

「ノア!来ちゃだめだ!あいつが継承者なんだ──トム・リドルは、ヴォルデモートの過去だ!」

「リドルがヴォルデモート?」

「……そうだ、ノア。僕がヴォルデモート卿だ」

「へー……それで、あの子を操って秘密の部屋を開き、今は実体化するために魂を奪ってるってとこか?」

 

 

ノアは、あえてジニーとは呼ばず「あの子」と呼んだ。

この呼び方であれば、リドルはもちろんセドリック達も変に思わないだろう。幸運にもジニーはノアを見るだけで茹蛸のようになってしまうからあまり交流がある方ではなかった。

そして、ハリーとリドルの会話から、ノアが今まで会っていた継承者のジニー改めヴォルは、本当はトム・リドルでありヴォルデモートだとノアは今知ることができた──と自然に装うことが出来た。

 

 

ギリギリの綱渡り。会話の裏の意味の探り合い。ノアは一般人とほとんど同じ知能をフル回転させながらなんとか奇跡的なまでにハリーとリドルを勘違いさせ続けていたのだ。

尤も、知能は普通だとしてもノアの脳にはリドルとハリーの原作においてのデータがあるためそれほど難しい事ではないのだが。

 

リドルは今までのジニー──ヴォルと言うべきか──としての交流と、日記のリドルとしての交流。それらがすぐに結びついた聡明なノアの様子に、満足気に口先で微笑むと意味なく杖をくるりと回した。

 

 

「流石、その通りだよ」

 

 

リドルはノアに向かって手を差し出す。ハリーが「近づくな!」と叫び、ノアを守ろうと必死に手を広げるが、それすら滑稽に見えてリドルはさらに笑みを深めた。

 

 

「ノア、君の力があればここから、全てを僕の思う通りに始める事ができる。特別に、君が望む世界だってつくってあげるよ。……僕と一緒に世界を変えよう」

 

 

リドルはノアの底知れぬ力を認めていた。ノアの言動は馬鹿っぽい事も多いが、それは周囲に闇を悟られないようにするための道化の演技なのだと、リドルは考えていたのだ。

ダンブルドアがホグワーツを去った今、この城で恐れる事は何もない。全ての目撃者を殺し、世界に存在しなおしてここから新たな物語を築いていこう。

もちろん、リドルはノアを信頼しパートナーにしようと思ったわけではないが、世界に存在すれば生きていく上で衣食住は必要だ。ノアは孤児院で暮らしていながら魔法界での仕事も順調と聞いているし、いいパトロンになるだろう。世界に不満を持っているノアはこんな最高の提案を拒絶するわけがないと思っていた。

 

 

「……そうだな」

 

 

ノアはふっと柔らかく笑い、リドルを見つめる。ハリーはノアの反応に困惑し、「ノア?」と掠れた声で囁き、リドルは勝利を確信した。

 

ノアはハリーの肩に手を置く。ハリーはびくりと肩を震わせ、縋るように見つめるが、ノアはハリーの方を見ずにリドルだけを見つめた。その眼差しは敵に向けるものではなく、どこか──そう、慈しむようなそんな柔らかいものだった。

ハリーは自分の喉が急激に渇き、嫌な予感にもう一度「ノア?」と名を呼んだが、いつもすぐ視線を合わせ「何だ?」と愛らしく首を傾げてくれるノアは、少しもハリーの方を見なかった。一瞬でも目を離すのが惜しいというように、ノアはじっとリドルを見ていた。

 

暫く、ノアは沈黙していたし、リドルも答えを急くことはなかったが、ついにノアはゆっくりと口を開いた。

 

 

「……リドル、もし俺が初めて出会ったのがハリーじゃなくて、お前なら。同じ孤児院で暮らしていたのなら……多分俺はリドルと一緒に退廃した世界でダンスを踊っていただろう。確かにこの世界にはいらないものが多すぎる。完璧な世界とは言えない。

それでも、俺はこの世界で大切なものを守るために生きていくと決めたんだ」

 

 

ノアはハリーを見て、微笑む。

それは母が子を安心させるための微笑に似ていて、ハリーは何故か胸がぐっと苦しくなり目の奥が熱くなってきた。

 

 

「……残念だよ、ノア」

「そうだな……ヴォル」

 

 

リドルは苛立ち、形のいい眉根を寄せ口元を歪ませながら吐き捨てる。

ノアもまた、残念そうな、少し悲しそうにすると勢いよくハリーを突き飛ばした。ハリーは不意打ちの衝撃に数歩後退すると、その場に尻餅をつく。その時、何故か右手を透明な何かに強く握られた。

 

 

「な、何──」

 

 

困惑している間に透明なものは腕を強く引き、ハリーは体勢を崩し不恰好に這いずるように何かに引っ張られていく。わけもわからずよろけて躓きながら立ち上がったハリーはきっとこれはノアの魔法なのだと思った。

 

 

ノアはリドルを真正面に見据えたまま視界の端でハリーが離れていくのを確認し、杖をすっと胸元まで上げる。リドルは半歩身を引き、いつ攻撃魔法が来ても対応できるように杖を構えた。

 

 

悪魔の護り(プロテゴ・ディアボリカ)

 

 

ノアは軽い動作で腕を右に振り上げ、そのままダンスを踊るかのように一周ぐるりと回った。ノアの動きに合わせて青い炎が地面から湧き起こり、リドルを逃すまいと取り囲む。

 

 

「セドリック、フレッド!ジニーとハリーを連れて逃げろ!」

 

 

ノアが透明化魔法を消しながら鋭く叫ぶ。

ハリーは思いもよらない名前に目を見開き、自分の腕を強く引っ張っていたのが魔法が解かれ現れたセドリックだと知りついに唖然と口を開いた。

 

フレッドはすでにジニーに駆け寄っていて、ぐったりとして地面に横たわっていた体を掴む。蒼白な顔をしていて、まさか死んでいるのかと胸に耳を当て──微かな鼓動の音に、生きているとわかるとフレッドは泣きそうになりながらジニーを抱き上げ、ポケットの中に入れていた鏡を取り出す。

鏡は一気に広がり姿鏡ほどの大きさになり立ち上がる。フレッドは一瞬迷うようにノアを見たが、ノアの「早く行け」というような表情に後押しされジニーと共に鏡の中に飛び込んだ。

 

すぐにセドリックとハリーが鏡に駆け寄る。リドルは舌打ちをするとノアに魔法を放ち、ノアが防ぐその瞬間にはハリーに向かって魔法を放った。

流れるような攻撃に、ノアは無言魔法で防御しながら「流石ヴォルデモート」と内心で褒め称える。

 

青い炎を突き抜けた赤い閃光はハリーに一直線に突き進んでいたが、咄嗟にセドリックがハリーを抱き込み守った。

抱きすくめられたハリーは「セドリック!」と悲鳴を上げたが、セドリックは「大丈夫、早く鏡へ!」と言いながらハリーを鏡に押し込んだ。

リドルの呪いはセドリックが羽織っているローブの上をつるりと滑り天井へと高く飛んだ。石の破壊音と共に天井から小石や埃がパラパラと降り落ちる。

無傷のセドリックはくるりと振り返ると、杖を構え果敢にもリドルへと向けた。

 

 

「何だ?あのローブは……」

「ヴォルは知らないのか。めちゃくちゃレアなローブなんだぜー?魔法も斬撃もノーダメージ」

 

 

ノアはリドルが知らない物がある事が愉快なのか楽しげに笑いながら杖をくるくると回す。

それに合わせて青い炎の影が揺らめき不吉に伸びるとみるみるうちに起き上がり、魔獣の形をつくった。影の獣たちはリドルに今にも襲いかかりそうなほど牙を剥き唸りながらゆっくりと炎のそばを回る。

 

 

「セドリック、早く行け」

「何を言ってるんだ、ノアも早く!」

 

 

セドリックが鏡の前で焦ったそうに叫ぶ。ここでノアを置き去りにすることは、セドリックには出来なかった。

しかし、ノアが一歩後ろに下がった瞬間リドルは鋭い動作で魔法を放ち、ノアのすぐ後ろの地面がマグマに変化し吹き上がる。ノアはすぐに降り注ぐマグマを真っ赤な花に変えながらリドルから視線を離しセドリックの方を振り向く。

 

花弁が降り注ぎ、ノアの姿が一瞬隠れる。

落ち切る前、セドリックはノアが困った顔で笑っているのを見た。

 

 

「約束、守れなくて悪ぃな」

 

 

ノアは軽く杖を振った。

鏡が一人でに動き、必死な顔をしているセドリックを飲み込む。鏡はパタパタと折り畳まれながら空を飛び、ノアの手の中に収まった。

ノアはポケットに鏡を入れながら、目の前に飛んできた呪いを弾き飛ばす。

 

 

「ノア、きみが敵になるとはね」

「俺はこの世界の最強のメンターでありトリックスターなんだよ。ヴィランだったら2ページで物語が終了しちゃうだろ?だから、ごめんな?」

 

 

ノアはちっとも謝意がこもっていない声で言い、無数の魔獣をリドルへと向けた。

 

 

 

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