兄・子世代ifチート能力を駆使して転生人生謳歌します!   作:八重歯

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98 君に決めた!

 

 

俺は必死に抵抗する黒犬を引きずり無理やり孤児院に連れ帰った。

自身に強化魔法をかけているからか『やめろー!』と喚く──周りから見たらキャインキャイン鳴いているだけに聞こえるだろう──黒犬を問題なく連れ帰れたが、あまりに黒犬が騒ぐから孤児院の職員に見つかってしまった。

それでも、「ペットにしてもいい?お願い」と少し強めに可愛くお願いしてみたら普通に頷いてくれた。

孤児院の職員たちは元々俺に甘いが、ここ最近の俺のお願いはなんでも叶えてくれる。鳥や小動物はともかく、大型犬なんて個人で飼うことは本来なら許されないが、それでも特別に許してくれたのは多分別れが近いからだろう。

 

 

フローリングに爪を立てて拒絶していた黒犬を無理やり自室に押し込めば、黒犬は困ったようにうろうろと部屋の中を動き回る。きっと本気を出せば俺をどうにかすることはできる、でも体洗ってくれたしおやつくれたし……と、一応恩を感じているのか俺に飛びかかったりすることはなかった。

 

 

『俺はノア。ノア・ゾグラフ。俺に飼われるのは嫌か?』

 

 

少し距離を取り、目線を合わせるためにしゃがみ込み話しかける。黒犬は落ち着きなくそわそわとしていたが、困ったように首を振った。

 

 

『嫌じゃ無い。君には恩がある。だが、俺にはやるべき事がある』

『やるべきこと?』

『ホグワーツに行かなければ。……こんなところでぬくぬくと暮らすわけにはいかないんだ』

『ちょうどいいじゃん。俺はペットも連れて行く気だし』

『何?そうか……それなら──まて、何故俺の言葉がわかるんだ?』

 

 

黒犬は言葉がはっきりと伝わっている事に遅れて気付き、驚きつつ信じがたいと俺を見つめる。

俺はニッと笑みを深め、黒犬に手を差し出した。

 

 

『俺のペットになれば、世界最強の魔法使いであり、最高級に美しい俺が飼い主になる。それに俺は動物だろうが魔物だろうが言葉がわかって話すこともできるから、お前の望みをある程度叶えてやれる。さらにモデルで金持ちだから毎食良い肉を用意できる。勿論、ホグワーツだって連れていこう。──さあ、どうする。俺のペットになるか?』

『……』

 

 

黒犬はかなり揺れているようだった。

犬としてはこんな魅力的な条件はない。ただ、人として、人の──それも年下の少年のペットになるという人権の無い行為に、ただの口約束だとしても頷いていいものか悩んでいるんだろう。

それでも、黒犬には唯一渇望している願いがあり、それを遂行するためなら、どんな苦渋も飲み泥水を啜り屈辱にも耐えてみせると決断したようだ。

迷いに迷ったあげく、黒犬は確かな意思をこめた目で俺を見つめ、俺の手に、大きな前足をぽすんと乗せた。

 

 

『よし、お前は今日から俺のペットだ。俺の言うことを聞き、俺に従順であれ──いいな?』

『わかった』

『契約完了だ』

 

 

ぐっと前脚を強く握る。

パッと白い光線が繋いだ手の隙間から一瞬光が溢れたが、黒犬は真夏の太陽の日差しが差し込んだのだろうと気にしなかったようだ。

 

 

『……よろしく、天使様』

『天使?』

『初めて君を見た時、そう思ったんだ』

『ふーん?』

 

 

ま、俺は天使のように美しいのは間違いないな!

 

まだ少ししっとりしている黒犬の体を撫で、顎をくすぐれば黒犬は目を細め俺の好きにさせてくれた。うーん、毛並みパッサパサだし、骨浮いてるし、良いもの食べたら立派な犬になるかな?

 

 

『名前は……何がいいかな』

 

 

シリウスって呼びたいけど、呼んだら怪しまれるか?いやーでもシリウス以外にいい名前思い浮かばないしなぁ。つか、うっかりシリウスって呼んでしまいそうだし。

 

どうしたものか、と考えながらカバンの中から天文学で使う教科書を取り出し、星座一覧を見ながら机に座る。黒犬も気になっているのかそっと近づいて本を見てきた。

ぺらぺらとページをめくり、目についた単語をいくつか紙に書き、黒犬に見せる。

 

 

『プロキオン、ペテルギウス、シリウス。どれがいい?』

『……なんで星ばかりなんだ?』

『お前の毛が夜みたいに真っ黒で、目が夜空に光る星みたいだから。こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス。ついでに三角形の一つのペテルギウス。おすすめはおおいぬ座のシリウスだけど。お前もデカいし』

『……』

 

 

黒犬は数秒沈黙した。

無意識なのか、尻尾が迷うようにゆっくりと動いている。しかし、ついに前脚を上げ──それでも少し迷い彷徨わせた後──ぽすん、と置いた。

そこに書かれていた名前を見て、俺はにっこりと笑い黒犬の頭をなでる。

 

 

『よし、お前の名前はシリウスだ』

『……あぁ』

 

 

黒犬──シリウスは、久しぶりにその名前を呼ばれ嬉しかったのか、ぱたりと尻尾を一度だけ振った。

 

 

『そうと決まれば色々買いに行かないとなー。餌はドッグフード?それとも生肉?チキンオアビーフ?』

『チキン!』

『オーケー。じゃ、行こうぜ』

 

 

二つ返事で『チキン!』と言ったシリウスの頭に手を置き、そのままダイアゴン横丁へのポートキーを持つ。

ぐにゃり、と視界が歪み、シリウスが動揺した気配を感じつつ俺達はそのままダイアゴン横丁の魔法ペットショップの裏へと移動した。

 

 

 

『い、今のは?』

『ポートキー。シリウス初体験か?まあ犬だもんなー』

『ポートキー……なるほど』

 

 

納得し頷くシリウスのリードを持ち、認識阻害サングラスをかけ、裏通りから大通りへ向かう。シリウスは、犬の姿であれこんな明るい日の中堂々と道を闊歩していることが信じられないのか、なるべく目立たないように心がけているのか、静かに影のように俺に付き添って歩いた。

 

俺とシリウスはすぐペットショップに入った。色々な動物の言葉や鳴き声でうるさい店内はまだ午前中だからかそれ程人は多くない。

まっすぐレジへ向かえば、レジの奥にいた魔女は読んでいた雑誌をカウンターの上に置いてにこり、と俺に笑いかけた。──よし、サングラスの効果ちゃんと出てるな。

 

 

「いらっしゃい。何を探しているのかな?」

「この犬、保護犬なんだ。毛並みがイマイチだろ?良いシャンプーとか、なんか薬ある?」

「ああ……なるほどねぇ。確かに痩せ細ってるし毛並みも最悪だ。少し値段はするけど、良いものがあるよ」

 

 

魔女は杖を振り、棚の中から二つの小瓶を引き寄せた。「これはシャンプー、一度でサラサラになるよ。こっちは高カロリー栄養剤、毛並みや肌トラブルも解決さ。それと──自動トリミングハサミはこれ。最近流行りの毛染め粉はこれだよ」と、言いながら追加でカウンターに並べたのは銀色のハサミと、色とりどりのガラス瓶だった。

 

 

「シャンプーと栄養剤とハサミを買おうかな。……毛染め粉ってなんだ?」

 

 

トリミングのハサミはわかるけど、毛染め粉なんて流行ってるんだ、と思いいくつか手に取ってみる。中の粉は銀色だったりメタリックブルーだったり、はたまた虹色だったり灰色だったり。色々な色の物があって化粧品のようだった。

魔女はまってましたとばかりに身を乗り出し、俺が持つ商品を指差しながら売り込みをはじめる。

 

 

「ノア・ゾグラフ。知っているだろう?かの有名なあの子の髪色や目の色と同じ色に染めるのが今一番流行ってるんだよ。この、明るいグレーと、灰青色さ。実物にここまで近い色は、多分この店にしかないと思うよ。

ああ、勿論害はないから安心してね。使い方は簡単、全身に染めたいならお湯で溶いてぶっかければいい。一部だけ染めたいならその箇所だけちょいちょいっとね。目に入れたら目の色も変わるよ。効果は大体一年くらいだね」

「へぇ……じゃあ灰青買っとこうかな」

「はいよ!全部で5ガリオンと6シックルだよ。ふくろう便で購入できるものもあるから、カタログを入れておくね」

「ありがとう」

 

 

ちょうどの金貨をトレイに置けば、魔女は俺が購入したものを全て袋に詰め、ニコニコとした笑顔で渡してくれた。

シリウスは紙袋に鼻を近づけふんふんと匂いを嗅ぎ──マジで犬である──少し怪訝な顔をしつつ俺を見上げた。

 

 

それから表通りにある精肉店でかなりデカい鶏肉を購入した。孤児院に戻ってから食べさせようと思ったが、鶏肉を何度も横目でチラチラ見ているし、涎がダラダラ出てるし、そわそわ落ち着きのないシリウスがなんともかわいそうに思えてきて、店のすぐそばの路地に入り、魔法で焼いてあげた。

味付けなんて何もないただの焼き鳥になってしまったが、よほど空腹だったのかシリウスは前脚で器用に押さえ、骨ごとバキバキ言いながら食べていた。……骨も食べるのか、人間でやったら歯折れそう。

 

 

 

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