ガンバライダーロード外伝〜消えた幻想と学園のお話   作:覇王ライダー

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第5話

迷いの竹林

この竹林は整備もされておらず道もあちらこちらに分かれているため帰れるものが少ない、なんて噂話からこんな名前が付いたという。実際のところ帰っていないものが何人いるかなど知る由もないが

チヒロはショッカーの戦闘員を殴り倒して残りの一人の首を掴む。彼の周囲、そして彼の服は血で滲んでいて白目を向いた戦闘員たちが倒れている。満月だったこともありその血は鮮明に戦闘員とチヒロの目に映る。戦闘員は恐怖心からかその手を引き離そうとするが彼の力は強く簡単に振り解けない。首が締まっていって今にも息がなくなって死んでしまいそうだ。助けを乞おうとしたその時少年は戦闘員に口を開く

「お前たちのアジトはどこだ?教えろ」

戦闘員は震えながら口を開こうとしたがふと思い留まる。こんなところで言ってしまってはどうなるだろうか?大首領様に処分されるのは自分の方だ。戦闘員は震えながら口を再度開く

「教える・・・もんか」

そうか。と少年は戦闘員を蹴飛ばして竹に叩きつける。その衝撃で口から血を吐いて倒れ込む。朦朧とする意識の中最後に見たのが自分の顔にむけて飛んでくる拳ひとつだった

チヒロは戦闘員の顔を蹴飛ばして通信を開く。オペレーターは冷静に状況を伝え、通信が途切れた。終わったかと落ち着いたのか少年はふとため息をついて空を見上げてしまう。街灯もない竹林を大きな満月と綺麗な星空が光で照らしていて見るものを魅了するようだ。少しぼーっとしていたところに草の陰から音がする。チヒロがふと振り返るとその奥に走り去る影が見えた。チヒロは何事かとその影を追うが影もまた遠くへと逃げていく。視認するだけでは難しいがその特徴的な角が月明かりに照らされてよく見える。開けたところにでた瞬間遠くに走り去っていく姿だけが見えた。しかしその背中にはどこか見覚えがある、いやきっと間違い無いだろう。疑問に思ったのかふと名を出してしまう

「慧音・・・?」

 

いつもと変わらぬ朝を迎えて少年は眠たそうに木の上から街を見渡す。ここからだと様々な街の現状が見えるのだから警備などにはもってこいの場所である。しかし街を見るたびに昨晩のことが脳をよぎる

「慧音のこと、気にしてるのかい?」

ロードがチヒロに問いかけるとお前もだろ?とチヒロは切り返す。ロードはまあね、とどこかバツの悪そうに答える

「あれが本当に慧音なのかどうか、僕らにはわからないが真意は気になるよ」

何かあるに違いないが自分達もその実態を掴めていない。どこかもどかしさが残る中遠くから声がする。チヒロもおう、と声を返す

「咲夜と鈴仙とはまた珍しい二人だな?霊夢たちはどうした」

咲夜はキリの悪そうにあぁ、と話し始める

「霊夢は先日の神社の一件もあって一人で色々してるみたいなんです。きっと何か思うことがあったのでしょう」

チヒロはそうか、と頷く。博麗神社そのものに影響はなかったものの境内の道が凸凹になったり階段が欠けたりしているのだから彼女もどこか思うことはあるだろうし何より自分がその元凶であるのかもしれない。そう思うとどこか胸の内で痛いものもあるなと考えていると鈴仙は彼の肩をぐっと掴んだ。驚いて鈴仙の方を見ると彼女は表情ひとつ変えず笑顔で肩を揉み始める

「そんなに思い詰めなくても大丈夫ですよ。チヒロさんは皆を守るために必死に戦ってくれてるんですから」

「そうですよ。守ってくれているあなたを咎める人なんて誰もいないし寧ろあなたに感謝する人の方が多いはずですよ」

まさか守る側の自分がこうやって慰められるとは思いもしなかった。どこか困惑しつつ大したことはしてない。とチヒロも笑みを返す

「俺たちの見えていないところでもっと苦しんでいる人たちがいるかもしれないんだ。このくらいでへこたれちゃダメだよな」

そう談笑していると見つけた!と大きな声が聞こえる。その少女の声に三人とも聞き覚えがあった

「お、霊夢じゃないか。さっきお前の話題で盛り上がってたところなんだよ」

「私の話題で!?!?」

走り寄ってきた霊夢はチヒロの言葉に驚愕する。何か変なことを言ってないだろうな?そんな視線を二人に見せるとあさっての方向を向き始める。こいつら何を言った?良からぬこと言ってないか?不安を抱きつつもチヒロへと目を向ける

「あうんを助けてくれたって聞いたからそのお礼がしたかったの!そんでもって探し回ってもどこにもいないからやっと安堵できるってもんよ」

さっき一人で色々してるってのはこのことだったのか。色々合点がいったところで霊夢は咲夜と鈴仙に目を向ける

「ちょっとチヒロと二人で話がしたいから先に行っててくれない?」

いつになく真剣な表情に少し困惑しながら頷き二人は歩き去っていった。ふう、と一息つくとチヒロの横に座り込む。相当探していたのかその座り方から疲れが見えた。気にかけようとしたチヒロに霊夢は話しかける

「私ね、見たの」

「見たって・・・何を?」

霊夢は話し始める。彼がウェザードーパントと戦っていたあの日のことを、そして彼が身を挺して守ってくれたことを。その話を聞いてチヒロはへぇ、とぶっきらぼうに答える

「俺が化け物を振り切ったあとにそんなことがあったのか」

霊夢は息を再び整えてチヒロへと近寄り押し倒す、急に押し倒されたものだからチヒロもえぇ、と困惑するが霊夢の真剣な表情が見えた時彼の目も心なしか真剣に彼女を見つめた

「私はあなたがあの赤い戦士だと思ってる。教えてくれって言っても教えてくれないかもしれない。でも私は真実が知りたい!私の気持ちに嘘はないの!」

少女の気持ちにどう応えるべきか、正体を明かせば彼女を危険に晒すことと同義なのだ。何かいい手立ては・・・、そう考えている時だった

「お二人とも助けてください〜〜〜〜!!!!」

そう走ってきたのは妖夢だ。二人が彼女を見ると後ろから何人もの戦闘員に追われているではないか。チヒロはゆっくり霊夢を押し返して立ち上がらせると戦闘員たちの方へ走っていく。戦闘員を薙ぎ払いながら二人に目を向ける。霊夢は妖夢を連れて急いで走り出した。妖夢は霊夢に問いかける

「チヒロさんの心配しなくてもいいんですか!?大丈夫なんですか!?」

霊夢は大丈夫、と小さな声で呟く。彼が本当に"そう"であるなら

 

霊夢たちを逃したチヒロはショッカーの戦闘員を殴り飛ばしてそのまま川へと突き落とす。見ただけでもおそらく数十体の戦闘員、流石に一人で相手するには手間取りそうだ。しかし

「霊夢たちを追わせるわけにはいかねえからな」

パラディオンを召喚して戦闘員たちの剣を捌いていくと同時に振り回してそのまま戦闘員たちを薙ぎ倒す。背中を切られたりはしているが軽傷程度、彼女たちを追わせないには全然立ち上がれるくらいだ。しかし時間を追うごとに傷は多くなり彼の体は傷だらけとなっていた

「諦めたら楽だぜ?」

戦闘員は笑みをこぼしながら彼にそう囁く。笑わせるなとパラディオンに炎を灯して周囲を吹き飛ばす

「信じてくれてる人がいるのにお前らなんかに引導を渡されてたまるかよ」

戦闘員たちが襲い掛かろうとした時、おやおやと女性の声が聞こえる。チヒロと戦闘員たちが振り向くとそこには綺麗な長髪をした紫髪の女性と短髪の金髪の女性、そしてすこし背丈の低い灰がかった黒発の少女が立っていた。金髪の女性は紫髪の女性に話しかける

「聖、どうされますか?明らかに教えを聞くって感じではなさそうですが」

聖と呼ばれた女性はいいえ、と首を横に振る

「星ちゃん、最初から諦めてはならないのです。私たち僧侶は教えを説くために歩み寄るのですから」

「何をごちゃごちゃと話している!!!!」

何人かの戦闘員が聖に襲いかかるが彼女は戦闘員の腕を掴み綺麗に投げ飛ばした。もう一人の女性も持っていた杖で戦闘員の攻撃を防ぎそのままいなしてみせた。その隙だとチヒロはパラディオンで戦闘員を薙ぎ払い聖たちへ近づく

「大丈夫か?」

それはこちらのセリフだろ、と少女が傷を見て呆れる。聖は笑顔でチヒロに頷く

「私の名前は聖白蓮、命蓮寺という場所で修行をする僧侶です」

これは自己紹介する流れかと女性と少女は目を合わせてチヒロに目を向ける

「私は寅丸星、聖と共に命蓮寺で教えを説くものです」

「んで私はナズーリン、二人のサポート役ってところだ」

「俺はチヒロ、聖たちは離れてな。あまりにも危険だ」

そうでしょうか?と聖は襲いかかってきた戦闘員をいなし投げ飛ばしながら彼に問いかける。ナズーリンはチヒロへと寄り添いその背を守ってみせた

「傷だらけのアンタ一人に戦わせる方がよっぽど危険だよ。一応鍛えてるから気にしなさんな?」

寅丸はその錫杖を振り回して次々に戦闘員を倒していく。しかしどこまでも湧いてくる敵に四人の考えもどこか同じ方向へと向いていく

「これは一気に殲滅した方が良さそうだな」

「それが出来れば、の話ですが」

寅丸とチヒロは背を合わせてそうコソコソと話す。一つだけ方法がある、とチヒロは呟き戦闘員の脳天を殴る。その考えに乗ったと聖、ナズーリン、寅丸はチヒロへと近づく。チヒロはサクラハリケーンとローズアタッカーを呼び出してサクラハリケーンにまたがる。聖にチヒロは問いかける

「アンタ、乗り物は動かせるか?」

えぇ、と聖もローズアタッカーに乗り込みナズーリンと寅丸を背に乗せて二人は一気に走り出す。どんどん加速して戦闘員を轢きながら前に進む。出口が見えたところで二人はブレーキをかけてそのまま四人とも降りる

「あとは任せたぞ?」

チヒロは任せとけ。と光の槍を空中に召喚して地面へと突き落とす

"石化の槍 ミストルティン"

たちまち戦闘員たちは石となり粉々に砕け散る。跡形もなく消し去ったあとには小さな石の屑だけが転がっていた

「助かったよ、聖、寅丸、ナズーリン」

いえいえ、と三人はその場をあとにする。寅丸は少し離れたところで聖に耳打ちする

「あの少年、もしかして」

「ええ、"かもしれませんね"」

耳打ちの内容まではナズーリンに届かず二人の耳打ちを不思議そうに眺めていた

 

走って逃げてきた妖夢と霊夢はいつしか先に歩いていた咲夜たちに追いつくまで逃げていてすごいスピードで走ってくる二人に何事かと問いかける

「鈴仙・・・チヒロさんが・・・チヒロさんがぁ!!」

泣きながらしがみつく妖夢を見て二人はさらに混乱する。霊夢が先ほどの状況を伝えると咲夜たちも不安そうに見つめ合う。大丈夫だとは思うが万が一のことがあった時彼は・・・。霊夢は二人を見て大丈夫よ。と肩を叩く

「だって私も助けられたしあうんも助けてもらったのよ?そんなちょっとやそっとでやられる人じゃないわよ」

彼女は彼の正体を知らない。だがどこか自分達以上に確信しているかのように彼を信頼している。そんな霊夢の姿を見ると二人も頷き鈴仙は妖夢をぐっと抱きしめる

「大丈夫よ。チヒロさんはきっとこんなことで負けたりしない。絶対に」

人里を抜けて学校までたどり着くと鈴仙は異変に気付いて霊夢たちを引き止めようとする。しかし時すでに遅く校門に入った瞬間だった

「霊夢・・・?」

校門に入った瞬間倒れる少女たち、その姿はまるで生気を奪われて魂のない抜け殻のようだ。鈴仙はすぐさま逃げるように来た道へと走り出す。誰かにこのことを伝えないと・・・。しかしその道に立つ者に阻まれてしまう

「いけないなぁ、この"アリエス"の脚本に従わないなんて」

少女の恐怖はこだまして救われぬまま消え去った

 

その夜のことだ。チヒロたちは再び迷いの森へと向かっていた。昨日の角の付いた影を探すためだ。同じところへとまた向かい周囲を見渡す。昨日よりも満月は心なしか明るくて当たりも見渡しやすいように感じる。本当に慧音だったのか、それとも別の何かなのか確かめなければならない。いやもっとやるべきことがあるのかもしれないがこの衝動を抑えずにはいられないのだ。ロードはチヒロへと問いかける

「もし慧音だったとして・・・、君はどうするんだい?」

彼女が逃げた理由がどうであれ真意を知りたい。彼の思う先はそれだけだ。どうするもこうするもない

「お節介かも知れねえけど俺が何かできるなら彼女のために何かする。それだけだ」

そっか、とロードは静かに辺りを見渡す。そんな時だ、遠くから誰かが歩いてくる姿が見える。臨戦体制を取るチヒロに対して姿の主は手を上げて無抵抗を示した

「ああ、そんなに警戒しないでくれ。私はここの自警団を務めてる"藤原妹紅"。パトロールしてたらあんたらを見つけてね」

そうなれば部外者で怪しいのはこちらの方だったか。すまないとチヒロは拳を下ろして妹紅へと問いかける

「俺たちも少し探し物をしていただけで怪しい者じゃない。信じてもらえるかはわからないが」

妹紅は首を横に振って信じるよ。と一言添えて同じく辺りを見渡す。まるで心を読んでいるかのようにチヒロたちへと問いかける

「慧音のことだろう?」

「!?」

驚きを隠せないチヒロたちを見て妹紅はやっぱりな。と呟く

「わかった。私も慧音とは古い付き合いだし案内するよ。ただし"後悔"するなよ?」

そう言って妹紅はチヒロたちを連れて歩き出す。迷いの竹林の奥地、そこにはポツンと一軒家が一つ立っていた。そこには一人の角の生えた人によっては美しくも凶々しくも見える女性が立っていた。女性は妹紅に対して呟く

「人を連れてきたのか・・・?」

妹紅はあぁ、と呟く。チヒロたちが追いつくと女性は少し声を荒げる

「人を連れてきてはダメだと言っただろう・・・?私はこの姿を見られたくないんだと!」

彼らの前に映る姿は上白沢慧音その人だ。しかしその角と風格は最初に出会ったあの慧音とはどこか別人のようにも見えた

「慧音、わかってくれ。お前の姿は」

「私の姿は醜くて邪悪なんだ!!妹紅にはわからない!!!!」

慧音は声を荒げて妹紅を責め立てる。その声はどこか怯えているような泣いているようなそんな風にもとれる。チヒロは慧音へと近づく

「慧音、俺はアンタが醜いなんて思わない。アンタは」

うるさいと声を荒げてチヒロたちを威嚇する。少し黙ったのちに地面へと伏せて蹲り涙を流し始めた

「生まれた時からそうだった。この満月の夜に私の姿は凶々しい怪物へと変わり皆から忌み嫌われてきた。こんな姿で生まれてくるくらいなら私はただの化け物でよかった。化け物として退治されてしまった方が楽な人生だったんだ。私をこの姿で生んだ神様はきっと私のことがさぞかし嫌いだったんだろう。私も大嫌いだ!早く消えてしまいたい、そんな気持ちで生きてきた私の気持ちなどわかるはずがないんだ!!!!」

自分自身を傷つけるような言葉の数々に怒りを露わにようとした妹紅をチヒロは止める。チヒロは息を整えて服を脱いだ。チヒロは慧音へと呼びかける

「慧音、見ろ」

慧音が頭を上げるとそこには傷だらけの少年が立っていた。慧音はすぐに目を逸らして慌てふためく

「お前どういうつもりなんだ!?殿方の裸を見たって私は何も」

「慧音!!!!」

チヒロは叫んで慧音を呼び戻す。見ろ、と大人しく呟く。恐る恐る慧音が目を開くとそこには傷と共に緑色の膿のようなものが広がっていた。膿は動いていて彼の体を蝕んでいるかのようだ。それを見ていた妹紅も恐ろしさのような感情で言葉を失った

「これは俺が戦いに出た時にある奴に付けられた傷でな、まさしく化け物の力でつけられた傷だ。こんな痛みを抱えるなら死んだ方がマシだって何度も思ったよ」

慧音は否定しようとして彼に近づこうとするがどこか引け目を感じるのかその手をすぐに下ろした。チヒロは更に話を続ける

「慧音の気持ちを完全ではないが俺もわかる。化け物と蔑まれて死に近い痛みを何度も味わってきた。だから受け入れろとは言わない。でも俺は生きてることに後悔はしてない。俺が生きていることで誰かを助けられるなら俺はこの身を捧げる。もし化け物と言われたとしても人である慧音たちを助ける覚悟はある」

慧音は震えながらチヒロへと手を伸ばす。チヒロはその手を握り返してゆっくりと立ち上がらせた

「私も・・・誰かのためになれるのか?」

「アンタがいなけりゃチルノたちも寂しいだろうよ。慧音が人として生き続けるなら人間として生きる道を選んでもいいんじゃないか?」

慧音は小さく頷いて子供のように抱きついた。チヒロはその背を撫でて大丈夫、と繰り返す。妹紅はその姿を見てチヒロへと近づく

「ありがとう、慧音のことも何もかも」

そっと空を見上げると月が落ちて朝を迎えようとしていた。慧音の角は消えていきやがて人の姿へと戻った

「この姿も私だ。すぐには無理かもしれないけど私はその姿も受け入れられるように頑張るよ」

慧音は家の方へと歩いて行って二人に向かって笑いかけた

「さあこんな時間まで起きてしまってたんだ。子供たちのためにまた授業を考えないとな!」

そういうと家の中へと入って行った。俺たちもいくか、と妹紅と歩き始めた時、向こうから走ってきたのは輝夜だ

「おうおうどうしたお姫さま?今いいムードで帰るんだから邪魔を」

「学園が大変なの!!二人とも助けて!!!!」

チヒロと妹紅は目を合わせて輝夜の後をついていく。不穏な空気は消えぬまま迷いの竹林を後にした

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