ちなみに作者は一切バレーの知識はないので、試合風景はありません。そしてごめんなさい、原作も持っていないので、主軸はアニメになります。…給料日来たら買い揃えてやるからなまじで!!
5歳の幼女が重々しい雰囲気を纏いながら、某アニメで有名なゲンドウポーズをするのはたとえ家族間であろうと目を引いた。
5歳上の兄が少し心配そうに私を見つめる。それを雰囲気で感じ取るが、残念なことに私は兄に構ってられるほど今、この時に余裕なんてなかった。
輪廻転生、それを聞いたことがあるだろうか。詳しく知りたい人は現代では神と崇めてもいいウキさんに聞いて欲しい。
まあ、つまるところ死んで生まれ変わった、みたいな意味なんだけれど、そう、突然こんなことを聞き出したのだから察して欲しい。私もその輪廻転生とやらを経験したクチである。
よくある夢小説で登場してくる胡散臭いお爺さんとか、自称神だとのたまう怪しい人は一切登場しなかった。高校3年生の夏、受験勉強の息抜きにと勧められて全巻読破した黒バスに思いを馳せていた時。そう、事件現場は交差点だった。普通にあるような交差点。白線が少し消えかけていて、人がまばらにいるような、在り来りな交差点。そこで私は居眠り運転をしていた軽トラックに轢かれ、命を落とした。全身を打ち付けたような痛みと、どこかの店にトラックが突っ込んで行く音が聞こえた。知らない男の人が轢かれた私に必死に声をかけてくれるがそれは無駄だった。喋り返すことも出来なければ指ひとつすら動かない現状。漠然と死ぬんだな、という事実に身を任せ私は眠った。
そう、眠ったのだ。しかし、いつものように私は目を開け、今日という一日を過ごしている。小さくなった身体、見慣れた家族。唯一住んでいたのが宮城だと言うことを除けば何も違わなかった。
宮城の一角にある古びた一軒家。その横の家も同じぐらい年季が入っているのに、堂々としていていかにもお金持ちの人が住んでますよ感のある空き家。まだ気が動転していた私は母が「そういえば明日ここに越してくる人がいるらしいのよね」をスルーし、平々凡々の取り柄という取り柄もない私に今何が起きているのか、大した脳みそも入ってないくせにずっと考え込んでいた。
結局、何も分からないが答えでその日は普通に過ごした。若干静かな私に両親が怪訝そうな目で見ていたけれど、それは無視させてもらった。そんな翌日。
朝の10時頃だった。兄とどちらが1キロ先のコンビニ行くかという討論をしていた時。ピンポーンと在り来りなチャイムが鳴って、母がパタパタと足音をたてて玄関に向かう。「あら〜、隣に越してきたっていうウワサの!」という母の声は狭い玄関ではよく響いてリビングにいる私たちの場所まで筒抜けだった。気になったらしい兄が「見てみようぜ」と私の手を引く。私も隣の家に住む人が気になったので小さく頷いて、こっそり兄と一緒に盗み見た。
──赤司様がいた。
え、って声を出して。これは見間違いだと目をかいて再度、見た。
──やはり、赤司様がいた。
あ、コレ夢だわ。と頬を引っ張る。普通に痛かった。ん?んんん? やばい、赤司様がいる。うわ、マジか。いや違う、これは完成度たけーなオイのコスプレイヤーだ。一人、私は頷いているとどうやら盗み見てたのがバレたらしい私と兄は母に呼ばれた。
「隣に越してきた赤司さんよ。征十郎くんは
私の今の心情を語るのは3文字で十分だ。orz。ちなみに初めて使った。使い方合ってるのかは知らない。
赤司征十郎。週刊少年ジャンプの読者なら知っているであろう男。黒子のバスケに登場するキャラクターで「頭が高い」「僕に逆らう奴は親でも殺す」などなどキセキの世代と呼ばれる5人の中でも突飛して怖い人物である。逆らったら鋏が飛んでくるのでは…と頭の中で過ぎる。
ちなみに黒子のバスケ…ああ長いから黒バスって呼ぼう。黒バスの中で私の最推しは黄瀬くんである。時々、緑間や紫原に心奪われそうになりながらも黄瀬推しを貫いてきた。だから、正直、ほんとぶっちゃけると赤司様じゃなくて黄瀬くんが良かった。黄瀬くんならまあパーソナルペースが狭いのは欠点であるけれど、遠目から見てる分にはあまり脅威では無い。隣にいたらファンの子のひとりやふたりに刺されそうだけど。
え? 赤司様? めちゃ怖いやん。だって平気で「ズガタカ」「オヤコロ」を言えちゃうんだぞ。殺害予告ですよ。怖い。普通に怖い。
見てる分にはいいんだ。でも、お隣さんだとちょっと違う。ていうか、赤司様が宮城はちょっと解釈違いかな。あの人はどちらかと言うと東京が似合う。京都でも可。自然豊かなひっそりとした場所で神々しい豪邸をバックになんかフランダース?そんな感じの犬がいればなおのこといいと思う。
「せいじゅうろう…? メッチャかっけー名前だな!! よろしく!!」
そう言って手を赤司様に差し伸べれる兄は強心臓の持ち主だと思う。手を差し伸べられたショタ赤司様は少しオドオドと困ったような雰囲気を醸し出していたけれど、美人なお母様に背中を優しく叩かれると、兄の手に赤司様の小さく綺麗な手が重ねられた。あ、握手会…!!
「ほら、莉久も挨拶しなさい」
「イエスママン!!」
「もう!! 恥ずかしいとこ見せないで!!」
母に敬礼して頷くと容赦なく頭を引っぱたかれた。ママン、その行動自体が恥ずかしい行為でございます。だって前見てよ。赤司様が、あの赤司様が驚いたように目をまん丸とさせているんだから。そうだろうね、お隣の清楚系美人お母様は絶対に赤司様の頭を引っぱたかないもん。いや、そもそも赤司様が引っぱたかれることをしないのか。
「赤司様のお隣の家に住んでおります!
「あ、赤司様…?」
「…お願いだから、本当に、ちゃんと自己紹介して…」
「ぶっ!! なんだよ莉久、その喋り方…!!」
再び敬礼する私、赤司様呼びに困惑する赤司様、呆れたようにため息をつく母、私の言動に爆笑する兄。赤司様のお母様は微笑ましそうに私たちを眺めていた。一言で言えばカオス。
ああ、まさか黒バスの世界に入り込むとは人生何があるのか分からないものである。黒バス、黒バスかあ…。正直、JOJOだとかヒロアカだとか、NARUTOにBLEACHなどそこら辺の世界に飛ばされなかっただけマシだと思うけれど。……黒バス、かぁ…。
いや、好きなんだよ? 好きだけどさ、こうやって幼なじみポジは違うんだよ。つか、本当になんで宮城。理解できない。誰か助けて。
安全に見えてそうでも無いこの世界で私は頑張って生きていこうと思います。とりあえずは、純粋な赤司様をレフカメラで保存しよう。それがオタクである私に課せられた命令だ。鼻血必見、高額買取間違いなし。だが、私は心の狭いオタクなので誰にも売ってやらない!!
「俺さ〜、高校は烏野に通いたいなー」
「アンタまだ10歳でしょ。今から高校のこと考えてんの?」
「から、すの…だと!?」
前途多難。おい、ここは黒バスの世界じゃなかったんか…!!(切実)