遥かな永遠を一緒に   作:鐘餅

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異なる可能性の未来
過去からの手紙


 未来の君達へ記す。

 

 初めに言っておくが、もしかしたら訳の分からない内容と思われるかもしれない。信じられない内容だとも。

 だが、時空の歪みを正すためには、五百年後の世界を知る君達だけが頼りなのだ。故に、令和の言葉と知識で、文を綴る。これは悪戯でも、作り話でも、何でもない。過去の私から、未来を生きる君達へのメッセージだ。

 

 ……だけど、まずは本題に入る前に、少し別の話からしよう。

 

 君達は、タイムスリップ、という言葉を知っているだろうか。馴染み深いはずだ。なんせ、犬夜叉やかごめ、とわという存在を目をしているはずだから。もしくはこれを読んでいる君達自身がその誰かである可能性もある。

 ともかく、その時を超えるという現象は、君達にとって深く関わりのあるものだ。

 

 しかし、考えてみたことはないだろうか。

 未来の存在が過去へ行く、そのことによって何か歴史の矛盾を引き起こさないのかと。

 ようはタイムパラッドクスだ。

 

 本来、時間とは不可逆のもの。

 高いところから落としたボールが、逆に吸い寄せられるように重力が逆さになって、上に上がるかい? 

 それと同じ。時間は上から下へ落ちる。

 ボールを放るという過去を土台とし、ボールが落下するという現在が生まれ、ボールが地面にぶつかるという未来が作られる。

 一方通行だ。

 ボールの落下以外に、滝の水でも例えられるかもしれない。一度落ちてしまえば、その水は二度と戻ることは出来ないだろう?

 

 このように、未来から過去へ行くというタイムスリップは、かなりこの世のルールから逸脱した現象だと言える。

 はっきり言って、かごめは戦国時代で異物だったはずだ。彼女が持ち込んだ未来の道具、知識は、少なからず時間の基盤たる過去を破壊する可能性を秘めていたし、その行動一つ一つが、人々の運命を歪め、かごめがいた時代を変質させたかもしれない。

 

 犬夜叉やとわの存在も、未来の世界において、よくない影響を与えていただろう。彼らの場合、かごめとは逆だが、それでも同じくらい理に反している。

 例えるなら、その瞬間、放られるはずだったボールが、急に地面にワープするようなものだ。しかもそれは二つに分裂している。

 ドッペルゲンガーのように、同一存在が二人存在することになる訳だ。

 勿論、彼らが五百年後の未来まで生き残る保証は何処にもない。しかし彼らは半妖を超える強大な力を持ち、高名な大妖怪、犬の大将の血を引いている。五百年後もピンピンしてるだろう。

 

 かごめ達は、時間の矛盾の原因足り得た。

 過去に遡り、自分達の存在へ続く未来を否定する。

 未来に渡り、自分の過去の存在を曖昧にする。

 土台を崩し、世界を崩し、次元を狂わせるには十分のはずだ。

 

 しかし、そうはならなかった。

 何故か。

 実は彼らは、厳密にはタイムスリップをしてなかったんじゃないだろうか。

 

 パラレルワールド。

 並行世界。

 

 その理論によると、世界は選択肢によって無数に分岐するらしい。

 ボールを放るか、放らないか。

 はたまたボールじゃなくて、石を投げるか。

 放るのが一分後かもしれないし、一日後かもしれない。

 その差異によって未来は大幅に変わってくる。ゲームでのルート選択だね。

 

 かごめ達は、その可能性の世界を、横幅飛びみたいに行ったり来たりを繰り返していたのではないか。

 つまり過去A⇄未来Aではなく。

 過去A⇄未来Bだったんじゃないか、ということだ。

 

 そしてAの世界の時間の流れは遅く、Bの世界の流れは早い。

 故に、タイムパラッドクスはなく、時代を改変することなく、正しい歴史が守られたのかもしれない。

 

 無論、真実は誰にも分からない。

 もしかしたら、最初から始まりと終わりが決まっていて、矛盾は起こりようがないのかもしれないし、あくまでも仮説だから、大部分はきっと間違ってるんじゃないかと思う。

 

 ここで重要なことは二つ。

 可能性の分岐によって未来はいくらでも変えられること。

 土台たる過去を崩せば、その先に続く未来は崩れること。

 

 結局、パラレルワールドが正しいとしても、何処も似たような歴史を辿るのだろう。世界ごとに同一人物が存在していようが、その本質は簡単に変わるのだろうか?

 同じような場面で、同じような選択肢を取り続けるに違いない。そうやって何百、何万もの選択肢の累積により、正しい歴史、時代は作られていく。

 

 だが……、その歴史の流れを、果たしてどれだけの者が許容出来るだろうか。

 その過程の中で、海の藻屑のように消えたものは多い。

 現に令和じゃ殆ど、妖怪はいないんだろう?

 妖怪は人間との生存競争に負けた。これ程技術を発展させるとは、誰も……それこそ私だってびっくりしているよ。

 この人間と妖怪の力関係の逆転は、確定した“正しい歴史”。

 

 ……しかしそんな世界にだって、妖怪の血はいくつか残るんだろうね。

 人間との混血――半妖として。

 

 彼らはきっと忘れないだろう。

 弾圧された憎悪。忘れられていく恐怖。

 その長命の命から、彼らは令和の時代においても迫害の当時者でい続ける。

 だからこそ、“その者”はパンドラの箱を開けることを躊躇わない……。

 

 …………。

 

 ……お願いだ。

 どうか。

 どうか、この悲しみの連鎖を断ち切ってくれ。

 それだけが私の望み。

 

 我が名は箱の大妖怪、四方。

 

 太陽が沈んだ後、現れし八芒星の生き残りを、告げる者である……。

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