読者諸君は転生という言葉を信じるだろうか。本来は仏教用語であるが、現在は様々なエンタメ作品において主人公が前世の記憶を持ったまま新しい世界に入ることが多い。
何故、転生についてうだうだと語ったかというと。俺が現代日本から別世界へと転生してしまったのだ。
転生した先はなんと銀河英雄伝説の世界。しかも帝国の名門伯爵家。初代ルドルフから皇帝に対して直言を許された家柄。しかも何がびっくりってロイエンタールとは従兄弟な上に、美形な金髪姉弟とはお隣同士。これはロイエンタールと金髪の坊やのコバンザメになって生涯安泰に暮らそうと思ったら家が権力闘争の煽りを食らって没落。目出たく同盟に亡命と相成りました。せっかく2人とは良好な人間関係を育み、アンネローゼともいい感じだったのが……
まあ、仕方ないと諦めて自由惑星同盟に渡ったら両親が長旅に祟って病死。生きて行くために仕方なく士官学校の戦術研究科に入学。でもそこで未来の魔術師と親友になれたからまあいいだろう。基本的にはヤンとラップとバカをやりながら卒業。現在に至る……
「何を言ってるんだい、シュタイナー」
「うんにゃ、なんでもねえよ」
今は宇宙歴788年のエル・ファシル。俺の隣にいるのは自他共に認める親友であるヤン・ウェンリー。そうですね、これはヤンが有名になるエル・ファシルの脱出戦ですね。
「やれやれ。俺たちもリンチ少将に嫌われたもんだな」
「無駄飯食いに亡命貴族だからね」
「ヤンはまだしも俺のはどうしようもない気がするんだが」
「仕事はできるのに」
「運動神経が切れてる人間と一緒にしないでくれ」
「素手で戦艦の装甲を破れる人外よりかはましだと思うよ」
「俺が人ではないと申したか」
「え? 人間だったのかい?」
なんと失礼な奴だ
「まあ、バカな話しはここまでしてお仕事の話しをしようか……」
「積極的賛成。とりあえず脱出に必要な数だけの輸送艦は調達したぞ。ついでに不満が出そうだった民間人の代表団の連中も説得しといた」
「流石。仕事が早い。どうやって説得したか聞いていいかい?」
「無限リピートって恐くね?」
「聞いた僕が間違ってたよ」
どこまでも失礼な奴だな
「それじゃあ脱出艦隊の編成と部隊指揮をお願いしてもいいかい、シュタイナー少尉?」
「任されましたよ、ヤン中尉」
資料に目を通し始めたヤンを放置してそこから立ち去ろうとすると、遠くから金褐色の髪を持った10歳中頃の少女が近づいてくるのが見えた
「おい、ヤン」
「うん?なんだい?」
「フラグ乙」
「は?」
さ〜て、不思議そうにしているヤンは放置して俺は生き残るためにお仕事をしてくるかな
とりあえず脱出準備はすべて完了して、後は脱出部隊の司令であるヤンのゴーサインを待つだけになった。いつまでも出発の指令を出さないヤンに不安そうに見てくる下士官や民間人は多いが、暢気に話している俺とヤンを見て毒気が抜かれているのか直接文句を言ってくる奴はいない
「以上が俺の730年マフィアに対する考察だが、おまえさんの意見は?」
「そうだね……基本的な意見には賛成かな。でもアッシュビー提督の情報網は同盟と帝国全土に張り巡らされたスパイ網だったって意見は賛成しかねるな」
「そうか? あそこまでの暴走的戦術判断を下せるのはスパイ網があったからでしっくりくるんだが」
「その根拠もあるのかい?」
「もちろんだ」
「ヤン中尉!!」
俺が原作知識を利用してヤンと歴史談義をしていると、下士官が慌てた様子でヤンのところにかけよってくる。
「何かあったかい?」
「り、リンチ少将が我々を置いて脱出をしてしまいました」
その発言に軍人、民間人関係なく大騒ぎになる。ヤンは民間人の代表に詰め寄られている。民間人の相手を俺に全部丸投げしやがったからな。いい気味だ
「しゅ、シュタイナー少尉。どうなさるんですか!?」
ヤンを見ながらニヤニヤしていたら軍人達は俺のところに来ている。暑苦しい野郎はいらん。美人な女性を要求する。心の底からそう思ったが、口に出したら問題だったので別のことを言う
「そんじゃあ、ヤン。リンチ少将がようやく行ってくれたから俺たちも行くか」
「ああ、うん。そうだね」
「は? ど、どういう意味かね」
俺とヤンの会話に民間人の代表者が困惑したように俺たちに尋ねてくる
「帝国軍の目は全部リンチ少将にむかっているということです」
「ま、過程がどうであれ結果的には民間人を逃がすための囮になったんだから充分に美談でしょうよ」
ヤンの発言の後に俺が皮肉を言い放ってやるとあたりが静まりかえった。およ、外したか
「まあ、とにかくは脱出しましょう。まずは無事に安全なところまで行くことです」
ヤンの言葉にその場にいた人々は一斉に動き出す。俺とヤンも指示を出すために働き始めるのだった。
ハイネセンまで辿り着くと、歓声が出迎えてくれた。艦隊指揮や民間人のことをやらなければいけない俺はまだ艦内にいる。先に外に出たヤンは政治家やジャーナリストに囲まれている。
「英雄に仕立て上げられた奴は大変だ」
『ヤンのことか』
「もちろんですよ」
通信をしている相手はアレックス・キャゼルヌ。気のいい先輩だ
『しかし、おまえさんも色々な才能を持っているな。今回のこの脱出名簿の資料を作ったのもそうなんだろ?』
「指揮していた人物がこういうことには使えない人間だったんで」
『それに艦隊指揮もか。参謀、分艦隊司令、後方責任者。どれでもできるな』
「後方責任者がいいですね。死ぬ心配が一番少ない」
『手柄を立てられんぞ?』
「残念ながら命のほうが大事です」
俺の発言にキャゼルヌ先輩は大笑いしてくる。失礼な話しだ
「とりあえずは早く帰って寝たいんですけど、何か資料に不備はあります?」
『いや、特にはないな。そうだ、おまえさんとヤンは3日後空いているか?』
「3日後ですか? ヤンは知りませんが俺は大丈夫ですよ」
『そうか。じゃあ夜は空けておけ。美味い飯を食わせてやる』
「ありがたい。最近は碌に寝てない上に碌に食ってなかったから助かります」
『おまえがそんなんてことはヤンもだな。やれやれ、しっかり栄養補給させてやる』
「ゴチになります」
『よし、じゃあ報告はこれまでだ。ご苦労だった、シュタイナー少尉』
「は!!」
最後にキャゼルヌ先輩に敬礼を返すと通信が切れる。これで俺の今回の任務は無事に終了。さて、家に帰りたいんだけど表にはまだ大変そうにしているヤンの姿がある
「仕方ない。もうちょっと艦内の点検で時間でも潰すか」
俺の安泰のためにヤンには人身御供になってもらおう。原作ではそうだったし、特に問題ないだろう
ヘルベルト・フォン・シュタイナー
現代日本から銀河英雄伝説の世界に転生した主人公。帝国時代から未来の戦乱を見据えて帝国内の領土内を調べており、それをまとめて同盟にも持ってきていた。運動神経お化けで素手で戦艦の壁をぶち破れるが艦隊戦メインの作品なので生かされることはない
ヤン・ウェンリー
原作主人公の戦争チート。ヘルベルトとは親友
作者の他の作品をお読みのことはいつもありがとうございます。初めての方は始めまして。
作者は昔から銀河英雄伝説が大好きで原作は何回も読み、旧アニメもBlu-rayBoxを買っているくらいのクソオタクです。
更新頻度はどの程度かわかりませんが、最低でも月一で更新していけたらと思っています。