銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


012話

「敵艦隊来ます!!」

「隣の第八艦隊と連携して相手を誘い込んだ後に砲撃。射点は一点集中して放て」

 ヤンは絶えず襲いかかってくる帝国艦隊に対する迎撃の指示を出し続ける。

 撤退途中でホーウッド中将は殿軍となって戦死。アル・サレム中将は重傷を負いながらも第七艦隊の残党と第九艦隊を指揮してヤンとウランフ中将に合流した後に昏倒した。ルフェーブル中将も撤退途中に帝国軍に補足され、戦死。アップルトン中将は第三艦隊の残党と第八艦隊を指揮してビュコック中将が構築した拠点まで撤退に成功した。ヤンとウランフも自分達が担当する艦隊に第七艦隊、第九艦隊の残党を指揮してビュコック中将の拠点までの撤退に成功した。

 しかし、まだボロディン中将の第十二艦隊とヤンの自他共に認める親友であるヘルベルト・フォン・シュタイナー中将の第十四艦隊が到着していない。

 ヤンも第十四艦隊の位置を見たときに嫌な予感はしていた。交通の要衝で待機し、どこにでも援軍に駆けつけられる配置。逆に言えば帝国の反撃を喰らえば真っ先に狙われる位置である。

(シュタイナーが……いや、あいつがそう簡単に死ぬわけがない)

 ヤンの頭に一瞬だけ嫌な予感がよぎったが、すぐにそれを否定する。それは友人の死を考えたくないという一種の現実逃避であった。

「帝国軍艦隊に動揺……これは!? 味方艦隊です!! 第十二艦隊旗艦ペルーンを確認!! ボロディン提督の第十二艦隊です!!」

 帝国軍の艦隊の後方からボロディン提督の艦隊が帝国軍の陣形を突っ切ってくる。そしてそれをウランフとビュコックが勢いそのままに収容する。

(第十二艦隊に第十四艦隊におよそ1万5000隻。やれやれ、なんとか悪友も生き残ったようだな……)

 ヤンの胸中には安堵した気分が広がる。ホーウッド中将とルフェーブル中将は戦死、アル・サレム中将は重症。だが、ウランフ中将、ボロディン中将、アップルトン中将、ビュコック中将は健在。そしてコンビを組んだら負けると思えない悪友が戻って来た。

 現にウランフ中将、アップルトン中将、ビュコック中将、そしてヤンの構築した防御陣で部隊を再編するとボロディン中将はすぐさま戦線に復帰し、第十四艦隊もお得意の一撃離脱戦法で帝国軍を苦しめ始めた。

 だが、第十四艦隊の中にあるべき旗艦の表示がない。

 ヤンの口の中から水分がなくなっていくことに気づく。

「……グリーンヒル中尉。第十四艦隊旗艦エクシールはいるかい?」

 ヤンの言葉に驚いた表情を浮かべながらグリーンヒル中尉はコンソールを操作し始める。他の艦隊と協力しながらヤンは帝国の攻撃を弾き返す。だが、それでも相手の士気は高く、こちらは物資不足や総司令官に対する不信感から士気が低い。

 それでもヤンは親友と協力すればこの窮地を脱することはできると信じていた。

「ヤン司令官」

 グリーンヒル中尉はどこかいいづらそうにしながら口を開く。ヤンはそれだけで彼女が何を言うかわかってしまった。

「第十四艦隊の中に旗艦エクシールの姿はありません。副司令官カールセン准将の座乗艦であるディオメデスが中心となって戦っているようです」

 グリーンヒル中尉の言葉にヤンの表情はいつもの温和な表情ではなく、真顔になるのがわかる。

「この状況では詳しい状況を聞くこともできません」

「……うん、そうだろうね」

 ヤンはかろうじてそれだけを絞り出す。あの殺しても死にそうもない親友が死んだのか?

「敵艦隊来ます!!」

「迎撃しながら徐々に後退。これで前線艦隊は全て戻って来た。後は逃げるだけだ」

 そうだ。逃げてしまえば友人の安否も確認できる。

 だが、そこに実に空気が読めない総司令官の指示が安全なイゼルローンから飛んでくる。

『各艦隊はその場で帝国艦隊を迎撃せよ』

 規模の大小はさておきその命令を受領した各艦隊の指揮官達は怒りを覚えた。戦時中に関わらず呑気に昼寝。起きたと思ったら無茶振り。こう言ってはなんだがロボス元帥の知恵の泉はとっくに枯れ果てているとも思える。

 だが、命令が出てしまった以上は戦わざるえない。

 各艦隊との連携によって互角に戦えているが、それでも劣勢に変わりはない。

「第十艦隊旗艦バン・グゥに被弾!!」

「ウランフ中将は!?」

 オペレーターの言葉に思わずヤンは怒鳴り返す。ここでウランフ中将にもいなくなられたら帝国軍に押しつぶされるのは目に見えている。

「第十艦隊旗艦バン・グゥより各艦隊旗艦に通信!! 『旗艦は被弾し、小官も負傷したが戦闘続行は可能である』。以上です!!」

 ヤンは軍帽をとって髪の毛をかき混ぜる。ウランフ中将の気性として、負傷なんて問題視しないで戦闘指揮を取り続けるだろう。

「……どうする……考えろヤン・ウェンリー……」

 ヤンは思わず口に出してしまう。艦隊幹部からの視線を感じるが無視する。親友からは「お前は脳みそだけ働かせろよ。そしたら後は優秀な部下がどうにかしてくれるだろうさ」と笑いながら言われた。

 だからどうにか打開策を考える。思考を止めてしまえば親友の隣に立つ資格すらなくなる。

「これは……ヤン司令官!! 同盟軍の通信のみならず、帝国本土全域に向けての全方位通信が流されています!!」

 グリーンヒル中尉の言葉にヤンは通信を開かせる。

 そして通信を開いた先には親友が立っていた。

『自由惑星同盟軍に攻撃を仕掛ける全帝国軍に告げる。私は自由惑星同盟軍第十四艦隊司令官ヘルベルト・フォン・シュタイナー中将である。今すぐに自由惑星同盟軍に対する攻撃を中止せよ。それが受け入れられない場合は惑星オーディンに対して無差別な砲撃を加えるものである。そしてこれは私が本気であると示すための一撃である』

 シュタイナーの言葉と同時に銀河帝国皇帝が住む新無憂宮の北苑にエクシールの砲撃が加えられる。それによって新無憂宮の北苑には大きな砲撃痕が残った。

『これは脅しである。もしこれでも受け入れられない場合、私はここまで率いて来た百隻の艦と共に新無憂宮のみならず帝都・オーディンに無差別に攻撃を加え、最後は自沈して銀河帝国を崩壊させるつもりである。自由惑星同盟迎撃軍総大将ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥の良識に期待するところである』

 シュタイナーが発言してすぐに帝国軍は軍を後退させた。

 ヤンはその事実に安堵して指揮席に力なく座る。

「グリーンヒル中尉。ディオメデスに通信を繋いでくれるかい?」

「了解しました」

 帝国軍が軍を退いたので、同盟軍も艦列を整えながら後退した。

「第十四艦隊・ディオメデスに通信繋がります」

 グリーンヒル中尉の言葉と同時に通信スクリーンに第十四艦隊副司令官ラルフ・カールセン准将が現れる。敬礼してくるカールセンに対してヤンも敬礼を返しながら口を開く。

「この作戦はシュタイナー中将の発案かい?」

『その通りです。1人でも多くの将兵を生きて同盟に帰してやるために、シュタイナー中将が考えられました』

 カールセン准将の言葉にヤンは目をつぶって考える。シュタイナーは生き残らせることを重視する。そのためだったら悪名を被ることも辞さない覚悟を持っていた。

(私にそこまでの覚悟があるか? 私は民主共和政は残すべきだと考えている。しかし、そのために悪名を被る覚悟があるのか? あるいは大きな犠牲を払ってでも残そうと考えるのか?)

 そんな埒外なことを頭が叩き出すと、ヤンは1番気になっていた点についてカールセン准将に尋ねる。

「カールセン准将。シュタイナー中将は生きて帰ってくる公算があるのかい?」

そこで初めてカールセン准将の表情が歪む。

『シュタイナー中将は賭け、だと』

「……そうか」

 自由惑星同盟と帝国軍は静かに睨み合う体制となった。

 

 

 

 

 帝都オーディン。その新無憂宮上空に俺は旗艦エクシールを浮かべている。先ほどの脅しで新無憂宮だけでなく、近辺にある貴族の屋敷も騒ぎになっているようである。

 俺がクランゲルト子爵領から高速艦100隻で帝都オーディンを襲撃してラインハルトに対して停戦を命令させる。ラインハルトにとっては皇帝の安否など知ったことではないだろうが、ここにはラインハルトのアキレス腱であるアンネローゼがいる。だから軍を止めるという自信はあった。

 そして問題は俺たちがどうやってここから同盟まで帰るかである。

 艦橋には必要最小限の人数しかいない。下手しなくても死ぬ可能性が高い任務なのだ。大半の部下はラップに連れさせてカールセン准将の方に移した。

 幹部で残っているのはチュン・ウー・チェン総参謀長。副官のヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中尉。そして従卒のカリンである。

 俺は当然カリンはラップに連れて行ってもらおうと思ったのだが、本人が頑なに拒否した。

「シュタイナー中将。地上の帝国から通信が来ています」

「繋いでくれ」

 フィッツシモンズ中尉の言葉に返す。さて、ここからが俺が生き残れるかどうか交渉である。

 そして通信スクリーンに現れた顔を見て口笛を吹いた。

「これはこれは……銀河帝国国務尚書にして銀河帝国の大貴族であられるリヒテンラーデ侯爵閣下が出てくださるのは光栄の極み」

 俺はそう言いながら手だけで合図してフィッツシモンズ中尉に指示を出して全方位通信を繋がせる。これで帝国のみならず同盟本土までこの交渉が流される。

『減らず口を……卿はゴールデンバウム王朝において並ぶものない名家であるシュタイナー伯爵家出身であり、あまつさえルドルフ大帝直々に陛下に直言を許された家柄であろう! それだけのご恩をゴールデンバウム王朝に受けながらも何故に陛下に向けて砲を向けるか!!』

「実に貴族的な発言ですな。だが残念ながら私は14歳の時に陛下の娘婿であるブランシュヴァイク、リッテンハイムの両家に両親が貶められ、自由惑星同盟への亡命を余儀なくされました。そして現在の皇帝はそれを止めようともしなかった。私はこれだけの恨みがあります。どうせブランシュヴァイク、リッテンハイムの両家のご当主も新無憂宮が安全だと思って避難しているのでしょう? そう考えるとこのまま新無憂宮を砲撃して瓦礫にしてしまったら私個人の恨みを晴らせると思いませんか?」

 俺の冷徹な表情の中に浮かべた微笑。そこに恐怖を感じたのかリヒテンラーデ侯爵は若干気圧される。

「だがまぁ。私も無抵抗な人々……特に一般人に対して被害が出るのは避けたいことです。ですのでこちらの条件を飲んでくださるのなら我々は大人しく引き上げましょう」

『……その条件とは?』

「同盟軍の迎撃に出ているローエングラム元帥に対して一ヶ月の停戦命令。及びエネルギー、弾薬、食料の提供。そしてそうですな……今回の焦土戦術に対して1番の被害を被った辺境惑星の臣民の人々に対して陛下自らの謝罪でいかがですか?」

『なぁ!?』

 帝国軍としては前者2つは受け入れやすいだろう。しかし、最後の1つは認めるわけにはいかない。

 何せそれは神聖不可侵な皇帝の過ちを受け入れることであるからだ。

 だから国務尚書は受け入れるわけにはいかない。俺も受け入れられるとは思っていない。むしろ交渉の本番はここからだ。ここから俺たちが無事に帰れる算段を立てる必要がある。

『……即答はできん』

「即答してもらわねば困ります。この間にも我々の同胞が苦しんでいるのですから」

 リヒテンラーデだって俺の狙いは気づいているだろう。だから時間をかけて落としどころを探すか、周辺の警備艦隊の来着を待つつもりだろう。だが、それは許さない。

『国務尚書。余が直接交渉しよう』

『な!? いや、しかし……』

『良い。相手はシュタイナー伯爵家の裔だ。余が交渉しても問題はあるまい』

 そう言われるとリヒテンラーデは下がり、かわりの人物が通信スクリーンに現れる。

「な!?」

 思わずチュン准将が声を挙げた。俺も出かけた言葉をなんとか押しとどめる。

 スクリーンに現れたのは第三十六代銀河帝国皇帝・フリードリヒ4世だった。

 俺は内心の動揺を表には出さず、表面上は皮肉な表情を浮かべる。

「流石の皇帝陛下も命に関わる問題となると表に出てきますか」

『そういうわけではない。卿はシュタイナー伯爵家の正当な後継者だ。なれば余自らが交渉することはルドルフ大帝のご意志でもあろう』

(……このタヌキ!)

 内心で思いながらも交渉は緩めない。最初はリヒテンラーデを相手にするつもりだったが、まさかの皇帝の登場だ。

「こちらは先程の条件を取り下げるつもりはありませんが?」

『一週間の停戦命令にエネルギー、弾薬、食料の補給』

「論外ですな」

 俺はそう答えながらも嫌な予感が背筋を通る。そしてフリードリヒ4世も笑いながら言葉を続ける。

『ならば三日間の停戦命令にエネルギー、弾薬、食料の補給。そして余自らが辺境惑星の臣民に対しての釈明』

 嫌な点を突かれてきた。こちらは絶対に受け入れないであろう『皇帝の謝罪』を表に出して、こちらの有利を引き出そうとしたが、向こうはそれを全面に受け入れられるとすごく困る。

「三日だけでは友軍が戦闘中域から逃げ切れない可能性があります。三週間の停戦命令にエネルギー、弾薬、食料の補給。そして辺境惑星臣民に対しての謝罪」

『二週間の停戦命令にエネルギー、弾薬、食料の補給。そして卿の艦隊が味方に合流するまでの身の安全』

 これを受け入れてしまうと護民を掲げる艦隊も身の安全には勝てないと思われてしまう。個人的にはそれでも構わないが、部下の中にはそれを潔しとしない人物も少なからずいる。

「三週間の停戦命令に辺境惑星に対する謝罪」

 ここで俺は補給を切り捨てた。最初から補給はさして重要ではない。あるに越したことはないが、現在持っているものだけでも友軍に合流は可能なのだ。

 だが、フリードリヒ4世はニヤリと口の端を浮かべて笑う。

『卿の狙いは自分達の帰りの安全と友軍の撤退の手助け。そして余が辺境惑星に対する臣民に対しての謝罪が狙いだと思うが……どうかね?』

(このジジィ、気づいてやがる!!)

 俺の狙いはまさしくフリードリヒ4世の言葉の通りだった。

『十日間の停戦命令に辺境臣民に対する謝罪。そして……』

 一度言葉を止めてフリードリヒ4世は楽しそうに口を開く。

『グリューネワルト伯爵夫人を人質として卿に預ける』

「このジジィ……!!」

 確信した。この爺さんは完全に俺の狙いを把握している。グリューネワルト伯爵夫人ことアンネローゼはラインハルトの実姉であり、彼女がいればうちの艦隊は少なくともラインハルトの艦隊からは攻撃されないだろう。

 俺は画面から見えない位置でチュン准将に指示を出して十日で友軍のところまで帰れるかどうかの試算を指示する。

「我々自由惑星同盟は個人の利益を尊重しています。いくら陛下が人質として出すと言っても本人が受諾しなければそれは受け入れられません」

『よかろう。すぐにアンネローゼに確認させよう』

「個人の利益を尊重する、と言いました。そのためにこちらで受け入れた後に本人の本意でなかったとわかった場合は交渉を再度行わせていただきたい」

 そう言っている間にチュン准将からメモが差し出される。

『間に合うかギリギリ。せめて十二日は欲しい』

 こうなるとアンネローゼが断ってくれると助かる。

『シュタイナー中将。アンネローゼは人質になることを受諾した』

 最悪すぎてぶっ倒れそうな状況だ。だが、ここで倒れるわけにはいかないので言葉を続ける。

「わかりました。それでは先程の条件でよろしいでしょう。しかし幸いなことに私はグリューネワルト伯爵夫人がミューゼル嬢だった時の知り合いです。もし送られてきたのは偽物だった場合は強行手段をとらせていただきます」

『よかろう。すぐにアンネローゼを卿の艦に送る』

 皇帝のその言葉と同時に俺は通信を切る。

「いささか不味いですな」

「全くだ……こうなるとグリューネワルト伯爵夫人が偽物であってくれた方が助かるんだが……」

 チュン准将の言葉に俺は帽子を乱雑に床に投げつける。あのジジィ。凡庸を装っているだけで、本質的にすげぇ切れる人間だぞ。

 そこで初めてカリンが心配そうに俺を見ていることに気づく。俺はそれで呼吸を整える。

「カリン。悪いが水を用意してくれるか?」

「はい。すぐにお持ちします」

 紅茶なんて贅沢品はもう残っていない。水だって貴重だ。

 カリンが持ってきてくれた水を一口飲んで気分を落ち着ける。

「帝国のヘリコプターが着艦を求めています」

「許可する。そして乗っているはずの女性を艦橋までの案内を……フィッツシモンズ中尉、頼む」

「了解しました」

 オペレーターの言葉に俺は返しながらフィッツモンズ中尉に命令する。するとフィッツモンズ中尉は座っていた副官席から立ち上がって艦橋から出て行った。

 そしてしばらくしてフィッツモンズ中尉は1人の女性を連れて戻ってきた。金色の長髪に同性すらも見惚れるであろう繊細な容姿。

 俺自身も幼い頃に会ったことのある姿の面影がある。

「久しぶりですね……ヘルベルト」

「なんで来ちゃうかなぁ、アンナ」

 その女性はまさしくアンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人本人だった。アンナは微笑を浮かべているが、俺は苦虫を噛み潰した表情を浮かべるしかない。

 これによって帝国側の要求を受け入れなきゃいけなくなった。

「カリン、グリューネワルト伯爵夫人を部屋にご案内してあげてくれ。幸いなことにラップ中佐が使っていた部屋が空室になっている。そこに入っていただけ。それと、俺の従卒の仕事はいいから、グリューネワルト伯爵夫人の近くにいてあげてくれ。これは見張りと同時に護衛の任務でもある。よろしく頼むぞ」

「はい!!」

 俺の言葉にカリンは敬礼するとアンナを促して艦橋から出て行く。アンナが俺と会話したいと思っているのはわかっているが、正直、こちらはそれどころではない。

「チュン准将。無事に帰れると思いますか?」

「五分五分と言ったところですね」

「そうですよねぇ……」

 若干、ウンザリとしながらも新憂無宮に通信を入れる。最初はリヒテンラーデ侯爵が出たが、すぐにフリードリヒ4世に変わった。

「グリューネワルト伯爵夫人を確認しました。先程の条件でこちらも受け入れます」

『喜ばしいことだ』

 フリードリヒ4世の顔が実にムカつく。なんだったらこのまま艦砲射撃で新無憂宮を消しとばしてやりたいところだが、それをやると自由惑星同盟軍の信用問題に発展するのでできない。

「それでは……十日間の停戦命令に辺境惑星臣民に対する謝罪を忘れないでいただきたい」

『無論だ』

 フリードリヒ4世の返答に腹立ち紛れに中指立てて通信を切ってやろうと思ったら、さらにフリードリヒ4世は爆弾を投下した。

『ヘルベルト・フォン・シュタイナー。卿を正式にシュタイナー伯爵家当主として認める』

「……なに?」

 相手の言った意味がわからない。

「私は自由惑星同盟の軍人です。そして銀河帝国から追い出された人間です。今更帝国の貴族に叙されたからと言って帝国に戻る気は微塵もありませんが」

『理解している。しかし、旧シュタイナー伯爵領の領民達は未だに『シュタイナー伯爵家の臣下』と名乗っている。ならばたまには領民達の願いを叶えてやるのも良かろう。反乱軍にいるとは言えシュタイナー伯爵は存命している。それだけで彼らの希望となろう。卿がいつか帰ってきてくれると信じてな』

 このジジィ。マジでタヌキだ。これだけで俺に対する自由惑星同盟の不信感を煽りやがった。下手したらまた亡命コースになりかねん。だが、ここで反論しても時間の無駄だし、立場を悪化させるだけだろう。だから最後に嫌味を残して行くとする。

「勿体無いですね。あなたが皇帝ではなく、謀略家であったなら稀代の謀略家として歴史に名前を残したでしょうに」

『褒められた、と思っておこう』

 フリードリヒ4世の返答に今度こそ俺は中指を立てて通信を切るのであった。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
オーディン急襲したら貴族になった

フリードリヒ4世
ノリノリでヘルベルトくんと交渉した皇帝陛下

ヤン・ウェンリー
いろいろ考え始める銀河随一の頭脳

帝国領侵攻作戦同盟軍司令官の皆さん
原作よりは生き残れた模様

アンネローゼ・フォン・グリューネワルト
ヘルベルトくんに会えるということで実はうきうきだった姉上




そんな感じでシュタイナーくんの秘策発動! 惑星・オーディンを少数艦隊で急襲!!
双璧のパクリとか言わないでください

そしてなんか有能ムーブするフリードリヒ4世。個人的なイメージなんですがフリードリヒ4世は有能で先が見えすぎるから無気力になったんかなぁ、と思ってます。なので本質的には有能

そしてシュタイナーくんの秘策によって原作より無事な同盟軍司令官の皆さん。でもこの後にラインハルト率いるチート軍団と決戦もあるのでどうなることやら

あと深い意味はないんですけど、作者は石器時代の勇者ことオフレッサー上級大将好きなんですよね
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