銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


013話

 帝国軍の自由惑星同盟迎撃軍の提督の一人であるオスカー・フォン・ロイエンタールは銀河帝国軍ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥の旗艦・ブリュンヒルトの会議に参加していた。

 ロイエンタールの従兄弟にあたるヘルベルト・フォン・シュタイナーの帝都奇襲から三日経っている。シュタイナーと従兄弟と言う関係からロイエンタールはシュタイナーのことをよく知っている。幼少期からシュタイナーには振り回されていたものだ。だからこそシュタイナーの帝都への少数奇襲に納得はしても驚きはなかった。

「しかし、シュタイナーと言う男は大したものだな。皇帝陛下相手にあの弁舌、さらには最後に中指まで立てていたぞ」

 ミッターマイヤーの言葉にロイエンタールは思わず笑みが出る。それに気づいたのはロイエンタールの主君であるラインハルトであった。

「どうかしたか、ロイエンタール」

「失礼いたしました。ミッターマイヤーのシュタイナー評価に思わず」

 ロイエンタールの言葉にラインハルトから笑い声が出る。

「私も幼少期にシュタイナー伯子……いや、もうシュタイナー伯爵か。よく遊んでもらったものだ。だから人となりもそれなりに知っている。どうせ後七日は反乱軍とは睨み合いしかできん。どうだロイエンタール、卿が知る兄上がやらかしたことを教えてはもらえないか?」

 ラインハルトの言葉にロイエンタールは少し考え込む。それに声をかけたのはワーレンだった。

「シュタイナー家はゴールデンバウム王朝開闢以来の名家。そのような問題行動とは無縁そうですが?」

「逆だ、ワーレン提督。やらかしたことが多すぎてどれを言っていいのかわからん」

 ロイエンタールの言葉に全員が絶句する。笑っているのは幼い頃にシュタイナーと共に悪さをしたメックリンガーとラインハルトだ。

 シュタイナー家がゴールデンバウム王朝開闢以来の名家なのは有名は話であり、華美な屋敷を嫌って市井に溶け込んで生活していたのも有名な話であった。

「そうですな……一番やらかした出来事といえばキャンプファイヤーですか」

「キャンプファイヤー? それのどこがやらかしたと言うのだ?」

 ビッテンフェルトの言葉にロイエンタールも記憶を呼び起こしながら答える。

「ただのキャンプファイヤーだったら問題はないさ。問題だったのは燃やしたのが大貴族の屋敷だったことだ」

 ロイエンタールの言葉に再びブリュンヒルトの艦橋が絶句する。笑っているのはラインハルトだけだ。それに参加していたというメックリンガーは眼をそらしている。

「ちょっと待てロイエンタール。シュタイナー伯爵は大貴族の屋敷を燃やしたのか?」

「その通りだ。十年以上前の『グランシュプール子爵邸焼失事件』は覚えているか?」

 ミッターマイヤーの言葉にロイエンタールが軽く答える。

「内務省や憲兵隊が結集しても犯人が見つからずに迷宮入りした事件のことか?」

「それだ。あの馬鹿はそれの指導者……正確に言えば張本人だ」

「待て。シュタイナー伯爵は当時10代前半だろう」

「正確にいえば12歳だ」

「12歳で迷宮入りの事件を起こしたのか!?」

 ミッターマイヤーだけでなく、ローエングラム元帥府の提督達全員から驚愕の声が出る。

「あの馬鹿は悪事を計画させたらどこまでも成功させる条件を整える。準備段階ではどこまでも微細な穴も許さないが、一度始めてしまったらアドリブもできる。それの一番の有名な成功品が『グランシュプール子爵邸焼失事件』だ」

 ロイエンタールはそこまで言って笑っているラインハルトに向き直る。

「閣下。ここで反乱軍と睨み合うだけでは芸がありません。ヘルベルトの逃げ道を塞いではいかがでしょうか?」

「兄上との約束で十日間は戦火を交えられないが?」

「ヘルベルトは被害を防ぐ戦いをします。今回も逃げ道を塞いでおけば無理して帝国軍の前に出てくることはないでしょう。うまくいけば停戦の十日を超えた後に奴を包囲できるかもしれません」

「……なるほど。そして兄上を包囲した後に降伏勧告をするわけか」

「御意。奴の能力は私が保証いたします。性格に難はありますが、それを上回る能力を持っております」

 ロイエンタールの言葉にラインハルトは力強く頷く。そして提督達に警戒を強めるのを指示する。

(さぁ、この窮地をお前はどう逃げる。ヘルベルト)

 内心でそう呟きながらロイエンタールも命令を受領するのであった。

 

 

 

 

 自分の保護者は奇妙な人だ。

 カリンは艦橋でブランケットに包まれながら指揮卓の上に行儀悪く座っている自分の保護者であるヘルベルト・フォン・シュタイナーを寝ぼけ眼で見つめる。

 保護者が自分達の生命線と言っていたアンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人の見張りは保護者の副官であるフィッツシモンズ中尉に変わってもらい、部屋で休むように言われたが保護者が心配で艦橋で休ませてもらっていた。

 銀河帝国を奇襲した百隻の乗組員を交代で休ませているが、指揮官である本人はこの七日間を一度も寝ずに指揮をとり続けた。今も黙って宇宙の航路を睨みつけている。銀河帝国軍が見張っているところには赤いポイントをつけて徹底的にそこを回避している。おそらくは今も百隻を一隻を失うことなく同盟軍に帰る策を必死に考えているのだろう。

 カリンにとって母親は亡き母親だ。だが、父はもう実父ではなく育ててくれているシュタイナーが父親である。母親が亡くなった時に感じた実父への憎しみもシュタイナーのおかげで薄れている。

 シュタイナーは不思議な人だった。実家はゴールデンバウム王朝開闢以来の名家であるシュタイナー伯爵家出身にも関わらず、気質は庶民的だ。なにせカリンと一緒に買い物に出かけると平気で店主と値引き交渉を行ったり、世間話を始めるのだ。

 最初は緊張したカリンだったが、シュタイナーの人柄もあってすぐに馴染むことができた。

 親を知らないところでもう失いたくない。その一心で戦場にも無理についてきた。心から信頼し、尊敬しているからこそ、シュタイナーが帝国に再亡命するようだったらカリンもついていく気持ちだった。

 シュタイナーの指揮する第十四艦隊も居心地が良かった。冗談や皮肉は飛び交うが、そこには確かな信頼関係があった。なにせ指揮官であるシュタイナーが一兵卒までの名前と顔を覚えており、頻繁に声をかけるのだ。その指揮官は戦場では天才的な用兵を見せる戦術家。そんな指揮官に第十四艦隊の兵士達も尊敬と信頼を寄せている。シュタイナーの保護者であるカリンもよく声をかけられたり仕事を手伝ってもらったりしている。

「閣下、β宙域に出していたスパルタニアンが戻りました」

「結果は?」

 チュン准将の言葉にシュタイナーが鋭い視線を向ける。シュタイナーのいつもの温和な雰囲気ではない気配に艦橋も緊張する。自分達が今まさしく薄氷の上を歩いていることを自覚しているからだ。

「哨戒艦隊が五百隻程度いるそうです」

 チュン准将の言葉にシュタイナーは黙って航路図に表示されているβ宙域に赤いポイントをつける。また一つ通行止めの宙域が出来上がったのだ。

「……突破可能な宙域はありませんか?」

 チュン准将の言葉にシュタイナーは黙って考え込む。カリンしか知らないシュタイナーが本当に困った時のクセである親指と中指を擦るクセが出ている。

「………一つだけある」

「……何か問題が?」

「いかにも臭い。細かく見なければ見つけられない細い道だ」

「逆にそれが怪しい、と」

 チュン准将の言葉にシュタイナーは頷く。

「相手の大将はラインハルトだ。そして麾下にオスカーがいる。オスカーの奴は俺のやり口を知っている。だからこそ危険だ」

 シュタイナーの言葉に艦橋に沈黙する。ヘルベルト・フォン・シュタイナーと敵将であるオスカー・フォン・ロイエンタールは従兄弟であると同時に親友と言う話は同盟軍では有名な話であった。

「帝国軍の戦艦が一隻近づいてきます!」

 オペレーターの言葉に驚いたのはシュタイナーとチュン准将の双方であった。

「チュン准将。貴方だったら一隻で百隻に挑みますか?」

「絶対にやりませんね。まず本隊に通信を飛ばして罠を張ります」

「その通りです……なのでこの戦艦の動きは一体……」

 その問答を止めたのはオペレーターであった。

「シュタイナー中将!! 敵艦から通信が入っております!!」

 オペレーターの言葉にシュタイナーとチュンは顔を見合わせる。

「はてさて、鬼が出るやら蛇が出るか」

「ですが出ないわけにはいきませんな」

「その通りです」

 二人の会話を聞きながらカリンも立ち上がって身だしなみを整える。そして崩れていたシュタイナーの制服も整えた。その時に小さく言われたお礼の言葉にカリンは微笑んで返す。

「通信を繋いでくれ」

 シュタイナーの言葉に帝国軍の軍人がメインディスプレイに現れる。見るからに真面目そうで厳格な表情をした若い男性だった。

 男性はシュタイナーを見ると感動したのか涙を流している。

『ヘルベルト伯子……!! よくぞ……よくぞまた帝国に帰ってきてくださいました!!』

「失礼。貴官は小官のことを知っているようだが、私は貴官のことを知らないのだ。お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」

『伯子……いえシュタイナー伯爵ヘルベルト様!! 私です!! ブルーノ・フォン・クナップシュタインです!!』

 名前を聞いてシュタイナーは思い出したのか指揮卓から飛び降りて叫ぶ。

「泣きべそブルーノか!!」

『その通りです!! 閣下に面倒をみていただいたブルーノであります!!』

 ブルーノと呼ばれた男性はシュタイナーに思い出してもらったことが嬉しかったのか、笑いながら泣いている。

『閣下……我が主君シュタイナー伯爵。非才なれど、このブルーノ・フォン・クナップシュタインは閣下を同盟領への安全な道案内をすべく参上致しました』

 クナップシュタインの言葉に艦橋にいる全員が絶句する。この若い艦長は帝国を裏切って同盟の軍人であるシュタイナーを案内すると言っているのだ。

 カリンすらも罠ではないかと疑う。艦橋にいる全員の視線がシュタイナーに集まる。そこにはカリンも見たことがないほどに真剣な表情を浮かべているシュタイナーがいた。

「ブルーノ。自分が言っていることを理解しているか?」

『当然であります。私がしようとしていることは帝国に対する反抗でしょう。しかし、私は帝国軍人である前にシュタイナー伯爵家筆頭家臣であるクナップシュタイン家の人間であります』

 つまり、目の前の青年はシュタイナーが帝国に残っていれば、シュタイナーの側近として働く人物であったらしい。そしてその忠誠心はシュタイナーが同盟に逃れてからも変わらずに持ち続けている。

 その事実にカリンはどこか誇らしくある。この混迷を極める世界において、無辜な忠誠心を向けられる自分の保護者にだ。

「ブルーノ。この場が私だけだったらお前の手助けを喜んで受け入れる。だが、ここには私に従うたくさんの兵士がいる。私とお前の友誼だけで全員の命は賭けられん。去れ。それがお前が帝国で生きるために必要なことだ」

 だが、シュタイナーはこの助力を拒んだ。シュタイナー個人の知り合いというだけで信用するわけにはいかないし、クナップシュタインのためにはならないということだ。

 その言葉にクナップシュタインに笑顔がでる。

『我が主君よ。それは無用な心配です。私がシュタイナー伯爵家に縁なる者というだけで、私が生きれる場所は惑星・エンフィールドだけであります。なればこそ、せめてクナップシュタイン家の人間としての勤めを果たさせてくだされ』

 シュタイナーが口を開く前に参謀長であるチュンが口を開く。

「閣下、彼の提案を受け入れましょう。もとより我々はもう道がないのです。ここは閣下に忠誠を誓う彼に賭けてみたらいかがでしょう」

 チュンの言葉にシュタイナーは一度腕を組んで眼を瞑る。カリンはその時に保護者が親指と中指を擦っているのを見逃さなかった。

「ブルーノ。私達の命、卿に預ける」

『ブルーノ・フォン・クナップシュタイン。命に代えましてもヘルベルト様達を同盟領にお返し致します』

 

 

 

 

 停戦が切れるまで後1時間。ヤンは第十三艦隊旗艦ヒューベリオンの指揮卓の上で静かに待っている。

 まだ己の親友は合流を果たしていない。ロボス元帥からはシュタイナーを見捨ててアムリッツァまで退却する命令が出ていたが、前線指揮官達はこれを拒絶し、親友が帰るのを待っている。なにせ親友のおかげで多くの将兵の命が助かったのだ。それを見捨てて逃げることなどできはしない。それはこの遠征に参加している同盟将兵全ての意思であった。

「……エクシールから通信は?」

「ありません」

 ヤンの言葉に副官のグリーンヒルが悲痛な表情で答えてくる。

(拿捕されたということはありえない。拿捕されたなら帝国はそれを喧伝するはずだ。なにせ帝都襲撃という屈辱を味わっている。その犯人を捕まえたなら派手に喧伝した方が民衆に対する圧力になる。しかし、それがまだない。そうなるとシュタイナーはまだ逃げているということだ。だけど、あの入念に準備をするシュタイナーが逃げきれない日数で交渉を終えるとも考えづらい)

 ヤンは考えこみながら帽子を取る。

(そうなるとシュタイナーの思考を読まれた……? 考えられる。敵にはシュタイナーの幼少期からの付き合いがあるロイエンタール提督、それにローエングラム伯がいる。二人が徹底的にシュタイナーの逃走経路を絞り、ここに来るのを遅らせることは充分に考えられる)

「帝国軍! 前進を開始しました!!」

「ヤン提督。約束の期限まで残り15分です」

 オペレーターと総参謀長であるムライの言葉にヤンは黙って頷く。幸いなことにこの十日の間に補給と休息、それに布陣を済ませることはできた。

 ゆっくりと近づいてくる帝国軍。すでに数では同程度。指揮官の質では帝国軍が少し上といったところだろう。

 だが、同盟軍もビュコックという老提督にウランフとボロディンという名提督が残っている。少なくともシュタイナーが帰ってくるまでは耐えられるというのがヤンの考えであった。

「停戦期限……過ぎました!!」

「帝国軍、進軍速度をあげています!!」

「全艦、迎撃準備!! オーディンにプチ旅行にいった仲間が帰ってくるまで耐えるぞ!!」

 副参謀のパトリチェフの言葉にヒューベリオンだけでなく、他の艦からも了承の返事が帰ってくる。

 そして後1光分近づけば同盟と帝国の戦火が再び交えることになると思ったとき、全方位通信が流れる。

『迎撃軍総大将 ラインハルト・フォン・ローエングラムに告げる。即刻に軍を退け、さもなければ私がこのブラスターの引き金を引かねばならない』

 そこにはアンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人にブラスターを突きつける、幽鬼のような姿になっている親友がいた。

(シュタイナー。君は悪名を被ってでも味方に被害が出るのを嫌がるのだね)

 

 

 

 

 

 クナップシュタインの案内はまさしく安全で最速なルートだった。なにせ自分の警戒網をそのまま利用して俺達を通したのだ。

 クナップシュタインと別れ、俺達は艦隊を急がせたが、停戦期限の間に帰還することは叶わなかった。なにせ少しづつ逃げ道を塞ぐように帝国軍がいたので、それを回避するので手一杯だったのだ。

 だからこそ最終手段を使わざるをえなくなった。

 俺はブラスターをアンネローゼに突きつけながら通信をつないでいる。これは俺の死刑執行書にサインしたようなものだ。あの超絶シスコンであるラインハルトが姉を殺そうとした俺を許すわけがない。つまり原作通りに進んでも、同盟が敗北した時点で俺の死刑が決定されるのだ。

 そう考えたら逆に開き直った。こうなったらどんな悪名を被ろうとも部下達は同盟領に返す。それが俺がこの世界でやるべきことだ。

「もう一度告げる。即刻に軍を退け。私のブラスターの引き金がまだ重いうちにだ」

 俺はできるだけ冷たく告げる。これはどれだけ冷酷に見せれるかだ。幸いなことに演技なら慣れている。ここでアンナが泣いてくれたら信憑性が増すんだが、彼女は全てを受け入れているかのように泰然としている。本当にこっちの思い通りにならないお嬢さんだ。

「帝国軍、軍を退きます!!」

 フィッツシモンズ中尉の静かな歓声に内心で俺は安堵のため息を吐く。それだったらもう一芝居だ。

「そして賢明なローエングラム伯ならば次の私の要求もわかるな?」

 俺の言葉に少ししてから帝国軍が道を開いて、俺が同盟軍に戻れる道を作り出す。チュン准将が指示を出してその中央を俺達百隻が通る。

 誰もが緊張している。なにせこっちは百隻。人質を見捨てられたら俺達は宇宙の塵の仲間入りだ。

 だから無事に帝国軍を抜けて同盟軍に合流できたとき、歓声が起きた。

 俺は艦橋で喜び合う部下達を見渡して安堵のため息をついてから、ブリュンヒルトに通信を繋げる。

 そこには何やら楽しそうなラインハルトが映っていた。

「ローエングラム伯の賢明な判断に敬意を表する」

『なに。私も姉上を見捨てるわけにはいかない。それにそれをやっているのは兄上だからな。それで兄上。姉上はいつ返していただけるのです』

「いますぐにシャトルの準備をさせましょう」

「少しよろしいでしょうか」

 俺とラインハルトの会話を黙って聞いていたアンナが突然会話に入り込んでくる。俺は止めたかったが、ラインハルトがきく態勢になってしまったので、断れる状況ではなくなった。

「ラインハルト、私は同盟に行きます」

「なぁ!?」

 俺は思わず叫んでしまう。なにトチ狂ったことを言っているんだ、この美女は。だが、言われたラインハルトはどこか納得した様子であった。

『兄上と添い遂げるためですか』

「その通りです。そして私はシュタイナーが同盟で置かれている状況を彼の養子と副官から聞きました。私はその負担を少しでも和らげてあげたいのです。せめて家庭という面だけでも……」

 最悪すぎてぶっ倒れそうだ。いや、俺も憎からず思っていたアンナとの結婚は構わない。だがそのために帝国から亡命するのは想定外すぎるぞ。第一、あの極度のシスコンがそれを許すわけがない。さぁ、はっきりとこの箱入りお嬢様に言い聞かせてやれラインハルト。

『わかりました。兄上でしたら私も安心して姉上をお任せできます』

「違うだろ、ライ!? ここは無理矢理にでも連れて帰れよ!?」

『おや、兄上にそのように呼ばれるのは久しぶりですね。ですが姉上が頑固なのは兄上もご承知のはず。その姉上が覚悟を決めていらっしゃるのです。弟としては姉の幸せを願うばかりです』

 心底楽しそうに笑うラインハルト。

『シュタイナー。亡命は本人の意思によるものだよ』

「ヤン!! テメェも楽しそうに乗っかるんじゃねぇぞ!!」

 目の下にクマを作った悪友の言葉に俺は怒鳴り返す。すると艦橋だけでなく、同盟軍からも受け入れ賛成の言葉が上がっている。

 こうまで来ては俺に反対する権利などない。

「……承知した。アンナは俺が預かろう」

『姉上をよろしくお願いいたします、兄上。ご祝儀ではないですが、同盟軍がこの宙域から離脱するのを追撃はいたしません』

「できる義弟を持って俺は幸せだよ!!」

 だが、正直なところ追撃がないのは本当に助かる。

『略奪者としては超一流だな、ヘルベルト。帝都を強襲して皇帝の寵妃を奪うとはな』

「随分と楽しそうじゃねぇか、オスカー?」

『そんなことはないぞ? あの完全犯罪をしまくっていたヘルベルトに女房ができることに俺は感動している。あぁ、結婚式には是非とも呼んでくれ。お前が帝国時代に行っていた悪逆非道を同盟軍に知らせるいい機会だ』

「言ったな? 招待状送ったら絶対に来いよ」

 俺とオスカーはそう言いあった後に中指を立てあって通信を切る。ラインハルトも最後にアンナにお祝いを述べると通信を切るのであった。

「とりあえずチュン准将」

「なんです?」

 どこか楽しげなチュン准将に俺は告げる。

「あとはカールセン准将に任せる。俺はちょっと気絶するわ」

「どうぞ思いっきり気絶してください」

 チュン准将の言葉を最後に俺は意識を飛ばしたのだった。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
皇帝の寵姫を略奪した略奪者の鏡(なお、本人の心境

アンネローゼ・フォン・グリューネワルト
私は! ヘルベルトと! 添い遂げる!(08小隊感

ブルーノ・フォン・クナップシュタイン
シュタイナー伯爵家家臣筆頭。真面目すぎる忠臣

ラインハルト・フォン・ローエングラム
宇宙統一したら姉上も兄上も自分のところに帰ってくるよね!(ナチュラル傲慢

オスカー・フォン・ロイエンタール
どんな時も親友への煽りは忘れない

シュタイナーくんが帝国時代にやらかしたこと
だいたい大問題


そんな感じでシュタイナーくん同盟軍に無事合流!! 命張ってグリューネワルト伯爵婦人に銃つきつけたら嫁になったよ!!
弟の金髪は宇宙統一したら二人共帰ってくるから問題ない、と思っている模様

そしてずっと出したかったシュタイナー伯爵家家臣筆頭(この作品独自設定)のクナップシュタイン。原作の頃からみょうに好きなんですよね。真面目すぎてから回って死んだ印象が自分には逆に好印象

そして悲しいお知らせが一つ。
この回で書き溜めがなくなりました……!!
更新頻度は落としませんが、一話の文量は減る可能性があるのをご理解いただければ幸いです。

追記:シュタイナーくんの名前ミスってましたぁ! 一応直したつもりですが直ってない部分あったら教えてください!! あ、ミスる前の名前はシュタイナーくんの名前が決まってないときの仮名です。なので日本人名

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