銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


014話

 アムリッツァ。俺が目覚めた時にはそこに艦隊が配置されていた。十日以上……下手したら二十日近くを眠らず、何も食べずに過ごしていたので流石の俺も体力が限界だったのだ。

 そして目覚めてからカールセン准将から現在の状況を聞く。

 ホーウッド中将とルフェーブル中将は戦死、アル・サレム中将とウランフ中将が重傷を負って後方へ。残ったのはビュコック中将、ボロディン中将、ヤン、俺の四艦隊だ。アル・サレム中将とウランフ中将、それにホーウッド中将とルフェーブル中将の残存艦隊は各艦隊に振り分けられた。

 俺のところには引き取るのはやめておいた。即座に編成しても俺の艦隊に上手く機能するとは思えない。

 うちの艦隊からは百隻に搭乗していた部下は後方に送った。残ったのは総参謀長のチュン准将、副官のフィッツシモンズ中尉、頑なに俺の側を離れなかったカリンだけだ。

「帝国軍!! 接近してきます!!」

「さぁて、お仕事お仕事……と」

 オペレーターの言葉に俺はエクシールの艦橋の指揮卓で胡座をかいて呟く。

「我々には二個艦隊が向かってきています!!」

「旗艦はわかるか?」

「バルバロッサとトリスタンです!!」

「よりによって赤毛の坊やとオスカーかよ……」

 オペレーターの言葉に俺は帽子を外して天井を仰ぐ。ラインハルトの麾下でも有数の提督だ。買われたと思うべきか、籤運が悪いと思うか。

「カールセン提督に通信を」

「了解です」

 俺の言葉にフィッツシモンズ中尉がすぐさま通信をつないでくれる。

『なんのごようでしょう?』

「訓練通りに頼みます」

『了解です』

 俺の言葉に即座に了承してくれるカールセン准将。

 そして俺は一点集中砲火でオスカーの艦隊をほんの少しだけ混乱させると、そこにカールセン提督が突入して混乱を広げる。そしてそれを助長させるように俺の艦隊から集中砲火でさらに混乱させる。

 そしてオスカーが態勢を整えるために引いた瞬間を狙って今度はキルヒアイス艦隊に攻撃を仕掛ける。横撃を仕掛けたカールセン提督を援護するように集中砲火を浴びせる。キルヒアイスも被害を嫌がって即座に引いた。

「他の艦隊の状況は?」

「第十三艦隊は勝っておりますが、第五艦隊と第十二艦隊は艦隊内の連携が上手くいっていないようで……」

 チュン准将の言葉に俺は頭をかく。ビュコック提督もボロディン提督も名将だ。それで抑えきれないってことは敵が優秀なんだろう。

「帝国軍!! 再度接近!!」

「やれやれ……こうなったら意地でもみんなで生きて帰るぞ!!」

 俺の言葉に艦橋から力強い声が返ってくるのであった。

 

 

 

 

 

 赤毛の坊やとオスカーの攻撃を4回撃退に成功し、俺はカリンに入れてもらった水を飲む。

「後背に敵艦隊!!」

「ブッフぅ!!」

 オペレーターの言葉に俺は飲んでいた水を吐き出す。

「バカな!? 敵の前線指揮官達は揃っているぞ!? 敵の援軍か!?」

 チュン准将の言葉にフィッツモンズ中尉が大急ぎで後背に現れた敵艦隊について調べる。

「う、嘘でしょ!? 敵旗艦はブリュンヒルトです!! 総大将が自ら後背に現れました!!」

「……やられた」

 絶対にやらないと思われていた総大将による奇襲。これによって第五艦隊と第十二艦隊が崩れた。

「第五艦隊と第十二艦隊の撤退の援護をする」

 俺は水をカリンに渡しながら指示を出す。俺の動きに第十三艦隊のヤンも呼応してみせた。

 俺の艦隊が下がる時はヤンの第十三艦隊が敵を押しとどめ、第十三艦隊が後退する時は俺の第十四艦隊が敵を押しとどめる。この戦法はヤンと二人で組んだ学生時代からよくやっている後退戦術だ。そのためにお互いの呼吸もあっている。

 その甲斐あって帝国軍に付け入る隙を与えぬまま、逃亡圏内まで退くことに成功する。

「「それ逃げろ!!/よし撤退だ!!」」

 俺とヤンの命令はほぼ同時刻だったと後日言われた。

 

 

 こうして原作において同盟の死刑執行書となった帝国領侵攻は終わった。原作より被害が少ないとはいえ、それでも膨大な物資と戦死者を出し、同盟には致命的な被害がでることとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 アムリッツァ会戦。最後の帝国との戦いの場所の名前で呼ばれるようになった一連の戦闘は同盟全土を荒れさせた。最初から軍内部だけでなく、民間人からも反対の意見があったのだ。当然のように評議会議員の全員が辞表を提出したが、反対派だったトリューニヒト、ジョアン・レベロ、ホワン・ルイの三名は慰留され、トリューニヒトが暫定議長として暫定評議会を作ることとなった。

 軍では統合作戦本部長シトレ元帥と宇宙艦隊司令長官ロボス元帥の両名が辞任。帝国領侵攻で戦死したホーウッド中将とルフェーブル中将は二階級特進で元帥へ昇進。新しく統合作戦本部長に就任したのは元第一艦隊司令官クブルスリー中将。宇宙艦隊司令長官にはビュコック中将。それに伴って二人は大将に昇進。幕僚総監にはボロディン中将、宇宙艦隊総参謀長にアル・サレム中将。そして新設された同盟領鎮撫軍司令官にウランフ中将。その三名もアムリッツァの勲功により大将に昇進。俺とヤンも大将に昇進した。

 問題は俺の第十四艦隊とヤンの第十三艦隊である。

 どちらの艦隊もイゼルローンの陥落からアムリッツァまで最前線で戦い続け、被害を最小限に抑えて最大の戦果をあげていた。そのために部下達が今更別の司令官をいただけと言っても拒否されるだろうし、従うことをよしとしないだろう。

 そんな俺は自宅の官舎で謹慎中である。それというのも俺が帝都に襲撃しながら皇帝に対して何もしなかったということを問題として突き上げられたのだ。簡単に言うと俺の昇進などを妬む連中が少しでも問題を俺にさせたかったのだろう。再び俺に処断の危機が迫ったが、今回は軍内部だけでなく民間人からも反対意見が多く出され、謹慎という処分に落ち着いたのである。

 俺はダラダラとソファーに寝そべりながら手紙を書いている。

「呆れましたよ、ヘルベルトさん、わざわざ帝国からヘルベルトさんのお嫁さんになりにきたアンナさんを放置してお手紙ですか?」

 洗濯物を干してきたカリンがソファで寝そべる俺を見ながら呆れた様子で告げてくる。俺はそれに黙ってキッチンを指差す。指先には楽しそうに料理をしているアンナの姿があった。

「昨日になってようやく俺の家に来れたからな。今日は料理はアンナが作るんだとさ。亭主がキッチンに入らないでくださいと言われて俺は追い出されたよ」

「はぁ……だからってソファーでダラダラと……同盟軍大将の姿ですか?」

「家でまで勤勉だと部下は嫌がるものさ」

「よく回るお口ですこと。それで? 何を書いていらっしゃるのですか?」

「今回の戦いで戦死した戦死者の遺族に対する手紙だよ」

 俺の言葉にカリンは驚いた表情を見せる。

「……全員を覚えていらっしゃるのですか?」

「幸いなことにな。だからこうして謹慎を利用して書いている……っとこれで終わりだ」

 最後の手紙を書き終わり、俺は手紙を出してしまう。

「あら。書き終わったの、ヘルベルト」

「あぁ。食事か?」

「えぇ、準備が終わったわ。カリン、手伝ってもらっていいかしら?」

「はい!!」

 幸いなことにカリンはアンナにすぐに懐いた。どうやら帝国領侵攻の時に警護の命令をした時に仲良くなったらしい。少しだけ心配だったが杞憂だったようだ。

 その時官舎のベルが鳴る。

「カリ〜ン?」

「たまには働いてくださいね、シュタイナー家の大黒柱さん」

 カリンの言葉にアンナは笑っている。俺は頭をかきながら玄関へ向かう。そして扉を開くと見慣れた顔がいた。

「やぁ、元気そうだね」

「ヤンか」

 扉を開けていたのは片手にブランデーの瓶を持った同盟軍最高の名将の姿。

「どうもです、シュタイナー提督」

 そしてその隣にはユリアン坊やの姿があった。

「上がってもいいかい?」

「ああ、かまわない。アンナ!!」

 俺が玄関から声をかけると、台所からアンナが顔をだす。そしてヤンの顔をみて微笑みながら会釈した。

 そんなアンナに慌てながらヤンも頭を下げる。

「と言うわけで客人がきた。俺の分の食事はユリアンにあげてくれ」

「わかりました。何かおつまみを持っていきますね」

 俺の言いたいことを理解して発言したアンナに、ヤンは感心した様子をみせる。

「頭のいい女性だね。シュタイナーにはもったいないくらいだ」

「一言余計なんだよ。あ、ユリアン。アンナの料理は絶品だ。楽しむといい」

 ヤンの言葉に突っ込むと、ユリアンにそう声をかけ、俺はリビングのソファーに向かう。勝手知ったる人の家である。ヤンは俺の後をついてきて、ユリアンは慣れた足取りでキッチンに向かった。

 そしてソファーにお互い座ると、ヤンが持ってきたブランデーを開ける。

 そしてヤンは少し悪戯めいた表情で口を開く。

「悪友の結婚を祝して」

「お前もさっさと結婚しろよ」

「相手がいればね」

 さらっとそういうヤン。だが、お前の副官が自分をロックオンしていることに気づいているのだろうか。

 お互いにブランデーを一口飲むと、ヤンが口を開く。

「結婚式は挙げるのかい?」

「新しい命令がでるまではどこに移動になるかわからないからな。しばらくはしない」

 俺の言葉にヤンはなるほどと頷く。

「本音は?」

「ハイネセンとかで結婚式挙げるとなるといらん連中まで呼ばないといけないから挙げない」

「まぁ、間違いなく政治家連中はアピールのために来るよね」

 何せ同盟領ではアンナの押しかけ女房は『銀河一の大恋愛』ということで女性を中心に盛り上がっているのだ。それを見逃さないクソ政治家達はアピールのために俺達の結婚式に乗り込んでくるだろう(特にトリューニヒトとか)

 そんなの勘弁して欲しいから落ち着くまでは結婚式を挙げるつもりはない。

 するとつまみを持ってきたアンナにヤンが話しかける。

「アンネローゼさんはいいんですか?」

 ヤンの言葉にアンナは微笑んだ。

「ええ、かまいません。それに今はヘルベルトと一緒にいられるだけで幸せですから」

「おい、自分で聞いといて砂糖を吐くジェスチャーをするな」

 特大の惚気を正面から食らったヤンは砂糖を吐くジェスチャーをしている。主にこれは俺がラップからジェシカの惚気をくらった時にやっていたジェスチャーなのでヤンもよく知っているし、やっているのだ。

 そんなヤンをみながらアンナはクスクスと笑いながら言葉を続ける。

「それにヘルベルトはラインハルトとロイエンタール提督を結婚式に呼ぶつもりのようです」

 アンナの言葉に「お前バカじゃないの?」という視線を向けてくるヤンに俺は落ち着けというジェスチャーをする。

「いいか、ヤン。帝国領侵攻の時にオスカーの奴が『結婚式には呼んでくれ』と言っていたのを覚えているか?」

「ああ」

 ヤンの返答に俺は笑みを浮かべる。

「だったら呼ばないと失礼になるだろう」

「やっぱり君キチガイだよね」

 さらりと正面から失礼なことをほざくヤン。

「そしてラインハルトはアンナに残された最後の家族だ。呼ばないと失礼だろう」

「うん、その思考回路になる君はやっぱりおかしい」

 ちなみに帝国では原作通りに皇帝が死んだようで、ラインハルトとリヒテンラーデ軸が政権を握っている。この情報は帝国の反対側の同盟にもすぐに伝わっている。

 つまりラインハルトも来れるわけがない。

 とりあえずいつもの罵詈雑言の飛ばし合いになった俺とヤンをアンナは「ごゆっくりどうぞ」と声をかけるとキッチンに戻っていった。

 とりあえず10分ほどお互いに罵りあうと、気分を落ち着けるためにブランデーを口にする。

「で?」

「え? 何が?」

 俺の問いに素でわかっていない様子のヤンにがっくりとくる。

「お前さんが謹慎中の俺のところに来たのはクブルスリー大将とビュコック大将からの伝言があったんじゃないのか?」

「ああ、そうだった」

 そして慌てた様子で洋服のポケットを探しながら、一枚のディスクを俺に渡してくる。

「これは?」

「同盟軍の新しい編成が書かれているよ」

 聞くより見ろ、ということだろう。俺はディスクをいれると中の情報を確認する。

 イゼルローン駐留艦隊司令官 ヤン・ウェンリー大将

 イゼルローン方面遊撃艦隊司令官 ヘルベルト・フォン・シュタイナー大将

 俺はその情報をみて、一回目頭を揉むと、もう一回確認する。

 だが、文字の羅列は変わらなかった。現実は非情である。

「……同盟は帝国の悪しき前例に倣うのか?」

 同格の司令官がいて、その間隙をついて落としたのがイゼルローンだ。そしてこの人事はその悪しき前例に習う形であった。

 ヤンも困ったように頭を一度かきまぜる。

「クブルスリー大将やビュコック大将も同じことを進言したそうだが、トリューニヒト議長代行に押し切られたそうだよ」

 その言葉に俺は腕を組む。

 トリューニヒトの狙いは明白だ。今は強い協調路線をとっている俺とヤンの艦隊を引き裂きたいのだろう。

 そのために前線の指揮系統を混乱させるとか酷いの一言であるが、権力者の考えることなど俺には理解できん。

 そして真剣な顔でヤンは口を開いた。

「だから君と直接話し合おうと思って」

「何を?」

「便宜上、どっちが上か、さ」

 その言葉に部屋がピンと張り詰める。普段とは違う空気を察したのだろう。興味深そうにカリンとユリアンが覗いてくる。

 その二人を無視してヤンは言葉を続ける。

「同格の司令官が同じ要塞にいる。これは問題だ。それはシュタイナーもわかるだろう」

「当然だ。部下達にも無駄に混乱させたくないからな」

 俺の言葉にヤンは真剣な表情で頷く。

 そして同時に口を開いた。

「「お前がやれ/君がやってくれ」」

 そして空気が弛緩した。カリンはしかめっ面になり、ユリアンは楽しそうに笑っている。

 俺とヤンが視線で会話すると、先行はヤンになった。

「いいかいシュタイナー。イゼルローンは最前線だ。そして隣には帝国の辺境地域が広がっている。その帝国の辺境宙域では君の支持は高い。君がイゼルローンの最高司令官になれば、帝国との軋轢が少しは薄まるだろう」

 ヤンの攻撃が終わったので今度は俺のターンである。

「それは間違っているぞヤン。俺達は自由惑星同盟の軍人だ。そうなると気にするべきはやはり同盟の人心だ。同盟の人心、この一点はビュコック大将を除けば一番高いのはヤン、お前だ。そしてお前は同盟軍随一の名将でもある。その名将がイゼルローン回廊に居座れば同盟軍には安心を。帝国軍には簡単に攻めさせることはないだろう」

「お二人とも立派なことをおっしゃっていますけど、本音はなんです?」

「「めんどくさいからお前やれ」」

 カリンの言葉に俺とヤンははもると、がっちり握手。カリンは呆れたようにキッチンに戻り、ユリアンも笑いながら声をかけてくる。

「こうなったらお二人でじゃんけんでもしてお決めになったらどうですか?」

 それだけ言うとユリアンもキッチンに戻る。

 だが、俺とヤンは天啓が降りてきた表情になっている。

「じゃんけんか。盲点だったね……」

「ああ、これなら公平だ」

「だったら……一勝負するかい?」

 ヤンの言葉に俺はニヤリと笑う。

「ヤン、こういうのにはやるべき時ってものがあるんだ」

 俺の言葉に何か企んでいるのを見抜いたヤンは、笑いながら肩を竦めるのであった。

 

 

 イゼルローン方面遊撃艦隊

 司令官 ヘルベルト・フォン・シュタイナー大将

 副司令官 ラルフ・カールセン少将

 参謀長 チュン・ウー・チェン少将

 副参謀長 ジャン・ロベール・ラップ大佐

 副官 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ大尉

 分艦隊司令 ライオネル・モートン少将

 第一空戦隊隊長 ウォーレン・ヒューズ少佐

 第二空戦隊隊長 サレ・アジズ・シェイクリ少佐




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
謹慎を利用して部下の遺族に手紙を書くお手紙提督

アンネローゼ・フォン・G・シュタイナー
シュタイナー夫人。帝国から押しかけ女房かました全女性の憧れ

ヤン・ウェンリー
めんどくさいことはシュタイナーに押し付けようとする

カリン&ユリアンの被保護者コンビ
保護者よりしっかりしていると話題

じゃんけん
地球時代から続く公平な決め方



そんな感じでアムリッツァを一瞬で終わらせて戦後処理的お話です。

オーディン急襲したのにと難癖つけられて謹慎処分食らうシュタイナーくん。こいつ出撃から帰るたびに謹慎してるな。
そしてその謹慎を利用して戦死した部下の遺族にお手紙を書くシュタイナーくん。こういうことをするから部下達からの支持も高い理由の一つ。

そして最後にさらっとシュタイナーくんの艦隊の新編成発表。元からいる面々に地味だけど良将だったモートン提督を編入。そして空戦隊にポプランとコーネフコンビの悪友兼撃墜王であるヒューズとシェイクリを編入。
これでシュタイナー艦隊はだいたい完成です。

次回からはイゼルローン編。
コメディ成分増していきますよ!
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