銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


015話

 俺が率いる第十四艦隊とヤン率いる第十三艦隊は駐留するイゼルローン要塞へと到着した。一般人も含めての移動だったのでかなり大規模な移動である。

 そして俺達がイゼルローンに入ってしばしたち、兵員や民間人の多くの移動が完了した日。俺とヤンはどっちが名目上の上に立つかを賭けてじゃんけん勝負をすることになった。

『レディィィィィス!! エンド!! ジェントルメン!!』

 ユリアンのイゼルローン日記にて新年会が行われていた吹き抜けの空間にはステージが作られ、軍服でマイク片手に聴衆を煽るラップがいた。

『第十三艦隊、第十四艦隊の兵士やその家族達が賭けを行っている『ヤン大将とシュタイナー大将はどっちが上に立つか』の答え合わせの時間だぜ!!』

 ラップの言葉に面白そうな歓声をあげる兵士達。

『ちなみにこの映像は同盟本土と帝国辺境向けにも配信してるぜ!! 同盟領の方もどっちが上に立つかの賭けにまだ参加できるから是非参加してみてくれ!!』

 ちなみにこの賭けの元締めは軍である。俺とヤンが口八丁で丸め込み、軍を元締めにすることに成功した。ちなみにクブルスリー大将は俺、ビュコック大将はヤンに賭けている。

『現在の賭けの倍率はヤンのほうが上だ!! ヤン大将、この支持をどう思いますか!?』

「迷惑この上ないね」

『一般人の期待を迷惑と一蹴するクズムゥゥゥゥゥゥゥヴ!! ちなみにクズ度合ではシュタイナー大将も似たり寄ったりだぜ!!』

「お前、仮にも上司にその発言許されると思う?」

『許されてなかったら俺は初日で独房入りしてたよ!! 心が広い指揮官で嬉しいよなぁ、みんな!!』

 ラップの言葉に歓声をあげる第十四艦隊の兵士達。

『みんなが気になる勝負の内容は古来より続くじゃんけん一発勝負!! この勝負、どうしますか、ヤン大将』

 そう言ってラップがマイクをヤンに向けると、ヤンは真剣な表情で口を開く。

「私はグーをだす」

『おぉぉぉぉぉぉっと!!! ここでヤン大将お得意の心理戦だぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ヤン大将はこう言っていますが、どうしますかシュタイナー大将』

「俺はヤンを信頼してパーをだそう」

『ここでシュタイナー大将は信頼という言葉を盾にしてさらなる心理戦を仕掛けるぅぅぅぅぅ!!!! 汚い!! 流石シュタイナー汚い!!』

 げらげらと笑っているラップを無視して俺とヤンはステージの中央でメンチを斬り合う。そして色々と汚い言葉も含めて言葉が飛び交う聴衆。

『さぁ!! 勝負の時だ!!』

 ラップの言葉に俺とヤンは一歩分の距離に離れて、お互いに腰だめの態勢に入る。

『泣いても笑っても一発勝負!! さぁ!! いくぞぉ!!』

 ラップの言葉に歓声がでる聴衆。

 しかし、ヤンは完全に俺の策にハマっている。いや、俺の動体視力と運動神経を甘くみていると言っていいだろう。俺の動体視力と運動神経を持ってすればヤンがだした後に手を変えるなど造作もないのだ!!

 そう!! つまりこれは約束された勝利のじゃんけん!!

『じゃ~んけ~ん!!』

 この動きで腰だめにしていた位置から俺達は手が動き出す。

 ヤンの出す手はグー!!

 ならば俺のだす手はパー!! これで俺の勝利……!! あまっちょろすぎるぜ奇跡のヤン……!!

 いや……!! しかし、ここで俺の動体視力がヤンの手の動きを察知する……!! 奴は手を開こうとしている……!! つまり出す手はパー……!! このままでは相子……!! しかし、俺の運動神経がそれを変える……!! 俺は出す手をチョキに変更……!! これで勝利……!! 勝ったな……!! 風呂入ってくる……!!!

 !? ヤンの手が開かない……!? まさかブラフ……!? まずい手を変え……!! 間に合わな……!!

『ポン!!』

 ヤン グー

 俺  チョキ

『勝負ありぃぃぃぃぃ!!! 勝ったのはヤン大将!! 奇跡のヤンの強さを見せつけたぁぁぁぁぁあ!!!!!』

 歓声&怒声&罵声が飛び交う中叫ぶラップ。グーを高らかに挙げるヤン。両ひざをついてort状態になる俺。

『ヤン大将!! ずばり勝敗の決めては?』

「シュタイナーなら必ず私の手をみて出す手を変えることは読んでいた」

『おお!! ではシュタイナー大将を破ったその秘策は?』

 ラップの言葉にヤンは決め顔で口を開く。

「私が途中で手を変えるほどの運動神経があるとシュタイナーが思っていたことさ」

「クソっ!! 予想のさらに斜め下にヤンの運動神経が悪かった!!!」

 これは完全に俺のミスである。まさか出す手を途中で変えられないほど運動神経が悪かったとは。

 そんな完全敗北の姿の俺の肩をヤンが嬉しそうに叩く。

「じゃあシュタイナーが上位大将ということでよろしく」

「ああ、そうだな。俺はじゃんけんで『負けた』しな」

「お、物分かりがいいじゃないか」

 心底嬉しそうな笑顔を浮かべるヤン。

 バカめ。勝負はすでに決まっているのだよ。

 そんな俺達二人をみて上機嫌にマイクを片手に叫ぶラップ。

『ではイゼルローン駐留艦隊上位大将はヤン大将に決定だぁぁぁぁぁ!!!!!』

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ラップの言葉に慌てて待ったをかけるヤン。

「ちょ、ちょっと待ってくれラップ。勝ったのは私だよ?」

『その通り。『勝った』のはヤン大将だ』

 そしていやぁぁぁぁぁな感じの笑みを浮かべるラップ。

『誰が『負けた』ほうが上位大将になるって言いましたかぁぁぁぁぁぁぁ!?』

「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 ラップの言葉に叫ぶヤン。だが、納得できないのか言葉を続けるヤン。

「い、いやしかし。私とシュタイナーは上位になるのをお互いに嫌がっていたんだから、ここは負けたほうが上位になるのが筋では?」

 そんなヤンの肩を俺は笑顔で叩く。

「ヤン、じゃんけん勝負に乗ってきた時点でお前の負けだ」

 そこでヤンは何かに気づく。

「君たち!! さてはグルだな!?」

「おいおいグルだなんて人聞きが悪い。あ、ラップ大佐。例の物はあとでお部屋に運びますんで」

『おっと、悪いですなシュタイナー大将』

「賄賂じゃないか!!」

 俺を指さして糾弾してくるヤンに向かって俺は腕を組んで堂々と言い放つ。

「愚か者ぉ!! 賄賂とは古代地球時代から現代でも使われる交渉術の一貫だ!!」

「このクズがぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

『はぁい!! 負け犬が何やら叫んでいますが、上位大将はヤン大将で決まりです!! 文句なら賄賂を今でも普通にやっている政治家連中を恨んでくださいねぇ!!』

「そう!! この交渉術は政治家先生達を見習った結果ですから!!」

 俺とラップの煽りに血管が切れるんじゃないかと思うくらい顔を真っ赤にしてぶちぎれているヤン。

 だが、呼吸を整えるとヤンはステージから降りていく。

 それを見送って俺とラップはステージにかけて奥が見えないように遮っていた布を取り払う。

 そこにはギター、ベース、ドラムのバンドセットが置いてあった。ドラムにはアッテンボローが座っており、ギターはポプランが持っている。そしてラップがベースを持った。

 俺はマイクをとって大きく叫ぶ。

『よっしゃぁ!! 次はみなさんお楽しみライブタァァァイム!!! まずは『閃光』って曲だ!! 俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!!!』

 

 

 

 

『鳴らない言葉をもう一度描いて 赤色に染まる時間を置き忘れ去れば 哀しい世界はもう二度となくて 荒れた陸地が 零れ落ちてく 一筋の光へ』

 シュタイナーの歌声が響き渡る。集まっていた聴衆も大熱狂だ。カリンもアンネローゼと一緒に手を振っている。しかし、カリンにはある深刻な悩みがあった。

(歌はうまいし、いい曲なのに……!!)

 カリンは脳内に浮かぶシルエットを振り払うように首を振るが、それは消えない。

(なんでかぼちゃ被った全身黒タイツが踊っている姿が思い浮かぶの……!!)

 たぶん受信しちゃいけない電波を受信しているカリン。その脳内では『連邦に反省を促すダンス』を踊る偽マフティーの偽マフティーがいた。

 そんなカリンを心配したのか、アンネローゼがカリンの顔を覗き込む。

「カリン、どうかした?」

 アンネローゼの言葉に、いまだに脳内で踊り続けるかぼちゃ頭を脳内から無理やり蹴りだすと、カリンはアンネローゼに疑問に思ったことを聞く。

「ヘルベルトさん、歌上手いんですね」

 そう、シュタイナーの歌のうまさである。

 同盟でも様々なアーティストが歌を発表しているが、シュタイナーは下手な歌手より歌がうまかった。そのためにこの熱狂にも繋がっている。

 カリンの問いにアンネローゼは微笑む。

「忘れがち……私もたまに忘れるけど、あの人は帝国でも屈指の名門なの。だから歌だけじゃなくて他の芸術も色々こなせるわよ」

「はえ~」

 確かにカリンも頻繁に忘れるが、シュタイナー家は帝国でも屈指の名門なのだ。そのために貴族としての嗜みとして音楽をたしなんでいてもおかしくない。

「でも帝国貴族だったら普通はクラシックとかじゃないんですか」

「ヘルベルトのやることだから」

 アンネローゼの即答にカリンも思わず納得してしまった。色々と突拍子がないことをするのもシュタイナーである。

 そして一曲目が終わってMCタイムになる。ヘルベルトは水を一口飲むと、マイクで話始める。

『そんな感じで楽器できる第十三艦隊、第十四艦隊首脳陣で結成したバンド。『名前はまだない』です。なんかいい名前募集するぞぉ!!』

 シュタイナーの言葉に歓声をあげる聴衆。カリンとアンネローゼも一緒だ。

『というわけでバンド紹介いこう!! まずドラム、ダスティ・アッテンボロー少将!! ギター、オリビエ・ポプラン少佐!! ベース、ジャン・ロベール・ラップ大佐!! そしてボーカルはこの私、ヘルベルト・フォン・シュタイナー大将だ!!』

 大歓声。特にポプランには黄色い声援も多かった気がするのはカリンの気のせいだろうか。

 すると今度はラップがマイクで話し出す。

『というか今の曲とかこの後やる曲含めて全部作ったのシュタイナー大将なんだけど、お前なんなの?』

『帝国時代の一緒に色々やった私の仲間に音楽が得意な奴がいてな。そいつと曲を大量に作った』

 シュタイナーの言葉にカリンが驚いてアンネローゼをみると、アンネローゼも苦笑いである。

「事実よ。ヘルベルト作詞で『音楽のエル』って呼んでいた仲間が作曲していたの。私もよく一緒に演奏したりしたわ」

「アンネローゼさんもですか?」

「私もピアノを弾けるから」

 アンネローゼの言葉にカリンは何か思い出す。

「あれ? ヘルベルトさんが妙に私に楽器をやらせたがるのって……?」

「たぶん、一緒にやりたいんじゃないかしら」

 アンネローゼの言葉に難しい表情をして悩むカリン。その時ステージではシュタイナーとヤンによる罵倒の飛ばし合いが発生していた。

 難しい表情をするカリンを、アンネローゼは優しく頭を撫でる。

「やりたくなかったらやらなくてもいいの。私の弟は『私は聴く専門です』って言ってやらなかったわ」

 現在帝国でも最大規模の権力者の過去話を突然暴露されて困るカリンであったが、すぐに意識がステージに移る。

『よぉし!! じゃあ2曲目!! タイトルは『鉄のララバイ』。いってみよう!!』

 そして始まる演奏をみて、少しだけ楽器覚えようかと思うカリンであった。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
勝負は始まる前から決まってるんだぜ、ヤン

ヤン・ウェンリー
上位大将。君に恥じはないのかい、シュタイナー

ジャン・ロベール・ラップ
審判はシュタイナーくんに買収されていた模様

賄賂
この映像をみて収賄で逮捕される政治家がでた

艦隊バンド『名前はまだない』
楽器練習に忙しくてバンド名までは決まってなかった

シュタイナーくんが作った曲
まだ人類が地球しかいなかった時代の日本という国にあった曲の模様

シュタイナーくんの帝国時代の仲間の一人『音楽のエル』
もしかして? 芸術家提督



そんな感じでイゼルローン編開幕です。
ここまでシリアスもちょいちょいあったので、イゼルローン編は全力でふざけていく所存。そのためにじゃんけん勝負(元締めは軍)とライブ活動をするシュタイナーくん。

ちなみにライブ映像も同盟領と帝国辺境で流れていたので、某黄金の獅子さんはとあるルートでライブ映像を手に入れてご満悦な模様。

そして完全に出来レースだったじゃんけん勝負。妙にクリーンを心がけるヤンなら絶対にハマる罠を仕掛けるシュタイナーくんが悪辣ぅ!

そして明かされるロイエンタール以外のシュタイナーくんの帝国時代の仲間の一人。
いったい何ネスト・メックリンガーなんだ……

ちなみにイゼルローン編は原作外伝のユリアンのイゼルローン日記みたいにカリン視点の話も入ってくるかもしれません。
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