銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


018話

 年末である。軍事要塞であるイゼルローン要塞には年の瀬正月など関係ないと思われるかもしれないが、そこは基本的にノリが軽い第十三艦隊と第十四艦隊の所属の軍人である。主にポプラン、シェイクリ、ヒューズの三人が中心になって俺とヤンに「年末パーティしようぜ!(意訳)」という陳情を持ってきた。

 基本的に騒ぎ好きな俺は即OK。基本的にはノリが軽いヤンもOKをだし、イゼルローン全体で年末に大騒ぎすることが決定した。

 軍事作戦以外では役に立たないヤンに代わって俺の仕事が倍率ドンになったが、ここで俺とヤン待望の人材がイゼルローンにやってきた。

 そう、アレックス・キャゼルヌ先輩である。

 キャゼルヌ先輩がやってきたその日にヤンはキャゼルヌ先輩に『要塞事務監』という役職を押し付け、イゼルローン要塞の管理はキャゼルヌ先輩に全部放り投げた。

 だが、そこは後方だけで少将まで成り上がったキャゼルヌ先輩である。三日ほどでイゼルローン要塞の基礎管理を構築し、ついでに年末パーティの準備まで終えてしまった。

 そしてキャゼルヌ先輩からの意趣返しに俺とヤンは年末パーティ開始のスピーチをすることになった。

 俺達二人だけなら漫談でもして即座に終わらせるのだが、キャゼルヌ先輩の巧妙なところは一人だけ政治家志望の名士を混ぜることで俺達に真面目にやらせようとしてきたのだ。

 そして今はまさしく年末パーティが始まるその瞬間。吹き抜けの会場にはステージが作られ、花火もあげられることになっている。軍人だけでなく民間人も今か今かと開始の合図を待っている。

 そして司会をしているフィッツシモンズ大尉に促されてヤンがマイクの前に立つ。

 そしてヤンは真面目な顔で口を開いた。

「皆さん、楽しくやってください」

 ヤン、脅威の二秒スピーチである。俺の隣で顎が外れんばかりに唖然としてる政治家志望の名士を無視して俺がマイクのほうに向かう。

 そしてヤンと入れ替わる時にハイタッチをしてから俺はマイクの前に立つ。

「皆さん、楽しくやりましょう」

 俺も脅威の二秒スピーチである。歓声をあげる聴衆に手を振りながら俺はヤンと並び、肩を組んで政治家志望の名士をみる。

「「さぁ、スピーチをどうぞ」」

 完全に煽っている態勢であるが、これできっとこの無駄に張り切っている政治家志望の名士もスピーチは短くせざるえないだろう。

 口の端をひくひくさせながら政治家志望の名士はマイクのところに立ち、スピーチを始めた。

 そして時計をみながらヤンが呟く。

「十秒だ」

「タイムオーバーだな。いくぞオフレッサー」

「は!」

 ヤンの言葉に俺は後ろで待機していたオフレッサーに声をかけると激しい足音をたてながらステージに昇って政治家志望の名士の傍にいく。

 少し怯えている政治家志望の名士。何をしでかすんだと期待している聴衆。

 それを無視してオフレッサーは俺の肩に肘をかけながら決め顔で口を開く。

「ナートゥをご存知か?」

「……は?」

 

 

 

 カリンは軽い眩暈を覚えた。

 ヤンとシュタイナーが二秒でスピーチを終えたのはわかる。何せ二人してそういうのは嫌いな人間だ。

 だが、政治家志望の名士が十秒スピーチしただけで長いと判断してそのスピーチを強制終了させるとは思っていなかった。

 しかもその方法がシュタイナーとオフレッサーによるキレッキレのダンスだ。

『ポランガットゥ ドゥンムロナ

ポットラギッタ ドゥーキナットゥ

ポレランマ ジャタラーロ

ポタらージュ ウーギナットゥ

キるセップル エスコニ

カッラサム セスィァナットゥ

マッりセットゥ ニーダロナ

クッらグンプ クーディナットゥ

エッらジョンナ ロッテロナ

ミラガパトック カリピナットゥ

ナー パータ スードゥ

ナー パータ スードゥ

ナー パータ スードゥ

ナートゥ ナートゥ ナートゥ ナートゥ

ナートゥ ナートゥ ヴィーラ ナートゥ

ナートゥ ナートゥ ナートゥ ナートゥ

ナートゥ ナートゥ ウーラ ナートゥ

ナートゥ ナートゥ ナートゥ』

 さらには謎の言語で歌を歌いながら踊っている。だが、そのダンスがパーティ開始の合図となり、花火が打ち上げられ、紙吹雪がまい、あちこちで乾杯の声が聞こえる。さらには多くの人々がシュタイナーとオフレッサーの踊りを囃し立て、一緒になって踊っているのだ。

 カリンは最近、オフレッサーの薦めでオフレッサーに近接戦闘を教わっている。そのためにオフレッサーの化け物染みた運動能力も知っている。それと同時にシュタイナーの人外な運動神経も知っている。

 その二人が見事にキレッキレなダンスをしていたらそれは盛り上がるだろう。ちなみに政治家志望の名士は腰を抜かしてほうほうのていで逃げた。その気持ちはわかる。見るからに蛮族なオフレッサーが目の前でキレッキレのダンスをし始めたら怖い。シュタイナーとオフレッサーをよく知るカリンでもちょっと引くと思う。

「おや、カリン一人かの」

 そこにやってきたのは何故か同盟軍の軍服を着こなした戸籍上はカリンの祖父であるフリードリヒであった。

 カリンは半眼になりながらフリードリヒをみる。

「お爺ちゃん、その軍服どうしたんですか?」

「うむ、話せば長くなるから結論から言うと脱衣ポーカーに勝ったので奪ってきた」

「駄目だこの爺……」

 シュタイナーの爺呼びがついカリンに移る。だが、フリードリヒはそれを気にした風はなく、持ってきたビールを一口飲むと、カリンにジュースの入った瓶を渡してくる。それをカリンは厳しい眼でみる。

「何もいれてませんよね?」

「うむ、確かに先日起こった『イゼルローン要塞大規模下痢事件』は儂が混入した下剤のせいでじゃが、流石に孫にはそんな真似せんぞ」

「もう駄目だこの爺」

 先日起こった大規模事件の自白をカリンは聞いてしまったが、周囲はパーティでアッパーな調子なので誰にも聞かれなかったのは幸いなのだろうか。ムライ中将あたりに密告したら説教二時間は堅いだろう。ヤンやシュタイナーは駄目だ。二人とも事後をめんどくさくて聞かなかったことにする。

 後日、ムライに密告することを決めたカリンは受け取ったジュースを一口飲む。

 そして驚愕した。

「そんな!? 普通のジュースだなんて!!」

「その反応は流石に酷くないかの?」

 ジュースに酒混入くらいはやるだろうと思っていたので、普通のジュースで逆にカリンが驚愕してしまった。フリードリヒが何か文句を言っているがカリンは無視である。何せすでに前科がいっぱいある。

「うん? そういえばアンネローゼはどうした? 一緒にいるはずじゃろ?」

 フリードリヒの言葉にカリンは黙って指をさす。

 その先にはラップ夫妻と一緒に華麗にキレッキレなダンスをするアンネローゼがいた。

 それをみてフリードリヒは満足そうに頷く。

「元気そうで何よりじゃ」

「というかあのダンスなんですか? 歌っている言語も聞いたことないですけど。帝国語でもないですよね?」

 カリンも周囲に帝国人(養母アンネローゼ、忠臣オフレッサー、祖父フリードリヒ)がいっぱいいるおかげで、普通の会話程度であれば帝国語は話せる。

 だが、そんなカリンでも今シュタイナーとオフレッサーが踊りながら歌っている言語は聞いたことがなかった。当然、同盟語でもない。

「ああ。あれはシュタイナー伯爵領で話されてる言語の一つじゃな」

「あ、ヘルベルトさんの領地の……」

 そこでカリンは何かに気づく。

「うん? シュタイナー伯爵領で話されている言語の『一つ』? もしかしてシュタイナー伯爵領には言語がいくつもあるんですか?」

 カリンの言葉にフリードリヒは頷く。

「うむ。シュタイナー伯爵家は初代から地球時代の文化の保全に取り組んでいてな。その関係で地球時代の文化がシュタイナー伯爵領の惑星・エンフィールドには多数残っておる。儂も若い頃は庶民に混じってよく遊びに行ったものじゃが、色々とカオスで面白かったぞい」

「突っ込みどころが多すぎる……!!」

 色々と突っ込みどころしかなかったが、カリンはぐっと堪えた。この程度で突っ込んでいてはシュタイナー家では生きていけない。

「おお、そういえばカリンに伝えておきたいことがあったんじゃよ」

「? 私にですか?」

「うむ」

 フィニッシュポーズを決めているシュタイナーとオフレッサー、それに拍手喝采を送る人々を無視しながらカリンはフリードリヒをみる。

 フリードリヒは懐から一枚の紙を取り出すとカリンに手渡してきた。

 渡されてきた紙をカリンは確認する。

『イゼルローン要塞美人Tier表』

 カリンは無言でその紙を引き裂いた。

「ああ! 間違い!! それは儂が個人的にとっていたアンケート!! 本物はこっち!!」

「こいつ死ねばいいのに」

 帝国だったら不敬罪で一発アウトな発言だが、今のイゼルローン要塞は同盟領なのでセーフである。

 改めて渡された紙をみるカリン。

 それはシュタイナー伯爵家の家系図であった。

 それをみてカリンは不思議そうに首を傾げる。

「これがどうかしたんですか?」

「うむ。現シュタイナー伯爵……お主の養父から数えて五代遡り、その娘のところをみてみるといい」

 フリードリヒに言われたとおりのところを確認するカリン。そこには『クロイツェル男爵家へ嫁入り』と書かれていた。

 それをみてカリンは再び首を傾げる。

「クロイツェル……どっかで聞いたことありますね」

「お主のフルネームを言ってみなさい」

「カーテローゼ・フォン・クロイツェルですが? ……あ!? クロイツェル!!」

「ええ、反応にぶ。儂が言うタイミング図ってたの莫迦みたいじゃん……」

 フリードリヒの反応は無視してカリンは興奮した様子でフリードリヒに詰め寄る。

「こ、このクロイツェル男爵家ってまさか!?」

「うむ、お主の先祖じゃな」

「えええええええ!!!!!」

 あんまりな言葉にカリンは驚きを隠せない。それに好々爺らしく笑いながらフリードリヒは話す。

「うむ、大好きなパッパと血縁関係あって嬉しいんじゃな」

「そんな、私の家はまともだと思っていたのに……」

「あ、そっち。というかシュタイナー伯爵家と縁があるからってまともじゃない扱いは流石の儂もどうかと思うんじゃが?」

「じゃあ、否定できるんですか?」

 カリンの言葉にフリードリヒはそっぽを向いて口笛を吹く。

 シュタイナーも自身の色々アウトな武勇伝は言わないが、シュタイナー家の歴代続くキチガイ行動は色々教えてくれる。だからカリンの中ではシュタイナー伯爵家(もしくはその縁者)=キチガイという方程式が成り立っている。

「そっか……でも私とヘルベルトさんに血の繋がりがあるんだ……」

 ぽつりと呟いたカリンの言葉にフリードリヒは優しそうに微笑む。

「そこでカリンに相談なんじゃが」

「なんですか?」

「この事実をどのタイミングでシュタイナー伯爵にバラしたら面白いと思う?」

「この爺死ねばいいのに」




ヤン&シュタイナー
長いスピーチ絶対許さない二人組

アンネローゼ・フォン・G・シュタイナー伯爵夫人
幼馴染なのでヘルベルトくんの汚染濃いめ

カーテローゼ・フォン・クロイツェル
まさかのヘルベルトくんのガチ血縁

フリードリヒ・フォン・クロイツェル
自由人な爺

ナートゥ
ナートゥをご存知か?



そんな感じで今月分投稿です。

原作のユリアン日記だとこの間にも色々イベントあったのですが、いちいちやってるとクッソ長くなるのでカット。ちなみに幽霊探しには原作三人+シェイクリ、ヒューズで行っています。

そして明かされる驚愕の真実ぅ!! 実はクロイツェル家はシュタイナー家の縁者だった!!
最初から設定はあったんですが、それを開示するキャラがいなかったので完全に死に設定になる予定が、とある自由人な爺のおかげで情報開示されました。

尚生かされるかは不明。

そしてさらっと明かされるシュタイナー伯爵領のカオス具合。シュタイナー伯爵領は統一されている現在の地球を想像してみてください。だいたいそんな感じです。

ところでRRRのBlu-rayはまだですか?(RRRはナートゥはもちろん劇中歌のDostiとSholaiも最高にかっこいい曲だから是非聴いてください!!
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