銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


019話

 徹夜で大騒ぎした翌日。軍事基地であるイゼルローン要塞では新年だろうが余裕で仕事なわけであるが、そこのトップ二人が俺とヤンである。するとどうなるか。

 『新年から帝国から侵攻してこないから大丈夫! もし侵攻あったら責任もって軍本部に辞表出すから!』という俺とヤンの説得によってイゼルローン要塞最後の良心であるムライ少将が呆れながら許可をだしたことにより、要塞の運営の最低人数を除きマジでイゼルローン要塞全体が休みになった。

 俺もカリンとアンナと一緒に新年料理を食べていたところ、フリーダム爺がオフレッサー連れてうちの家に乱入。新年早々から麻雀大会が発生した。

 ちなみに勝者はルールをよく理解していないカリンが国士無双を決めてフリーダム爺が飛んだ。

 そして新年二日目。俺はオフレッサーを連れてローゼンリッターの訓練所に顔を出していた。

 顔付近に飛んできたナイフを顔をそらして回避し、そのまま回転するように右足を蹴り上げる。俺の振り上げた足を涼しい顔をしてよけてから距離をとるローゼンリッターの隊長であるシェーンコップ少将。

 回転して俺の視界が外れた瞬間に飛び込んでくるシェーンコップ少将を感覚だけで俺はナイフを逆手に持って振り払う。

 甲高い音が立ったのでシェーンコップ少将がナイフで防いだのを感じ取ったので俺はバックステップで距離をとる。それにあわせるようにさらにシェーンコップ少将が詰めてきたのでそれにカウンターをあわせる要領でナイフを叩き込む。

「およ?」

 そして俺は回転して床に叩きつけられる。

 何が起こったか理解できずに目を開いて唖然としているとシェーンコップ少将がニヤリとしながら覗き込んできた。

「どうかしましたかな、シュタイナー大将。床はそんなに寝心地が良いですか?」

「徹夜で本読んだ結果あまりの眠気に士官学校の床で眠ったことのあるヤンじゃあるまいし、俺にそんな趣味はないよ」

 ヤンの黒歴史(いっぱいある)を軽く暴露しながら俺は立ち上がる。腕を回してみたり足を曲げたりしてみたが、特に痛いところはない。

「シェーンコップ少将、どうやって私を投げたんだ?」

 俺の問いに訓練用ナイフを仕舞いながらシェーンコップ少将は軽く口を開く。

「難しいことではありません。相手の力を利用してそのまま投げただけです。実践なら相手の顔面にナイフ突き刺してとどめを刺すのですが……まぁ、訓練ですからな」

「いや、多分それすっごい難しい技術じゃないか?」

 少なくとも俺はできない。

 だが、俺の言葉にシェーンコップ少将は軽く笑う。

「そうですかな? 訓練での動きをみる限りシュタイナー大将も出来そうですが」

「私の場合は恵まれた身体能力で押し切るだけだからなぁ。だからオフレッサーやシェーンコップ少将みたいな白兵戦闘の名人には敵わない」

「なるほど」

 俺の言葉に納得した様子をみせるシェーンコップ少将。そのまま俺とシェーンコップ少将は訓練場から出て、備え付けの休憩所でお互いにコーヒーを持って会話を続ける。

「しかし、シュタイナー大将も鍛えれば私をも越えそうですがね。亡命者なのにローゼンリッターに入れられないというのも珍しいですが」

「私の家柄が帝国屈指の名門だからな。そういう人物を司令官として登用して帝国に対するアピールに使う……そういう風にシトレ学長に説明されたな」

「政治ですな」

「まぁ、政治だよ」

 シェーンコップの皮肉気な言葉に俺は苦笑いして返す。

「ところでシュタイナー大将」

 そして真剣な表情で俺に話しかけてくるシェーンコップ少将。俺もその視線に返すと、同時にガラスの向こうで行われている訓練場の風景が見える。

 一人で同盟軍最強と呼ばれる部隊を蹂躙しているオフレッサーがいた。

「……失礼を承知で申し上げるが、オフレッサー客員大将は本当に人類ですかな?」

「帝国時代に人類か疑われて検査を受けた結果100%人類という結果がでた。それでも信じない帝国技研は『オフレッサー上級大将は新人類』とか言っていたが」

 帝国時代からその強さから人類かどうかを疑われていたオフレッサーであったが、無事に同盟でも同じ嫌疑をかけられてある意味で安心する。

 とりあえず二人でオフレッサーと戦って悲鳴をあげているローゼンリッター隊員を見なかったこ事にしてコーヒーを一口。

「それで? 何か私に話があったので?」

「ごふ」

 シェーンコップ少将の突然の言葉に図星を指されて少しむせる。

 俺は頭をかきながらシェーンコップ少将をみた。

「そんなにわかりやすかったか?」

「小官を避けていた上官が突然専門外の白兵戦訓練場にやってきて突然『少し稽古をつけてくれ』と言ってくるのには裏があると思ってしまいますな」

「わかりやすかったかぁ……」

 俺の言葉にシェーンコップ少将はにやにや笑いながら告げてきたので、俺はコーヒーを一気に飲むと空いた紙コップをゴミ箱に捨てる。

 そして真剣な表情で俺は口を開く。

「貴官の実の娘……カーテローゼ・フォン・クロイツェルについてだ」

 俺の言葉を聞いているのかいないのか、シェーンコップ少将は訓練場の惨劇をみながら黙っている。

 とりあえず俺は言葉を続ける。

「私は確かにカリンの父親役をやれている……うん、できればできていると思いたいのだが、やはり実の父親が近くにいるのならば実の父親にも会いたいと思っていると思うんだ」

 俺の言葉に片眉も動かさないシェーンコップ少将。

 だが、俺は言葉を続けるしかない。

「もし貴官が良ければ私が」

「シュタイナー大将」

 俺の言葉の途中でシェーンコップ少将が割り込んでくる。俺に向けられた視線は真剣だ。

「それはカーテローゼ・フォン・クロイツェルが望んでいることですかな?」

「……いや、私のお節介だ」

 俺の言葉にシェーンコップ少将が小さく笑う。

「シュタイナー大将。そういうのをなんていうのか小官が教えてさしあげましょう」

 そういって口の端をあげて皮肉気に笑う。

「余計なお世話、というのですよ」

 シェーンコップ少将の言葉に言い返そうと思ったが、俺はそれをお腹の中に留めて、大きく一回だけ溜息をつく。

(こりゃ親子の仲を修復するのは難しそうだ)

「ところでシュタイナー大将。小官からも一つお願いが」

「何だ?」

「シュタイナー大将の副官殿をデートにお誘いするのをお手伝いいただきたく」

「自分の子供を育てている養父に対して女紹介しろはクソすぎるだろ」

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 シュタイナー家の晩御飯の食卓。俺、カリン、アンナの三人でアンナの作った晩御飯を食べ終えると、アンナは使った食器を片付ける。それを手伝おうとしたカリンを呼び止める。

 カリンは不思議そうな顔をしていたが、アンナは大事な話をするのがわかったのかお茶を置いてから台所にいった。

 俺がどう切り出そうか考えていると、カリンは不安そうな顔で口を開いた。

「あの……もしかして今度私がボーカルで出す曲のことでしょうか?」

「ああいや。それとはまた別の話だ」

「別の話ですか?」

 不思議そうに首を傾げるカリン。まだ少女といえる年齢ではあるが、着実に美人になってきているのは父親の遺伝子のおかげなのか……。

 俺はお茶を飲んで呼吸を整えると口を開く。

「カリン」

「はい」

 俺の顔で真面目な話だと思ったのか、カリンの背筋が伸びる。

「お前の父親……お父さんの話だ」

 俺は言葉を選びながら言葉を続ける。

「すまないが俺はカリンの本当のお父さんを知っている。そこで提案なんだがカリンが良ければお父さんと会う手助けをしたいと思っていてな」

 そこで俺はカリンをみると、カリンは俯いていて表情がわからない。

 しばしの無言の空間。アンナの食器を洗う音だけが響いている。

「ヘルベルトさん」

「なんだ」

 カリンの言葉に俺は答える。そしてカリンは顔を上げた。その表情をみて俺は息を飲んだ。

 カリンの表情は見た事がないほど、憎悪に満ちた表情であった。

「私の父親はヘルベルトさんです。ヘルベルトさんだけです」

「いや……だが、カリン」

「ヘルベルトさんだけなんです!!」

 叫ぶカリンに俺は何も言えなくなる。

 カリンは呼吸を整えると椅子から立ち上がる。

「申し訳ありません、ヘルベルトさん。通信教育の宿題があるので失礼します」

「あ、ああ」

 そうしてカリンは逃げるように自分の部屋に入っていった。

 それを見送って俺は大きな溜息をつく。

「ミスったかなぁ……」

「ええ、ヘルベルトにしては大きな間違いだったわね」

 そういって微笑んできたのはアンナ。だが、その微笑みにはどこか俺のことを責めている面がある。

 隣に座ったアンナは一口お茶を飲むと口を開く。

「カリンが実の父親を嫌っているのはまだ付き合いの日が浅い私でもわかったわ」

「そりゃ俺もよく知っているけどさ」

 俺だってカリンがシェーンコップのことを嫌っているのはよく知っている。

 それでも仲を取り持とうと思ったのは原作知識でカリンがシェーンコップ死後に泣いていたのを知っているからだ。

 だからこの世界ではその涙をなくせないかと思ったのだ。

「……何をミスったかなぁ」

「全部じゃないかしら」

「身も蓋もないなぁ」

 アンナの言葉に俺は苦笑い。アンナも苦笑いしながら会話を続ける。

「カリンもいずれ自分の実の父親と向き合える日がくるはずよ。その時までヘルベルトはカリンに親子の愛情を注いであげればいいの。私も手伝うわ」

 アンナの言葉はとても助かる。

 だが、なぁ。

「俺達は軍人だからいつ死ぬかわからんからなぁ」




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
思いっきり地雷を踏みぬいた転生主人公

カリン
実父嫌い。名前だすのも嫌い

ワルター・フォン・シェーンコップ
何を考えているかわからないイケメン

アンネローゼ・フォン・G・シュタイナー
シュタイナー夫人。ヘルベルトくんと一緒にカリンのいい親役

オフレッサー
後日ローゼンリッターで『帝国の作り出した人型白兵戦兵器』の噂がたった



そんな感じでカリン親子編です。シリアス風味ですすいません!!あ、石投げないで!!

でも今後の展開上どうしても触れておきたいカリンとシェーンコップの親子関係。シュタイナーくんは原作知識で良かれと思ってやったら見事にカリンの地雷を踏みぬいた模様。原作知識があるからってそれを生かしてもいい方向にはいかないよ、ということです
でもこの地雷を処理しとかないと今後にね……

そして話の展開で単騎でローゼンリッターを蹂躙したオフレッサー。

きみ本当に人類?
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