銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


025話

 帝国辺境領を守備するという理由で帝国に侵攻した俺の第十四艦隊は辺境貴族連合の盟主であるクラインゲルト子爵領に到着した。

 基本的に同盟の艦艇は惑星への着陸能力を持たない。だが、帝国艦艇の設計を元に生産された第十四艦隊の旗艦・エクシールは惑星への着陸能力を持つ。そのためにエクシールを急速に発展して貿易惑星としての役割を果たし始めているクラインゲルト子爵領に作られた宇宙港に停留させ、前回のように俺とカリンとフィッツシモンズ中尉、そして護衛と言い張って無理やりついてきたオフレッサーである。

「すごい穀倉地帯になってますね……」

 オフレッサーの運転する車に乗りながら、カリンは外を見ながらそう呟く。

 カリンの言葉通りクラインゲルト子爵領は見渡す限り肥沃な畑となっていた。地球の中世レベルの農業レベルであった帝国辺境領はフェザーンを経由して同盟の農作業機械も導入して急激に発展していた。

 車を運転するオフレッサーはカリンの言葉に説明するように続ける。

「俺が帝国にいたころに、フェザーンの有力商人集団が帝国辺境に眼をつけて莫大な投資をしたそうだ。そこに同盟式の農業を取り入れた結果、帝国辺境領は帝国でも屈指の穀倉地帯となったそうだ」

「で、今の帝国辺境はちょっとしたバブル状態ってことか」

「その通りです」

 原作では帝国・同盟双方に害悪しか残さなかった帝国領侵攻作戦であるが、この世界では帝国辺境領の一人勝ちとなっている。

 車のダッシュボードに足を投げ出しながら俺は嫌そうに呟く。

「門閥貴族共が煩そうだな」

「私がいた頃はまだそうでもなかったですが、今は干渉が酷いでしょうな」

 オフレッサーの言葉に俺は車の窓からクラインゲルト子爵領の畑をみる。農作業をする人々の顔には笑顔があった。

 後ろの席からフィッツシモンズ中尉が顔をだしてくる。

「あの人々の笑顔を守るのはシュタイナー提督の仕事ですね」

「そういう風にプレッシャーかけるのやめようZE!!」

 俺の言葉にフィッツシモンズ中尉は笑い声をあげる。それに釣られるようにカリンにも笑い声がでた。

 それからしばらく走ると大きな屋敷がみえてくる。そしてその入口にはクラインゲルト子爵とその家臣達が並んでいた。

 クラインゲルト子爵の屋敷前に止められた車から降りてクラインゲルト子爵のところに向かう。クラインゲルト子爵も俺のところにやってくると手を差し出してくる。俺もその手をとって握手をした。

 するとクラインゲルト子爵の家臣の一人がその姿を写真に撮ってくる。

「辺境貴族連合に周知する写真です。よろしいですかな?」

「辺境貴族連合だけじゃなく、ローエングラム伯や門閥貴族に対しての抑止力でしょう?」

 俺の言葉にニヤリと笑うクラインゲルト子爵。アニメでは全く描写がなかった爺だが、なかなかいい性格をしている。

 それから俺とクラインゲルト子爵が笑顔で握手している写真を何枚か撮ったあと、クラインゲルト子爵に案内される形で屋敷の応接室に案内される。

 向かい合う形で座った俺とクラインゲルト子爵。俺の背後にはオフレッサーが眼を怒らせて仁王立ちし、その隣にフィッツシモンズ中尉とカリンが立っている。

 泣いている子供も泣きやむであろうオフレッサーにクラインゲルト子爵は声をかける。

「オフレッサー上級大将も無事にシュタイナー伯のところに行けたようで良かったですな」

「亡命の手伝いをしてくれたことには感謝している。だが、我が主君を害そうとすれば貴様の首をねじ切るぞ」

 オフレッサーの脅しにもクラインゲルト子爵は愉快そうに笑う。

「忠臣で羨ましいですな、シュタイナー伯」

「とびっきり獰猛だがね。それとクラインゲルト子爵、今の私は同盟軍将官です。呼ぶならシュタイナー大将、と」

「おっと、それは失礼しました」

 一応訂正はしておかないと何があるかわかったものではない。そのつもりはなくても気が付いたら亡命する羽目になっていた、となりかねないほど俺の立場は微妙にやばいのだ。

「それでクラインゲルト子爵、頼んでいた辺境守備にでている軍人を味方につけるという話ですが……」

「それについてですが、辺境部隊で一番の規模を持つシュタインメッツ中将はこちらについてくれることになりました。今は部隊を率いてここに向かっている途中のはずです」

「それは良かった。フィッツシモンズ中尉、エクシールに連絡してシュタインメッツ艦隊は友軍だと伝えてくれ」

「了解です」

 俺の言葉に部屋の隅に移動してエクシールと通信を始めるフィッツシモンズ中尉を尻目に、俺はクラインゲルト子爵に向き直る。

「味方につけれたのはシュタインメッツ中将だけですか?」

 ぶっちゃけ原作でも良将と呼ばれたシュタインメッツだけでも充分すぎるんだが、どうせだったらもっと味方は欲しい。何せ相手は数だけは多い門閥貴族だ。

「もう一人。後方攪乱や増援部隊阻止、補給線防衛等で功績を挙げている提督。ですが、この人物が変わっておりまして……」

 どこか困ったような表情になるクラインゲルト子爵。

「かたくなに会話をしようとしないのです」

 その言葉に俺の脳内で原作キャラがピンとくる。

「アイゼナッハ少将と言います」

(沈黙提督!! 沈黙提督じゃないか!!)

 俺の脳内の銀英伝ファンの部分がテンションが上がっている。

 沈黙提督ことアイゼナッハ。一切喋らないキャラであり、アニメでも喋ったのは「チェックメイト」だけだったはずである。良将として知られており、その昇進にはオーベルシュタインも反対しなかったという逸材である。

 シュタインメッツにアイゼナッハとか完全に勝ったな、風呂入ってくる案件なのだが、この世界では俺は知らないことになっているので、元帝国の重臣であるオフレッサーに顔を向ける。

「シュタインメッツ提督とアイゼナッハ提督……オフレッサーは知っているか?」

 俺の言葉にオフレッサーは首を傾げながら口を開く。

「シュタインメッツは元々金髪のこぞ……失礼、ローエングラム伯」

「ローエングラム閣下は今は爵位が上がって侯爵になっております、オフレッサー上級大将」

 クラインゲルト子爵の言葉に本当に嫌そうな表情を浮かべるオフレッサー。主君の義弟でもラインハルト嫌いなのは原作力さんの力を思い知る案件でもある。

「シュタインメッツは元々ローエングラム侯の旗艦の艦長を務めていた男です。その後に辺境に飛ばされたという話は聞いておりましたが、良将である、と我が友メルカッツから聞いております。アイゼナッハも目立つ功績こそありませんが、良い働きをする男です」

 オフレッサーの言葉に原作のシュタインメッツとアイゼナッハであることに安堵する俺。それをださずに軽く頷きながらクラインゲルト子爵に頭を下げる。

「礼を言います、クラインゲルト子爵。これで辺境貴族連合を守り切ることができそうです」

「いえ、私達は守ってもらう身。そのために尽力するのは当然のこと」

 クラインゲルト子爵はそこまで言うと言いづらそうな表情になる。

「それと、これも伝えておいたほうがいいと思うので伝えるのですが……」

「? なんです?」

 シュタインメッツにアイゼナッハがいればぶっちゃけリッテンハイム侯とか敵じゃないので何があっても大丈夫であるが。

「メルカッツ上級大将が総司令官として門閥貴族側についております」

「oh……」

 完全に忘れていたけど、そういえば原作さんではそうでしたね。

「我が友が憎きブラウンシュヴァイクとリッテンハイムに!? 冗談だとしても笑えぬぞ、クラインゲルト子爵!!」

 クラインゲルト子爵領に響き渡るんじゃないかという大声で叫ぶオフレッサー。そんなオフレッサーをみながらカリンが俺に近づいてくる。

「ヘルベルトさん、メルカッツ上級大将って確かシュタイナー家の家臣の方だったはずじゃ?」

「家臣、というかメルカッツ上級大将が若い頃にうちの祖父がその能力を見込んで抜擢した人物だな。その期待に答える能力も持っていたわけだが。で、メルカッツ上級大将もそれを恩に感じたのかうちの家寄りの軍人になっていた」

 オフレッサーにしろメルカッツ提督にしろ、俺の祖父が見込んで大成した人物のなんとも義理堅いことよ。

 まぁ、そのメルカッツ提督がよりにもよってうちの没落の原因を作ったブラウンシュヴァイク、リッテンハイムについたことで怒り狂っている石器時代の勇者がいるわけだが。

「まぁ、落ち着けオフレッサー。メルカッツ提督にも理由があるのだろう」

「どんな理由があるにせよ、よりよって怨敵両家につくなど考えられませぬ。怨敵両家につくぐらいならば頭をブラスターで撃ち抜くことを選ぶべきです」

 顔を真っ赤にしながら、かろうじて怒鳴るということをせずに唸るようにいうオフレッサー。

 それをみながらクラインゲルト子爵は口を開く。

「それが不思議なことで、メルカッツ提督が総司令官に着任してから門閥貴族連合の内情が不思議と我々のところに渡ってくるようになりまして」

 その言葉に俺もピンと来た。

「埋伏の毒、ということですか」

「おそらくは」

 俺の言葉に頷くクラインゲルト子爵。つまりメルカッツ提督は一時の汚名を被ろうとも、ブラウンシュヴァイク、リッテンハイムを滅ぼすために暗躍中ということだ。

 俺とクラインゲルト子爵の視線を受けてオフレッサーは顔を真っ赤にしながらも、怒りを抑えるように口を開く。

「如何な理由があろうとも怨敵の軍門に下ったのは事実。会う機会があれば一発殴ることにしましょう」

「オフレッサーの一発は余裕で人が死ぬからやめてくれ」

 普通にオフレッサーのグーパンでメルカッツ提督の頭が吹き飛ぶ姿が幻視できる。

「シュタイナー提督!!」

 すると焦った様子でエクシールと通信していたフィッツシモンズ中尉が俺に近寄ってくる。

 そして顔を近づけて俺に聞こえる声量で口を開く。

「ハイネセンでクブルスリー本部長が襲撃されました」

 その言葉に俺の視線が鋭くなる。同盟側でも内乱が始まった合図だ。

 俺の視線を受けてフィッツシモンズ中尉は言葉を続ける。

「襲撃犯はフォーク准将。クブルスリー本部長は護衛のおかげでかすり傷で済み、フォーク准将はその場で射殺されたそうです」

「え?」

 なんかヤンの死亡フラグが勝手に折れた件について。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
なんか帝国に帰ったほうがいいんじゃない? と思われる系オリ主

クラインゲルト子爵
すっごいやりての爺

メルカッツ提督
シュタイナー家のために埋伏の毒に

アンドリュー・フォーク
なんか死んだヤンの死亡フラグ



そんな感じで今月分更新です。
先月は更新できなくて申し訳ありませんでした。まさかコロナにかかるとは……

そして全然進まないストーリー。とりあえずシュタインメッツだけじゃ足りないよなぁ、と思ってこの時期どこにいたかわからないアイゼナッハを辺境貴族連合にスカウト。
アイゼナッハを選んだ理由? 作者が好きだからです。

そしてシュタイナー家のために埋伏の毒になったメルカッツ提督。今後のメルカッツ提督にご期待ください。

そして来月の更新ですが、リアルで色々あって忙しいので更新できないかもしれません、ご了承いただければ幸いです。
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