銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


026話

 第十四艦隊旗艦エクシール司令官室。ここで俺は机に脚を投げ出しながら天井を見上げながら考える。

 アンドリュー・フォークの死亡。良くも悪くも銀河英雄伝説のターニングポイントに現れるキャラクターだ。この世界でも発生してしまった同盟軍を傾けた帝国領侵攻作戦を引き起こし、同盟の内乱ではクブルスリー本部長の襲撃、作品終盤では主人公の一人であるヤン・ウェンリーの暗殺のきっかけを作った人物でもある。

 そのアンドリュー・フォークがクブルスリー本部長を襲撃した時に射殺された。

 原作では護衛に取り押さえられるだけだったのが容赦なく射殺されたのだ。

「う~ん」

 俺は足を組み替えて考えを進める。

 フォークの死によって何が起こるか?

 それはヤンの死亡フラグが1本折れたと言えないだろうか?

 ヤンの死亡する直接の原因は地球教だが、その出汁に使われたのがフォークの精神病院脱走である。

 だとすればこの世界でヤンの死亡する可能性は若干低くなったともいえるだろうか。

 俺は机から脚を降ろし、俺の従卒として司令官室を掃除しているカリンに話しかける。

「カリン」

「? はい? なんでしょうか?」

 掃除の手を止めて俺のほうを向いてくるカリンに問いかける。

「カリンはアンドリュー・フォークの死亡をどう考える?」

「自業自得では?」

 うちの被保護者はかなり辛口だった。このままではいけない。確かにカリンの周囲にいる大人はヤンを筆頭にダメな大人ばかりだ。だが、俺は保護者としてカリンを正しい道に導くという使命がある。

「いいか、カリン。いくら相手があのフォークでもその言い方は悪いと思わないか?」

「ですが自業自得以外に言い表せる言葉を私は知りませんが、ヘルベルトさんは他に言い表せる言葉をご存知ですか?」

「……」

「言えないじゃないですか」

 完全に論破されてしまった。

 難しい顔で黙ってしまった俺をみて、溜息をつきながらカリンは言葉を続ける。

「確かに故人に対して使うには不適当な言葉かもしれませんが、同盟全体を傾けた帝国領侵攻作戦の発案者だけでもどうかと思いますのに、今回の本部長襲撃ですよ? 特に本部長襲撃なんてその場で射殺されても文句言えない……まぁ、実際に射殺されたから文句も言えないんですが、仕方ないんじゃないんですか?」

「もうやめて!! フォークのライフはもう0よ!!」

 カリンのフォークに対する辛辣な言葉に俺は某ジャンプ漫画のように止める。こんなに口が悪くなったのはきっとヤンやラップ、キャゼルヌ先輩たちのせいに違いない。

 カリンは掃除していた道具を片付けると、紅茶を淹れて俺の机までもってきて、話しかけてくる。

「でも、急にどうしたんですか?」

「いや、フォークが一人で襲撃を計画するとは思えない。そして惑星ネプティス、惑星カッファーの反乱。これを考えるとフォークの裏には内乱の首謀者がいると考えるのが妥当だろう」

 俺の言葉に真剣な表情になるカリン。

 そう、ついに同盟軍の内乱が始まってしまったのだ。ネプティスとカッファーで反乱がおきたという通信をヤンから受け取って数日、同盟領ではすでに大規模な内乱がはじまっていると思ったほうがいいだろう。

 俺の机の反対側に椅子を持ってきて座るカリン。俺が考えをまとめるための話し相手になってくれるのにすぐ気付くあたり、本当に頭が良い子だ。

「おそらく反乱の首謀者の狙いは首都星・ハイネセンの軍事力を空洞化することだろう」

「そうなるとハイネセンの艦隊は鎮圧に使えないということですか?」

「そこが難しい。ハイネセンに残っている艦隊は防衛艦隊の第一艦隊。そして帝国領侵攻作戦に参加しなかったために無傷で残っている第十一艦隊の2艦隊。だが、ハイネセンの守備を考えれば第一艦隊は動かせない」

「そうなると第十一艦隊が鎮圧に動くということですか?」

 カリンの言葉に首を振りながら俺は言葉を続ける。

「内乱の首謀者の最終目標はハイネセンの占拠だ。それを考えると第一艦隊と第十一艦隊は内乱に参加している可能性がある」

 俺の言葉に驚いた表情で絶句するカリン。

「同盟軍の艦隊で内乱に参加しないと絶対言えるのは、まず距離的な理由で参加できない俺の第十四艦隊。そして内乱を予期してクブルスリー本部長とビュコック司令長官に進言したヤンの第十三艦隊」

「フェザーン方面のアップルトン大将とウランフ大将はどうなんですか?」

 カリンの言葉に顎に手をあてて考える。

「正直なところわからない。帝国領侵攻作戦に共に轡を並べて戦った者として信じたい気持ちはある。だが、カリン。最近の同盟の政治家の質の悪さは周知のとおりだ」

 主に俺やヤンのやらかしによって同盟の政治家の多くが逮捕や辞任などに追い込まれており、今では反主流派であったジョアン・レベロやホワン・ルイの支持率が高まっている。

 そして銀英伝でも屈指の化け物であったトリューニヒトも無傷という、完全にトリューニヒトの一人勝ち状態なのが現状の同盟の政治家状況である。

 そして、そんな政治家達に対して反感を覚えて決起したのが今回の反乱の首謀者達の軍人である。

 この世界ではまだわからないが、原作ではグリーンヒル大将とブロンズ大将という大物二人が参加している。その繋がりを考えるとアップルトン大将とウランフ大将にも声をかけていてもおかしくない。

「ですが、アップルトン大将とウランフ大将は内乱に参加していないと思います」

 カリンの言葉に俺は少し驚く。

「理由は?」

「ヘルベルトさんと同じで距離の問題です。ヘルベルトさんは帝国領。ヤン提督はイゼルローン要塞。そしてアップルトン提督とウランフ提督はガンダルヴァ星域の惑星ウルヴァシー。ハイネセンとウルヴァシーの距離を考えるとアップルトン提督とウランフ提督に声をかける余裕は内乱の首謀者にないと思います」

 カリンの言葉になるほど、と頷く。

 確かに原作でも救国軍事会議は距離の問題でヤンに声をかけていなかった。それを考えるならアップルトン提督とウランフ提督にも声はかかっていないと思うのが妥当だろう。

「なるほど、カリンの言う通りだ。そうなると内乱が本格化してから説得を受けないか、ということか」

 だが、そのあたりはあまり心配していない。アップルトン提督とウランフ提督の性格上、内乱に参加するとは思えない。そうなると内乱の鎮圧に参加できる艦隊は帝国領にいる俺の艦隊、そしてウルヴァシーのアップルトン提督かウランフ提督の艦隊のどちらかは守備のために残るとして、もう片方の艦隊は鎮圧に参加できるだろう。

 軍部の中心であるクブルスリー大将、ビュコック大将、ボロディン大将、アル=サレム大将もハイネセンに残っていることを考えると、ハイネセンの内乱自体も成功するかどうか怪しいところである。うまくいけば挙兵した救国軍事会議をビュコック大将達が鎮圧できる可能性もある。

「ヘルベルトさん、私も気になっていることがあるんですが」

「それは?」

「帝国でもついに大規模な内乱がはじまりました」

 そう、同盟でネプティスとカッファーの占拠が発生したという報告がヤンから入った数日後、帝国でも大規模な内乱が始まった。

 原作ではラインハルト対門閥貴族であったが、この世界ではクラインゲルト子爵を中心に辺境貴族連合という第三軍が組まれている。俺はそのクラインゲルト子爵の願いで同盟軍から派遣された艦隊となる。

「ヘルベルトさんは自由惑星同盟ですが、クラインゲルト子爵が説得した辺境駐留艦隊は帝国軍です。連携はできるんですか?」

「難しい質問だ」

 カリンの言葉に俺は難しい表情をする。

 クラインゲルト子爵が説得したシュタインメッツとアイゼナッハは能力としては全く問題ない人物だ。

 問題は俺が同盟軍で二人が帝国軍というところだ。

 当然であるが原作において同盟軍と帝国軍が共闘したことはない。歴史的にみれば某麻薬を撲滅するために隠れて協力したことはあるが、軍事的共闘は一切ない。

 だが、この世界ではそれが発生してしまった。

 能力があっても連携ができなければ負ける可能性もある。

「そこら辺に関してはシュタインメッツ提督とアイゼナッハ提督と話し合うしかないんだよなぁ」

 俺が上官であったり、向こうが上官だったりしないので、階級で上を決める真似はできない。俺は何故か同盟軍人でありながら帝国の爵位を持っているが、それを使うと益々帝国への亡命する羽目になりかねないからそれはできない。

「理想としては名目上でもクラインゲルト子爵に頂点に立ってもらって、その下に俺とシュタインメッツ提督とアイゼナッハ提督が横並びで並ぶ……というのが理想か」

「それで勝てるんですか?」

「ラインハルト率いるローエングラム軍は無理だな」

「弱気ですね」

「実力をはっきり認識しているんだよ」

 正直なところラインハルト率いるチート軍団相手にするには銀英伝最強の(頭脳だけ)チートのヤンを引っ張ってくるしかない。

 だが、互いの足を引っ張り合うことしかできない門閥貴族連合相手ならどうにかできるだろう。

「そして可能性の問題としてシュタインメッツ提督やアイゼナッハ提督がラインハルトや門閥貴族の命令を受けて辺境貴族連合に参加している可能性もある」

 俺の言葉に驚いた表情をするカリン。

「それ、大丈夫なんですか?」

「実際やられたら最悪通り越してたぶん無理だが、まぁ、それはないだろう」

「なぜですか?」

 カリンの言葉に俺は指を2本立てる。

「一つ目、ラインハルトの可能性だが、あいつの性格上これはやらない」

 同盟の内乱教唆に関しては帝国内部で戦っているときに同盟に参戦されたら厄介だからやっただけで、基本的に金髪くんはそのような謀略を嫌う。

 やるんだったら正面から正々堂々と潰しにくるだろう。

「もう一つが門閥貴族連合の連中だが、門閥貴族は面子に拘る。それを考えるとこんな謀略を嫌うだろう」

 基本的に連中はバカだが、異常に面子に拘る面もある。それを考えると内通者を作って裏切らせるという謀略を嫌うはずだ。

 そこまで回せる知恵がない可能性もあるが、原作でもアンスバッハやシュトライト、そしてラインハルト側に裏切ったフェルナーあたりなら思いつくだろうが、主君であるブラウンシュヴァイクがそれを許さんだろう。

「まぁ、ひょっとしたらクラインゲルト子爵自体がどっちかと通じていて、両提督が到着次第俺の第十四艦隊を手土産に投降する、という可能性もあるが」

「それが一番最悪じゃないですか」

 カリンの呆れたような言葉に俺は軽く頭をかく。

「だから基本的にクラインゲルト子爵の館に行くのは俺とカリン。それに副官のフィッツシモンズ中尉くらいだろうな。で、館で異変があった場合は即座にエクシールを発艦させて同盟に帰るようにチェン少将達には言ってある」

 オフレッサー? オフレッサーはたぶんクラインゲルト子爵の館に斧片手に乗り込んできて多分俺を救出すると思うから放置である。

 とりあえずカリンに説明する形で今考えられる問題は整理できた。あとは実際にシュタインメッツとアイゼナッハがやってきてからだろう。

 そこまで考えて改めてカリンの顔をみる。順調に美人に育ってきているその顔を不思議そうに首をかしげているが、その顔も可愛らしさもある。

 だが、今までの会話で思ったが、カリンはかなり頭も回る。

「どうかしましたか?」

「いや、カリンが軍人志望じゃなくてよかったと思ってな」

 俺の言葉にカリンが苦笑いする。俺とヤンが軍人嫌いなのはカリンはよく知っている。そして軍人を志しているユリアンと違ってカリンはそんな気配は微塵もない。

「軍人の愚劣さというのを保護者から耳にタコができるくらい聞かされているので」

「ははは、俺の教育がうまくいっている証拠だな」

「ヘルベルトさん、反面教師って言葉知ってますか?」

 都合のいい俺の耳はその言葉をシャットアウト。

 俺の空いたカップに紅茶を淹れてくれているカリンをみながら俺は会話を続ける。

「それじゃあ、カリンは将来やりたいこととかないのか?」

「やりたいこと、ですか?」

「ああ。ずっと俺の従卒、というわけにはいかないだろう」

 俺の言葉に少し考えこんだカリンだったが、すぐに何か思いついた表情になる。

「将来、というかこの戦争が終わったらですけど、子供からみたヘルベルトさんとヤン提督の素顔、というタイトルで本でも書いて印税で暮らします」

「ははは!! それはいい!! 俺は98%くらい美化してくれ」

「98%美化したらそれもうヘルベルトさんじゃないですよ」

「大丈夫、ヤンのほうは100%素で書いていいから」

「100%素で書いたら英雄像なんて吹っ飛びますね」

 そういったカリンの言葉に俺は大笑いする。俺の笑い声につられてカリンもくすくすと笑う。

「でも本当にやりたいことは別にあるんです」

「それは?」

 俺の問いにカリンは人差し指を立てて、俺にお説教するように言う。

「産まれてくるヘルベルトさんとアンナさんのお子さんをヘルベルトさんみたいなダメ大人にならないようにすることです」

 カリンの言葉に俺は腹が引きつるほど爆笑したのだった。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
この後笑いすぎでマジで腹にひきつけを起こして医務室送りになった

カーテローゼ・フォン・クロイツェル
養父とその悪友のおかげで軍人適正は高いが本人になる気はない。そして生まれてくる子供を楽しみにしている。



そんな感じで今月分の更新です。

先月は更新できなくて申し訳ありません。今月からしばらくはリアルも落ち着くので月一更新を頑張りますので気長にお待ちいただければ……

本当はシュタインメッツとアイゼナッハ合流まで書く予定だったのですが、普通に文字数が五千字をこえたので分割することに。
そして話が進むことにどんどん優秀になっていくカリン。周囲が一流ばかりだからね、仕方ないね(だが、本人は軍人になる気なし

どうでもいい作者の近況:にじGTAにハマってPS4のGTA5を買いました。作者はカワサキのニンジャ乗りなのでそれモチーフのバイクあってテンション上がりました。
あとsteamのセールになってたアーマードコア6も買いました。今後、作者の脳内にコーラルが注入された場合、用語だけだすかもしれません。
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