銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


031話

「ヘルベルトさん、何してるんですか?」

 エクシールの俺の執務室。俺が画面に向かって舌打ちしながらカチャカチャやっているのを、同じ部屋で勉強していたカリンが不思議そうに尋ねてくる。

「うん? ゲームのランクマ」

 そう答えた瞬間にカリンの視線がゴミを見る目になった。

「落ち着けカリン。これには理由があるんだ」

「敵地のど真ん中で執務室で仕事せずにゲームをやってる時点でだいたいアウトなんですけど、一応、理由を聞いてみましょうか」

「ああ、俺がやってるゲームのランクマにチーターが現れたんだ」

 カリンの視線が益々冷たくなった。

 だが、こんな俺やヤンに慣れているカリンは一度溜息をつくと再度尋ねてくる。

「なんていうゲームですか?」

「アーマード・コンバット6。略してAC6だ」

「……ああ、あの続編を10年待ち続けた人達を狂喜乱舞させた」

「ああ! 我々は10年待った……! その間にネットミームにされたりしてネットの玩具になっていたが、ついに続編を出したんだよ……! これには同盟、帝国問わず銀河中のレイヴンやドミナント、イレギュラー達が歓喜した……!」

 当然のように俺も待っていたし、発売日には有給をとって理不尽な敵ボスに舌打ちしながらクリアして脳汁を吹き出していた。

 だが、そんな俺の反応を他所にカリンは真顔で答える。

「でもランクマにチーターが現れたんじゃ、もう過疎るんじゃないんですか?」

「甘いぞ、カリン」

「え?」

 不思議そうなカリンに俺は真剣な顔で答える。

「チーター如きを狩れないようではイレギュラーとは呼べない」

「チーター相手に普通のプレイで勝ったんですか!?」

「イエ~ス!! ぶっちゃけ『硬くて弾幕が酷い敵』ならこのシリーズでは普通にストーリーのボスに出てくる!! 俺もチーター狩ったがナーフ前の序盤のボスのほうが強かった!!」

「運営が対処する前にプレイヤーがチーター狩るとかどんだけですか……!!」

 カリンが戦慄しているが、割とこのゲームのランクマに潜っているイレギュラー達なら割と問題なく狩れてしまった。

 するとカリンは不思議そうに首を傾げた。

「それじゃあ、なんで舌打ちしていたんですか?」

「ああ。それはチーターを狩ろうとランクマのイレギュラー達が一斉に潜り始めてな。普通にチーターじゃなくてイレギュラー同士のマッチングになってガチンコ勝負になってな……やはりゲームのランクマは心を荒ませるな……」

「なんていうかもう……」

 本気の呆れの視線をもらったので俺は電源を落とす。するとカリンは立ち上がって俺に紅茶をいれてくれた。

「さて、カリン。ちょっと今の状況を整理してみよう」

「はい」

 俺の言葉に俺の向かい側に椅子を持ってきて座るカリン。

 こうやってカリンに言い聞かせるように話すと自分の頭の中の整理にもなっていいのだ。それをカリンも理解しているからこうやってすぐに聞く態勢になる。

「我々、辺境貴族連合は侵攻してきた門閥貴族連合の別動隊を撃退……というか大半の艦隊をこちらに吸収した」

 降伏勧告が嵌って大量に降伏してきた帝国艦隊は、シュタインメッツ提督とアイゼナッハ提督の両名に振り分けて再編されている。

「で、相手が橋頭堡にして、辺境貴族連合の外れにあるガルミッシュ要塞にはアイゼナッハ提督が進駐。無事にこれを占拠した」

 一応、防衛隊のようなものはいたようだがアイゼナッハ提督の降伏勧告を受けて降伏。無傷でガルミッシュ要塞はこちらのものになった。

「で、そこで捕虜になっていたリッテンハイムを筆頭にした門閥貴族連合の連中を一隻にすし詰めにして追放。そのことはローエングラム・リヒテンラーデ陣営や門閥貴族連合にも通達した」

「あ、あのヘルベルトさん」

 そこまで言うとカリンが言いずらそうに口を挟んでくる。100%言いたいことはわかるが一応聞いてみる。

「どうした、カリン」

 俺の言葉に少し迷ったようだったが、カリンも思い切ったように口を開く。

「追放したリッテンハイムの輸送船を追いかけるようにオフレッサー客員大将が白兵戦部隊連れて出て行ったら、リッテンハイムの乗った輸送船が事故で轟沈したと」

「事故だよ、カリン」

「いえ、どう考えても」

「事故ってことにしておかなきゃ大変だから……!!」

 確かに俺の一瞬の隙をついてオフレッサーが揚陸艦と白兵戦部隊連れて出て行ったら、リッテンハイムの輸送船が轟沈したとか、どう考えてもあの石器時代の勇者が何かやっただろうが、それを突っ込むと門閥貴族連合に大義名分を与えてしまうのであくまで事故なんや……!!

 まだ何かを言いつのろうとしたカリンだったが、その言葉を飲み込んで話を変える。

「とりあえずは辺境貴族連合の危機は去ったわけですが、今後はどうなるんですか?」

 カリンの言葉に俺は腕を組んで首を傾げる。

「ぶっちゃけもうやることないと思う」

「そうなんですか?」

「いや、冷静に考えてみろカリン。あの戦争の天才のローエングラム侯が軍事素人の門閥貴族連合に遅れをとると思うか? 何せリッテンハイムの分派行動で数でも変わらなくなったんだからな」

 数は同じくらい。指揮官の質は比べるのも烏滸がましいレベルの差がある両陣営である。門閥貴族連合は数的有利がなくなった時点で詰んだのだ。

 俺の言葉にカリンはどこかほっとした様子で溜息をつく。

「じゃあ、私達の進駐もここまでですね」

「……まぁなぁ」

「? 何か気になることでもあるんですか?」

 俺が思い浮かべるのは原作でラインハルトとキルヒアイスの溝が決定的になったヴェスターラント事件である。この世界でも起こるかわからないが、いざ起こった時に俺はどんな反応をとればいいのかわからない。

 正直なところこの世界ではラインハルト陣営が尋常じゃなく強くなっているので、ここでキルヒアイスと仲悪くなってくれるとワンチャン同盟の生きる芽が出てくるのだ。だが、それはヴェスターラントの虐殺を願ってしまうことでもあり、それは同盟云々の前に人としてどうだろうという気持ちがある。

 同盟のためならヴェスターラントは起こったほうがいい。だが、一人の人間としてみるならばヴェスターラントの虐殺は起こって欲しくない。

「ヘルベルトさん?」

 不思議そうに首を傾げているカリンに俺は苦笑しながら頭を撫でる。

 少なくともカリンの保護者として間違った選択はしたくない。だから個人的にはヴェスターラントの虐殺は起こって欲しくはないのだ。

「門閥貴族連合の連中も何かやらかすかもしれない。それを防ぐ用意はしておきたいな」

「はい!!」




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
ヴェスターランドの虐殺をどうするか悩み中

カリン
保護者の良い聞き役

オフレッサー
シュタイナーくんの目を盗んで部下連れてヒャッハー

リッテンハイム侯
少なくとも公式文書には事故死と書かれる



そんな感じで12月分滑り込みセーフです!! 短いです!! ごめんなさい!! でも次への助走回なんで仕方ないんです。

帝国内乱編もいよいよ佳境。原作でラインハルトとキルヒアイスの仲を引き裂いたヴぇスターランド事件が近づいてきました。
ぶっちゃけ連載始めた時からここのお話は決まっていたので書くのが楽しみです。

そしてさらっと殺されるリッテンハイム。オフレッサーに目をつけられたからね、仕方ないね……

あとシュタイナーくんがやってたゲームの元ネタは当然アーマドコア6。執筆直前にネタ提供感謝だチーターくん。
そしてチーターを素で狩れるイレギュラーしかいないAC6のランクマに恐怖を覚えた作者。きっと作者がAC6のランクマに潜ることはないでしょう。
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