銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


033話

 俺が帝国全土に向けてブラウンシュヴァイクの暴走を止めてくれとお願いしてから十日がたっている。

 その間にも様々な情報が錯綜しているが、俺はクラインゲルト子爵の屋敷に用意された部屋でカリンが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。

 いや、さぼっているとかではなく、本当に俺はやることがないのである。

 距離などの問題で俺の第十四艦隊が直接止めるために出撃することは不可能である。そしてこの騒動の結末が我々のところに一番早く入るのはクラインゲルト子爵の屋敷である。

 そのために俺はこの十日エクシールに戻らずクラインゲルト子爵の屋敷に泊っている。

 ちなみに放っておくと暴走する石器時代の勇者がいるのでエクシールには今、帝国で起こっている騒動は報告してある。連絡を受けたチュン少将が一瞬の唖然の後に怒りをあらわにしていたのが印象的である。

 すると俺の部屋の扉がノックされて開かれ、肩で息をしているフィッツシモンズ中尉が入ってきた。

「シュタイナー提督! クラインゲルト子爵から至急執務室に来て欲しいと!!」

「……さて、来たか」

 フィッツシモンズ中尉の言葉に俺は残っていた紅茶を飲み切ると立ち上がって同盟軍の軍帽を被りながら歩き始める。その後をフィッツシモンズ中尉とカリンが急ぎ足でついてくる。

 俺は同盟軍での立場の悪化の可能性があることをやってまで、ヴェスターラントの悲劇を止めようとしたのだ。ラインハルト率いる金髪軍が止めてくれたことを願うばかりである。

 そしてすぐにクラインゲルト子爵の執務室に到着すると、待機していた執事が扉を開いて中に入るように促してくる。

 そして俺が中に入ると真剣な表情で報告書を読んでいたクラインゲルト子爵が顔をあげて帝国貴族の礼をしてくる。それに対して俺は同盟軍の敬礼を返すとすぐに口を開こうとした。だが、それを止めてすぐにクラインゲルト子爵が口を開いた。

「まずは結果から。ヴェスターラントは無事です」

 その言葉に俺の口から大きな安堵の溜息。背後のカリンとフィッツシモンズ中尉からは嬉しそうな歓声があがった。

「どのような流れになりましたか?」

 クラインゲルト子爵に促されてソファーに座りながら俺が尋ねると、クラインゲルト子爵も持っていた報告書をみながら答えてくる。

「シュタイナー伯爵の檄に真っ先に答えたのはローエングラム侯旗下のロイエンタール提督配下のブルーノ・フォン・クナップシュタイン准将だったそうです」

「……あ、あの時のヘルベルトさんの配下の人!!」

 クラインゲルト子爵の言葉にカリンが思い出したのか思わず声を出す。

 それに頷きながらクラインゲルト子爵は言葉を続ける。

「その通りです。クナップシュタイン准将はロイエンタール提督に『シュタイナー伯に忠義を示すのは今しかありません!! 私は行きます!!』という通信を一方的に送ると100隻ばかりの艦隊を率いて出撃したそうです」

「また無茶を……」

 俺の言葉にクラインゲルト子爵も苦笑いする。普通に考えてブラウンシュヴァイクの艦隊相手に100隻では圧倒的に数が足りない。

「それでも主の命だからこそクナップシュタイン准将は命を捨てる覚悟だったのでしょう」

 割と昔から泣き虫だったくせに妙に頑固で糞真面目な部分があったブルーノである。それが今回も出てしまったのだろう。

「当然、その報告を受けた『シュタイナー伯派』を自称するロイエンタール提督とメックリンガー提督も呼応。上役のローエングラム侯に『我ら旧恩のために出撃する』と連絡すると艦隊を纏めて出撃したそうです」

「オスカーとエルも動いてくれたか」

 金髪に所属する悪友と一緒に悪さしていた仲間も動いてくれたらしい。

「その直後にローエングラム侯は旗下に向けて『ブラウンシュヴァイクの暴走を止めるべし。これは軍人ではなく人としての願いである』と宣言して、準備が整った艦隊から順次出撃させたそうです」

 当然のようにラインハルトも動いてくれた模様。少しだけオーベルシュタインの策謀があるかな、と思ったが杞憂だったようである。

「戦いに関してですが、ブラウンシュヴァイクの艦隊がヴェスターラントまで残り二日の距離となったところで100隻のクナップシュタイン准将が追いつき交戦開始。クナップシュタイン准将の艦隊も100隻とは思えないほど奮戦するも、やはり数の差はいかんともしがたく、残り14隻まで数を減らされたようです」

 それは軍事的には全滅と言われるレベルである。

「ですが、クナップシュタイン准将の奮闘によって後続のロイエンタール提督とメックリンガー提督が到着。それと同時に門閥貴族連合からの離脱を宣言、追撃していたメルカッツ提督とファーレンハイト提督の艦隊も追いつき挟撃の形になり、ブラウンシュヴァイクの艦隊は壊走状態になりガイエスブルグ要塞へと逃げ帰ったそうです」

 そこまで聞いて俺はソファーの背もたれに体重を預けて大きな安堵の溜息をつく。

 カリンに良いかっこしたいのと、人道的な面からこのヴェスターラントの悲劇を止めると決めた俺だったが、本当に原作屈指のあの悲劇が起こらなかったことを知ると、安心と同時に不安が出る。

 何せこれで金髪と赤毛の仲に罅は入らないし、下手したら赤毛も死なない。それは同盟軍にとっても致命的な戦力差になりかねないからである。

 まぁ、同盟のこれからについてはヤンに丸投げするとして、俺が顔を戻すと、クラインゲルト子爵が深々と頭を下げていた。

「今回の帝国貴族が起こした不始末を止めてくれたこと、深く感謝いたします」

「頭を上げてください、クラインゲルト子爵。私は人として当然のことをしたまでです」

「ですが、同盟軍であるシュタイナー伯にとっては同盟軍での立場を危うくすることでもあったはず。それにも関わらず帝国の民のために動いてくれたこと、帝国は決して忘れませぬ」

 その言葉に俺は苦笑する。

「礼は受け取っておきます。ですが、クラインゲルト子爵。今回の騒動で今回の内乱、恐らく決着がつくでしょう」

 俺の言葉にクラインゲルト子爵も頷く。

「ええ。今回のブラウンシュヴァイクの悪行は帝国全土に伝わり、これを支持する者はいなくなるでしょう。そしてそれを止めるために動いたローエングラム侯に声望が集まります」

 そう、原作でもそうであったが、今回のブラウンシュヴァイクの暴走で元からなかった人心はブラウンシュヴァイクから離れ、ラインハルトの下に集まるだろう。

 すると次は何が起こるか?

 そう、ラインハルトとリヒテンラーデの主導権争いだ。原作ではオーベルシュタインの策謀でクーデター的にラインハルトが権力を握ったがこの世界ではどうなるかわからない。

 だが、まぁ、それは帝国の問題で俺の問題ではない。

 俺はソファーから立ち上がるとクラインゲルト子爵に手を差し出す。クラインゲルト子爵も俺の手を握り返してきた。

「同盟に帰られますか?」

「この後に起こるのはライ……ローエングラム侯とリヒテンラーデ公の主導権争いでしょう。そこに同盟軍である我々が介入する余地はありますまい」

 俺の言葉にクラインゲルト子爵も笑う。

「そうですな。後は帝国の人間がやるべきことです」

 そう言うとクラインゲルト子爵は握手を離すと恭しく礼をする。

「今回の内乱で辺境貴族連合を守ってくださったシュタイナー提督と同盟軍第十四艦隊の皆さんに最大限の感謝を……」

 それに俺は敬礼を返すとクラインゲルト子爵の執務室を出て、そのまま屋敷の外に出る。

 明るい陽射しを浴びながら俺は両手を伸ばして伸びをする。そしてついてきていたカリンとフィッツシモンズ中尉に笑顔で振り返る。

「それじゃあイゼルローンに帰るか」

俺の言葉にカリンは元気よく、フィッツシモンズ中尉は笑顔で敬礼を返してくるのであった。




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
帝国の民にとって英雄のような扱いになることになった。

クラインゲルト子爵
シュタイナーくんや第十四艦隊に感謝しているのは本当。でないと辺境貴族連合なんかやっていけなかったからね!

ラインハルト・フォン・ローエングラム
義兄の頼みも叶えられてルンルン

クナップシュタイン ロイエンタール メックリンガー
旧主のためならえんやこら(暴走)

ブラウンシュヴァイク
え!? ここから入れる保険があるんですか!?(あってたまるか)



お久しぶりの更新で申し訳ございません!!(伸身背面土下座)

体調が悪かったり仕事の異動があったりで執筆する余裕がありませんでした。今後はまた一か月に一回更新の頻度に戻していけたらなぁ、と思っております(努力目標

そしてスパッと終わらせてしまった帝国内乱編。ヴェスターラントの悲劇を起こさなかったことにより金髪赤毛の仲に罅は入らないので、同盟軍の難易度がさらに上がりました。
シュタイナーくんはマゾかな?

本当はもうちょっと帝国内乱編を書くつもりだったのですが、この後はブラウンシュヴァイクが処刑されてラインハルトとリヒテンラーデの権力闘争になるので介入の余地ないな、ということでシュタイナー君with第十四艦隊はイゼルローンに帰ることにしました。

イゼルローンに帰ると何が起こるか?

そう……!! みんな大好きコメディ回だ……!! シリアスなんて吹っ飛ばすぞ……!!
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