宇宙歴796年。俺は侵攻してきた帝国軍の迎撃のために第六艦隊の500隻ほどの艦隊を統率して戦場に出ていた。第六艦隊の司令官はムーア中将。しかも戦場はアスターテ。止めにとった戦法は三方位からの包囲戦。どう考えても原作開始のタイミングのアスターテ会戦ですよねぇ。しかも第六艦隊って敵前で戦場転換をやらかして全滅する艦隊だ。最悪すぎる場所である。
幸いなことにムーア中将に嫌われているので、編成の外れに置かれたので助かったという点だ。さらに幸いなことに俺の原作知識でここに士官学校時代からの友人であるジャン=ロベール・ラップ少佐がいるとことを知っている。ラップの性格上、ムーア中将から嫌われるのはわかりきっていたので、ムーア中将にかけあって俺の艦隊にきてもらった。
「さ〜てと、ラップよ。第四艦隊はどうなったと思う」
「おそらくは全滅しただろうな」
艦橋で俺と参謀となったラップは軽く会話する。一応、ムーア中将にヤンがいる第二艦隊との合流を進言したが、全体の指揮に口を出すなと言われて怒られた。
「困ったもんだな。俺はカリンの将来があるからまだ死ぬわけにはいかないんだが」
「奇遇だな。俺もジェシカとの結婚があるから死にたくない」
トラバース法によって我が家にやってきたカーテローゼ・フォン・クロイツェルことカリンとは友好的な仲になっている。むしろ、実の父親のように慕われている。俺も実の娘のように可愛がっていた。その後にヤンの家にもユリアン・ミンツ少年がやってきた。その後にお互いの家で顔合わせを行い、カリンとユリアンは友人のような関係になっていた。
その後も酒場で酔いつぶれた俺とヤンを何度も迎えに来てくれたことには感謝している。
ラップもこの戦いの後にジェシカ・エドワーズと結婚するそうだ。
「それで? シュタイナー准将はどのくらいで来ると思っているんだ?」
「もうそろそろ来るだろうな」
俺とラップの会話の瞬間にオペレーターから敵がやってくる報告が入る。
「規模は?」
「二万隻です!」
オペレーターの言葉に俺とラップは肩をすくめる。
「第四艦隊は全滅したようだな」
「まぁ、各個撃破のいい的だわな」
「旗艦ペルガモンより通信! 『全艦反転して迎撃せよ』とのことです!」
「頭悪いんじゃないか、ムーア中将は……」
司令官からの通信に俺は思わず呟く。原作知識もあったが、この世界では戦術も学んだ。それのおかげでこの命令の愚劣さがわかる。
敵艦隊の一部の動きが悪いのを見破った。おそらくは貴族の提督だろう。脱出を狙うのならあそこだな。
敵艦隊の砲撃で第六艦隊総旗艦ペルガモンの消滅の報告を聞いて俺はすぐさま行動に移す。
「全艦、伝達していた通りに陣形をとれ」
俺の言葉にラップが俺の艦隊に命令を伝達させる。少しの時間で陣形を取らせると、動きの悪かった一部の艦隊に突撃する。
士官学校時代から戦術や艦隊運用ではトップクラスの成績を誇っていたので、少しも難しい仕事ではない。
「敵艦隊突破!」
「それじゃあ、さっさと雲隠れするぞ。ここにいたら残党狩りで死ぬ」
オペレーターの嬉しそうな言葉に、俺は手を振りながら答える。俺の艦隊には第六艦隊の残党もついてきていた。その数は少数だが約2500隻程度。合計で3000隻程度になった。
「このまま逃げるのか?」
「まさか。せっかくだから第二艦隊のヤンを助けに行くとしよう」
ラップの言葉に俺はニヤリと笑いながら答えるのであった。
「おやおや、パエッタ中将が負傷したか」
「その後に誰が指揮官になるかだな」
俺が暫定的に率いることになった第六艦隊3000隻は第二艦隊と帝国軍の戦う戦場の近くで、レーダーに映らないように潜んでいる。
『全艦隊に告げる。私はパエッタ総司令官の次席幕僚ヤン准将だ。旗艦パトロクロスが被弾し、パエッタ総司令官は重傷をおわれた。総司令官の命令により、私が全艦隊の指揮をひきつぐ』
「お、ヤンは生きていたか」
「相変わらず悪運の強い男だ」
「シュタイナーそれはブーメランだから」
ヤンの放送を拾って聞きながらラップと会話する。
「これからどう動くんだ?」
「ヤンの手助けをするさ」
俺はそう答えると艦隊に指揮を出す。
「全艦出撃! 第二艦隊を援護するぞ!」
俺の指揮によって第六艦隊残党3000隻が帝国軍に襲いかかる。敵もこちらの動きに気づいていなかったのか、混乱に陥る。ヤンのことだからこの隙に態勢を整えるだろう。
こちらも相手の動きに対応し始めたのを見てすぐさま退却する。一部が突出してこちらに向かってこようとするが、ヤン率いる第二艦隊が帝国軍に攻撃を開始したので、少数のこちらでなく第二艦隊の相手に注視し始めた。
「ラップ少佐。こちらの損害は?」
「98隻。まぁ、少なくて済んだと言うべきだろうな」
奇襲とは言え被害は出る。俺はそれを聞いて同盟軍のベレー帽をとって団扇代わりに仰ぐ。
「これからどうする?」
「ラップにはあれに突入する勇気があるか?」
「無理だな」
俺の問いかけにラップは即答した。今世界では意外と縁の深いラインハルトだが、原作通りに天才っぷりを発揮している。第二艦隊を相手にしながらこちらの動きにすぐさま対応できるようにしている。これに調子にのって突入したら宇宙の塵になるだろう。せっかく第六艦隊という死亡フラグを突破したのだ。これ以上は勘弁して欲しい。
しばらくは細かい艦隊運用で帝国の注意をひきつけるというヤンの援護をしていたら、ヤンは原作通りにラインハルトの紡錘陣形突入を逆手にとって帝国軍の背後に回って消耗戦を強いようとした。その時点で俺の仕事はやることがなくなったと言っていい。
ヤンとラインハルトはお互いに呼吸を合わせるようにお互いに軍勢を退いた。俺もヤンの第二艦隊の側による。
「第二艦隊総旗艦パトロクロスから通信です」
「繋いでくれ」
オペレーターの言葉に俺がそう言うと、通信画面に悪友の顔が映った。ヤンは一瞬だけ驚いた表情をしていたが、すぐに呆れたようにため息を吐いた。
『やれやれ……第六艦隊は全滅したと思ったんだけどな』
「当然全滅さ。残存はここにいる約3000隻だけだ」
『……司令部はどうなった?』
「総旗艦ペルガモンは轟沈。ムーア中将は戦死した」
俺の言葉にヤンは沈痛そうな表情になる。ラップがムーア中将の幕僚を務めていたことを知っているからだ。
「安心しろ、ヤン。ラップ少佐は生きている」
「よう、ヤン准将。無事なようでなによりだ」
俺の通信にラップが楽しそうに通信画面に現れる。それを見てヤンは少し驚いているようだったが、すぐに嬉しそうに笑った。
『驚いたな。どんな手品を使ったんだい?』
「ムーア中将は嫌いな人間を一箇所に固めておきたかったみたいでな。俺の艦に幕僚として招いた」
「ある意味ではムーア中将に命を助けられたな」
ラップの言葉に俺たち3人は笑い声を挙げた。せっかく死亡フラグを叩き折って生き残ったんだ。これくらいは許されるだろう。
『シュタイナー准将はその艦隊の指揮と、生き残っている艦隊を探して欲しい。できるだけ助けてあげてくれ』
「了解した」
『それとラップは僕のところに来てくれ。実を言うとパトロクロスの損傷時に司令部にも戦死者が出て人手が足りない』
「……アッテンボローはどうした?」
確かアッテンボローもヤンと同じく第二艦隊の幕僚としていたはずだ。
『不幸中の幸いながら生きてますよ。まぁ、こんななりですけどね』
ヤンの背後に現れたのは片腕を吊っているアッテンボローの姿だった。ラップを生き残らせたバタフライエフェクトでアッテンボローが死んだかと思ったが、杞憂だったらしい。ヤンの背後で楽しそうに手を振ってきた。
『そういうわけで、よろしく頼めるかい。シュタイナー准将』
「了解です。ヤン准将。ラップ少佐を送り出したら救助任務に入る」
アスターテ会戦は同盟の大敗で終わった。投入した三個艦隊の内二個艦隊が壊滅、残りの一個艦隊の司令官も重傷を負った。政府はヤンを英雄に仕立て上げて大勝利とか言っているが、アホとしかいいようがない。
「ヘルベルトさん。起きてください」
「起きているよ、カリン」
部屋でボッーっとしていたらカリンがエプロンをつけてやってきた。
俺とカリンの関係性をダメ親父とシッカリ娘と言ったのはアッテンボローだったか。
カリンは呆れたようにため息をついている。
「起きているなら早く来てください。戦没者慰霊祭に参加されるんでしょう?」
「行かないよ、めんどくさい。どうせあれの主役は国防委員長だしな。生き残った将兵はお呼びじゃないさ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。そうだな……カリンは同盟で生まれたから、どんな時に同盟が戦争を起こすか知っておく必要があるかな」
「それも知りたいですけど、その前にご飯を食べてください」
「……はいよ」
カリンに言われたので食卓へ向かう。ちなみに我らシュタイナー一家が住んでいるのは、原作でヤンも住んでいた軍用官舎の官舎である。ヤンの家も近くにあってしょっちゅうどちらかの家で酒を飲んでは歴史談義に花を咲かせてお互いの被保護者に叱られている。
俺はカリンの作ってくれた朝食を食べ終えると、ソファーに座る。カリンも俺に紅茶を入れると同じようにソファーに座った。
「さて、カリン。同盟が軍を起こすのはどういう時が多いと思う?」
「……帝国軍が攻めてきた時でしょうか?」
俺の問いにカリンは少し考えるようにして答えた。
「それも間違っていない。イゼルローン回廊が帝国軍の手にある以上、攻撃の主導権を握れるのは帝国軍になる」
「他にもあるんですか?」
カリンの問いかけにすぐには答えずに紅茶を一口飲む。
「選挙が近くなると、だよ。カリン。思ったことはないか? 選挙が近くなると軍が出征することが増えると」
「そうなんですか?」
気づいていなかった様子なので、過去の同盟軍の出征データと選挙時期のデータを映し出す。そこには選挙が近くになると軍の出動回数が増えているデータが出ていた。カリンはそれを見て驚いている。
「見ての通りだ。政治家という生き物に限らず、為政者というものは民衆の視線を逸らすために戦争を起こすことは少なくない。これは人類の歴史が証明している」
これは俺とヤンの共通した意見である。
「そうすると皇帝親政のほうがいいんでしょうか……」
「一概にそうとは言い切れない。皇帝が名君ならば大丈夫だろうが、ゴールデンバウム王朝最大の暴君として知られるアウグスト2世のような人物だったら国は最悪だ。そして皇帝がマトモだったとしてもそれに仕える人物によっては国も傾く。現在のゴールデンバウム王朝ではブラウンシュヴァイク公爵家とリッテンハイム侯爵家がそれに当たるな」
ブラウンシュヴァイクとリッテンハイムの名前が出た瞬間にカリンが緊張するのがわかった。はて? カリンはあの二大貴族に関係があっただろうか。
「……あの、ヘルベルトさんはブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯を恨んでいるんですか?」
「うん? 何故だ?」
カリンの問いかけに本気に意味がわからない。なんで俺が両家を恨むなんて……ああ、亡命のことか。
「確かに俺が亡命することになったのはブランシュヴァイクとリッテンハイムのせいだけど、そこまで恨んじゃいないよ。時勢の流れもあっただろうしな」
俺が帝国にいた時のシュタイナー家は上級貴族であり伯爵の地位にあった。なんでも祖先はゴールデンバウム王朝の創建を手伝った功臣だったそうだが、出世欲や地位などには興味がなく、ルドルフからの再三の勧めで伯爵の地位をもらったそうである。そしてルドルフ直々にゴールデンバウム王朝皇帝に直答を許された家柄である。代々の方針で国政に口を出すことは少なく、門閥にもなろうとしなかったという奇特な一族である。暮らしも庶民的な生活を好み、そのおかげで幼少期にアンネローゼとラインハルトの金髪の姉弟と出会うことができたわけだが。
だが、ブラウンシュヴァイクとリッテンハイム家に嵌められて権力闘争をすることになり敗北。両親に連れられて同盟へと亡命へとあいなった
カリンもそのことを知っているから気を使ったのだろう。
「気にする必要はないよ、カリン。帝国にいた時の友人と戦うことにちょっとは抵抗があるが、それでもヤンやラップ、それになによりカリンと出会えたからな。こんなに嬉しいことはない」
俺の言葉にカリンは嬉しそうな表情になった。その表情を見て俺も微笑む。確かに帝国にいた時の従兄弟であり親友だったロイエンタールとか弟分だったラインハルトと戦うことは嫌だが、こっちでも大切なものができてしまったのだから仕方ない。というか将来ラインハルト率いるチート軍を相手にすることを考えると憂鬱になる。まぁ、こっちには銀河英雄伝説最強チート(ただし頭脳のみ)のヤンがいるから頑張ってもらおう。
それから帝国と同盟における国の問題点をカリンに教えていると、官舎の呼び鈴が鳴った。それを聞いてカリンが玄関に出て行くのを見送る。
「ヘルベルトさん。お客様です」
「帰ってもらってくれ。何せ俺はアスターテ会戦の傷で寝込んでいる設定だからね」
「奇遇だね。僕も同じ理由で寝込んでいるんだ」
聞き覚えのありすぎる声に入り口を見ると、ヤンがブランデーの酒瓶を片手に立っており、その隣にはユリアン少年も笑っていた。カリンも苦笑している。
「おやおや、アスターテの英雄様がこんなところに来ていていいんですか? 今日の戦没慰霊祭の主役でしょうに」
「あれの主役は戦没者と我らが敬愛すべき国防委員長殿さ。生者に用はないだろうさ」
「だが国防委員長殿はおまえさんを呼びたがっているんじゃないか?」
「そこまでの給料はもらっていないんでね。あぁ、悪いんだけどカリン。グラスをとってもらっていいかい」
「……はぁ。ヘルベルトさんもヤン准将も飲みすぎないでくださいね。ユリアン、おつまみ作るの手伝ってくれる?」
「そう言われると思って用意してきたよ」
「手際がいいこと」
カリンもキッチンからグラスを二つ持ってくると、俺とヤンの前に置く。ユリアンも用意してきたつまみをテーブルに広げた。
「ラップは?」
「ジェシカと一緒に新居探しだとさ。あいつも戦没者慰霊祭はサボるみたいだな。アッテンボローは……聞くまでもないか」
「アッテンボローが出るわけないだろ? 後でお酒もってここに来るってさ」
不良学生気分が抜けない連中である。アニメ版ではヤンはジェシカに対して好意を抱いている描写があったが、この世界ではない。
しばらくヤンとお酒を飲みながら談笑していると、ヤンの言葉通りにアッテンボローが酒瓶片手にやってきた。カリンがアッテンボローの分のグラスを用意し、ユリアンと二人でおつまみの追加を作り始めた。
「いやぁ、シュタイナー先輩とヤン先輩の家はいいなぁ。あんな気がきくお子さんがいらっしゃるんだから」
「それじゃあアッテンボローも引き取ったらどうだ。なんだったらキャゼルヌ先輩に相談してもいいぞ?」
「それがいい。キャゼルヌ先輩もアッテンボローの問題児っぷりを心配しているようだしね」
アッテンボローの軽口に俺が牽制すると、ヤンが笑いながら止めをさした。アッテンボローは降参とばかりに両手を挙げた。
「私とユリアンからしたら三人共問題児だと思いますよ? 戦没者慰霊祭をさぼって昼間からこうしてお酒を飲んでいるんですから」
追加のおつまみを持ってきたカリンの言葉に大人三人は揃って降参した。発言が尤もすぎたからだ。
ユリアンはそんな俺たちを笑っていながら口を開いた。
「そろそろ戦没者慰霊祭のお時間ですけど、テレビも見なくていいんですか?」
「いいかい、ユリアン。僕たちはせっかく美味しいお酒を飲んでいるんだ。それなのにわざわざお酒を不味くする奴の顔を見る必要はないだろう?」
ヤンが尤もらしいことを言っているが、その内容はただたんにトリューニヒトの顔を見たくないだけだろう。
だが、俺とアッテンボローもその意見に賛成すると、ユリアンは笑いながら引き下がり、カリンは苦笑を深くした。
それから3時間ほど酒盛りを続けていると、家のヴィジホンが鳴る。俺はそれに嫌な予感を感じたが、我が愛する義娘が出てしまった。
『やぁ、カリン。そこに不良軍人が三人ほどいないかい? 具体的にいうとヤン准将とシュタイナー准将とアッテンボロー中佐なんだが』
「お疲れ様ですキャゼルヌ少将。お三人様なら我が家でお酒を飲んでいらっしゃいますよ」
止める間もなく、カリンが無慈悲な宣告をした。画面の向こう側で呆れたため息を吐いたのを感じる。
『悪いがヤンかシュタイナーに変わってもらえるか?』
「わかりました」
そう言ってカリンはヴィジホンを俺とヤンの間に置く。アッテンボローはすでにキッチンに避難している。相変わらず撤退戦が得意なやつだ。ヤンと視線だけで会話をし、通話をヤンに押し付けることに成功した。
ヤンはげんなりとした表情をしながらヴィジホンに出る。
「どうも、キャゼルヌ先輩」
『お、ヤンが出たか。まぁ、ちょうどいい。シトレ元帥からの伝言だ』
「シトレ元帥から?」
シトレ元帥には士官学校時代から目をつけられている。
『「学生時代からサボりのやり方が成長していない奴だ」だそうだ』
キャゼルヌ先輩の言葉にヤンは肩をすくめる。
「ばかだな、ヤン。サボる口実くらい成長させろよ」
『そういうシュタイナーは奇を衒いすぎたな』
「後学のためにシュタイナー准将が何て言って欠席したか教えていただけますか?」
ヤンが質問するとキャゼルヌ先輩は面白そうに笑った。
『何でも「酒が美味くて腰が痛いので欠席します」だそうだ。シトレ元帥も面白がって国防委員長にそのまま報告してな。国防委員長の唖然とした表情は傑作だったぞ』
「シュタイナー准将は頭大丈夫かい?」
「うちの家で朝っぱらから酒を飲んでいる発言とは思えないな」
『なんだ。やっぱりおまえら飲んでいるのか。ラップもいるのか?』
「ラップは新居探しです」
『それはいい。ヤンもシュタイナーもいい年なんだから結婚相手を探したらどうだ?』
「同盟が誇る英雄様はまだしも、帝国からの亡命者のところに嫁ぎたがる相手がいないでしょうに」
「僕だって相手がいないよ」
「アッテンボロー。アスターテの時にヤンの執務室に送られてきたファンレターの数はわかるか?」
「多すぎてわかりませんよ」
俺の問いかけにアッテンボローが楽しそうに返してきた。
『なんだ。ヤンは相手をすぐに見つけられそうじゃないか』
「よしてくださいよ、キャゼルヌ先輩。それで、ご用件はなんでしょうか?」
「流石は英雄殿。引き際を心得ていらっしゃる」
「うるさいよ」
俺の茶化しにヤンは疲れたようにため息を吐いた。キャゼルヌ先輩も面白そうに笑いながら俺たちに言ってくる。
『明日1300に統合作戦本部長室に出頭しろとのことだ』
キャゼルヌ先輩の言葉に俺は忘れ始めている原作知識を引っ張り出す。これは確かヤン率いる第13艦隊が結成されてイゼルローン要塞の攻略につながる話だったはずだ。
『それと同じ時刻にシュタイナー、おまえさんも出頭しろとのことだ』
「俺もですか?」
思わず口を挟んでしまった。すでに原作は壊れつつあるが、大きくはそれていなかった。う〜ん、ひょっとしたらヤン艦隊に配属されるのかねぇ。ま、それだったら死ぬ確率が低くなっていいけど。
『二日酔いの状態では来るなよ』
「安心してください、キャゼルヌ先輩。僕たちは信用できないかもしれませんけど、被保護者は優秀なので」
ヤンの言葉にキャゼルヌ先輩は面白そうに笑い声をあげた。
『なるほど。おまえさんたち二人だけだと、サボってどこかに逃げる可能性もあるからな。カリン、ユリアン。二人を頼むぞ』
「「了解しました」」
冗談で言ったであろうヤンの発言を肯定されてしまい、しかも被保護者達もキャゼルヌ先輩に頼まれ元気よく答える始末。
俺とヤンの複雑そうな表情をアッテンボローが爆笑しているのであった。
ヘルベルト・フォン・シュタイナー
ダメ親父
ヤン・ウェンリー
ヘルベルトくんと一緒に酔いつぶれては被保護者に迷惑をかけている
カーテローゼ・フォン・クロイツェル
カリン。しっかり者被保護者2
ユリアン・ミンツ
ヤンの被保護者。しっかり者被保護者1
シュタイナー伯爵家
ゴールデンバウム王朝屈指の名家。皇帝への直答や諫言などを許された唯一の家。代々権力に興味がなく、領地惑星に善政をしいて庶民的な暮らしをしていた。ブラウンシュヴァイク、リッテンハイムに嵌められて没落
そんな感じで一瞬で終わったアスターテ会戦です。
今後のためにラップくんは生存。一応、完結までの流れも決めているのでラップくんの活躍にこうご期待
そしてカリンも本格参戦。やっぱり銀英伝の保護者と被保護者の関係はダメ親父としっかり者なのでシュタイナー家にも適応。
でも原作からしてカリンはこういう対象がいたら面倒見がいい気がしてました。
ちなみにヤンにとってのユリアンという形で、シュタイナーにとってのカリンは割と重要ポジションだったりします