銀河英雄伝説~転生者の戦い~   作:(TADA)

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銀河の歴史がまた一ページ……


008話

俺とヤンが率いる第十三艦隊と第十四艦隊がイゼルローンを陥落させて首都ハイネセンに帰還すると歓呼の暴風に迎えられた。アスターテでの惨敗はあっさりと忘れ去られ、ヤンの知略と俺の武略、そして俺たちを登用したシトレ元帥の識見が想像できる限りの美辞麗句で賞賛された。そして手回し良く準備された式典と祝宴、その中で俺とヤンの中将への昇進が発表され、それに伴って俺とヤンの周囲には取材スタッフが殺到した。

そんな喧騒に関係ないように俺はカリンが用意してくれた食事と紅茶を飲みながらテレビに若干ウンザリした表情のヤンが出ているのを笑いながら見ていた。それをカリンは呆れたように見ていた。

 「ヘルベルトさんには本当に呆れましたよ。いくらテレビの取材が鬱陶しいからってインタビューであんなことを言えば謹慎処分されるくらい私でもわかります」

 「カリン、この国は建前上は言論の自由を謳っている。俺はその権利を行使しただけさ」

俺の言葉に再度カリンは呆れたようにため息を吐いて食べ終えた食器を片付け始めた。

俺は今、謹慎処分中である。それと言うのもインタビューで答えた発言が主戦派の方々の怒りを食らったからだ。

別に大したことを言ったわけではない。『帝国への侵攻を語る方々はいますがどう思いますか?』と言う質問に対して『考えるまでもなく愚行。それを発言しているのが軍人だったら速やかに退役した方が自由惑星同盟に対して有益である』と答えただけだ。

これに軍上層部の主戦派論者がこぞって槍玉にあげたのだ。一時は逮捕すべしと言う声も上がったそうだが、シトレ元帥が庇ってくれたおかげで謹慎処分で済んだと言うことをキャゼルヌ先輩から聞いた。

俺の発言は原作で同盟滅亡の原因である帝国領侵攻作戦を起こさせないための発言だ。その作戦によって同盟軍はウランフやボロディンを始めとした人的資源、そして物資を浪費して滅亡の原因となった。そこで俺は先ほどの発言をした。虚像とは言え俺は自由惑星同盟軍においてヤンと並んで戦争の天才と言われている。そんな人間が帝国領侵攻に対して反対の立場をとるとどうなるか?

結果は市民の意思も分断されることになった。

原作では市民の総意とした感じで帝国領侵攻が決定したが、こちらでは侵攻賛成派、反対派と二分されている。テレビでもそれについて激論が交わされている番組が多い。

そしてヤンも明言はしなかったものの、帝国領侵攻には反対の意思を出したことによって議論はさらに嵐となっている。自由の身であるアッテンボローからの連絡によれば、酒場でも知らない人間同士が激論を交わしているのを見ることが多いそうである。

そしてこの論争の切欠を作った俺に再度インタビューしようとしてくるテレビ局は多いが、俺はカリンに『シュタイナー中将は謹慎中のために取材に答えることはできません』と言って追い返していた。

その時に官舎のインターホンが鳴る。それに反応してカリンが慣れた様子で出て行く。

 「カリン、あまりにテレビ局がしつこいようだったら塩でも撒いてやれ」

 「それをやったらヘルベルトさんは無駄に敵を作るだけですよ。と言うかなんで塩を撒くんですか?」

 「まだ人類が地球という1惑星にしか住んでいなかった時代のさらに昔、日本という国にあった二度と来るなという意思表示だよ」

 「それをやったらヘルベルトさんがさらに孤立しますよ? ただでさえ軍部の中でも孤立しているんでしょう?」

 「今更他の軍人との関係修復は無理だよ。それに亡命軍人一世の俺と仲良くしようとする奇特な人物の方が少数派さ」

俺の言葉にカリンは肩をすくめて玄関へと向かう。それを見送って俺はソファーに寝転がる。

正直言うとこの先の展開は二つしかない。帝国領侵攻作戦が発令されて原作さんが仕事をするか、それとも発令されないで未知なる銀河英雄伝説に突入するかだ。個人的に言えば発令されないで欲しい。自由惑星同盟と言う国はどうでもいいがヤンやラップ、アッテンボロー、キャゼルヌ先輩、カールセン提督やチュン准将、フィッツシモンズ中尉などの死んで欲しくない人が増えてしまった。

それの筆頭はカリンだ。原作では後半まで全く出てこなくて、どんな人生を歩んでいたがわからないが、こちらではキャゼルヌ先輩の仕事で俺のところに来て、少なくとも原作よりマシな生活をさせてあげられていると思う。それに何より俺自身がカリンのことを実の娘のように思っている。いずれ機会があれば実の父親であるシェーンコップにも合わせる手筈を整えてあげたいが、それをできる余裕がまだない。何より原作ではカリンは父親であるシェーンコップと和解することなくシェーンコップが戦死し、それをカリンは悔いていた。養父としてはそれをどうにかしてあげたい。

 「……まぁ、カリン自身の意思も大事なんだがなぁ」

俺はつまらない議論を続けるテレビを消して、天井を見上げる。

 「ヘルベルトさん。お客さんです」

 「おや、謹慎中の俺に会いにくるなんて奇特な人間は誰だ? 軍人だったら上層部に睨まれることになるぞ」

 「その忠告は第十四艦隊の幕僚になる前に言って欲しかったな」

カリンと一緒にやって来たのはつい先日結婚式を挙げたジャン=ロベール・ラップとジェシカ・E・ラップ夫婦だった。

 「おう、新婚ホヤホヤのお二人さんじゃないか。今日は何の用事だ?」

 「なぁに。我らが敬愛すべき第十四艦隊司令官殿に結婚のご報告とご機嫌伺いに参りました」

 「なんだ? 結婚式に出られなかったことを恨んでいるのか? 仕方ないだろう? 謹慎中なんだから」

 「だからってカリンに伝言持たせて学生時代の悪事をバラすとか何を考えているんだ。危うく婚姻届と一緒に離婚届けも提出するところだったぞ」

俺とラップの会話をラップ夫人は楽しそうに聞いている。

 「悪かったなエドワーズ……あぁ、じゃなかった。ラップ夫人。結婚式に参加できなくて、正直なところラップの結婚式はどうでもいいが、ラップ夫人の晴れ姿は見たかったんだがな」

 「別にいいのよ。それにテレビでのあの発言の方がシュタイナーらしくてよかったわ」

楽しそうに笑うラップ夫人。原作では悲劇的な死を遂げた彼女だったがこちらの世界では幸せになれそうでよかったものである。

そのまましばらく雑談していたがラップが目で合図を出して来たので、カリンとラップ夫人には買い物に出かけてもらう。

 「それで? 民間人の2人に聞かせられない話ってなんだ?」

 「第十四艦隊についてだ」

やっぱりそれか。

司令官の迂闊な発言によって微妙な立場になってしまったのが第十四艦隊だ。俺としては解散になる覚悟もあったのだが、それに待ったをかけたのがチュン准将だった。チュン准将は第十四艦隊を解散させないように動き始めたのだ。第十四艦隊副司令官であるカールセン准将も同じ叩き上げであるビュコック提督に働きかけたり、ラップやフィッツシモンズ中尉は第十四艦隊所属の兵士達やその家族に署名活動を行ってそれを軍部に提出したりしていたらしい。驚いたことにその署名の中にはビュコック提督、ウランフ提督、ボロディン提督、クブルスリー提督の名前もあったそうである。

 「とりあえず解散はなくなった。シトレ元帥はもちろん、トリューニヒト国防委員長も第十四艦隊の解散には反対の立場をとったからな」

 「トリューニヒトがねぇ……」

 「お前さんがトリューニヒトが嫌いなのはわかる。俺だって嫌いだ。だが今回は助けられたと思えよ」

 「ただの票集めのためだろうが」

 「それでも助かったのは事実だ」

やっこさんだって俺に好かれているなんて思っていないだろうに何の真似だ。

 「だが、ヤンの第十三艦隊には補充があって一個艦隊規模に再編成されるが、うちの第十四艦隊は半個艦隊のままだ」

 「それは困る」

 「困るのはこっちだ」

俺の言葉にラップは疲れたようにため息を吐いた。ラップも優秀な軍人である。だからこそ戦争は数であることを知っている。そのために数が少ないことが不利なことは分かり切っていることである。

 「とりあえずシュタイナーの謹慎は明日で解かれることになった。そしてお前さんは三日後とある会議に出席してもらうことになっている」

 「楽しい会議か?」

 「楽しい会議なんかあるわけないだろ。それにシュタイナーには特別不本意な作戦会議かもしれないな」

ラップの言葉に死ぬほど嫌な予感がする。そしてラップは口を開く。

 「銀河帝国侵攻作戦のための会議だ。第十四艦隊も帝国侵攻作戦に参加することになった」

自由惑星同盟は死刑執行書にサインをしたらしい。

 

 

 

宇宙暦796年8月12日。統合作戦本部の地下にある会議室に侵攻作戦に参加する将官が集められた。

総司令官にラザール・ロボス元帥。総参謀長にドワイト・グリーンヒル大将。作戦主任参謀コーネフ中将。情報主任参謀ビロライネン少将。後方主任参謀にキャゼルヌ先輩。作戦主任参謀の下に作戦参謀が5人置かれ、その中に同盟最大の戦犯であるアンドリュー・フォークもいる。原作さんはしっかり仕事をしてしまったらしい。

実戦部隊には9個艦隊。

第三艦隊、司令官ルフェーブル中将

第五艦隊、司令官ビュコック中将

第七艦隊、司令官ホーウッド中将

第八艦隊、司令官アップルトン中将

第九艦隊、司令官アル・サレム中将

第十艦隊、司令官ウランフ中将

第十二艦隊、司令官ボロディン中将

第十三艦隊、司令官ヤン中将

第十四艦隊、司令官に俺ことシュタイナー中将

総動員数は3000万人を超える大軍である。その前例のない巨大な作戦計画に無心でいられない将官も多く、出ていない汗を拭ったり、用意された冷水を立て続けにあおったり、隣の席の同僚と私語をしている姿が目立つ。

俺とヤンは普段だったらそんな空気を無視して世間話をするところだが、ヤンは無言で腕を組んで目をつぶっており、俺は不満な表情を隠そうともせずに軍帽を回している。

そして午後9時45分。統合作戦本部長シトレ元帥が首席副官マリネスク少将を伴って入室すると、すぐに会議は開始された。

 「今回の帝国領への遠征計画はすでに最高評議会によって決定されたことだが、遠征軍の具体的な行動計画案はまだ樹立されていない。本日の会議はそれを決定するためのものだ。同盟軍が自由の国の、自由の軍隊であることはいまさら言うまでもない。その精神に基づいて活発な提案と討論を行ってくれるように希望する」

シトレ元帥の顔にも声にも昂揚感はない。今回の出兵に反対なんだろう。

そして会議が始まって1番最初に発言を求めたのはこの作戦案を直接最高評議会に持ち込んだフォーク准将だった。

 「今回の遠征は、我が同盟開闢以来の壮挙であると信じます。幕僚としてそれに参加させていただけるとは武人の名誉、これに過ぎたるはありません」

抑揚に乏しく原稿を棒読みするかのように話すフォーク准将。フォークは延々と軍部の壮挙、つまりは自分の作戦案に美辞麗句で自賛している。その無意味な時間につい俺の口が滑る。

 「よくぞまぁ、そこまで自分の作戦案を褒められるものだな。どれだけ自分が大好きなんだ」

軍部でも今回の作戦案はフォーク准将が立案したことは知られている。というより俺が流した。フィッツシモンズ中尉が想像以上に優秀でそのような情報戦もできる人間だったのでお願いしたのだ。

俺の発言にフォーク准将の言葉は止まり、実戦部隊の指揮官達からは失笑が漏れる。フォーク准将は一応格上の俺に突然怒鳴るという真似はしなかった。しかし、目元のあたりがピクピクと動いている。

 「シュタイナー中将。発言をする時は本部長に許可を求めるのが当然だと小官は考えますが?」

 「それは悪いね。なにせこっちは誰かの言葉で数日前まで謹慎中だったものでね、話し相手に飢えているのさ。しかも噂によれば俺を謹慎に追い込んだ相手がこの作戦に幕僚として参加していると来た。ついつい口を滑らせてしまうのも仕方ないだろう」

もちろん俺を謹慎に追い込んだのはフォーク准将だし、そのことを俺はもちろん軍の大半が知ることになっている。そのために第十四艦隊と第十三艦隊の士官達からはフォークの評価は最低である。

 「ついでに言うとだ、フォーク准将。この作戦案は軍の将官が本部長等を通さずに直接最高評議会に持ち込んだそうだ。軍という形に対してそれはあまりにも軽率な行動であると小官は考えるが、貴官はどうお考えかな?」

もちろんフォークが直接最高評議会に持ち込んだということも俺が軍に情報を流しており、すでに実戦指揮官のみならず、市民達にも知られることだ。

 「シュタイナー中将。貴官が謹慎中で話し相手が被保護者しかいなかったことはわかる。だが、ここは作戦会議の場だ。話し相手には後でヤン中将にでもなってもらいたまえ」

シトレ元帥がどこか呆れながらも楽しそうに窘めてくる。俺はそれに一度敬礼すると大人しくする。横目でヤンを見るとヤンも楽しそうに俺を見ていたのでウィンクを返す。見えないところで中指が立てられたのでこちらも中指を立て返しておいた。

次に発言を求めたのはウランフ中将だ。

 「吾々は軍人である以上、赴けと命令があれば何処へでも赴く。まして、暴虐なゴールデンバウム王朝の本拠地をつく、というのであれば喜んで出征しよう。だが、いうまでもなく、雄図と無謀はイコールではない。周到な準備が欠かせないが、まず、この遠征の戦略上の目的が奈辺にあるかを伺いたいと思う」

帝国領内に侵入し、敵と一戦を交えてそれで可とするのか。帝国領の一部を武力占拠するとしても一時的にか恒久的にか。それとも皇帝に和平を誓わせるまで帰還しないのか

 「迂遠ながらお聞きしたいものだ」

ウランフ中将が着席すると、返答を促すようにシトレとロボスの両元帥が等しくフォーク准将に視線を向けた。

 「大軍をもって帝国領土の奥深く侵攻する。それだけで帝国人どもの心胆を寒からしめることができましょう」

 「では戦わずして退くわけか」

 「それは高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」

ウランフ中将はフォークの返答に眉をしかめて不満の意を表した。

 「もう少し具体的に言ってもらえんかな。あまりに抽象的すぎる」

 「要するに行き当たりばったりということではないのかな」

 「「ブフゥ」」

皮肉を効かせたビュコック中将の言葉に思わず俺とヤンは吹き出してしまった。他の提督達は漏らす事はなかったが忍び笑いをしている。

流石のフォークも亡命軍人である俺に噛み付く事はできても、同盟軍が誇る宿将であるビュコック中将に噛み付くわけには行かないのか、丁重に無視をするという手段をとった。

 「他に何か……」

フォークがそう言ったので今度は俺が発言を求める。それに室内にいた全員が驚いた雰囲気を見せる。シトレ元帥に許可されたので起立して俺は口を開いた。

 「後方主任参謀であるキャゼルヌ中将がいるならば軍の行動に対して補給は万全であると私は考えます。ですが、今回同盟軍が動員する3000万の軍人に、5000万人以上の民間人の食料を確保する事は可能ですか?」

俺の言葉に両元帥の視線が後方主任参謀であるキャゼルヌ先輩に集まる。キャゼルヌ先輩はどこか驚いた表情をしながら両元帥に返答する。

 「不可能です。同盟軍の兵站だけでもかなりの無理をしています。そこに5000万人もの食料を追加することになればイゼルローンの生産はもちろん、同盟全土の物資をかき集めても足りません」

 「……ふむ、シュタイナー中将。少し詳しく説明してもらえるか」

 「了解です」

シトレ元帥の言葉に俺は軽く口を開く。

 「例えば我が軍は帝国領内に500光年ほど侵入したとしましょう。その中には200を数える恒星系があり、そのうち30あまりが低開発とは言え有人惑星で5000万人ほどの民間人がおります」

 「それだけの市民が解放されるというだけで、他の星系の市民はこぞって我らを迎えるでしょう!!」

フォークのどうでもいい発言を俺は無視する。

 「問題はその5000万人が食料を持っていなかった場合です。我々は護民を掲げています。そのためにその5000万人の民間人が食料を要求すれば答えねばなりません」

 「……まさかシュタイナー中将は帝国軍が焦土戦術を取ると言うのか」

 「シトレ元帥はお話が早くて助かります。民間人に食料を供給すればその分は軍の食料が減ります。古来より腹を空かせた軍が勝った例は少ないですな」

俺の発言に室内全員が少し騒つく。

 「その戦術は帝国軍自身が民心を失う戦術であり、とても軍人がとる戦術とは思えません!!」

 「フォーク准将は勉強不足だな。相手は専制国家だ。民のことなど二の次三の次だ。一番大事なのは皇帝であり、次に大事なのは貴族の面子だ。ゴールデンバウム王朝の貴族において民なんぞ家畜みたいな扱いさね」

 「……ほう、それはゴールデンバウム王朝開闢以来の名家であるシュタイナー伯爵家出身の中将にとっても同じようなものですかな」

 「私が否定したところで貴官は自分が信じたい情報しか信じないだろうに。好きなように妄想の羽を広げておくんだな」

フォークの皮肉にも俺はさらりと返しておく。その後に両元帥から意見を求められたフォークは「兵站の仕事は後方主任参謀であるキャゼルヌ中将にお任せします」と言って逃げた。その発言の瞬間にぶちぎれてフォークを怒鳴りそうになったキャゼルヌ先輩は隣に座っていた同僚に宥められていた。

そして次に発言を求めたのはヤンだった。

 「帝国領内に侵攻する時期を現時点に定めた理由をお訊ねしたい」

 「選挙が近いからだろう」

ヤンの言葉に間髪入れずにビュコック中将が皮肉な言葉を放り込む。

 「戦いには機というものがあります」

フォークはヤンに対して得々と説明をする。

 「それを逃しては、結局運命そのものに逆らうことになります。あの時決行しておれば、と後日になって悔いても、時すでに遅しということになりましょう」

 「つまり現在こそが攻勢に出る機会だと貴官は言いたいのか」

ヤンの口調には呆れを通り越してバカバカしい相手をしているという雰囲気を感じ取れた。

 「大攻勢です」

フォークの訂正にヤンは心底呆れたため息を吐いた。

 「イゼルローン失陥によって帝国軍は狼狽してなすことを知らないでしょう。まさにこの時期、同盟軍が空前の大艦隊が長蛇の列をなし、自由と正義の旗を掲げて進むところ、勝利以外のなにものが前途にありましょうか」

 「理想論だな。現時点で同盟軍の財政はギリギリだ。今回の出兵で帝国を併呑できたとしても、それを統治する金も人もいない。恐らくは残った貴族達のゲリラ戦によって同盟の財政はますます破綻していく」

 「シュタイナー中将の言う通りだ。そして勝てると言う確証もない。おそらく我々の迎撃に出てくるのはローエングラム伯だ。彼の軍事的才能は想像を絶するものがある。それを考慮に入れて、今少し慎重な計画を立案すべきではないのか」

ヤンの言葉にフォークが口を開く前に宥めるようにグリーンヒル大将が口を開く。

 「ヤン中将、君がローエングラム伯を高く評価している事はわかる。だが、彼はまだ若いし、失敗を起こす事もあるだろう」

 「グリーンヒル大将。最初の前提としておかしい。最初から相手の失敗を前提にして作戦を立てるのは無意味だ」

 「シュタイナー中将の言う通りです。勝敗とは相対的なもので……彼がおかした以上の失敗を我々がおかせば、彼が勝って我々が敗れる道理です」

 「生粋の同盟軍人であるヤン中将からは言いづらいでしょうから、代わりに亡命軍人である小官が言いますが、大前提としてこの構想自体が間違っているのですよ」

悪いが俺とヤンが組むとびっくりするくらいに口が回る。それはこの場でも遺憾なく発揮された。

だが、フォークには無意味だったらしい。

 「シュタイナー中将が唱えた焦土戦術はあくまで可能性であり、ヤン中将が言われたローエングラム伯の脅威は予測でしかありません」

 「……こいつの頭は飾りか?」

俺の呟きが聞こえたのは隣にいたヤンだけだったのだろう。ヤンは呆れたようにため息を吐いた。

 「敵を過大評価し、必要以上に恐るのは武人として最も恥ずべきところ。まして、それが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては、意図すると否に関わらず、結果として利敵行為に類するものとなりましょう。どうか注意されたい」

その発言に瞬間に会議用テーブルの表面が激しい音を立てた。ビュコック中将が叩きつけたのである。

 「フォーク准将、貴官の今の発言は礼を失しているのではないか」

 「ど、どこかです?」

老提督の鋭い眼光に射込まれながら、フォークは胸をそらした。

 「貴官の意見に賛同せず、安全をきすべしと言う当然の献策を行った両提督に対して、利敵行為呼ばわりするのが節度ある発言と言えるか?」

 「わたくしは一般論を申し上げているだけです。個人に対しての誹謗と取られては、甚だ迷惑です」

フォークの頬肉がピクピクと動いている。俺とヤンは同時に小さなため息を吐いた。

 「……そもそもこの遠征は専制政治の暴圧に苦しむ銀河帝国250億人の民衆を解放し、救済する」

フォークの発言の途中で今度は俺が机に思いっきり足を叩きつけるように載せる。その行動に室内全員が驚き、付き合いの長いヤンやキャゼルヌ先輩も驚きを見せている。

 「フォーク准将。この場は作戦会議の場だ。貴官の独演会場ではないし、我々も貴官の中身が全くない演説を聞くほどヒマではない。貴官がそのくだらない演説を続けるようであれば私は中座させて欲しい。それがダメならば私は昼寝をさせてもらう。ヤン中将。悪いがあの頭の悪い参謀の演説が終わったら起こしてくれ」

 「それは困った。私も貴官と同じことを考えていてね。2人同時に寝てしまうと起こしてくれる人物がいない。いや、私なんかよりよっぽど優秀な成績で卒業されたフォーク准将だったら私達2人の艦隊など必要ないかもしれないがね」

 「ほう、それだった兵卒叩き上げで士官学校に行っていないワシも必要ないかもしれんな」

俺とヤンの会話に平然と混じってきたビュコック中将。フォーク准将は頬肉のピクピクが止まらない。このままヒステリーを起こしてぶっ倒れてくれないかと思ったが、ロボス元帥が編成の話に切り替えたことによってその場は収まった。

配置は決定された。先鋒は俺の第十四艦隊とウランフ中将の第十艦隊。第二陣にヤンの第十三艦隊である。

それによって会議は解散される空気となったが、俺は再度発言を求めた。許可されたので俺は立ち上がりながらフォーク見る。フォークは俺の視線に一瞬だけ怯むが、すぐに傲然を見返してくる。恐らくはロボス元帥の信頼が高いことを笠に来ているのだろう。

 「フォーク准将、貴官は先ほどの会議の中で自分のことを武人と言っていたな」

 「その通りです。私は誇りある同盟軍人であり、武人です」

その言葉に俺の口は皮肉げに歪む。

 「私とヤン中将は先のイゼルローン奪取作戦において要塞駐留艦隊司令官であるゼークト大将と対話した。彼はその時に武人として同盟に降る事もできないし、武人としておめおめとオーディンに帰るわけにもいかないと言って、責任をとって自身の頭をブラスターで撃ち抜いて自害した。なるほど、確かにゼークト大将は誠の武人かもしれない。だが、弁舌だけを弄し、自身では何もしない貴官はなんなのか? 貴官は責任を持って自分の頭をブラスターで撃ち抜く覚悟はあるか?」

俺の言葉にフォークは口をパクパクと開けたり閉めたりしている。俺はそれに対して冷笑で返す。

 「ないようだな。それでは貴官は武人ではなくただの弁舌家だよ」




ヘルベルト・フォン・シュタイナー
謹慎食らっても原作回避しようと思ったが無事に失敗

カリン
保護者がしょっちゅう問題行動を起こすのを呆れ気味

第十四艦隊幹部の皆さん
どうやら皆さん居心地がいい模様

アンドリュー・フォーク
シュタイナーの煽りにぴくぴく最高潮だったがギリギリ耐えた模様



そんな感じで無事に原作さんが仕事してくれました!帝国領侵攻作戦決定!やったね、シュタイナーくん同盟滅亡のトリガーが引かれたよ!

そして中身のない会議をフォーク煽りに使うシュタイナーくん(+ビュコック爺さん)。でもギリ倒れなかった模様。残念。

感想でご質問があった『転生特典はいくつですか?』というご質問ですが、圧倒的な身体能力と完璧に近い記憶能力の二つです
まぁ、身体能力のほうはほぼ死に設定なんですが。
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