デュエルの前に踏みしるしたロード!それが"自然な流れ"となるのだ!
最初に目覚めてから数日。重症だったボクもゆっくり動けるくらいまでは回復した。ボクが救助されてから動けるようになるまで十日以上かかっていたみたい。その間ボクを助けてくれた彼、征谷はつきっきりで看病してくれた。それだけでもすごいことなのに、なんと彼は無人島で生活しながらそれをしていたんだから大変だ。
征谷は特別な力を持っているけれど、そんなのとは全然関係なく大変な恩を受けてしまった。
色々聞いてみたけど、征谷は何ヶ月もこの島で住んでいる。一人で、という訳じゃない。征谷の持つ力、召喚された人たちと、そして一人の深海棲艦。夜天の支配者、空母ヲ級・月光。
あの大事件にして最大の謎、月光艦隊の消失は征谷がやったことだった。彼が呼び出したドラゴン、征竜によって百隻以上という大艦隊は文字通り全滅したのだ。 そりゃー誰も分かんないはずだよ。ドラゴンがやりましたってだけでも誰も信じられないだろうに、それを呼びだした人がいるなんて。
もしボクが大まじめに報告書を提出したとしても、もちろんまともに受け取れられない。
それどころかボクは損傷…というか正気を疑われて、前線に出られなくなるだろう。何せボクはほぼ大破状態から行方不明になり、何十日も経ってから帰ってきたら艦装を全損していたという状態。生きているだけでも奇跡的だし、人間なら正気を失っていても全くおかしくない。
正気を疑われるような兵士を、あるいは動作の怪しい兵器を戦場になんて出せない。
戦力や提督のことも考えれば、廃棄されるようなことはないだろうけどね。
征谷はできれば黙っていてほしいとしか言わなかったけど、ぶっちゃけボクは報告できない状況だ。いや、それがなかったらかなり葛藤した所だけどね。
軍属にして兵器である"艦娘"としての使命と、人としての恩義を秤にかけるようなことにならなくて、むしろ安心だったかも。
問題なのはむしろヲ級。月光の方だよ。
彼女はもうそれなりの時間征谷と一緒にいることになる。うらやまいやいやいや。
人と一緒にいる深海棲艦なんて見たことも聞いたこともない。でも彼女に征谷を傷つける気はまるでないみたいだし、ボクに対して敵意もない。感覚的にも確かに何かが違うことが分かる。それが何かが分からないけど。
まあ、征谷が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫か。
体の方はおかげさまでなんとかなっている。見た目はひどいことになっているけど、征谷が貸してくれた上着のおかげで外からは見えない。こんな傷でもしっかり入渠すれば完全に元通りになるのだから艦娘というのは不思議な存在だなーと自分でも思う。まあ今は施設がないからどうにもならないけど。
艦娘としての装備も全損しているので、入渠と装備の更新、両方やらなきゃ艦娘として戦うことはできない。帰れなくなっちゃったけど、征谷を残していけないし、一緒だったかな。
リハビリを兼ねた散歩の途中、征谷がお茶に使っていた葉っぱを見つける。同じものか確信はないので、場所だけ覚えておこう。この島はそれほど大きくはないけど、数日で見て回れるほど小さくもないから、場所はしっかり覚えておかなきゃ。まだ走ったりはできないけど、寝たっきりだと体がなまっちゃう。
森を抜けて海岸に出ると、砂浜に深海棲艦の残骸が転々と転がっている。征谷がしょっちゅう深海棲艦を撃沈しているようなので、そのせいだろう。
「でもこの島、どこの島なんだろ」
この島のことはボクにも分からない。
星を見れば大ざっぱな位置は分かるんだけど、こんな所に島なんてあったかなぁ。
ボクが知らないだけかもしれないけど、ちょっと不思議だ。
「皐月、調子どう?」
「征谷!」
どこからかやってきた征谷の声を聞いて、少しだけドキッとする。それに顔を直視できない。
さっきは正気を疑われるなんて言ったけど、ホントにどこかおかしくなっちゃったのかもしれない。
ボクの微妙な表情をみて征谷がたずねる。
「何かあったか?」
というか、ボクのキャラじゃないんだけど!
まあ、確かに沈みかけたあの時は、人生もとい艦娘生で二度と無いような思いを味わった。
冬の水風呂に飛び込んで、その上で全身を虫が這いずり回っているような感覚だった。
生涯忘れることができないだろうし、口にすることもできないような経験。
そんな状態を短時間で引き揚げてくれたし。気持ちが弱ってわめいたり弱音を吐いたりしても聞いてくれたし。一人動けないボクの隣にいてくれたし。不定期に熱出した時とか、征谷の顔が妙にかっこよかった気がするけど。
……。
でもでも、征谷は結構変な人だ、明らかに普通じゃない。
でゅえりすとっていってたけど、それ何?って聞いたら「デュエリストはデュエリストだ」って言ってたし。いや、結局なんなの?
だから、ボクのキャラじゃないんだって!名前呼ばれただけなのに心臓うるさい!顔が熱い!
「ボク壊れちゃった」
「えぇ!?」
そんな風にしばらく征谷が慌てていると、唐突に後ろから元気な声をかけられた。
「うーん、これは提督!……あれ?提督?…かどうかは分からないけど、こんにちはー!」
その声の主は、小さな子供くらいの大きさをしていた。暗い色のセーラー服で、茶髪ボブの少女だった。伝説によればそれは航路を支配しており、「よーし、らしんばんまわすよー!」という聞いただけでSANチェックを誘発するような呪文を唱えるのだか。
そんな彼女はその左腕に、デュエルディスクを装着していた。
・この島について
水属性の通常モンスターだったりするかもしれない。
・皐月
五月病をマスクチェンジして皐月病にしそうな元気少女。
・伝説って???
・次回、VS妖精伝姫!