最後まで週一以上更新で駆け抜けたかったですがダメでした。残念。
そして最初から登場予定だった神風がようやくまともに出せました。
推定南方棲鬼と戦った次の日。
見張りのミリスレディエントがこちらに向かってくる一人の艦娘を見つけた。報告を受けた俺はタイミングを見て浜辺まで向かうと、ゆっくりと上陸している最中の艦娘がいた。浅瀬のギリギリまで来てから艦娘としての力を霧散させ、少女は軽い足取りで俺の前まで歩いてきた。
「司令官。神風型駆逐艦、一番艦、神風。推参です!」
きりっとした表情で、海軍式の敬礼と共に少女…神風はそう言った。赤い和服姿の彼女がどこから来たのかとか、なんでこの場所に来たのかとか謎だらけだが、しかし俺にはそれよりも気になっていることがあった。
「司令官?俺が?」
「はい!あ、提督とお呼びした方が良いですか?」
「いや、そもそもなんで俺が司令官?初対面だよな?」
「司令官は司令官ですよ?」
そう言ってコテンと首をかしげる神風からは、一切の疑問も違和感も感じない。それが最も自然な状態であるかのようだ。俺が言葉に詰まっていると、ヲ級がやってきて神風と向かい合った。
「ヲ?」
「むむ!」
神風はジッとヲ級を注視するが、そこに敵意のたぐいは感じられない。わずかに不思議そうな顔をした月光とのにらみ合いは、すぐに終わった。
「神風型駆逐艦、一番艦、神風です!よろしくね」
「ヲ。月光。よろしく」
そして敵意もなければ大して驚くこともなく、神風はヲ級と挨拶した。
~
和やかな出会いに安心しつつも神風を自分の家へと招待した俺は、リビングで向かい合って座っている。この赤煉瓦ハウスを見て神風はなんとなく言い笑みを浮かべていたので、なにやら好みには合っているらしい。ヲ級は隣に座っているが、倒木や地べたに座っていたときと同じく、ほぼ密着する距離まで椅子を近づけている。
「で、えーとまず、神風はどこから来たの?」
「海です!」
「いや、うん、そうじゃなくて…」
「あ、そうね。目覚めたのは最近…かな?司令官がいるのが分かったから、すぐに向かったの」
「これが海域ドロップか?」
聞いてもよく分からない事態に俺は小さくつぶやく。艦娘は元々謎な存在だが、どこから生まれてくるのかすら分かっていない。皐月に聞いた話だが、艦娘の建造は妖精さんが最初から最後まで専門でやっているので、何をやっているのか分からない。見てはいけないらしいが、鶴の恩返しかなにかか?
「つまり、目覚めてから誰にも会ってないわけだ、深海棲艦とも」
「ええ、司令官が初めてよ。残骸はたくさん浮いてたけど」
一瞬刷り込みでもあったのかと思ったが、そういえば元から俺がいると分かってきたという話だったか。
「ここ、無人島みたいだけど、設備はあるの?」
「ああ、よく知らないが、入渠だけはできるらしい。資材はあるけど工廠とかはないから、装備が破損したら治せないと思う」
「うーんそれなら、攻撃は船体で受けなきゃだめよね」
「つっても、神風が戦うことないと思うけど」
「え?どうして?」
「どうしてって、そりゃ…あ、敵来た」
島で一番高い岩山にオレイアが生やした、一際高い木のてっぺんから周囲全体を監視するミリスレディエントからの報告。いつものように6隻編成のどこにでもいそうな深海棲艦をアレキサンドライドラゴンを召喚して撃沈した直後。
「まあ、こうなるから。戦うことないだろ?」
口を開けて呆けていた神風が再起動するまでには、結構時間がかかった。
「ええ~~~~~~!!!!」
大海原にかわいい悲鳴が響いた。
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とある巨大な建造物、その中の白い壁で覆われた一室に一体の竜と、三つの人型があった。
「此度の担い手は未だ目覚めに及ばず……これほど力なき者が選ばれるというのも珍しい」
厳かな声でそう言ったのは、金と銀の巨大な竜。彼は精霊界でも有数の力を持つ者であったが、世界に君臨していると言うこともできた。しかしその実態は権威的な存在であり、力によって他の存在を支配しているわけではない。だからこそ力によって世に震撼の走るとき、彼は武力に寄って立たない方法にて問題を収めている。大事件が起こった場合の駆け込み寺のような扱いもあり、言ってしまえば苦労人であった。
大いなる神威を携えたその竜、巨神龍は、どこか笑っているようにも見えた。
「珍しいと言うが巨神龍よ、そう悠長に構えていて良いのか。今でこそ問題になっていないが、一線を越えればどれほどの禍乱となるか」
綺麗な声でありながら硬い口調でそういうのは、薄い青緑色の透き通った水のような体をした若い女性。左足と頭部の左側が真っ黒い氷のようになっており、その姿は見る人によってはどこか深海棲艦を彷彿とさせた。
しかしここにいる四人の中で最も年少となる焼けた肌の少女には、彼女が意図的に感情を表に出さないようにして、無表情を作っているように見えた。
「儂も同感ですな。悲観的な様子こそ見受けられませんが、巨神龍様は先ほどから不安要素ばかりをお話になる」
そう言ったのは、青いローブを身に纏った、どこか神官の様な姿をした老人。好々爺然とした雰囲気をしているが、その実かなりの力を身に秘めていることが巨神龍にはよく分かっていた。
「確かに属性バランスの崩壊が起こっているのは、遠く離れた世界の話。直接的な影響はあるまいよ。問題は、それほど遠い異変すら感じ取ってしまうかもしれない存在と、荒れ狂う流れの行き先が定まっていないところにある。もしその力がこちらの近くを通り過ぎ、眠れる竜が目覚めるようなことがあれば、また世界が止まってしまう」
「話に聞く力の量を考えれば、儂らの結界を越えて竜達を目覚めさせる可能性は否定できませんな」
「世界が変わっても、トリシューラの力の大きさには変わりが無いのだろう?"メイド動乱"や"アーゼウスの一撃"の時を遙かに超える悲劇が……それとも、それ以前に世界が滅ぶか?」
氷のような彼女は自分の言葉に疑問を持ったのか、巨神龍へと聞く。
同族の中では大人と言える彼女であるが、世界を滅ぼしうる存在が本気で暴れるような事態には、未だ出会ったことがなかった。何かと問題は起こる世界だが、世界の危機が顕在化するような大きな事件が起こったのは、それなりには前の話なのである。
「クハハ、何、すぐには滅びんとも。もしトリシューラが一切のかせなく暴れれば、他の超越存在達とぶつかるだろうよ。最終的には世界が滅びるかもしれんが」
笑いながらそう言う巨神龍の言葉に、この場にいた最後の一人が顔を上げる。
「でも、巨神龍さまはなんだかうれしそうだね」
その場の雰囲気にそぐわない明るく無邪気な声の主は、長い黒髪と褐色の肌をした少女。少女はとある火の鳥の神に仕える巫女であり、そんな彼女の言葉を肯定するように、巨神龍は笑った。
「意図もなく、約定もなく、何の縁もなく、偶然彼らは居合わせた。この事実が既に運命がそこにあることを示している」
後半は巨神龍と水属性二人と炎属性一人でお送りしました。
ちなみに深海棲艦っぽさがあると気づいたのは登場させた後です。
さて、彼らは誰でしょう。