征竜の決闘者、ヲ級を拾う   作:バージ

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使命の顔向き

 

「あの時、月光の見立てだと結構苦戦してたみたいだけど。司令官が逆転したのね」

 

神風と共に、日課である果樹園の見回り(オレイアが生成したもの)をしていると、そんな感想が出てくる。

ウォルフとのデュエルでは"裁きの龍"と"熾天龍 ジャッジメント"が現れた次のターン、結局征谷は勝利を収めることとなった。手札と墓地に十分なリソースを残していた征谷は征竜の強みを生かして再展開を行い、問題なく二体のドラゴンを除去。そのままダイレクトアタックで決着したのである。

 

「ああ、確かに心境的には若干押されてたかな。あの月光がそんなことまで理解してたってのは、逆にさすがというべきなのか」

 

神風の言葉を聞き、征谷は若干感心する。実際、心情的には押されっぱなしだったと言うのが征谷の感想だ。

迷いの一片もなくデュエルに臨み、戦い慣れているだろうウォルフの気迫は、経験の少ない征谷を気圧させるに十分な強さだった。ことデュエルに置いてはその精神力や気の持ちようは極めて重要であり、勝敗を大きく左右する。

精神的に圧されていたにもかかわらず勝利したことについては、征谷としてもは思うところがあった。

 

「多分あれは俺の実力っていうよりも……征竜の力で勝った、っていうのが大きいと思う」

 

デッキパワーに差があったから勝った、というのは身も蓋もない話だが、間違いでもなかった。征竜というデッキをまともに回せるのだから、征谷の腕が悪いわけではないのだ。ただ単純に、征谷とウォルフとの間にあったデュエリストとしての力の差を、征竜が埋めていたというだけで。

漠然とあるいは無意識のうちに征谷も理解していることであるが、カードに対する愛や信頼、執着がデュエルには少なからず影響を及ぼす。真に愛する、信頼し使い続けたカードであれば、それは必ず答えてくれるものなのだ。逆説的に考えると、そうでないカードをデッキに増やしていくほどに大事なところでデッキの動きが悪くなる。ただ単純に強いカードを入れれば良い、グッドスタッフが強いという考え方は、デュエリストとして高い次元に行くほど通用しなくなるのである。たとえば勇者デスフェニハリラドンだとか地獄みたいなデッキを使っても、純ライトロードとか純妖精伝姫とか、その人にとっての最高のデッキを使うプロには勝てないというのが心理なのだ。……そもそもそんなデッキを組めるのどうかは置いておいて。

征谷は知るよしもない……といっても微妙に感づいているが、ウォルフはデュエルそのものには手を抜いていなかったものの、その前段階つまりデッキ構築の段階では加減をしていた。実際に出てきた"Emトリック・クラウン"以外にも"魔神童"や"ゴブリンドバーグ"等といった強さはともかくウォルフ的には全く思い入れのないカードががデッキには入っており、これがここ一番の展開力を阻害していたのだ。そう、ウォルフやらフェリスやら平然と落としたいカードを落としていたが、あれでも加減されていたのである。

 

「でも、それも司令官の強さの内でしょ?艦隊だって、本人の練度がすべてじゃない。装備や設備、補給体制と全体としての人員体制、酒保の充実さまで。全体と比べたら練度が占める割合はそう多くはないわ。おろそかにして良いわけじゃないけどね!」

「はは、そうだな。ま、次はもっと気合い入れてくさ」

「ええ!そのときは、司令官の強いところを私にも見せてね」

「ああ、任せとけ!」

 

神風の励ましと言うよりは応援といった方が良い言葉は、その笑顔と共に征谷に勇気を与えた。期待されている以上、そう無様な姿は見せられない。征谷は意気込みを新たにした。

 

本心から征谷を応援する神風であるが、同時に彼女も問題を抱えていた。

お互いに木々や草花、たまに見かける虫なんかを見ながら歩いていると、海が見えるところまでたどり着く。穏やかな海の様子を目にして、神風は月光のことを思い浮かべた。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある日、ダイニングルームで椅子に腰掛けながら、神風は月光について分かったことを整理していた。

 

「深海棲艦の艦載機は作れない、だから扱えるかも分からない。航行は普通に可能」

 

ちらっと横に目を向ければ、部屋の一角には本来空母ヲ級が頭部に付けている部分が、まるで何かの置物のごとく無造作に置かれている。目に光はなく、何本かある触手がだらんと垂れ下がっている様からは、普通の深海棲艦が持つ禍々しさも感じられない。月光はアレを装備(?)しようともしないし、しばらくこの場所に放置されていた。

 

「砲塔は使用不能、当然艦載機離発着も不能…もう軍艦としての要件を満たしていない、ただの船」

 

そこまで言って神風はキッチンに立つ月光を見つめる。何度も使っているだろうに、月光は未だにおっかなびっくりといった様子でお湯を沸かしていた。

 

「月光はさ、もう戦わないの?」

「ヲ?………うん。セーヤが、望んでいないから」

「そっか……あなたはもう、戦士じゃないんだ。もちろん、兵器でもない」

 

神風の質問に、月光はいつもよりもゆっくりと考えてからそう言った。月光としても考えたことのなかった質問であり、自分が戦わないことに疑問を感じたことはなかったからだ。しかし神風の問いをきっかけに深海棲艦だった頃と今のあり方を鑑みて生まれた疑問は、すぐに氷解した。怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、負の感情で満たした体を動かす深海棲艦は、それらを失ったとしたら何になるのか。

月光本人はあまり気にしていないことでもあるし、そしてそれが分からなかったとしても、神風は納得を得ていた。

 

「よしっ!そういうことなら、それが一番です!司令官、えらい!!」

「ヲ。えらい」

 

納得した様子の神風を見て、月光はよく分からないながらも分かる部分にだけ同意した。

 

 

 

~~~

 

 

 

とある日の月光のことを思い出していた神風が、海に目を向けたまま口を開く。

 

「月光は最初は話せなかったのよね。私もハッキリしたことは分からないけど、多分彼女がああやって司令官と話して、暮らしていることはきっとすごいことだと思うの。それも、司令官にしかできないような」

「ああ、それは確かに。ただあれ以来何度か試してみたけど、エリアが復活?させられたのは月光のときだけなんだよな。となるとやっぱり、月光自身何か特別なのかも」

「ええ。ふふっ、それはその通りかも」

 

そんなことを言いつつも、神風は少し違う悩みを抱えていた。

 

(本当は、深海棲艦との戦いには司令官は参加しなくて良い。それが正しいことだと思うけど……司令官が大海を渡る以上、いつもたくさんの深海棲艦と戦うことになる。それを解決するためには艦娘も施設も装備も大変な規模が必要になる。それが司令官の負担になるようじゃ本末転倒だし)

 

確かに征谷がいれば、たくさんの深海棲艦を撃沈することができる。しかし征竜が真にするべきことはそういうことではないのではないかと神風は思っている。世界を救ってほしいなんて考えてはいないが、征谷には成さねばならないことがある。ウォルフが言った、征竜が今ここにいるのは使命があるからだと。征谷もまた、その言葉に同意している。であれば、その道を行く征谷を手助けすることこそが、おそらく自分がここにいる意味なのだと、神風は感じていた。

だからこそ神風は考える。征谷が戦わないですむためには、少数精鋭で対深海棲艦戦のすべてを片づけられることが理想だ。しかしそのための障害はあまりに多い。まず発生したばかりの神風の練度は当然低いし、一人しかいないため戦力も低い。そのくせ遠洋を進むため敵は強くて多く、到底経験を積むためにどうこうなどと言ってはいられない。征谷なら敵を一隻だけ残すなんてことも可能だが、手間に見合わないし本末転倒な側面もある。そもそも資材が少ないため継戦能力にも難があり、訓練するのも簡単じゃない。

神風は思ってしまう。一人とは言わないまでも少数精鋭で、対深海棲艦戦のすべてを片づけられるような、そんな力がほしいと。そしてそんな神風がとある剣を手にするのは、そう日の経たない内だった。

 

 





マスターデュエルで氷水を使いたいなと思いつつアイデアがないためちまちまパックを
買っていたわけですが、ロイヤル加工のエジルが出てしまいました。これは使わざるを得ない。そう思ってランクマ行ってますが、例によって難しいですね。コスモクロアもせっかく演出あってうれしいのに、なかなかうまく使えない。結局純審判魔導と似たような強さになってる気がします(笑)
氷水……水属性……瀑征竜…?
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