征竜の決闘者、ヲ級を拾う   作:バージ

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めっちゃ間が開いてしまいました…。
少しずつ書き溜めしていましたが、ある程度先が見えるまで投稿は控えていました。後は最終話まで週一更新、をできたらいいなという願望。



神風と闇の破神剣

 

人間である俺はもちろん、月光と神風も生きていくために食事を必要とする。艦娘は海上においてはカロリーメイトを彷彿とさせるような小さなブロック状の携帯食料を食べているらしいのだが、陸上では人と同じように飲み食いしている。一方普通の深海棲艦は何も食べていないらしく、その点は生物の範疇を逸脱しているように感じる。しかし今の空母ヲ級月光は普通に食事を取っているし、深海棲艦としての能力をほとんど失っている今となっては、月光は深海棲艦よりも人間に近いのかもしれない。

とにもかくにも食事は三人分必要であるわけだが、料理当番と言うべき役割は現状存在しない。割とそのときの気分で決まるというか、そのとき手が空いていた人がやっている。元々俺と月光の二人しかおらず、見方によっては赤子のようであった月光は当然料理もできなかったため、常に俺が作っていた。しかし何かと俺のまねをする月光は言葉を覚えると共に料理もできるようになり、そのうち二人で一緒に料理をするようになったのだ。といってもこの頃は割れた空き缶や何かのペットボトルなど、道具もまともになかった関係上、焼くか茹でるかの二択な上に眼球やら内臓まで食べるストロングスタイルだった。妖精さんによってコンロと鍋、包丁といった基本的な道具がもたらされ、神風が来ても料理当番という概念は持ち込まれることがなく、常に2~3人で料理を行っている。

 

赤レンガの我が家、もう慣れ切ったキッチンでエプロン姿の月光(妖精さんがもたらした基本道具の一つで、月光用のオーダーメイド。それ基本か?)と二人料理を開始する。神風は今電力装置を動かしているため今日の昼食は二人で作ろう。メインとなる食材は当然魚で、この魚は地征竜リアクタンが作ったくぼみのある岩に水征竜ストリームが取ってきた魚を入れて鮮度を保っている。この水槽はいくつか用意していて、魚以外にも貝やカニ、ウニなんかが泳いでいたりする。魚介類はそれはもう豊富な種類が得られるため、神風などは料理をするときに毎回真剣な様子で考え込んでいたりする。俺や月光はよく考えずに適当に選んでしまうのでえらい違いだ。

かつてはこれ以外にはちょっとした野草や木の実、適当な虫くらいしか食材がなかったのだが、今は「森羅の鎮神 オレイア」が生成した森からいくつもの植物を食材として使えている。森羅ってそういうのだっけ?と疑問に思ったこともあるが、実際にある以上はそう言うものだと考えるしかない。

今回作るのは野菜と魚を一緒に蒸し焼きにしたものだ。オリーブオイルや醤油、ワインなどがあれば上等な料理もできるのだろうが、その手の消耗する調味料のたぐいはさすがに妖精さんも用意してくれなかった。手分けして料理するなか、改めてみると月光も慣れたものだなと思う。初めの頃の月光がナイフ(この頃は石製)を使ったときなんか、ハラハラして目が離せなかった。しかし今や魚の三枚おろしだって慣れた手つきでこなしてしまう。まあ、毎日が魚料理ならそうなるのも当然かもしれないが。ただ、コンロの使い方だけはまだ月光も慣れていなかったりする。

余談だが、神風もまた完全に現代バージョンのキッチンには慣れていないのか、おっかなびっくり使っていたりして、何というか古…おば…もとい謎のかわいさがあった。

 

頭の装備もマントも外し、エプロンをした月光はもはやごく普通の人間の美少女にしか見えない。彼女が料理中でも構わず寄ってくるのは前からだが、ナイフを扱っているときだけは俺の言うことを聞いて距離を離してくれる。しかし火を使っているときは気にせず密着してくるのだ。これは二人で焚き火を囲んでいたの頃、刃物は注意しても炎についてはあまり注意しなかったことが原因なのかと考えている。大して広くもないキッチンで背中から密着している月光の、今や完全に人間と変わらなくなった体温を感じながらもそんな風に思う。

 

「セーヤ、ぐつぐつ」

「あ、そうだった」

 

やべ、火を使ってるのに意識が虚空に行ってた。後ろ…というか横にいたのが神風だったら普通に注意されていたことだろう。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

海岸線。肩幅に両足を開いて正面の海を見据える神風と、それを横から見ている征谷と月光。

神風の手にあるのは一振りの剣。赤い刀身のそれを両手で持った神風が、大上段に振り上げる。

 

「せぇえいっ!!」

 

気合いの声と共に剣を振り下ろすと、大きな青白い光の刃が刀身より放たれ、海面を裂きながら遠くまで走って行った。もう一度神風が似たような体制から今度は地面にたたきつけるような形で振り抜くと、今度は振り抜かれた地面付近の刀身から何メートルも青白い光の奔流が立ち上り、砲撃よりはましな程度の爆音を響かせながら砂と海水を吹き飛ばした。さながらロックマンゼロのチャージセイバーの様な見た目だ。少なくとも威力だけを見れば、艦娘としての12.7cm砲の威力を軽く優越している。

純粋に驚いているというか感心している月光と比べ、征谷はなんとも言えない表情だ。突っ込みどころが多すぎて何から突っ込めば良いか分からないからだ。

神風が持っている剣は極めて古い時代の装備魔法"闇の破神剣"。闇属性モンスター1体の攻撃力を400ポイントアップし、守備力を200ポイントダウンするというそれだけの装備魔法だ。きっかけはウォルフとのデュエルの後増えたカードの確認をしているときに、前から持っていたこのカードから召喚された剣を神風が手に取ったこと。

何故か使えてしまっているのことに疑問を持ったのは征谷だけで、カードのことをよく知らない神風は本当に初めて剣を持ったのかと疑いたくなるぐらい堂に入った剣さばきを見せた。

何故剣が使えるのか?闇属性専用装備魔法じゃないのか?攻撃力400の威力がそれか?なんだその剣からビーム。等など疑問が多すぎて逆に何も聞けない征谷を尻目に、神風は喜んだ。何せ征谷はダイレクトアタックという名の本体狙いが一番の弱点であり、この剣があればそのカバーができるからだ。

艦娘は軍艦状態にならなければ砲が撃てず、その状態だと陸上を移動できないため肉盾と固定砲台にしかならない。このことを気にしていた神風が、まともな近接戦闘能力を手に入れた。闇の破神剣は非常にコストが低く出しっ放しにしてもまるで負担にならない。そういうことで常備することになった神風は毎日剣の、というより闇の破神剣の練習をしている。

 

「まあ……いいか」

 

どれだけ疑問を呈したところで、その解答が分かるわけではないことに気づいた征谷は、疑問を棚上げすることにした。

神風が剣や艦娘としての練習をするように、征谷は召喚・ドロー・デッキ調整などの修行を毎日行っており、月光はエリアと一緒に瞑想のようなことを始めている。家事、資材錬成、艦娘としての訓練に加えて剣の訓練まで加わり、やることがたくさんある神風だが、本人的にはむしろどんとこいだった。

 

 

 

 

 

 





・神風
神風型駆逐艦一番艦。元は1922年竣工の非常に古い駆逐艦。ただし艦娘としての性能が特別低いと言うことはない。

・闇の破神剣
闇属性専用の装備魔法。征谷も月光も持って振ること自体はできるが、その力を引き出すことはできない(青白いオーラが出ない)。



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