太平洋決戦はすでに始まっているのだ。
征谷と征竜がこの世界に現れてから一年ほどが経過する頃。
彼らがいた島は北太平洋の中心をスタート地点として、インド洋を渡り、南大西洋を抜け、南太平洋まで泳いできた。擬似的な世界一周を経て、北太平洋にて出会うことのなかったその姫と、南太平洋の北部、赤道近くにて邂逅した。
深海棲艦の中でも最も大きな勢力を持つのは北大西洋に戦艦仏棲姫であり、2番目と大きな差を付けて3番目にインド洋に南方棲鬼が位置する。空母水鬼や深海海月姫等は南方棲鬼とそう規模が変わらず、潜水新棲姫は勢力を持たず少数で行動している。そんな深海棲艦達の中で2番目に大きな勢力を持ち、太平洋を勢力圏としているのが港湾棲姫であった。
港湾棲姫は潜水新棲姫ともまた違った特殊な深海棲艦であり、洋上にいくつも拠点を持ちそれらを管理している。そんな彼女は決戦の地として、南太平洋にある洋上要塞を選んだ。
港湾棲姫は主に戦艦仏棲姫の協力により、移動する島とそこに住むドラゴンの存在を確認していた。もとより深海棲艦の中で最大級に強力な空母ヲ級月光と、その艦隊の壊滅。そして第三位に位置する勢力を持つ南方棲鬼の撃沈。これらを成したと思われる者についてはまさに注目の的であり、明確な思考を持つものであれば、人も深海棲艦も例外なく多大な興味を持たずにはいられない。港湾棲姫もそのうちの一人であり、南大西洋にて行われた偵察により三体のドラゴンの存在が明らかになっている。
一体目は、大型乗用車程度の大きさをした小柄な青白いドラゴン。デブリドラゴンのことだ。風を操り近くの航空機を容易く撃墜する他、飛行速度が速く暴風を纏っているため、複数による対空砲でもまともに命中しない。火力は低いものの風による衝撃波や鎌風、ブレスによって駆逐艦程度なら簡単に撃沈してしまう。航空機にとって最大の敵となるだろう。
二体目は、二十メートル以上あると思われる巨体と、宝石のような美しいウロコを持ったドラゴン。アレキサンドライドラゴンのことだ。重巡洋艦の主砲並の威力を持つ光球をいくつも同時にはなったり、戦艦でも一撃で撃沈しかねない威力のブレスビームを放つ。あまり動き回ることはないものの高高度を飛行可能で、一度も被弾を確認できていない。直接的に最も多くの深海棲艦を撃沈しているのがこのドラゴンだ。
三体目は、美しいウロコのドラゴンよりも少し小さいと思われる、溶岩の様な甲羅を持った亀のようなドラゴン。メテオドラゴンのことだ。地上から動くことはなく、詳細は不明だが頑健な装甲を保有していると思われる。また射出する巨大な岩塊は命中率こそ低いものの、その質量が着水することによって起こる大波は百メートルを超える船体を持っていたときならいざ知らず、体の小さな深海棲艦にとっては致命的となる。
強大な三体のドラゴンであるが、無敵の存在というわけではない。港湾棲姫には、これら三体の内二体の撃破方法について目処が立っており、また残りの一体については撃破するする必要が無いと考えていた。なぜならそもそも深海棲艦は、あれらのドラゴンを積極的に撃破するべき対象だと認識していないからだ。深海棲艦にとっての第一目標はあくまで人間であり、ドラゴンはその障害となる存在に過ぎない。つまり第一目標である人間の殺害さえ果たせるのであれば、極論ドラゴンはどうでも良いのだ。
要塞の周囲には、港湾棲姫が太平洋中から集めた優に千隻を超える深海棲艦が浮かんでいた。準備は万全で、移動する島もまた、コースを変更することもなくまっすぐ進み続けている。要塞の中心部分に座す港湾棲姫は、ふと疑問に思った。自身が集めた深海棲艦の中に何隻か紛れていた、黒い闇のようなものを纏った個体は何なのだろうかと。しかしそんな疑問は、泡沫のごとく雑多な思考の中に消えていく。後に残ったのは、港湾棲姫が普段からよくする、その大きくて強い体とは違ってどこか悲観的で不安げな表情だった。
~~~
ファンタジーにおける冒険者を思わせるような装備をした、精悍な男がいた。彼は"彼岸の旅人 ダンテ"。薄暗い平原の中ちょうど良い大きさの岩に腰掛けた彼は、大きく分厚い本を読みながら、周囲にいる者が思わず聞き入ってしまうような魅力的な声で歌うように読み上げた。
カグヤは言った。"常に余裕を持ち万象に雅を見いだす"と。
プレアは言った。"心の感じるままに進む"と。
アクティは言った。"平和を守る力を"と。
ウォルフは言った。"大義のためにひた走り、成し遂げる力"だと。
ルシフェルは言った。"運命を打ち破る者"だと。
「デュエリストとして相棒に求めるもの、あるいは相棒たる条件」
ダンテが持つ本の中には、今読み上げた者達以外にも様々な精霊の言葉が書かれている。それは彼が長い旅の中で出会い、そしてその者達に聞くことによって作られた本だ。新たに現れた世界と問題を耳ざとく聞きつけた彼は、早速新天地へと旅立つ準備を進めていた。
「うまくいけばまだ見ぬリバイアサンや征竜の言葉をえられるかもしれないな」
機嫌よさげなダンテはふと近くにいた緑髪の少女に声をかける。向かう先にはエリアもいることが分かっているからだ。
「そういえば、ウィンの友人もいるんだったか。彼女もまた、未だ出会う運命になかったな」
声をかけられたのはどこかダンテと雰囲気のあった装いをした(つまり、その格好で荒野の旅にも繰り出せそうな)少女。"風霊使いウィン"は、声をかけられる前から思い描いていたことを答えた。
「それなら多分。"非日常によって損なわれることのない、日常の中の優しさ"じゃないかな」
~~~
とある鎮守府の人気の無い廊下で、皐月は数秒間フリーズしていた。
生死の境界線を彷徨い、征谷と出会い、そして帰ってきた皐月は、それまでとあまり変わらない日常を過ごしていた。日常とは言っても深海棲艦との戦いが続いているため平和とは言い難いのだが、練度の高い駆逐艦である彼女が領海内において窮地に立たされるような事態はそうそう起こらない。また最近は深海棲艦の数が減っているため接敵する回数自体が減少していた。
具体的なことまでは分からないまでも、皐月は征谷の影響が出ていることを確信していた。皐月もまた征谷の動向を追い続けているが、他の誰にも実態の知られていない事実を皐月だけは知っていたため、征谷の軌跡をある程度はつかむことができていた。
今日もまた艦娘全員に使用許可されている共用パソコンを用いて情報収集を行ったばかりである。そんな彼女が廊下に立ち尽くしているのは、見たこともないような物を見てしまったからだ。それは二つの人影であり、片や民族衣装のような者を来た褐色の少女、片や深海棲艦を彷彿とさせるものの別物であろう少女。
鎮守府という軍事施設には全くもって似つかわしくない二人が供も連れずに歩いているのを見て、皐月は思った。
「もしかして、精霊?」
・大きさについて
デブリはアニメのソリットビジョンのそれよりも大きい。初代ガンダム(18m)の半分より小さいくらい。一方アレキはガンダムより大きい。実はメタルギアRAYとも比べるつもりだったのだが、調べても大きさが出てこなかった。誰か真相を教えてほしい。10~12mだと思っていた作者の認識は一体どこから来たのか…。
・彼岸
ドラゴサックからケルビー二を出せばそのまま彼岸につなげられますね。ラスティバルディッシュまで行くとさすがにシナジー外だと思いますが。
・霊使い
属性一致ですが、果たして混ざるのか…?