ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?   作:ひいちゃ

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転戦編
序章


 『俺』の意識が目覚め、この体の自我が書き換えられたその時、俺の頭に浮かんだのはこの一言だった。

 

―――ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?

 

 いや、まさにそうなのである。今俺はガンダムに乗って戦っているところだ。

 俺の乗るガンダムはビームセイバーを振るい、それを東方師匠こと、東方不敗・マスターアジアのクーロンガンダムが、なんとその拳で受け止めている。

 

 しかも、さすが東方師匠というべきか、クーロンガンダムは、その光の剣に斬られるどころか、むしろその剣を押している。

 やばい、このままでは押し切られてやられてしまう!

 

「とりゃっ!!」

 

 幸い、戦い方は「身体」が覚えてくれているらしい。その記憶が教えるままに、俺はクーロンガンダムを蹴り飛ばし、それと同時に後ろに飛びずさって距離を取る。

 

 にらみ合う俺のガンダムと、クーロンガンダム。俺はにらみ合っているその間に、今のこの現状を再確認することにした。

 

 今俺は、金髪碧眼の美少女になっている。胸のふくらみはあるが、それでも大きいとは言えない。言わば、発展途上の身体。記憶によれば、名前は『ジャンヌ・エスプレッソ』といい、ネオ・ノルウェーのガンダムファイターだそうだ。

 そしてこのガンダムは、登録番号『GF13-047NN』機体名『ガンダム・ピュセル』。ジャンヌの剣技を再現することを重視した機体とのこと。必殺技は『約定必勝・ウィニングセイバー』。

 

 この機体をもってガンダムファイト13回大会に参戦したジャンヌは、ここ新宿で東方師匠と相まみえ、ガンダムファイトを挑んだ、ということらしい。

 

 それにしてもまさかこんなことになるとは……確かに俺はGガンダムが好きで好きで、『超級!!』を読んでいるうちに線路に転落してお亡くなりになるほどのGガンダム好きの男子高校生だったけど、Gガンダムの世界に転生し、しかも女になり、さらには東方師匠と戦っているなんて。

 

 だが、こうして転生し、東方師匠と剣を交えることになったからには、やらなければならないことがある。それは、彼を止めること。

 

 地球の未来のこととか犠牲のこととかもあるが、一番の理由は、彼を止めなければ東方師匠は間違いなく死んでしまうからだ。

 

 ガンダムファイトで汚されていく地球を憂えていた師匠は、デビルガンダムを使って地球に住む人々の排除をもくろんだ。だが、それは、それをよしとしない弟子のドモン・カッシュとの対立を生み、最後に師匠は弟子との対決で死亡する。

 俺も、師匠の最期のシーンでは、滂沱のごとく涙を流したものだ。

 

 しかし、感動的なシーンであっても、やはり師匠が死ぬのは嫌だ。できるものなら彼には死んでほしくない。そのためには、師匠を止めるしかない。

 

 俺はそう決意を固め、ビームセイバーを構えた。

 その決意を感じ取ったのか、師匠も構えなおした。

 

『ほう……。先ほど前と気迫が違う。負けられぬという想いが感じ取れるようだ。よかろう。ならばわしも、それに応えてやるとしよう。来るがよい』

「行きます!」

 

 そして俺はビームセイバーを構えなおし、一気に師匠のクーロンガンダムに突進した!

 

「約定必勝! ウィニングセイバアアアァァァァ!!」

『必殺! クーロンフィンガアアアア!!』

 

 そして俺のガンダムピュセルのウィニングセイバーと、師匠の(ダークネスフィンガーに当たる技)クーロンフィンガーがぶつかりあった!

 

 さ、さすが師匠! そのパワーは俺なんかとは段違いだ。ふんばっても、気力を振り絞っても押し切られてやられてしまいそうだ。だが、この世界のためにも、師匠のためにも、ここでやられるわけには……!

 

 その時だ。

 

 俺の脳裏と意識に見えた景色と、聞こえてきた声があった。

 

* * * * *

 

 廃墟と化した町、濁った川、荒れ果てた森。天空に浮かぶコロニーたち。

 そしてその町にたたずむ東方不敗・マスターアジア。

 

 これは……前回のガンダムファイトの風景?

 

 その惨状を目の当たりにした師匠は声もなく慟哭する。

 声なき慟哭のはずなのに、その声は俺の意識に届いていた。

 

―――これは……この惨状は……ま、まさか……!

―――わしが、わし自らが、地球を破壊し、汚し、この惨状を招いていたというのか!

―――なんということだ! これは……ガンダムファイトの真の闇に気づかず正義気どりで拳を振るい続けたわしの罪!

―――おおおおおお!!

―――地球よ、自然よ、すまなんだ。わしが早くそれに気づいていればこんなことにはならなんだのに……!

―――許せ、海よ、山よ、湖よ、わしが愛しんでいた自然、地球よ! うおおおおおお!!

 

 聞いたことがある。

 優れた格闘家同士は、拳を通して己を語るものだと。

 ということは、これは師匠の心の叫び……!? 俺のGガンダム愛がそれを聞かせてくれたのか……?

 

* * * * *

 

 そして気が付くと、俺は再び師匠と必殺技をぶつけあっていた。

 

 だが俺は師匠の心の慟哭を感じ取ったと同時に気が付いたことがある。

 

 ここで師匠と拳をぶつけ合っている場合ではない。こんなことをしても、地球の汚染も、師匠の嘆きも、止めることはできないのだと。

 そのためにはやはり、師匠の言う通り、人類を地球から巣立たせるしかない。だが、そのために人々が犠牲になることは望まない。それに原作のままの人類排除を行っていたら、原作通りの結末を迎えてしまう。そうさせないためには―――。

 

 俺はビームセイバーを消すと、とっさに身をかわした。

 師匠のクーロンフィンガーが俺のピュセルガンダムの左肩に炸裂し、俺の左肩に激痛が走る。

 

「あがっ……!!」

『どうした、なぜ拳をひく? 戦いの途中で拳を退くなど、勝負を捨てた者のすることぞ』

 

 しかしその師匠の言葉に俺は臆せず、ガンダムピュセルを降りて返す。

 左肩の痛み……師匠の心の痛み……に耐えながら。

 

「いえ。ここで師匠と戦っても、世界を救うことも、師匠を救うこともかなわないと悟りましたから」

『なに?』

「ガンダムファイトが続いている限り、いえ、人類が地球で営みを続ける限り、地球は汚れ破壊され、師匠の嘆きや憂いは深まっていく……」

『!? おぬし……』

 

 その時、あたりを地震が襲う。そして、地を割って現れたのは……。

 

『デビルガンダム!? まさか、この娘の想いの強さにひかれて現れたのか!?』

「それを止めるためには、強大な力で、人類を無理やり巣立たせるしか……。キョウジではなく私が……」

 

 そして俺は、デビルガンダムに向けて歩き出す。

 デビルガンダムから飛び出した触手で、俺のファイトスーツが引き裂かれ、俺は一糸まとわぬ姿になったが、俺は迷わずデビルガンダムに向けて歩いていく。

 

 その様子を、師匠は息をのんで見守っている。

 

『まさかおぬし、キョウジ・カッシュの代わりになってデビルガンダムのコアになろうというのか!?』

「はい……。そうすることで、私の望む、私なりの人類排除が為せるなら……」

 

 そして俺は、デビルガンダムの前に立った。

 その胸装甲が開き、中から一人の男が排出される。Gガンダムの主人公ドモン・カッシュの兄、キョウジだ。そしてそれと同時に、デビルガンダムの中から触手が再び放たれ、俺の細い腕を、きゃしゃな体を、きれいでなめらかな肌をからめとっていく。

 そして俺は引き寄せられるように、デビルガンダムの中に取り込まれた。そして―――!!

 

* * * * *

 

「う、うぅ……?」

 

 キョウジ・カッシュはふと目を覚ました。見渡すと、そこは地球上の町、新宿の荒れ果てた風景。

 だが彼はすぐ、自分のおかれていた状況に違和感を抱いた。

 

「どういうことだ……? 私は、アルティメットガンダムと共に地球に降りたはず。そして暴走してデビルガンダムとなった機体に取り込まれてコアに……?」

 

 そこで見上げた彼は目を見開いた。そこにあったのは元アルティメットガンダムのデビルガンダム。だがその姿は、地球に墜落した時より大きく、強く、美しいものとなっていた。

 

「馬鹿な、もう第二形態に!? しかも、計算されていたものより美しいものになっているとは……!!」

 

 そう疑問の叫びをあげたカッシュに顔を向けたデビルガンダムは、一瞬彼を見つめると、そのまま地面へと潜っていった。

 

「なんということだ! 早くドモンたちと会い、対策をとらないと大変なことになる!」

 




* 次回予告 *

皆さんお待ちかねぇ!

新しくデビルガンダムのコアとなったジャンヌ。その彼女が降り立ったのは、ネオ・アメリカの直轄地と、ネオ・メキシコの直轄地とのはざまにあるキャンプでした。
そこである兄妹と出会う彼女でしたが、実はその裏で、あの男が兄妹を狙っていたのです!

果たしてジャンヌは、兄妹を守り、目的を果たすことができるのでしょうか?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第1話、『兄妹を守り抜け! 復活の雇われファイター!!』に

Ready Go!!
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