ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!? 作:ひいちゃ
はて、師匠? 機関長? はは、なんのことやら……。
さて、原作を見てこられた皆さんになら、必要ないとは思いますが、この作品でGガンダムに触れた方も多いはず。そこで、改めてここでガンダムファイトについて簡単におさらいさせていただきましょう。
地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
これがガンダムファイトです。
スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
それが、これまで12回も続いてきました。
ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。
「はい……。そうすることで、私の望む、私なりの人類排除が為せるなら……」
果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?
今回のカードは、元ネオ・イタリア代表、無所属のガンダムファイター『ミケロ・チャリオット』の『ネロスガンダム・スクラップ』。
それでは今回のガンダムファイト、Ready Go!!
ある一室。そこで数人の男が向かい合っている。
一人の男が椅子に縛り付けられており、それを数人の男がにらみつけている状況だ。
そして、一人の偉そうな、だが胡散臭そうな男が口を開いた。
「我々の招待を受けてもらって、感謝している。ミケロ・チャリオット君」
「何を言ってやがる、無理やり連れてきたくせしてよ。まぁ、あの臭い豚箱から出してくれたことには感謝するがな。それで、俺に何をさせたいんだ?」
「物分かりがよくて助かるよ。君には、この男を連行してきてもらいたい」
そう言って男が出したのは、一枚の、兄妹が映った写真だ。
それを見たミケロが、それを一瞥したところで、男のほうに向きなおって聞く。
「こいつは……ネオ・メキシコのチコ・ロドリゲスか? 奴さんは確か……」
「そうだ。ネオ・ジャパン代表のドモン・カッシュとの戦いで機体が大破、死亡したとされていて、我が国の政府の首脳もそう信じている。だが、我々情報部は、実はそれは虚偽の情報で、彼はひそかに逃げ延びていると突き止めたのだよ」
「へぇ……」
ミケロがそう声をあげる。それに対し、男は表情を変えず、うなずいて答えた。
「奴が本当に死んだのならどうこうすることもなかったが、生きのびているなら話は別だ。敗戦して我が国に泥を塗ったばかりか、それまでガンダムファイトから逃げ続けていた奴を許すわけにはいかない。ただちに我が国に連れ戻して、その罪にふさわしい罰を受けさせなければならん、と、我々のオフィサーがおっしゃっていてね」
「それで俺に、奴を捕まえてきてほしい、と」
「そういうことだ。生死や手段は問わんが、その代わり、任務中に君に何が起こっても、我々……ネオ・メキシコは関知しない」
この手の輩が言う常套句だな、とミケロは皮肉な笑みを浮かべて口を開いた。
「それで、捕まえたら何をくれるんだ? こんな危ないことをするんだ。ただ働きなんてごめんだぜ」
「わかっている。この任務が成功したら、ネオ・イタリア政府にかけあって、君の身の安全を保障すると同時に、それなりの報酬金も用意しよう」
「わかった。この俺の金の足にかけて、その依頼、クリアしてきてやるよ」
そして部屋は再び闇に包まれた。
* * * * *
俺……ジャンヌ・エスプレッソは、ネオ・アメリカの直轄地の南端にある小さな町に来ていた。
俺と師匠……東方不敗・マスターアジアの目指す『地球からの人類排除』のための同志を求めてのことだ。『彼』はガンダムファイトのせいで良い目にあっていなかったし、賛同してくれるとは思うのだが、こればかりは実際に会ってみないとわからないな。
さて、街のあちこちには、おいしそうな食べ物を売っている店がたくさん。思わずつばを飲み込んでしまう。
デビルガンダム細胞で作られたこの体は、特に食事をとる必要はないが、それでも食欲は普通にあるのだ。
* * * * *
ジャンヌが小さな町に立ち寄る数日前、彼女がデビルガンダムに取り込まれた直後。
東方不敗・マスターアジアは目の前に立つデビルガンダムの強く、美しい姿に驚愕していた。
「おお……この姿は……! そうか! デビルガンダムのコアに真にふさわしいのは女性ということだったのか! これなら、これなら人類を排除し、地球に自然を取り戻すことも……」
「いいえ、すみませんが、師匠の望む人類排除は諦めてもらわなければなりません」
「ぬぅっ……!?」
声とともに、背後から現れた気配に振り向いた彼が見たのは、先ほどデビルガンダムに取り込まれた少女と寸分違わぬ人物だった。
「おぬし、その姿は……そうか、
「はい。私の本体はデビルガンダムの体内でその制御に集中しています。私はその本体の代理として生み出された存在。といっても、自我や記憶は、本体と同じものですし、私の見聞きしたものは、本体にも伝わるようになってますが」
「なるほどな」
「はい。それで、ここからの人類排除……いえ、人類追放計画は、私の考える通りに変更させていただきます。あなたの思う通りの、人類を絶滅させての人類排除は、少なくともあなたにとっては悲劇しか生まないから」
そのジャンヌの指摘に、マスターアジアは面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「ふん。わかったようなことを言う」
「いえ、感じて、考えたことです。師匠の拳から、師匠の心の慟哭を感じたことから」
「なんだと……!?」
マスターアジアを目をむいた。確かに一流の武闘家は、拳を交えることで相手に自分の想いを伝えることができる。
だが、こんな愛弟子よりも若く、実力も自分より劣る娘が、その境地に達していようとは。もしかしたら、これは天が彼女に与えたもうたことか。そしたら彼女は、天がこの地球に与えた救いなのかもしれない。
「まさかおぬしもその境地にたどり着いているとはな。大した娘だ」
「いえ。私はただ、師匠も、この世界に生きる全ての人々も、そしてこの世界が大好きなだけです。その愛が奇跡を生んだだけですよ」
「そうか。して、わしの計画がダメならどうする気だ?」
その彼の問いかけに、ジャンヌは視線をそらすことなく答えた。
「人類を地球から追い出すのには同意しますが、人類を抹殺するまでのことは必要ないと思います。人々を宇宙に追いやり、地球を閉ざせば……。デビルガンダムの力ならそれが可能なはずです」
「ふむ……よかろう。うぬの意見を受け入れよう。地球が青き姿を取り戻すなら、その過程にこだわるつもりはないからな」
「ありがとうございます」
そして、話は現在に戻る。
* * * * *
そして俺が店からフランクフルトを買い、食べながら歩いていると……。
「何をするんだ!」
「黙れ、不法移民者ごときが!」
町の一角が、何かもめているようだ。その声に何か気になるものを感じ、行ってみると……。
警官らしき男たちが、もう一人の男に暴行をふるっている。その暴行されている男は……なんてことだ、チコ・ロドリゲスじゃないか! ネオ・メキシコのガンダムファイター。今は死亡扱いで、ネオ・メキシコの追っ手から解放されたはずだ。
とはいえ、放っておくことはできない。俺がここに来た目的は、彼と接触することだしな。
俺は手元からあるものを取り出して、警官に向けて投げつけた。地面にぶつかると同時に白煙が噴出し、周辺を白く染め上げる。そして急いでその中に飛び込んだ。
「チコ・ロドリゲス、こっちです!」
「君は? どうして俺の名前を?」
「話はあとです。早く!」
そして俺たちは白煙の中、逃げ出していったのだった。
* * * * *
「そうですか……。違法入国で、このネオ・アメリカ側に……」
「あぁ。妹の具合が悪化してきてな。こちらなら医療も充実していると思って、入国したんだ」
警官らしき奴らから逃げ出した俺は、この町の片隅にあるぼろ小屋で、チコと会話をしていた。
そういえば、チコの妹は、重病で余命が一年しかないという話だったな。それは兄であるチコとしては、心配だし助けたいと思うだろう。彼らが密入国したいと思っても、それを責めることはできまい。
しかし、これは、彼を説得するのは諦めたほうがいいか……? いくら俺の考えに賛同してくれても、そんな余命いくばくもない妹を置いていくことはできないだろう。それを責めることも、無理やり来てもらうことも、俺にはできない。
……待てよ、チコの妹の病といえば……。
「ん、どうしたんだ?」
「いえ、なんでも……」
と、そこで!
突然扉がぶっ飛ばされた! こちらに飛んでくる扉を、俺は持っていた剣で真っ二つにして、二人に衝突するのを阻止した。
「へへへ、見つけたぜ、チコ・ロドリゲス……!」
そして扉の向こうから聞こえてくる、聞き覚えのある声。
その声の主は……!
「お前は……!」
「ミケロ・チャリオット! 元ネオ・イタリアのガンダムファイター!」
そう。ネオ・イタリアの代表で、ドモンの最初の対戦相手だった男!
あの戦いの後、ネオ・イタリア警察につかまっていたはずだが……。
「元ネオ・イタリアだったのは昔の話さ。今はただの雇われガンダムファイターだ。さて、ネオ・メキシコのお偉いさんがお怒りのようでな。俺と一緒にネオ・メキシコに帰ってもらうぜ。チコ・ロドリゲス」
「くそ、一体どこから、俺が生きていることがわかったんだ!?」
「チコ、ここは私に任せて、早く逃げてください!」
「す、すまない! 恩に着る!」
俺はそう言うと、改めて剣を構えて、ミケロと対峙した。
それを見て、奴はにやりと笑った。
「へぇ、小娘、お前もガンダムファイターだったのか。遊んでやりたいところだが、今は依頼のほうが優先なんでな!」
そう言って、ミケロは俺を無視して、脱出しようとするチコに襲い掛かるが……。
「させないと言っています!」
そのミケロの前に立ちはだかり、剣を横一文字になぐ。奴はそれをたやすくかわして距離をとった。
この間に、チコと妹さんは逃げられたみたいだが、それでもミケロは余裕の笑みを崩しはしなかった。
「なかなかやるじゃねぇか。だが、追っ手が俺だけだと思ってねぇか?」
「……まさか!」
ミケロの奴、邪魔が入った時のために、別の追っ手を用意していたのか! うかつだった!
自分のうかつさを呪いながら、二人を追う準備をしようとする俺だが……。
「さっきの言葉を返してやるよ。させねぇと言わせてもらうぞ!」
「くっ……!」
* * * * *
妹を抱きかかえ、町の裏路地を逃げていくチコ・ロドリゲス。
仮の住処から大きく離れ、もう大丈夫だと、安心して息を吐く彼だが、それはまだ甘かった。
「!!」
彼の前方から、ネオ・メキシコの軍服を着た男たちが近づいてきたのだ。
「チコ・ロドリゲスだな? ネオ・メキシコ情報部だ。我々と一緒に来てもらおうか」
「くっ……」
男たちが一歩を踏み出し、チコは一歩後退した。そして、男たちが二歩目を踏み出したところで、チコは逃げようと後ろを振り向こうとするが、そこからも男たちが……!
「我々も手荒なことはしたくない。大人しく捕まったほうが身のためだ」
「くそ、こんなところで……!」
と、そこに。
「待てい!!」
* * * * *
ミケロをなんとかまいた俺は、チコたちの後を追っていた。無事だといいのだが……。
必死に走る俺が、なんとかチコたちに追いつくと、そこには……。
「う、うぐ……」
「こ、これは……」
地面にはいつくばっている、ネオ・メキシコの追っ手と思われる男たちと、妹さんを抱きかかえたままたたずんでいるチコと、その横のもう一人の男。その男は……。
「ドモン・カッシュ!」
そう、Gガンダムの主人公で、尊敬する東方師匠の愛弟子であるドモン・カッシュだった。
その彼は、俺をにらみつけて口を開いた。
「ふん、ウルベから、ミケロがこの町に潜伏して悪さを図っていると聞いていたから来てみれば、やはりか。……お前も、ミケロの一味か?」
「いえ、そんなことはありません。私はこのチコを守り、逃がしてあげたんです」
俺は焦る心を落ち着けてそう答える。ガンダムファイターとして戦いを挑まれるならまだしも、こいつの仲間と思われるのは心外も心外だ。
ドモンの厳しく鋭い視線を真っ向からとらえ続ける。やがて、それでわかってくれたのか、警戒を解いてくれた。
「そうか。疑って悪かった。だがその身のこなし、かなりの実力のあるファイターと見た! 俺とガンダムファイトを……」
と、そこに!
街の一角を割り、一機の
『ちきしょう、役立たずどもが! それならこのネロスガンダム・スクラップでぶっ殺してやる! 生死は問われなかったからなぁ!』
「おのれ、ミケロめ! 往生際が悪い! レイン、シャイニングを……」
シャイニング・ガンダムを呼ぼうとするドモン。しかし。
『ごめんなさい、ドモン! シャイニングは今、整備中で動かせないわ!』
「なんだと!? えーい、こんな時に……!」
つまり、今回ドモンは出れないというわけか。それなら……。
「ドモンさん、ここは私に任せてください」
「何、いいのか?」
「はい」
そう言ってほほ笑む。乗りかかった船だしな。
そして俺は、ミケロのネロスガンダム・スクラップに向きなおる。そして。
「来て! ガンダムオルタセイバアアアァァ!!」
その声とともに、天から光が降り注ぎ、そこから一機のガンダムが降りてくる。まるで天使……いや、堕天使のように。
黒い翼を持ち、黒い鎧を身にまとう細身の姿。それはまさに、黒衣の女騎士のごとし。
これが俺……ジャンヌ・エスプレッソの、ガンダム・ピュセルの新たな姿、ガンダム・オルタセイバーだ。
それに乗り込むと、ファイティングスーツを苦悶の声を挙げながら着込み、戦闘態勢をとる。
「あなたはガンダムファイターではないけど、あえて言わせてもらうわ! ガンダムファイト!」
『レディー!』
「「ゴオオオォォォォ!!」」
そして俺のオルタセイバーと、ミケロのネロスガンダムSC(スクラップ)とのガンダムファイトがはじまった!
ネロスガンダム
ガシィ!!
「なっ!?」
ミケロの、まさに目にもとまらぬ蹴りで、そのビームセイバーを叩き落とされてしまった。俺はとっさに、右腰の予備のセイバーを抜いて、その場を飛びのく。
こいつ……あの蹴りにさらに磨きをかけている!? 『男子三日会わざれば刮目してみよ』というが、それがこんな奴にも該当するとは!?
『どうだ驚いたか! こんなネロススクラップだがな! 足回りだけはさらに強化されてるんだよぉ!! 受けな! 必殺!! 銀幻の脚ぃ!!』
ネロスガンダムSCは突進してくると、まさに銀色の幻と呼ぶにふさわしい、数百発の蹴りをオルタセイバーにはなってきた!
俺は必死にそれを交わし続けるが、かわしきれずに一撃をもらってしまう! 追撃をもらう前に飛びのくことができたのは、まさに僥倖だ。
『なかなかやるじゃねぇか。ドモン・カッシュと戦った時を思い出して、身体が熱くなってくるぜぇ……!』
「あなたもね。ただの悪党と思っていたけど、やるじゃない。ならば私も技を見せてあげるわ。きなさい!」
『おもしれぇ!』
構える俺のオルタセイバーに対し、ミケロのネロスガンダムSCは再び突進してきた。そして。
『とどめだ! 銀幻の脚ぃぃぃぃ!!』
あの無数の蹴りを放ってきた! それに対し俺は……!
「流派東方不敗亜流! スプラッシュソードォォォォ!!」
『なっ!?』
無数の突きを放ってそれに対抗した! 俺は本体がデビルガンダムのコアになったあと、東方師匠から流派・東方不敗を教わった。
付け焼き刃的なものであったが、DG細胞による影響からか、半分ほどではあるが、その技をある程度体得することができた。その技を未完ながらも自分の技として昇華することも。
この技、スプラッシュソードもその一つ。元はドモンがチボデーとの再戦で見せたゴッドシャドーだ。アレの応用で、無数の突きを放つようにしたのだ。
* * * * *
そのガンダムオルタセイバーのスプラッシュソードを見たドモンは、真剣な表情を浮かべた。彼女の技が、自分の使う流派・東方不敗ととても似ているように感じたのだ。
「あの技……あの娘も、俺と同じく、師匠から流派・東方不敗を習ったのか……」
* * * * *
はてしなく続く、俺が放つスプラッシュソードの無数の突きと、ミケロが放つ銀幻の脚の無数の蹴りの激突。
俺の無数の突きは、無数の蹴りをことごとく迎撃し続けた。
さすがに本人が足回りを強化したというだけのことはあり、スプラッシュソードをもってしても、迎撃し続けるので精いっぱいだ。だが、負けるわけにはいかない!
俺は必死に、スプラッシュソードを放ち続けた。
そしてついに! 俺のビームセイバーの突きが、ネロスガンダムSCの脚を貫き、砕いた!!
『ぎゃあああああ!』
「やりましたね……。自慢の脚をやられたら、あなたももうおしまいですね」
そう言って俺は一歩を踏み出す。そこに。
『ま、待ってくれ。あんたも覚えてるだろ? ガンダムファイト国際条約第二条……!』
「えぇ、覚えていますよ。『敵のコクピットは狙ってはいけない』……でも、今のあなたはガンダムファイターではありません。ただの雇われファイターです。なら、別に第二条を適用する必要はありませんよね」
『ぐ……』
さらに一歩を踏み出す。それでミケロも覚悟を決めたのか。
『や、やってやるぅぅぅぅ!! 俺も元はガンダムファイターだあああぁぁぁぁ!!』
ミケロは右脚を破壊されたネロスガンダムSCを突進させてきた。そして、壊されて使い物にならない右脚で膝蹴りを放ってきた!
そこに。
「ミケロ……あなたの、わずかに残っていたガンダムファイターの魂に敬意を表し、この技で応じます! 必殺!!」
折りたたまれていた翼が展開し、ガンダムオルタセイバーがエメラルドグリーンに輝く!
「絶対勝利・エクスカリバーン!!」
俺のオルタセイバーも突進! すれ違いざまに、ネロスガンダムSCを横一文字に一刀両断する。
そして爆発!!
ガンダムファイトは俺の勝利で幕を閉じた。
実はこの時、俺はわざとコクピットを狙わなかった。心の中にわずかながらもガンダムファイターとしての魂が残っていた彼に感嘆した俺は、彼が生き残るか死ぬかを天に預けたのだ。もし天がミケロのガンダムファイターの魂に感じ入ったなら、彼は助かるかもしれない。天に見放された死んだとしたら、その時はその時。極悪人に天罰が落ちただけのことである。
* * * * *
「それではドモン。ジーナさんのことはよろしくお願いします」
「あぁ、わかった。任せてもらおう。ネオ・ジャパンのほうには既に連絡をしておいた」
そう返事をするドモンに、レインが横やりを入れてくる。
「連絡したのはあなたじゃなくて私よ、ドモン」
「わ、わかっている! 無事に彼女をネオ・ジャパンコロニーに連れ帰り、最先端医療を施してもらえるようにする」
「ありがとう、ドモン・カッシュ。お前には二度も助けられた」
「気にするな。同じガンダムファイターとしてのよしみだ。妹さんが快方に向かった暁にはすぐに連絡する」
そしてドモンとレインは、チコの妹、ジーナを乗せた救急車と共に去っていった。
そう、『超級!』を読んで、ジーナの病はネオ・ジャパンの最先端医療で治せることを知っている俺は、ドモンに頼んで、ジーナをネオ・ジャパンに連れ帰って、治療をしてもらうようにお願いしたのだ。
ドモンは、俺が東方師匠から流派・東方不敗を習った、いわば同門の身であることからその願いをすんなり聞いてくれた。本当にありがたいが、その俺が師匠と共に『地球からの人類追放』のために動いていることを思うと、少し申し訳ない気分である。
さて、ドモンたちが去っていったところで、俺は改めて、チコのほうを振り返った。
「それで本当に、私たちに力を貸してくれるんですか? 四天王の一人になってくれると?」
「あぁ。地球に降りて過ごしてきてわかった。地球も汚され、傷ついていると。もしかしたら、ジーナの病状が急に悪化したのはそのせいもあるのかもしれない。いわばジーナは、そうした人類の汚染や破壊の犠牲者なのかもしれないと思った」
「……」
「正直、人類を宇宙に追放するというやり方には異を唱えたいところもあるが……だが、犠牲者を出すことなく、それを果たして、地球の環境をよくするというのであれば、ジーナを助けるため、ジーナのように汚染や破壊のために苦しむ人たちのため、俺がそれに力を貸すのを拒む理由はない」
「そうですか……ありがとうございます」
そう言って俺は懐からカプセルを取り出した。
「それを俺に感染させるのか?」
「いえ。あなた本人に感染させるつもりはありませんよ」
「?」
そして俺はカプセルを地面に置いた。そして祈る。
「目覚めて、そして進化して……!」
すさまじい揺れ。そして地面から一機のモビルファイターが現れた。それは……。
「これは……俺のテキーラ!?」
「いえ、これはもう、テキーラガンダムではありません」
「なんと!?」
俺たちの目の前で、テキーラガンダムはその姿を変えていく。
その腕が、脚が、そして頭部、胴体が新たな姿へと変化していった。
そして現れたのは、テキーラガンダムの面影を残しながら、その鋭さと力強さを増し、その一方、邪悪さを残したガンダム。
そう。これが……。
「これがあなたのガンダム。テキーラガンダムが、DG細胞によって進化した機体。ガンダム・ヘルトライデントです」
「ガンダム・ヘルトライデント……」
「改めて、これからよろしくお願いします。デビルガンダム四天王ナンバー3、チコ・ロドリゲス」
「あぁ」
そう言葉を交わし、握手を交わす俺たちの姿を、俺のガンダム・オルタセイバーと、チコの新たなガンダム、ガンダム・ヘルトライデントが見下ろしていた。
* 次回予告 *
皆さんお待ちかねぇ!
四天王最後の一人を探すのと並行し、ガンダムファイトの旅を続けるジャンヌは、オランダの地を訪れます。そこで彼女は、ガンダムファイトに挑みながらも、戦いを避ける奇妙なファイターと出会うのです!
次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガン世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』
第2話『変幻自在の逃走者! 変わり者ファイターに隠された心』
にReady Go!!
※次の更新は、5/8 12:00の予定です!