ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?   作:ひいちゃ

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 さて皆さん。いよいよ、第13回ガンダムファイト決勝大会が始まりました。
 その緒戦で、ドモンはいきなり、新必殺技である爆熱ゴッドフィンガーを撃てなくなるというトラブルに見舞われました。果たして彼は、その状況の中、勝利をつかむことができるのでしょうか? そしてその原因とは?

 そしてその次の試合で、アルゴ・ガルスキーのガンダム・ボルトクラッシュと戦うのは、ネオ・カナダ代表、アンドリュー・グラハムのランバーガンダムです。
 彼も、アルゴと同じパワーファイターなのですが、それ以外にも彼と因縁がある様子。はてさて、どうなりますことか。

 それでは、ガンダムファイト、Ready Go!!



18th Fight『前進のためのケジメ! 沈黙のボルトクラッシュ』

「な!?」

 

 エラー音が鳴り響くコクピットの中で、ドモンは戸惑っていた。

 彼が発動させようとしていた新必殺技・爆熱ゴッドフィンガーは発動することができなかったのだ。この異常事態に、ドモンは混乱していた。明鏡止水の境地を忘れてしまうほどに。

 

 どうにか、その戸惑いを振り切って我に返ったその時!!

 

「!!」

 

 目の前に、テムジンガンダムの刀の刃が迫っていた! そして!!

 

「うわぁ!!」

 

 とっさのことで明鏡止水の境地でかわすことができず、彼はその刃の直撃を受けてしまった! とっさに後ろにスウェーバックしたことで、一刀両断されることは避けられたが、吹き飛ばされ、腹部に損傷を受けてしまう!

 

* * * * *

 

 一体、どうしたというのだろうか? 俺……ジャンヌ・エスプレッソも、目の前の状況に戸惑いを禁じ得なかった。

 

 ドモンが優位に戦っていた相手に、必殺技でとどめを刺そうとした。

 だが、なぜかそこで、その必殺技が発動せずに、逆に敵の反撃を許してしまったのだ。

 

 そこから逆転。ドモンは、対戦相手であるテムジン・ガンダムの攻撃の前に防戦一方となっている。やはり、必殺技が発動しなかったのが、ショックだったのだろうか。

 

 そしてその様子を見て、師匠……東方不敗・マスターアジアは、厳しい表情を浮かべている。師匠はこの事態が起こることを予期していたのだろうか?

 

 師匠はただ、厳しい視線を弟子に向け続けている。

 俺にはそれが、師匠がドモンに向けた、無言の激励のような気がした。

 

* * * * *

 

 テムジン・ガンダムのファイター、ネオ・モンゴル代表のキル・ハーンの猛攻に、それを防ぐのが精いっぱいのドモン。彼の頭は、必殺技であるゴッド・フィンガーが発動しなかったことの衝撃で混乱していた。とても明鏡止水の境地に至れる状態ではない。

 

 そして、テムジン・ガンダムの一撃がまたゴッド・ガンダムにヒット! 彼はまた吹き飛ばされてしまう。

 

 その時。彼は見た。

 師匠、東方不敗・マスターアジアが自分に厳しい視線に向けているのを。それがドモンに、戦う気迫と、冷静さと、そして自分が為すべきことを教えてくれた。

 

 彼には聞こえたのだ。視線に秘められた、師匠の声が。

 声は言った。

 

『目の前の些事に囚われるな! それで負けるなど、流派・東方不敗の面汚しよ! お前も我が流派の者なら、惑わされず、自分の目指すもの、勝利をしっかりと見据えよ!』

 

 と。

 

 そしてドモンはあえて、テムジン・ガンダムの攻撃を受ける。スウェーバックしながら受けたので、ダメージはほとんどない。その吹き飛ばされる間に、呼吸を整え、再び明鏡止水の境地に至る。

 地面に叩きつけられたゴッド・ガンダムは再び軽やかに立ち上がり、二本のビーム・ソードを構えた。その様子から、先ほどまでのような動揺はまるで感じられない。

 

 その様子に、ハーンも感じ取ったようだ。改めて刀を構えなおし、ゴッド・ガンダムと対峙する。

 

 だが、ゴッド・ガンダムの放つ静かな気迫は、容赦なくハーンに襲い掛かる。まるで、気迫の拳に握りつぶされるかのようだ。

 それに耐え切れず……。

 

『うおおおおおお!!』

 

 テムジン・ガンダムは猛烈な勢いで突進してきた。しかしそれでも、ドモンは揺らぐことはなかった。そして。

 

「うおおおお! 必殺、爆熱ゴッド・スラッシュ!!」

 

 そして突っ込んでいく! 両手のビーム・ソードがさらに太く、長くなる。そして一閃!! 見事、テムジン・ガンダムの頭部を切断した!

 膝をつくテムジン・ガンダム。レフェリーが試合終了を宣言し、ドモンの勝利が確定した。

 

 会場を包み込む歓声。その中で東方不敗・マスターアジアは相変わらず、厳しい表情を浮かべていた。

 

* * * * *

 

「ドモン、どうしたの!? ヒヤヒヤしたのよ!」

 

 ゴッド・ガンダムを降りたドモンに、レインがそう声をかけた。それに鋭い目を向けてドモンがいらだちを隠しきれない大声で返す。

 

「それはこっちの台詞だ! 俺は明鏡止水の境地に達していたのに、ゴッド・フィンガーがエラーで発動しなかったぞ! システム調整か何かにミスがあったんじゃないのか!?」

「本当!? でもそんなはずはないわ。試合前のチェックでは、制御システムに問題はなかったのよ」

 

 と、そこに。

 

「その通りだ、ドモン。エラーログを見なければ詳しいことはわからんが、発動しなかった原因はガンダムのせいではない」

 

 その声とともにやってきたのは、ドモンの師である東方不敗・マスターアジアと、彼の二番弟子のような存在のジャンヌの二人だった。

 

「お嬢さん。聞いておきたいのだが、その制御システムは、ファイターの明鏡止水があるレベルに達しないと、技を発動できないようになっているのではないかな?」

「は、はい。明鏡止水なのかはわかりませんが、ファイターの心の動揺を検知すると、セーフティが働いて発動しないように……」

「なるほどな」

 

 そして、再びドモンに目を向ける。

 

「ドモン、ギアナ高地で明鏡止水に至ったのは見事だとほめてやるが、その明鏡止水はまだまだ不完全ということだ」

「でも師匠、ギアナ高地でのドモンの動きは、本当に流れる水のようで、静かで間違いなく明鏡止水という感じでしたが……」

 

 そう異を唱えるジャンヌに、師匠はうなずいて続ける。

 

「うむ。だが、それでも心にかすかな迷いがあれば、それは心という水面に少しだが波紋を生じてしまう。それをシステムが感知してエラーを起こしたのであろう。ドモン。お主、心の中にわずかながら迷いがあるのではないか?」

「……はい」

 

 マスターアジアの質問に、ドモンは素直に認めた。師匠との修行時代から、心技体の問題に対しては言い訳せず素直に認めるように、厳しくしつけられていた。嘘をついついてしまい、吹き飛ばされてしまったことは数知れない。

 

「やはりな。察するに、わしらの行いや理想が誤りだとわかっているが、ならばどうするかという答えが出ていないということであろう」

「……はい、おっしゃる通りです」

 

 そのドモンの答えに、腕を組んで考え込むマスターアジア。そして少しして、腕を解き、厳しくも優しい視線を弟子に向けた。

 

「わかっておろう? その答えを出すのは最後には自分じゃ。これまでの戦いを思い返し、これからの戦いを見て、自分なりに答えを導き出すがよい。そして答えを見いだせた時こそ、お主は真なる明鏡止水に至れるであろう」

「師匠……はい」

「先にも言ったが、わしは一足先にあの偽物を打ち倒し、頂で待っておる。答えはお主がわしの元までたどり着いた時に聞かせてもらう。その時が来るのを信じているぞ」

 

 そこまで言ったところで、再び会場を喧噪が包んだ。次の試合が始まったのだ。

 

* * * * *

 

『アルゴ、ボルトクラッシュの調子はどうだ?』

 

 モニターに映るネオ・ロシアチームのチーフ、ナスターシャの問いに、アルゴ・ガルスキーは不敵な笑みを浮かべて応える。

 

「あぁ。制御システムと動力システムも、すべて絶好調だ。むろん俺もな」

『そうか。お前の決勝大会での緒戦の相手は、ネオ・カナダ代表だそうだ。くれぐれも油断するなよ』

「わかってる。このパワーで蹴散らしてきてやろう。ガンダム・ボルトクラッシュ、出るぞ!」

 

 彼の気合の入った声に応じて、乗機であるガンダム・ボルトクラッシュのシステムが起動していく。メイン動力システムであるビクトル・エンジンが発動し、ボルトクラッシュはゆっくりと立ち上がった。そして、力強く、リングに向かっていく。

 

* * * * *

 

 そして対峙する、アルゴのガンダム・ボルトクラッシュと、対戦相手であるネオ・カナダのガンダム。

 それらを前に、レフェリーがコールする。

 

「赤コーナー! ネオ・ロシア代表アルゴ・ガルスキー! 搭乗するのはガンダム・ボルトクラッシュ!!」

 

 会場を喧噪が包む。その中、アルゴのボルトクラッシュはただたたずむだけである。だが、その姿はとても雄々しく、力強い。

 

「青コーナー! ネオ・カナダ代表アンドリュー・グラハム! 乗機はランバーガンダム!」

 

 再び会場に喧噪がとどろく中、アルゴの眉がかすかに動いた。対戦相手の『グラハム』という名前に引っかかりがあったのだ。どこでだろうか……?

 

「それではガンダムファイト、レディーゴー!!」

 

 その彼のかすかな戸惑いを無視するかのように、レフェリーの試合開始の声が響き、アルゴは気持ちを切り替え、前方の敵を見据えた。

 ランバーガンダムが強烈なショルダータックルを仕掛けてくる! だがボルトクラッシュはそれをがっしりと受け止めた。そのタックルの勢いに、少し後ずさってしまったが、その態勢がみじんを揺らぐことはない。

 

「こいつ……!」

 

 だが、アルゴはその攻撃に、相手のすさまじい闘志を感じ取っていた。並みの相手のタックルとは違う。それは重く、激しい。まるで、巨大な岩に何度も襲い掛かり、必ずや砕こうと荒れ狂う波のように。

 

「うおおおおお!!」

 

 むろん、アルゴとて、このままやられるつもりはない。ボルトクラッシュの二機のビクトル・エンジンをフル稼働。そのパワーで、ランバーガンダムを抱え上げた。そして地面に叩きつける!

 そして、その地面に倒れ伏したランバーガンダムに襲い掛かるが、そのランバーガンダムの蹴りを喰らい、態勢を崩してしまう。そこに、立ち上がったランバーガンダムが襲い掛かり、がっしりと組み合う。

 

 そこに、そのランバーガンダムから通信が入る。

 

『この時を待っていたぞ、アルゴ・ガルスキー! 例えお前が忘れても、俺は忘れはせんぞ! 俺の大切な人を奪ったお前のことはな!!』

「なに!?」

『俺はアンドリュー・グラハム! お前と手下どもに殺された、ノーマ・グラハムの夫だ!!』

「な……!?」

 

 絶句するアルゴ。彼も思い出したのだ。彼が死なせてしまった、ある女性のことを。

 それは故意ではなく事故であったが、それはアンドリューには関係のないことだろう。アルゴと仲間たちに、最愛の人の命を奪われたのは確かなのだから。

 

「うおっ!?」

 

 動揺するアルゴのボルトクラッシュに、ランバーガンダムがタックル! ボルトクラッシュを押し倒してしまう! マウントを取ったランバーガンダムが、マウントパンチを食らわせるが、その拳をボルトクラッシュが受け止め、さらにその腕を取り、形勢逆転! マウントパンチを浴びせようとするが、膝蹴りを喰らい、吹き飛ばされる。

 

 その後も激闘を繰り広げるアルゴのボルトクラッシュと、アンドリューのランバーガンダム。

 自分を仇と狙う相手を前に動揺するアルゴと、妻の復讐も猛るアンドリュー。二人の実力差は互角になり、バトルはどちらが勝つかわからないご激戦となっていた。

 

 だが、そこで異変が起こった。突然ボルトクラッシュが戦闘態勢を解いたのだ。そのボルトクラッシュに、ランバーガンダムの攻撃がヒットする。

 

* * * * *

 

 戦いをやめ、ただランバーガンダムの攻撃を受けるためになったボルトクラッシュに、ナスターシャは驚きと危惧を感じていた。

 アルゴとアンドリューの会話は、ネオ・ロシアスタッフの本部にも届いている。まさかアルゴは……?

 

 ナスターシャは急いで、ボルトクラッシュのアルゴに通信を入れた。

 

「何をしているアルゴ! まさかお前、わざとアンドリューの妻の仇としてやられるつもりか!?」

 

 だが、アルゴの答えは意外なものだった。

 

『馬鹿なことを言うな!』

「!?」

 

 アルゴは、アンドリューの攻撃を受けながら続けた。

 

『俺は、勝ち続け、仲間たちを釈放してもらわなければならん。ここで負けるつもりはない。だが、そのためにも、俺なりのケジメとして、彼の怒りと憎しみを全て受け止めなければならんのだ。そうしなければ、俺は前に進み、勝ち続けることはできん。俺はそんな不器用な男なのだ』

「アルゴ……」

『心配するな。ちゃんと、奴の怒りを受け止め切ってから勝ってやる。黙ってみていろ』

「だ、誰が心配してなど!」

 

 そうムキになって言い返すナスターシャだが、その頬が赤く染まることを隠すことはできなかった。

 ナスターシャはキュンとなってしまったのだ。前に進むために、自分がやったことに対してのケジメをつけようとするアルゴの男らしさに。

 

 そのナスターシャの目の前で、ランバーガンダムは背中にマウントされた斧を抜いて構えた。

 

「妻の仇だ! サウザント・アークスッ!!」

 

 ランバーガンダムの手から放たれた斧は変幻自在な軌道を描いて飛ぶ。そしてその速さから残像が生まれ、無数の斧がボルトクラッシュに迫る!

 

 そして斧が次々と、ボルトクラッシュに炸裂! 屈強な機体が爆炎に包まれた!

 

「アルゴー!!」

 

* * * * *

 

「はぁ……はぁ……やったか……?」

 

 荒い息をつきながら、爆炎を見つめるアンドリュー。妻の仇を討てたのだろうか?

 彼はこのファイトに、そして今の攻撃に全身全霊をかけてきた。彼は、この時のために全てを捧げてきたのだ。

 

 だが。

 

『お前の怒りと憎しみ、無念、全て受け止めた。良い一撃だった』

「!?」

 

 その声に、驚愕の表情を浮かべるアンドリュー。まさか、そんなはずは……!?

 その彼の前にボルトクラッシュが、爆炎の中から現れた。その身体は黄金に輝いている。ボルトクラッシュのパイレーツモードと、ツインビクトルエンジンのフルパワーを合わせた最強のモード、ゴールデン・パイレーツ・モードである。

 

『だが俺はそれでも、勝ち進み、前に進まなければならんのだ!!』

 

 そしてボルトクラッシュは構え、その拳を大地に叩き込んだ!

 

『炸裂! ガイアクラッシャー!!』

 

 ゴールデン・パイレーツ・モードのエネルギーを拳を通して、リングに、そして大地へと叩きつける。すると、突然あたりが大きく揺れ始め、リングが大きく盛り上がり、そして裂け、ランバーガンダムを天高く跳ね上げた!

 そしてそのまま落下したランバーガンダムは、剣先のように鋭くそそり立つ岩塊が生えた地面へと叩きつけられた!!

 

「ぐあああああ!!」

 

 そのダメージで、アンドリューは絶叫をあげ、ランバーガンダムは機能を停止した。レフェリーが、アルゴの勝利を宣言する。

 それを聞き届けたボルトクラッシュは、各所からスパークを出しながら膝をついた。ガイアクラッシャーは、ボルトクラッシュの機体にもかなりの負荷をかけるもろ刃の剣でもあるのだ。

 

 そのコクピットでアルゴは荒い息をつきながら、ランバーガンダムを見やる。

 

「お前の怒り、憎しみ、俺に感じた全てのもの、全て、お前の攻撃の痛みとともに、この胸に刻み付けて進もう。それが、お前とお前の妻への償いになるかどうかはわからんが、それが今の俺にできる精いっぱいのことだ」

 

 そして再びガンダム・ボルトクラッシュは立ち上がる。その姿は、試合前によりはるかに雄々しかった。

 

 その様子を、ドモンはただ見上げ続けている。

 




ファンアート、そして『テテテUC(ユニコーン)』を執筆してくださる方、熱烈募集中です!

* 次回予告 *

皆さん、お待ちかねぇ!

いよいよジャンヌの緒戦がやってきました! その彼女の相手は、彼女との因縁の深いあの相手でした。
戦いをはじめる彼女ですが、その彼女に突然の不調が!!

果たして彼女は勝利をつかむことができるのでしょうか!?

次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』

第19話『苦戦の初陣! 帰ってきたミケロ!』

にReady Go!!

それではみなさん。6/28 12:00にまたお会いいたしましょう!
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