ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!? 作:ひいちゃ
今回はいつもの語りを始める前に、皆さんにおことわりしておかなければならないことがあります。
今回、悪役にネオ・チャイナの者が出てきますが、政治的な意図はありません。
それによって現実世界の中国を貶めたり、非難したりしようというつもりはありませんので、(生)暖かい目で見守っていただけるようよろしくお願い申し上げます。
さて、では改めて、良ければ皆さんに、ガンダムファイトについて説明させていただきましょう。
地球から宇宙に出た人類。彼らが築いたコロニー国家。
その国家間の全面戦争を避けるため、主導権をガンダム同士の格闘大会で決める。
これがガンダムファイトです。
スポーツの皮をかぶった戦争、地球を犠牲にして行われる血を伴わない争い。
人類はなんて戦争システムを作り出したものか。
それが、これまで12回、45年も続いてきました。
ですが今回の13回大会は、これまでとも、そして我々が知る13回大会とも、どうも違うようです。
「ううん、結果がどうでもやらなければ! そうしないと、彼の闘志は満足しない!!」
果たして彼女、TS転生者のガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソが、この大会、この世界にどのような波紋をもたらすのか?
今回のカードは、ネオ・ケニア代表、コンタ・ン・ドゥールの『ガンダム・ゼブラ』。
それてはガンダムファイト、Ready Go!!
俺……Gガンダムファンの高校生がTS転生した少女ガンダムファイター、ジャンヌ・エスプレッソは、アフリカのケニア地域にやってきた。
もちろん、ガンダムファイトのためだ。
このケニア地域を統治するネオ・ケニアのガンダムファイター、コンタ・ン・ドゥールは野性味あふれるトリッキーなファイトを得意とするという。その情報に武者震いがとまらない。はっきり言うと、早く戦いたくて仕方ない。
だがしかし。
『ガンダムファイト!』
『レディーゴー!!』
残念だがそれは諦めなければならないようだ。既に先客がいる。
全身に白黒のシマ模様がペイントされた独特なカラーリングのガンダム……おそらくあれがネオ・ケニアのガンダム・ゼブラだろう……と、中国のイメージを具現化したようなガンダム……ネオ・チャイナのドラゴン・ガンダムが対峙している。
ガンダム・ゼブラが槍を怒涛のように繰り出すのを、ドラゴン・ガンダムは次々とかわしていく。さすがネオ・チャイナのサイ・サイシー。少林寺の再興を託され、後にシャッフル同盟の一人となるだけのことはあるな。
だが。
「?」
なぜだろう、俺はこのファイトに違和感を持った。俺が
俺がそう思っているうちに戦いは進み……。
『これで終わりだぁ! ドラゴンクロー!!』
ドラゴンガンダムの左腕が伸び、ドラゴンの頭に変形し、ガンダム・ゼブラの頭部に飛んでいく。
そして噛みつくのだが、やはりそれにも違和感があった。どこか、かわしたり、払ったりといった抵抗をあまりしないままに、わざとすんなり噛みつかれるままに噛みつかれたという感じがしたのだ。
そして、ドラゴンクローの牙がガンダム・ゼブラの頭部に突き刺さり、爆発。そして、煙が立ち上り、ガンダム・ゼブラはあおむけに倒れこんだ。
『この戦い、オイラの勝ちだ!』
喝采が上がる。だがなぜだろう? やはりそのサイ・サイシーの声からは、あまり戦いに勝ったうれしさは感じられず、どこかこの戦いの違和感への戸惑いも感じられたのだ。
* * * * *
さて、何か違和感や疑問の残ったファイトであったが、決着が着いてしまった以上は仕方ない。
ガンダムファイト国際条約第一条、『頭部を破壊された選手は失格となる』。
この条文の通り、頭部を破壊されて敗北したガンダム・ゼブラのコンタ・ン・ドゥールは失格、ガンダムファイトの予選からは脱落となる。もう、ガンダムファイトには出られない、ということだ。
となれば、気持ちを切り替えなくてはな。また新しい相手を探しに、他の国に行くか……。
と思いながら、俺がスラムを歩いていた時だ。
「!!」
突然、気配を感じた。それと同時に、頭上から何か……猿のようなものが飛び掛かってきた!
俺はそれをとっさに飛びずさってかわすと、腰からセイバーを抜いた。
「いきなり襲い掛かるとは、ケニアの猿は気が荒いようですね」
だが、相手は猿ではなかった!
「ひどいなぁ、姉ちゃん。オイラは猿じゃないよ」
聞いたような覚えがある声。特に前世でよく。
そう。猿と思っていた襲撃者の正体は……。
「ネオ・チャイナのサイ・サイシー……」
「へへへ、オイラのことを知っててくれたのかい? 嬉しいね!」
そりゃ、Gガンダムの主役、シャッフル同盟の一員だもの。知ってるに決まってる。
襲撃者の正体は、ネオ・チャイナ代表、サイ・サイシーだった。
「なんで襲ってきたのですか? ファイトであれば喜んで受けて立ちますよ」
「いや、そういうわけではなくてさー……」
と、そこでサイ・サイシーのおなかが鳴った。
* * * * *
「そうですか……やっぱり、あなたも感じていたんですね、あのファイトの違和感を」
「うん……もぐもぐ……そりゃわかるさ……むしゃむしゃ……というか、武道の心得がある者だったらみんな、あの違和感に気づいたと思うぜ」
スラムにある食堂。そこで俺たちは、夕食を食べながら昼間のファイトの件について話し合っていた。
それにしても、よく食べる。骨付き肉はもう50本目、ライスは30杯目だぞ。ネオ・チャイナのスタッフの皆さん、お疲れ様です。
「オイラの気のせいだったらいいんだけどさ。もし、実は八百長だったというのなら、それで勝つのは嫌だし、白黒はっきりしておきたいのさ」
「なるほど……気持ちはわかります」
「恵雲も瑞山に話して本国に問い合わせても、向こうからはだんまりばかりなんだよ。それでこれは何かあると思ってさ」
なるほど。そういうわけか。それにしても。
「ですが、私を襲ったのには何かわけが?」
「あぁ、うん。それについて調べようと思ったんだけど、オイラは馬鹿だから、助けになる人がほしくてさ。姉ちゃんならいいかなと思って、腕試しをさせてもらった」
「なるほど……って、でも腕試しのためとはいえ、いきなり襲い掛かってくるのは感心しませんね。この件は、ネオ・チャイナの運営委員会に苦情を……」
俺がそう言うと、サイ・サイシーは慌てだした。
「うわー、それは勘弁してくれよ! 参加資格を奪われるのはもちろん、恵雲や瑞山に怒られちまうよ!」
参加資格よりあの二人に怒られるのが怖いのかい。その慌てふためく彼の様子を見て、苦笑が漏れ出る。
「冗談ですよ、それでは行きましょうか」
「おう! 行こうぜ!」
* * * * *
そして、俺とサイ・サイシーは調査のためスラムを歩き回っていった。が、収穫はほとんどなかった。残念なり。
そしてそんな中、街はずれにやってきたのだが、そこにあったのは、あまりにあまりといった光景だった。
「これは……ひどいですね……」
「うん。オイラもネオ・チャイナの人間だけど、これはどうかというのはわかるよ……」
その一角に張り巡らされたフェンス。その中で作業に励む作業機械たち。その機械によって荒らされていく大地。
そう。そこでは、ネオ・チャイナ系の企業が、開発作業を行っていたのだ。しかし、そのやり方があまりにひどすぎる。自然への影響などまるで考えず、無計画にただ地面を掘り、木々をなぎ倒していく。
このGガンダム世界の地球汚染の一端をじかの目の当たりにして、思わず現実逃避しそうになる俺であった。……いやいや、現実逃避していてはダメだろ俺。俺はこのように荒らされていく地球を憂いて、デビルガンダム四天王になったんだから。
「聞く話では、
「それでこんな開発を……」
ディマリウム。MFの装甲である『ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材+レアメタルハイブリッド多層材』に使われている合金の一つの原料となる鉱石だ。重力や慣性制御の能力を持ち、さらに意志の力に反応するというとんでも特性まで持っている。
そう、この世界のガンダムが変態機動ができたり、拳が泣いているのがわかったり、といったトンデモパワーは、この合金のおかげなのだ。
そんなMFにとって重要な素材の鉱脈がここにあるとなれば、どんなことをしてでも開発権を得ようとするだろう。採掘して作り出した合金を自国のMFの強化のためにふんだんに使ってもよし、生産を独占し、他国に高く売りつけるのもよし、だ。
とはいえ、こんな乱開発はよくないと思うが。
そこに。
「Oh、とんでもないね。ネオ・チャイナの連中のやることは」
これは前世で聞いた覚えのある声だ。その声がしたほうを見ると、そこには一人の男が。
気のいい兄ちゃんといった感じの見た目の男。そう、その男は……。
「ネオ・アメリカ代表。チボデー・クロケット! 愛機はガンダム・マックスター!」
「へぇ、こんな土地にも俺の名前が知れ渡ってるなんて嬉しいねぇ。だがお嬢さん。俺に惚れてはいけないぜ。既に先約がいるんでな」
いや、惚れるつもりなどないが。確かに彼にはチボデーギャルズという娘たちがいるし、俺は男だし、展開次第によっては、彼と敵対しなければならないんだ。『恋人たちの哀しい戦い』なんかやりたくもない。
何はともあれ、俺たちは自己紹介をすることに。
「ネオ・ノルウェー代表のジャンヌ・エスプレッソです。よろしく」
「ネオ・チャイナのサイ・サイシーとはオイラのことさ。よろしく!」
「へぇ、こんな若くてかわいいのにガンダムファイターとはな。驚いたぜ」
「どういたしまして。それでチボデー、なんであなたはここに? あなたもネオ・ケニアのファイターとファイトするために?」
俺がそう言うと、チボデーは首を横に振った。
「いや。このケニアAreaの開発権を巡って、ネオ・チャイナとネオ・ケニアとの間で、ガンダムファイトに絡んだ密約があると、
「えぇ、わかりますよ、その気持ち」
「わかってくれるかい! 話がわかりそうなお嬢さんで嬉しいぜ」
「オイラはハンバーガーより肉まんのほうが好きだけど、やっぱり気持ちはわかるぜ。それでチボデーの兄貴。収穫はあったのかい?」
サイ・サイシーがそう尋ねると、チボデーはうなずいた。
「あぁ。今回のファイトについて不満を抱いていたネオ・ケニアのスタッフが密告をしたいと言ってきてね。今日の夜、そのスタッフと接触をすることになっている。もしよければ、二人もついてくるかい? Escoteするぜ」
もちろん拒否する理由はなかった。
* * * * *
そして俺たちは、ネオ・ケニアのスタッフとの待合い場所にやってきた。それにしても……。
「チボデー、そういえばネオ・アメリカの情報員は同行しないんですか?」
「あぁ、そいつにはちょっと他の用事があるんでな」
「なるほどね。でも遅いなー……」
サイ・サイシーがそうつぶやいた直後!
「た、助けてーーー!!」
女の声が響いた!
「今の声は!?」
「あっちのほうからだぜ、アネゴ! チボデーの兄貴!」
「OK! 行ってみよう!」
そこに駆け出していくとそこには……!
「あ、あなたたちは……」
制服らしき服を着こんだ女性が、腕から血を流して倒れていた。その後ろには、凶器を持った男たちが!
「そのUniform……。ネオ・ケニアか。もしかしてお嬢さんが?」
「はい……ネオ・ケニアのガンダム・ゼブラ整備スタッフの、ザワディといいます……。お願いです、ン・ドゥールを……」
「それ以上しゃべらないでもらおうか!」
口封じをしようと、ザワディとかいう娘に、男たちが襲い掛かっていく!
これは、助けないわけにはいかないな!
「今はこいつらをどうにかして、お嬢さんを守ることにしましょう! 行きますよ!」
「わかった!」
「OK!」
そして、男たちのバトルを開始する俺たち。男たちは強かったが、それでも俺たちガンダムファイターほどではない。大した苦戦はせず、倒すことができた。
* * * * *
男たちを撃退した俺たちは、ザワディさんの傷の治療をしながら、話を聞いてみることにした。
「それでお嬢さん、ン・ドゥールのことを言っていたが……」
「はい。実はン・ドゥールは、ネオ・ケニアとネオ・チャイナとの密約のために、イカサマファイトを強いられているんです」
「なんだって……!? それは……」
俺がそう聞くと、ザワディさんは目を伏せて話し始めた。
「このケニアエリアで、ネオ・チャイナがディマリウム合金の採掘をしていることはご存じだと思います」
「あぁ」
「それについて、ネオ・ケニアとネオ・チャイナが密約を結んだんです。『今回のネオ・チャイナとネオ・ケニアのファイトでネオ・ケニアが負けてくれれば、採掘を中止する、と」
「なんだって……!? じゃやっぱり、オイラはその密約による八百長で勝ったっていうのか!?」
やはり、あのファイトはできレースだったのか。だが、疑問はまだあった。
それをチボデーが口にしてくれた。
「だが、開発はまだ続いてるみたいだぜ?」
「はい。そこがネオ・チャイナの狡猾なところで、その密約では『ネオ・チャイナ政府による採掘はしない』とあったんです。なので彼らは、採掘権をネオ・チャイナのダミー企業に譲り渡し、引き続き、開発を続けているんです。しかも……」
「しかも……?」
と、そこで。
「ネオ・チャイナは俺を傭兵として雇った。そして戦っていれば、いずれ開発から手を引き、それどころか、このケニア地域の自然の回復にも手を貸してくれる、とな。俺は、このケニア地域の自然を守るため、奴らに心を売り渡したのだ」
「!!」
その声に振り向くと、数人の男たちがやってくる。そのうちの一人は、毛皮をまとったひげ面の屈強そうな男だった。資料で見たことがある。おそらく彼が、ネオ・ケニアのガンダムファイター、コンタ・ン・ドゥールだろう。その後ろには、ネオ・チャイナの高官らしき男たちもついてきている。
「知ってはいけないことを知ってしまったアルね。ならば仕方ない。ここで三人とも死んでもらうアル。委員会には、三人はガンダムファイト中の事故で死んだと報告すれば済むことアルよ」
「そう簡単に行くかな? 俺たちがガンダムファイターだということを忘れてもらっちゃ困るぜ?」
だがそのチボデーの言葉にも、高官は表情を変えなかった。
「心配ないアル。今頃、我が国の工作員が、お前たちのガンダムの機能をロックしているころアル。呼ぶことはできないアルよ」
「なんだと……卑怯な……!」
それと同時に、地面が割れ、一機のガンダムが現れた。コンタ・ン・ドゥールのガンダム・ゼブラだ。それにコンタ・ン・ドゥールが乗り込む。
「さぁ、ン・ドゥール! 四人を踏みつぶしてしまえアル!」
「それはどうでしょう?」
「アル!?」
確かにチボデーのマックスター、サイ・サイシーのドラゴンはそれで封じることができるだろう。だが!!
「来て! ガンダム・オルタセイバーーー!!」
その俺の声とともに、天空から、俺の漆黒のガンダム、ガンダム・オルタセイバーが舞い降りてきた!
そう、俺のオルタセイバーは、DG細胞によって強化された特別製! 機能ロックなど意味をもたない!
俺はさっそくオルタセイバーに乗り込み、戦闘態勢をとる。
「えーい、ン・ドゥール! こうなったら、彼女のガンダムもやってしまえアル!」
「……」
だが、ガンダム・ゼブラは動かない。ン・ドゥールも心の中で葛藤があるのだろう。
高官はさらに怒鳴りつける。
「戦うアルよ! ケニアの自然がどうなってもいいアルか!?」
本当に心が腐り果てた奴だ……!
でも、その奴の言葉に、ついにン・ドゥールも構えをとった。その構えには、まだ迷いが見受けられるが。
「が、ガンダムファイトーーーー!!」
「レディー、ゴオオオオ!!」
* * * * *
ガンダム・ゼブラはその槍を怒涛のように繰り出してくる。その速さは、この前のドラゴンガンダムとのファイトの時とはくらべものにならない! これが彼の本気ということか……?
でも、やはりその槍筋には迷いがあるように見えた。
「誇りを取り戻してください、コンタ・ン・ドゥール! あんな奴らに飼われ続け、八百長を強いられて、あなたのガンダムファイターの誇りが泣いていないのですか!?」
「泣いてなど……いない!!」
そう言いながら、ガンダム・ゼブラは槍を横凪ぎに払う。俺はそれをビームセイバーで受ける。激しい衝撃が襲う。
「もうこんなことはやめてください! こんなことで自然を守って、自然が喜ぶと思っているんですか!?」
「黙れ、お前に何がわかる!!」
そう言うと、ガンダム・ゼブラは突進してきた。そして地面に槍を突き立てると、棒高跳びの要領で天高く飛び上がる! そして盾をかざして急降下!!
「はあっ!! ……なっ!?」
ビームセイバーでその盾を切り払うが、その後ろにゼブラはいなかった。その盾のはるか上方にその姿が。
彼は、盾を投げつけて、それをおとりとしたのだ。
そして俺のオルタセイバーは蹴りを受けて吹き飛んだ。
「くっ……! ……?」
だがその瞬間、俺は聞いた。ほんのかすかだが、泣き声を。自然を愛し、ガンダムファイターとしての誇りに満ちた自らの心を、その自然のためにネオ・チャイナに売り渡した悲しきガンダムファイターの心の嘆きを。
やはり、彼の誇りは生きていた。自然のため、ネオ・チャイナに心を売っていながらも、その心は完全に死んではおらず、悲鳴をあげていたのだ。
ならば俺ができることは一つ。彼を倒し、奴らから解放してやることのみ!
「仕方ありません。私があなたにできることはこれのみ! 来なさい!!」
そして構えを取る。堕天使の翼に似た、オルタセイバーの背中のウィングが展開する。機体がオーラに包まれる。
「う、うおおおおお!!」
「必殺! 絶対勝利・エクスカリバーン!!」
突っ込んでくるガンダム・ゼブラと、同じく突進するガンダム・オルタセイバーが激突! そして、すれ違う。
そして数瞬の間。
「ぐ、ぐあああああ!!」
勝ったのは俺のほうだった。俺のエクスカリバーンが、コンタ・ン・ドゥールの攻撃がさく裂するより早く、彼の機体の両腕を斬り落としていたのだ。
「私の……勝ちです」
ネオ・チャイナの高官はうろたえているが、すぐに我に戻った。そして、ザワディに視線を向けた。まさか……!
「お、おのれ小娘……! こうなったら、ザワディとやらを人質にとって……!」
だが、彼の目論見がかなうことはなかった。彼の目の前の地面に、ナイフが二本突き立てられる。
「な、なにアルか!?」
そしてやってきたのは、ネオ・アメリカの職員らしき男性と、一人の若い女性。
「国際ガンダム・ファイト運営委員会、監査委員のローレン・ホワイトです。話は聞かせていただきました」
「な、ななな……アル」
「ガンダムファイト国際条約第8条『政治的思惑を持ったファイトの禁止』、第9条『ガンダムファイターを傭兵とすることの禁止』、第10条『ガンダムファイト以外で、ガンダムファイターへの危害を加えることの禁止』、第11条『ガンダムへの違法な操作の禁止』などの違反容疑で話を聞かせていただきたいと思います。ご同行願えますね?」
「……」
彼女……ローレン・ホワイトさんの言葉に観念したのか、高官たちはうなだれて、彼女の引き連れてきた官憲たちに連れ去られていったのだった。どうやら、ネオ・アメリカの工作員が俺たちに同行しないのは、これが理由らしいな。
* * * * *
そこに、通信が入ってきた。ガンダム・ゼブラのコンタ・ン・ドゥールからだ。
「見事だった……。さぁ、とどめを刺すがいい。ガンダムファイトで八百長で敗北し、しかもその魂も奴らに捧げてしまった俺は、もうガンダムファイターとして戦う資格はない……」
力ない彼の言葉。だが。
「いいえ、そんなことはありませんよ?」
「なに?」
疑問のまなざしを向けたン・ドゥールに答えたのはチボデーだった。
「ガンダムファイト国際条約・第12条『正当なる目的、手続きをもって行われなかったファイトは、これを無効とすることができる』」
つまり、イカサマや八百長で行われたガンダムファイトは、その試合結果を無効にできる、ということだ。
「あのファイトについて委員会に申し立てれば、あの結果を無効として、またファイトに立てるだろうさ。ミス・ローレンという証人もいることだしな」
「オイラとしても、八百長で勝ったままなんて、きわめて不本意だからな! 改めて戦おうぜ! 正々堂々とさ!」
「チボデー・クロケット……。サイ・サイシー……」
そして俺は、ガンダム・ゼブラに手を差し伸べた。それを受け取るかのようにガンダム・ゼブラは弱々しくも立ち上がったのだった。
* * * * *
その後。
今回の件は、ネオ・チャイナ政府の総意ではなく、あの高官の独断だったことがわかり、高官は国際警察に捕まって獄中の人となった。果たしてその通りなのか、ネオ・チャイナが高官を斬り捨てたかは、今となってはわからない。
例の企業による採掘・開発計画も中止となり、企業は人知れず姿を消した。ダミー企業だったんだから当然だろう。また、今回の件についての謝罪として、ネオ・チャイナからネオ・ケニアへ多額の賠償金が支払われたそうだ。
サイ・サイシー対コンタ・ン・ドゥールの試合についての申し立ては無事に通り、ン・ドゥールの敗北は無効となり、彼はまたガンダムファイターとして戦えることになったのだった。
そうしたことがあった数日後、俺はケニア地域を旅立つことになった。
「姉貴、今回は世話になったね!」
そう言って笑うサイ・サイシーに、俺も微笑んで答える。
「いえ、こちらこそ世話になりました。サイ・サイシー、チボデー・クロケット」
「あれぐらいどうってことないさ。それと、お嬢さんのファイトも見事だった。ぜひ今度、ファイトさせてもらいたいね」
「えぇ、こちらこそ喜んで」
そして互いに手を握り合って、その場をわかれた。俺は、彼らと敵対することにならないようにという、叶いそうもない願いを抱きながら。
ファンアート募集中です!
* 次回予告 *
皆さん、お待ちかねぇ!!
チコ・ロドリゲスからの報告で、デビルガンダム細胞におかされた男がいることを知ったジャンヌは、その調査のために、トルコ地域を訪れます。
そこで彼女は、あの二人と再びまみえることになるのです!
次回、『ちょっと待って。なんで俺、Gガンダム世界にTS転生して、東方師匠と拳交えてるの!?』
第4話『DG細胞に引き裂かれた二人! ジャンヌ、救うために彼を撃て!』
にReady Go!!
次の更新は、5/14 12:00の予定です!