FF14と原神って親和性高そうだよね 作:PNPcon
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・表現の修正:原神の世界の地理と異なる表現があったので修正。原神世界の日が暮れる時刻と差異があったので時刻修正。
・脚注追加
サラがカウンターを務める鹿狩り。そこで腹ごしらえを終えたあなた。
美味しい料理を食べることが出来た時は、非常に良い気分であったが、支払いの際に問題が発生した。
まず前提として、鹿狩りは前払いシステムである。そのため、先に旅人がカウンターまで赴き、注文と合わせてまとめて支払いを行っていた。その様子を遠目から見ていたあなた。旅人にご馳走になるつもりは無かったので、食後にギルを返そうとしていた。
世界が違う第一世界でも通じた、エオルゼア共通通貨ギル。もしかしたら違う通貨を使用しているかもしれない、という考えはあなたにあったが、貴金属としての価値はあるだろう。あなたはそう考えていた。
エオルゼアの通貨ギルは、それそのものに価値がある本位貨幣通貨。どこかの誰かが価値を保証する管理補償通貨ではない。従って、ギルそのものを売ることができるのだ。
しかしあなたの考えは裏切られることになった。
ギルが、エオルゼアでの貴金属が、ここモンドでは何の意味も持たなかったのである。
あなたは知らなかったが、ここテイワットでの共通通貨モラに目がないパイモンでさえ、綺麗だな〜という反応。多くの世界を旅した旅人は硬貨だと認識するものの、綺麗なコインだね、という反応だった。
ギルの通貨としてどころか、そのものの価値すら認められなかったのだ。
そんな仕打ちを受けたあなたは、肩を落としながら旅人に謝る。
「【ごめんなさい。】」
「モラのこと? いいよ、パイモンよりずっと安く済んでるし」
「……えへっ」
右手を頭にコツンと当てるパイモン。旅人はそれを横目に重いため息を一つ。
さて、ギルがギルとしての役割を果たせないことが判明した今、非常にあなたは悩んだ。今回、旅人は許してくれたようだが、今のあなたはいわゆる素寒貧。手っ取り早く現地通貨を手に入れるには、リテイナー*1を呼び出すベルも無いので(鳴らしても来てくれないだろうが)、手持ちにある数少ないアイテムを質に入れるしかない。しかしそれも価値を見出してくれるか分からない。いざとなれば街のど真ん中で野宿も
「【お金を稼ぎたいです。】」
「モラを稼ぐ方法が知りたいのか? お前は戦えるようだし、お前も冒険者になればいいと思うぞ!」
「パイモン、多分すぐに欲しいんだと思うよ」
「そんな方法あるならオイラが教えて欲しいぞ!」
うーん、と首を傾げて悩む2人。どうやら意味は伝わったように見えたあなただが、悩む時点で楽な方法は無いんだな、と察した。デイリーのルーレット*2でもやれば早いか、と頭によぎったあなた。だが悲しいかな、行ったところで貰えるのは、テイワットではなくエオルゼアの通貨である。
やはり手持ちの物を売りに出すしかない。あなたがそう結論づけるのは早かった。
あなたは腰に下げたポーチからフェニックスの尾を取り出し、旅人に見せて尋ねる。
「【フェニックスの尾】【買ってくれませんか?】【値段:】」
赤い尾羽、フェニックスの尾。瀕死となり、戦闘不能になったプレイヤーを蘇生する効果がある。
お守り程度にひとつ持っておくか、レベルの考えで、数年間ずっと握りっぱなしになっていたアイテムだ。
「これは……?」
「うーん、モラが欲しいからって羽根を渡されてもなぁ……」
やはり価値が無い様子。瀕死の仲間を蘇生できると言ったところで信じてもらえないかもしれないし、まずあなたの定型文だけの会話では、どうやっても伝わらない。瀕死の人を連れてきて実践するのも土台無理な話。それに、あなたが持っているのはこれ1個だけ*3である。
残念だが、まだ使うのは先になりそうなフェニックスの尾。あなたはポーチに戻す。
「やっぱり元素を持ったものじゃないとな」
「そうだね。何に使うのか分からないから、物の価値が私たちには分からない」
あなたには元素というものが分からない。エオルゼアで言う属性のようなものだが、それが重要であることが伝わっていない。
またお使いでもこなすことになるかな……。
別にあなたにとっては苦でもないのだが、ID*4中にお使いクエストを受注するとは、思っていなかったあなただった。
さて、諦めの表情のあなた、悩む表情の旅人とパイモン、双方会話をすること無く階段を登り、上へ上へと歩いていく。
時刻は18時過ぎ。日もだいぶ傾いてきた頃だ。
あなたはいつもどおり、何の目的も無く旅人たちについて行く。しかしあなたの心には、ここらが潮時かな。という思いが出始めていた。
ここに来て初めて出会った旅人とパイモン。特に旅人には面白い話も聞けたし、冒険の手助けをしてもらった。何も返せないままお別れ、というのは申し訳ないと感じるあなただったが、このままついて行けば、しばらく旅人のヒモになるのは目に見えている。今お礼を言って離れるべきだと結論付けた。
そうして旅人が止まった場所は、巨大な石像前。両手をお椀のように胸の前に出して直立する、それは大きな天使像だ。
ちょうどいいタイミングだ、あなたが声をかけようとするが、旅人は石像の足元を凝視している。
足首程度の浅い水に囲まれた石像の台座。そこにはハープのようなもの持った、吟遊詩人が立っていた。緑色と白色を基調とした服、中性的な顔立ち、それほど身長は高くない。
石像を眺めているように見える。しかしあなたには、詩人がどこかもっと遠いところを見つめているようにも見えた。
旅人がいきなり止まったことに対して不思議そうにしていたパイモンだが、その人物に気づいた途端、大声を出す。
「あーっ! 吟遊野郎っ! お前、もう大丈夫なのか!?」
吟遊詩人は手に持ったハープを消し去り、こちらに向き直ってはにかみながら声を出す。
「やあパイモン、旅人。そして……ん? 初めて見る顔だね。名前は?」
「こんにちは、ウェンティ。こっちはヒカセン。ずっと遠いところから来た、私と同じ異邦人。言葉が違うみたいで、私達の言葉を聞き取るのが苦手みたい」
ウェンティは軽やかに水を飛び越え、台座から降りる。
そうしてあなたの目の前までやってきたウェンティは、片手を上げてあなたに挨拶をした。
「こんにちは、ヒカセン。僕はウェンティ。遥々モンドへようこそ」
「hikasen 【初めまして。】【こんにちは。】 【ここに来るのは初めてです。】」
「あはは、すごい変な喋り方だね。こちらこそよろしく」
無事に挨拶を終えたあなた。そして、またもやパイモンの大声が炸裂する。
「そんなことより! お前、もう身体は大丈夫なのか? えーと、あれ、あの神の目じゃなくて……そう! 神の心! ファデュイに取られてからそれっきり会えなかったじゃないか! 心配したんだぞ」
ビシィ! と音が鳴りそうなくらい勢いをつけてウェンティを指差すパイモン。ウェンティは困ったような顔をして、うーん、とだけ声を出す。ウェンティの目線は空を仰ぎ、ゆっくりと下がる。そうして止まった目線の行き所は、あなただ。
あなたは自分を指差し、首を傾げる。
ウェンティはそんなあなたに一度微笑んで、パイモンに目線を向け直す。
「まあ、詳しいことは言えないけど。大丈夫だよ、心配させてしまったね」
「本当なのかぁ?」
訝しむような表情を向けるパイモン。だがそんなパイモンを見かねた旅人がそっと耳打ちをし、ハッとあなたを見て慌てだす。
「い、いやこれはだな! あれだ、ちょっと前にコイツが大怪我……みたいな、そう、それの治療で……」
「パイモン、そんな説明じゃ分からないって」
手を振って全力の言い訳をするパイモン。頭を抱える旅人。困ったように肩をすくめるウェンティ。またしても何も知らないあなた。
旅人はウェンティに目線を移し、真剣な眼差しで尋ねる。
「ウェンティ、大丈夫なんだね?」
「大丈夫だってば。パイモンが口を滑らせたほうが大丈夫じゃないよ」
「それは大丈夫。ヒカセン、本当に言葉が分かっていないようだから」
そうなの? とあなたを見るウェンティ。言葉が全く通じないほど遠いところから来た異邦人は、ウェンティにとってとても興味深いものらしい。
「話せるのに聞けないって本当に珍しいね……。それに言葉も通じないくらい遠いところなんて。君も遠いところから来たんだったよね」
「うん、居なくなった家族を探してる」
ふむ……、と考え出すウェンティ。そうして、あっと声を出す。
「どうしたんだ吟遊野郎。まさか、まだどこか痛むのか?」
「いや本当に大丈夫だってば。1つ、いいことを思い出したんだ」
そう言って人差し指を立てるウェンティ。旅人はじっとウェンティを見つめる。
「旅人、七神を探すって前に言っていただろう? それについて、手がかりになるかもしれない。ここ、モンドから南西に行ったところに、
頷く旅人。
「その璃月で一番栄える璃月港、そこで
顎に指を乗せるあなた。正直何も分かっていない。
「そこでは、岩神モラクスが降臨して民に国の方針を伝えるんだ。つまりそこで、岩神に会うことが出来る。もうそろそろの時期だったと思うよ」
「はっ! そんなことをよく今まで黙っていたな! いくぞ旅人! ヒカセン!」
パイモンは旅人の手を引いて、連れて行く。あなたも今はついて行って、落ち着いたあたりで離れることを伝えようと考える。
しかしそこに待ったの声がかかる。ウェンティだ。
「えーと、ヒカセン、だったかな。ちょっと聞きたいことがあるんだ」
あなたはhikasenの発音が聞こえたので、その場に止まる。しかし、それ以外の言葉の意味はわからない。
「【答えたいけど表現がわかりません。】」
「ああ、そっか。じゃあいいかな。引き止めてしまってごめんね」
パイモンの手を振り払った旅人が、ウェンティに向き直って言う。
すでに10メートルほど連れて行かれていた旅人だが、静かに、それでいてやけに通る言葉だった。
「大丈夫だよ、ウェンティ。ヒカセンは、いい人だ」
その言葉を聞いたウェンティは、きょとんとした顔を見せるが、決壊するのは一瞬だった。
ウェンティは笑う。歯を見せて、大声で笑う。
「ぎ、吟遊野郎が、ついに壊れた……」
奇妙なものを見るかのような表情のパイモン。ぽかんとした表情を見せる旅人。
そうして笑い終えたウェンティは、隠しきれない笑みを浮かべたまま言う。
「君が言うならそうだろうね! 心配した僕がバカみたいじゃないか! 僕は道化じゃなくて、詩人なんだよ。分かってるかい?」
「【どうすればいいですか?】」
あなたには何もわからない。話している言葉も。なぜウェンティが笑っているのかも。
それを聞いた当の本人は、まだまだ笑みを残しながらも、しっかりとした発音で、一語一語伝える。
「そうだね、伝えるだけ伝えるよ。君は、君たちには、ありのままで旅を、冒険を、して欲しいんだ。旅の終わりが来ても、それまでの旅を振り返って見れるように。それと、君にはこれを」
ウェンティは両手を合わせて集中する。ものの3秒ほどで、直径50センチ程度の緑色の球が出来上がった。
「風の力を込めた元素だ。君の冒険の後押しをしてくれることだろう」
あなたは驚く。それはエオルゼアでも見た、あの風脈の泉だった。サイズは小さいが、見た目はまんま同じだ。
あなたはウェンティに目を向け頷くと、ウェンティも笑顔で頷く。
「旅人と同じように、しばらく僕の力を貸してあげるよ。君なら、上手く使えるだろうね」
さて、いつも通り交感したあなたは、旅人に向き直った。もう離れることを伝えるためである。
だがあなたより先に、旅人が声を発した。
「ヒカセン、璃月、一緒に、行こう」
「行こう!」
パイモンがあなたの手を引っ張り、言う。
しかしもうヒモになる訳にはいかないあなた。
「【お金がありません。】【あなたにあげられる物はなさそうです。】」
「大丈夫だ! 璃月港ならお前の物がきっと売れる! あそこは商人の街だって有名だからな!」
「行こう、一緒に、璃月に」
よく分かっていなかったが、とにかくついてこいと強く言われれば、こっちが正規ルートかな? と考えるあなただ。離れることは一旦置いておいて、今はとにかくついていくことにした。
そうしてあなたは、旅人とパイモンに連れられ階段を降りていく。
あとに残された吟遊詩人、ウェンティ。
日が沈む。
「さて、これで風神の時間は終わり。これからはウェンティの時間だ」
今までも、そしてこれからも、風神無きモンド。
「今日も一杯やろーっと!」
陽気な風が吹いた。
そうして、あなたはモンド城を去ることになった。
モンド城滞在時間、約2時間程度。とんでもない速さでの観光だった。
隣の旅人、そしてパイモン。
しばらく一人旅では無さそうである。あなたは、まだまだ旅人に世話になることになるだろう。
冒険はまだ始まったばかり。まだまだ次の
次の目的地は商業と契約の国、
あなたの冒険はこれからが本番だ。