目を覚ましたときには、真っ暗な場所にいた。
ここはどこなのか分からない。
そもそも目覚める前の記憶がぼんやりしている。
あの時……僕はみんなを守ろうと……いや、違う。助けようと……それもなにか違う。いまいち思い出せない。
ただみんなが泣くなか、一人の少女だけは折れなかった。
それだけは覚えている。
色々と思い出そうとしていると、目の前に白い光が現れた。これは…………
『初めまして、異世界の魂よ』
「…………」
『私は神に等しい存在』
とりあえずこの空間がどんなものか調べないとな。先ずはここがどれだけ広いのかを…………
『あの……話の途中でいなくならないでください』
「え?あ、いや、いきなり現れて、神みたいなものって自分で名乗るのはどうかと思うけど…………」
『私はそういう存在なのです!分かってますか?』
「はぁ」
何か面倒な奴だな……要するに神さまみたいな存在が僕をここに連れてきたということだろうけど、それだったら早いところ用件を伝えてほしい
『貴方は過酷な運命の少女たちを救うためにその身を投げ出しました。そんな貴方にチャンスを……』
「あ、結構です」
いきなりチャンスをあげますって言うのだろうけど、別にいらないし……死んだとしたら、まぁ仕方ないと思う。
『あの……チャンスを……』
「いや、いらないです」
『…………ふぇ』
えー何か泣きそうになってない?この神様みたいなもの
『分かりました!貴方に彼女たちと似たような力を!』
「もう面倒だからあの世に送ってくれよ」
『…………貴方に彼女たちと似たような力を!』
あれ?これはよくゲームとかである無限ループ?と言うかどれだけこの神様みたいなものは僕にチャンスをあげたいんだよ。まさかと思うけど…………
「何かしら失敗して、その失敗を僕に補わせようとしてる?」
『ギクッ!?なんのことですか?』
あ、やっぱりだ。本当に面倒だな…………
「理由をしっかり聞かせろ」
『それじゃ!』
「もうどうやってもあの世に送るつもりはないみたいだし、仕方ないと思うようにするよ」
『では!簡単に説明しますと……私が姉から預かったとある力が…………』
何者かに奪われたとかか?
『ちょっと落としたら、、何処かに飛んでいってしまって……』
「アホだ」
そこは嘘でもいいから、誰かに奪われたとか、その力が何かしらの怪物で、封印が破られたとかじゃないのかよ
『一つは貴方の中に宿っています』
「は?」
『貴方は……姉が管理している世界の中では特別な存在の片割れみたいですから、惹かれてしまったのかもしれませんね』
「特別な存在?」
『はい、そうです……その事は貴方が一番よく知っているのでは?』
まぁ確かに……知っているけど…………それに片割れって……僕の記憶に映し出される彼女のことだよな
「記憶がないんだけど……」
『あぁそれは貴方が死んだ際に頭をぶつけたので記憶が抜け落ちたのかもしれません。まぁその内戻りますよ』
適当な……まぁ戻るならいいか。
『そして残り六つの力は……ある世界にあります。貴方にはその回収をお願いしたいです』
六つの……つまり七つの力がって事か?何となく理解はできたけど……さて、送られる前に……
「それじゃ!行く前に……お前も来るんだよな?」
『へ?』
「まさか役目を与えるだけで後は人任せなわけないよな?」
『えーと』
「一緒に来るよな?」
『はい……』
「因みにその世界に行ったら金も家もないとかならないよな?」
『そこはしっかりとサポートが働くので……はい……』
さてさて、これで僕の新しい日々が始まるのか。
「そう言えばお前、名前は?」
『神に名前はありません!概念みたいなものですから!』
「じゃあ適当につけるか」
『あ、シンでお願いします』
今、適当に名付けられるの嫌がったな。まぁいい
「僕は結城なゆ。よろしく。シン」
『はい』
こうして僕の物語が始まるのであった。
始まるのであったが…………
「なぁシン」
『はい?』
その世界にたどり着いたのは良しとしよう。それにシンの話しぶりから、平行世界かと思っていたけど……僕の前に広がるのは異世界の荒野みたいだった
「異世界なら異世界と言って欲しかったんだけど……」
『あの、説明しますと……平行世界に連れていく……はずでしたが……なんでしょうね?ここは』
シンも知らないのかよ!?
と言うかシンの姿が光の球から水色の髪の妖精に変わってるし…………
『ふむふむ、どうやらここは特殊な空間みたいですね。どうにも引っ張られてしまったみたいですね』
「特殊な空間か……まるで彼処みたいだな」
ん?彼処ってどこだ?
「一旦ここから抜け出した方がいいかもな」
『ですね。早速……』
行こうかと思ったら、突然爆発音が聞こえた。なんと言うか……面倒事か?
「はぁ仕方ない。無視は出来ないな……シン、似たような力を使えるんだよな?」
『はい、端末に設定させていただいてます』
戦う力はあるか……早速僕は端末を取り出し、変身をした。
髪は黒から灰色に変わり、白いコートを羽織った神秘的な衣装変わった。そして何故か胸には口みたいな紋章が刻まれていた
『彼女たちみたいな精霊バリアは使えませんが、貴方の中に宿った力ならばある程度の攻撃は吸収できます』
精霊バリアってなんだよ……でも何だか聞き覚えがあると言うか…………
「……危険性はないんだよな」
『えぇ、ありませんよ』
だよな……何だか心配になったけど大丈夫なら…………
「とりあえず……行きますか」
敵は……あれって料理とかで使うペッパーミルだっけ?ペッパーミルの怪物と戦っているピンク色の少女……その傍らにはコートを羽織った人と怪盗みたいな女の子……あの怪盗みたいなのが怪物を操っているなら……
「勇者キック!」
自然と思い浮かんだ言葉を叫びながら、怪物にキックを喰らわす
「な、なんだ!?」
「誰?あの人もプリキュア?」
「違うわ!あの子は一体……」
「そっちのピンク色の!あの怪物と戦っているで良いんだな」
「え、あ、うん」
「分かった!因みに攻撃を喰らわせ続けていけば誰でも倒せる感じか?」
「いいえ、今のところプリキュアの攻撃が一番効くわ!」
コートを羽織った人……中性的な感じなのか……まぁいい。僕がやることは……この怪物を怯ませるだけでいいな
僕は怪物を殴り続けていくと、怪物は腹部から黒い玉を放つ。僕は直撃を喰らい、爆発した…………
「あぁ!?」
「モロに喰らった!?」
「ふっ、他愛のな……」
「なるほど……確かにダメージがない」
煙が晴れ、僕はダメージを確認するが特にダメージなしだ。と言うか何か刺激的な味がするというか……
『どうですか?攻撃を食らうのは?これが貴方に宿った『暴食』の力です』
「お前……まぁいいか」
更にパンチを繰り出していき、怪物は耐えきれず地面に倒れる
「今だ!」
「うん!プリキュア・プレシャストライアングル!」
ピンク色の三角形を無数に作り出し、怪物に向かって放った。怪物は満足そうな顔をして
「お腹いっぱ~い」
「ごちそうさまでした」
怪物は浄化されたのか消えていき、箱から唐揚げみたいな妖精が現れ、ピンク色の少女の腕輪の中へと吸い込まれていった。
「ちっ、帰りに唐揚げを買って帰ろう」
怪盗みたいな女の子は姿を消すのであった。
いつの間にか荒野みたいな場所から普通の街中へ戻っていた。そして目の前にはさっきまで一緒に戦っていたピンク色の少女から戻ったのか普通の少女がいた
「貴方もプリキュアなの!?」
「プリキュア?僕は……」
ある言葉を使おうとしたが、何故か変な違和感を覚えた。なんだ?何でこの言葉を使おうとすると…………使ってはいけないって思うんだ?
「どうしたの?」
「僕は……勇者だよ」
気にしないようにして、改めて勇者と名乗った。
これが僕の始まりの物語だけど…………僕はこの時知らなかった。勇者という名の意味は……僕にとっては…………