ライダーと話し終えるのとほぼ同時にスライドドアが開く。
音のした方を見ると中に入って来たのは、白衣を着た女生徒だった。
「あ、目が覚めたんですね。よかったです」
特に表情を変えるでもなく、彼女はそう言う。
「体の方に異常は見られませんので、もうベッドから起き上がっても問題ありませんよ」
歩み寄ると彼女は続ける。
「魔術師は記憶を抹消され一時的にここの生徒として過ごします。それが第一の試練、言わば聖杯戦争の予選なんです。自身の名と、過去を取り戻すことがいわば突破条件なわけですね」
事務的な説明。
「ですが、あなたはそれを通過しましたので、セラフに入った際にお預かりした記憶もお返ししますね」
その言葉に、先ほどのライダーの言葉を思い出して、記憶が未だに戻っていない旨を伝える。
「…えっ?そんなはずは…個人差があるんでしょうか…ですがいずれにせよ、わたしの権限では分かりかねます。わたしはあくまでも聖杯戦争の運営用AIなので…」
一瞬困惑したようだったが、しかしすぐに事務的な対応になる。
「それとこれを」
…手渡されたのは携帯端末のようだ。
「参加者はその端末に表示されるメッセージに注意するように、とのことです」
……なるほど。
端末から色々と調べてみるが、どれも白紙だ。
なにかしら重要なことをメモしておくのもよさそうだ。
礼装の装備もこの端末から出来るらしい。
他にもSTATUSをタップしてみる。
サーヴァント
CLASS ライダー
真名 ?????
MATRIX LEVEL 1
筋力 E
耐久E
敏捷 E
魔力E
幸運E
………………
そっと、ポケットに端末をしまう。
保健室から出ようとすると、先ほどのAI…間桐桜というらしい…が話しかけてきた。
「そう言えば、言峰神父には会えましたか?本戦は厳しい戦いが待ち受けていますが、頑張ってください」
彼女なりの激励の言葉なのだろうそれを聞き、まずは探索をしようと思い至る。
保健室を出てすぐ右手、金属の扉がある。
重量感のある音とともに開くと、そこには教会が建っており、その前には噴水と、それを囲むベンチがあり、その更に外縁に囲むように花壇があった。
興味本位に、教会に近づくも中から聞こえる不思議な、まじないめいた声に本能的に危機感を覚え、結局はそこを離れることとした。
他にも用具室に校庭、弓道場も見て回ったが、一部を除いて予選の時とは特に変わった様子も無い。
マスター達と話もしたが、皆まだこの空間に慣れていない様子だ。
強いて役に立った情報を挙げるなら、分からないことは黒い制服の生徒…生徒会所属らしい…に聞くのが一番ということと、屋上の景色が良い、というところだろうか。
図書室も情報収集に役立つだろう。
取り敢えず、勧められるまま屋上へ向かうこととした。