もう一つの小説、及びリアルの息抜きに書きました。
何番煎じか分かりませんが、読んでいただけると幸いです!
―――西暦2071年。
人類が栄華を極めたのも今は昔。人類は滅亡の危機に瀕していた。
全ては2050年代、オラクル細胞と名付けられた細胞が発見された事から始まった。この細胞はありとあらゆる物を捕喰し取り込み、恐るべき速度でそれを学習して進化する。その証拠にまだ発見されて間も無く、オラクル細胞の集合体である謎の生物が確認される。そしてこの生物がまたトンデモない化け物だった。オラクル細胞の集合体だからだろう。この化け物は、自然を、動物を、街を、人を、この世に存在する万物全てを喰らい尽くす。そしてまた情報を取り込み学習、際限なく進化していく。
いつしかこの化け物達は極東の地域に伝わる八百万の神に喩えられ、『アラガミ』と呼ばれるようになっていた。
勿論人類側もただ黙ってアラガミ達が進化していくのを眺めているわけではない。当然反撃を試みた。時代の進歩と共に進化してきた技術の産物である数多の兵器を使い、アラガミを一掃しようとした。
最初は殴りつけ、次に刃物で斬りつけ、数多の重火器を放ち、最終的にはミサイルで吹き飛ばそうとした。とある作戦においては核兵器さえも使用している。しかし、結果は惨敗。それらはアラガミに傷の一つもつけることは出来なかった。オラクル細胞による結合は既存のどんな兵器をも跳ね返してしまうほどに強固でしなやかだったのだ。
ここまで来るともう勝機などありはしないのは目に見えて明らかだった。人類は逃げ惑い、住む場所を追われ、絶対的な捕喰者に喰われただ死ぬのを怯えて待つしかなかった。アラガミは誰に邪魔されることもなく、徐々に姿形を変えながら数を増やし、悠々と全てを喰らっていく。
結果的には最初に言った通り、人類は滅亡寸前の所まで追いやられてしまった。
だが、人類もただ喰われて終末を待っているだけじゃない。とある科学者達がアラガミに対するたった一つの対抗策を作り上げることに成功した。
《アラガミを構成しているオラクル細胞の結合を、同じオラクル細胞で喰い破る》
それは人類に残された最後の希望。
世界を統治し安寧を保つ機関フェンリルに所属し、オラクル細胞により作られた生体武器『神機』を携え、自身もまた強化を施すことで得た人外の力を振るう。絶対的捕喰者であるアラガミを喰らう人間の救世主。
人々は彼らを『ゴッドイーター』と呼ぶ。
――――大体こんな感じか、と現実逃避しながら俺はため息をついた。
名前は木瀬ユウイチ。
フェンリル極東支部外部居住区在住。年齢16歳。性別は男。職業はこの世界じゃよくいる日雇いフリーター。――――転生者だ。
前世の記憶は唐突に思い出した。別に何か切欠があったとか、全然そんな物は無い。5歳の時だったか、ある日寝て起きたら思い出していた。前世は普通の高校生。食中りで死んだ。
当時は愕然としたもんだ。前世に比べると家はボロボロ…と言うかもうタダの張りぼて。食生活は必要最低限の配給制。同年代のストリートチルドレンなんて当たり前。周りにゃわけのわからん化物だらけ。ちょっと壁の外に出てみりゃ人が死んで転がってるなんて当然、むしろ化け物に喰われずに体が完全な状態で残ってるのは珍しい。
極め付きはその化け物のせいで人類滅亡寸前だって言うんだから全く洒落になってない。
その化け物達の総称はアラガミ。アラガミと戦ってるのはゴッドイーター。どこかで聞いた事有る様な世界観だった。
思い出すのに数秒の時間も必要なかった。戦ってる戦士たちの名前がゴッドイーターである時点でそれしか思い浮かぶものがなかったから。俺は知識としてそれを既に知っていたから。
『――――ゲームの世界じゃねーか、ここ』
GOD EATER。さっき言った通りの世界観で世界各地にある人類最後の砦の一つ、フェンリル極東支部でストーリーが展開される。
主人公は新型神機――従来の神機である近距離型と遠距離型それぞれのいいトコ取りした文字通り新型の神機――に適合。極東支部初の新型神機使いとして、仲間達との絆を深め、陰謀に巻き込まれながらも数多の戦場をアラガミをバッサバッサと斬り倒し喰いながら駆け抜けていく……ゲーム。
ハイスピードアクションが売りの、俗にいう狩りゲーだった。
随分やり込んだゲームだ。強い神機を作りたくてひたすらミッションに出てたのもよく覚えてる。だからこそ、今この世界に生きている事に喜んだ。
異世界、それも自分がよく知っているゲームの世界。舞い上がってた。
今思うと本当に甘い考えをしてたんだ、この頃の俺は。どうしようもなくバカだったとしか言いようがない。
俺の記憶の中にある世界がゲームなだけ。だけどここは仮想空間でも何でもない現実だ。世界が滅びるなんて誰が言い出したかもわからない冗談みたいな悪夢がそのままひょっこりと顔を出した様な、非情な現実。
俺は
年の割にやたら大人びて誰がどう見ても異様にしかみえなかった俺をずっと愛してくれた、優しかった両親は7歳の時、ある日突然起きたアラガミの集団の襲撃によって殺された。
父は俺と母を逃がすために囮としてアラガミの集団の前に立って、喰われた。死体は疎か、骨のひとかけらとして帰ってはこなかった。
母とはアラガミから逃げてる途中ではぐれ、俺はゴッドイーターによって保護された。襲撃の収まった後になってから近所に住んでた知り合いの爺さんに、母が死亡したと聞かされた。帰ってきたのは、無残にも腕半ばで喰い千切られた左手と少量の髪の毛。それが本当に母だったのかすら分からない有様だった。
一人取り残されて、悲鳴を上げながら食われた父の最後を思い出し、ほんの数時間前までは母のだったその髪と腕を見て、漸く理解した。心の底から恐怖した。
俺が前世を思い出してから理解するのに2年もかかった。現実を直視するのがあまりに遅すぎた。
―――――――生きたい。殺されたくない。
俺がこんな絶望以外ない様な世界で抱いた願いはこの一つだけ。
ひたすらどうすれば生き残れるのか考えた。
まず第一にアラガミに襲撃されない、或いは襲撃が起きてもここより遥かに安全な場所―――フェンリル極東支部、アナグラの内部で生活する事。
次に、金だ。俗物的とか言われるかもしれないが、どんな世界、どんな時代でも生きるために必要なのは変わりない。日雇いで仕事をしているとは言うが、正直子供の俺に任される仕事はほぼない。稀にあったとして奪い合いになるせいで、収入は安定しないんだよな…。配給以外に飯を食えないのは割とつらい。
この世界で最も生存率の高く高収入な職業は、フェンリル職員。
高収入という面で見れば命を懸けて戦うゴッドイーターと比べれば確かにかなり劣るが、安全性だけを見れば明らかにトップクラス。これならアナグラ内部の居住区に住まう事を許される。アラガミに襲われる確率がグッと減る。収入の面だって今と比べるべくもない。
大体まずゴッドイーターはなりたくてなれるもんじゃないしな。因子に適合する確率が既に宝くじレベルだ。それに生存率なんぞ最悪だし、正直今となってはなりたくもない。昔の俺は一体何を考えて浮かれてたんだか…。
しかしまあ常識的に考えりゃ分かる事だが、正規職に就けず日雇いを探す人間の方が遥かに多いこの世の中、フェンリル職員の倍率は頭が逝ってるんじゃないかと思うくらいには高かった。
なにせフェンリル関係者ってだけで特権階級、王室関係者みたいに扱われてる様に見えてしまう世の中だ。フェンリルはこの世界において、ほんの一握りを除いては大企業を飛び越えて人間社会その物。そりゃあ志願者は多くなって当たり前だ。『雇用枠を増やせ』、なんてデモまで起きる始末だしな。
とは言えこんな世紀末な世界だと能力さえあれば子供でも雇用してもらえる枠がある。まあ風当たりは結構強いだろうけどさ。
だから必死に勉強した。金を日雇いの仕事で何とか作って、試験を受けるために必要な資料を集めた。前世の記憶があったことが幸いし、15歳の時には試験もパスできた。正直驚くほどに順調だった。そのまま何もなければ、本当にもう少しすれば俺は晴れてフェンリルに就職し、安全を保障された生活基盤を手に入れることができてたんだ。
そう、できていた。そして今はできなくなった。人生を左右するどころか波乱を決定づけるような事件が起きた。現実逃避しながら今までの事を色々考えてたのもそのせいだ。
別にアラガミが襲ってきたってわけじゃない。嫌な言い方だが、この激戦区じゃ小型アラガミや中型アラガミの襲撃なんてよくある事だ。大型に襲われるって話も耳にする(運よく実際にそんな目にあったことは無いが)。壁の向こう側にはソレより恐ろしい接触禁忌種のアラガミだって想像できない程いるんだろう。
運よく逃げられれば生きれるし、運が悪けりゃそこで死ぬ。正直俺が生きてるのだってただ運が良かっただけだ。
何が起こったか言うだけなら簡単だ。赤紙が来た。
ゴッドイーターになるための適性試験へ出る様にと通達だ。俺の努力を返せ!!あと勉強に使った今までの金!!それ以上に命の保証!!!
「くそ、昔のままだったら素直に喜べたんだろうけどさ…」
今は違う。昔の様に気楽に生きてはいられない。アラガミを殺して親の仇をとりたいと思う気持ちは確かにある。前世の記憶があるとはいえ、この世界での俺の親はあの人達だけだ。あんなに優しかった人達を殺したアラガミを恨むのは当然だろ。
でも何より死の恐怖が強すぎる。考えてみてくれ。オウガテイルでさえ大の大人と変わらないような大きさで、噛みついてくる牙や飛ばしてくる針は大きめの槍程のデカさだ。尻尾の殴打だって棘付き棍棒でドつかれるようなもんだろう。直撃すれば間違いなく死ぬ。
中型のコンゴウも前回の襲撃の時に目視したけど、サイズ的には軽トラに近かったと思う。あれが全力で突進して来るということはつまり、暴走トラックを目の前に棒立ちしているのと同義だ。直撃すれば即死か、あるいは運よく生き残れても一生動けない重症か。まあ動けない傷を負った時点で喰われて終わりだけど。
それにそんなものが当たり前の戦場なんて、少なくとも一般人の精神じゃ耐えられない。
大型のアラガミはまだ見たことが無いから想像も出来ないけど、一撃でも貰えばペシャンコになるの確実だろう。ゴッドイーターの生還率がとてつもなく低いってのも、現実にこうして見ると頷ける。ただでさえ数々の襲撃でトラウマになってるってのに…。
ああ、戦いなんかせず平和に暮らしたい。
まあ俺が何を思おうが、フェンリルの配給を受けてる時点でこの適性試験を受ける事は義務だ。長く生きたいから試験は受けません、なんて選択肢は無いんだよなあ…。
ちなみに、この試験も神機に認められてゴッドイーターになるか、認められず捕喰され肉片になるかの二つしか無い。実際にはもっと軽いものだと公表されてるせいで、この事実を知ってるのは実際に試験を受けたゴッドイーター達やフェンリル関係者といったある程度限られた者のみ。後は前世の記憶で運悪くそれを知ってる俺くらいなもんだろう。
というか、いくら何でも試験で生死が分かれるとか極端すぎる。もうちょっと普通の試験とかないのか。筆記とか面談とか。ゴッドイーターになるための試験受けに行って神機に喰われるとか嫌過ぎるぞ。
……まあ筆記試験でゴッドイーターになれる、なんて事がありえないのは分かるけどさ。
詳しくはよく分からないし覚えてないが、確か機械で適性を調べてから試験を受けさせるためにこの適合試験に呼ばれたほとんどの者はゴッドイーターになれたはずだ。だけど、ほとんどであって全員じゃない。自分がもし適性が無かったら思うとゾッとする。
「はぁ………。気が重い…」
これからの苦難を思い、ため息をつくことしか出来なかった。
翌日、フェンリル極東支部訓練場。お察しの通り、適性試験が開始されてる。…なんで試験会場が訓練場なんだろうな。失敗による神機暴走時の危険を考慮して?
―――うわ、途端に不安になってきた。変な事は考えるもんじゃない…。
訓練場の中央にあるケースには俺の腕に装着するための腕輪(正式名称はP53アームドインプラント。メンドイからこのまま腕輪と呼ぶ)と、俺の相棒になる(かもしれない)神機が鎮座している。
ここからは遠くてあまり見えないけれど、ブレードがついてるのは分かる。遠目だが長さ的に…ショートブレードか?近距離型神機らしいな。
『長く待たせてすまない』
急に流れてきた責任者であるだろう人の声。全部ゲームに則った世界観でいいなら、声の正体は極東支部責任者であるシックザール支部長。合ってるかどうかは分からないけれど、勘が言うには多分間違えていないだろう。
『さて、ようこそ…。人類最後の砦、フェンリルへ。今から、対アラガミ討伐部隊「ゴッドイーター」としての適性試験を始める。少しリラックスしたまえ。その方がいい結果が出やすい』
ここら辺はカンペでも作って台本通りに喋ってるに違いない。多分この適性試験を受ける全員にかけてる言葉だろう。
ただリラックスとかはできません。他の人と違ってコレが生きるか死ぬかの試験だって知ってるからな!逆に冷や冷やして縮こまってるところだよ。つくづくいらない知識だ畜生め。
『心の準備ができたら、中央のケースの前に立ってくれ』
―――――心の準備。ふと、支部長のこの言葉の意味が少し気になった。
ゴッドイーターになり人類を守っていく覚悟だろうか?
アラガミに喰い殺される可能性を受け入れる覚悟か?
多分両方だろう。前者の方はまだいい。ここに呼ばれた時に既に覚悟している。全部救える何ざ思っちゃいないし、そもそも自分すら守れるか分からないけど。できる限りの事を全部する心算だ。
問題は、後者。俺の願いは生き続ける事。親の分まで生きて天寿を全うすること。欲のない願いだって?こんな世界じゃこれは強欲の部類に入るんだよ。
ゴッドイーターになれば尋常じゃない程強力な力が手に入る。デメリットはクソッたれなアラガミと関わる事が多くなる、というよりそれしか仕事がないけど。メリットとして自衛の手段を手にできる。ならそのメリットを精々うまく使ってやろうじゃないか。そう思うことにした。自分勝手大いに結構。
人類滅亡なんてのは確かにヤバい、だけどそれだって自分が死んじまったら関係ない。だって死んだらその後の事なんて普通分かりはしないんだから。俺は転生っていう明らかに異常な体験をしてるけど、こんな奇跡はきっと二度は起こらない。よく分からないけど変に確信してる。
死んだら人はそれまでだ。だから俺は殺されない。殺して喰らって、最後の最後まで生きてやる。
心の準備はできた。
前へゆっくりと歩を進める。目の前のケースと、そこに横たえてある神機の全貌もよく見える様になった。剣と盾がついてるは遠目で分かってた。たぶんナイフとバックラー、ゲームで言う初期装備だ。それは別にいい、試験用に装着しているだけだろうから流石にパーツは後で変えられるだろう。ただ、問題が一つ。
「――――――ちょっと待って。なんか銃身まで見えてるんだけどコイツ」
かーなーり嫌な予感がするぞ、この神機…!!
くそ、考えていても仕方ない。既に賽は投げられた。覚悟が薄れてしまう前に支給された制服の右袖をまくり、台に装着されてる腕輪(下半分)に乗せて神機の柄を全力で握り込み、目をギュッと瞑る。
静かな沈黙が数秒流れたのち、何の前触れもなく上から機械が落ちてきて腕が挟まれ、途端に鋭い痛みが俺を襲ってきた。
「づぁッ!!?」
右腕に何かが注入され痛みがひどくなり、意識が吹き飛びそうになる。これが偏食因子か…!という一瞬の単純な思考すらさせてもらえない。
体全てに物凄い速さで浸食が進み、細胞レベルでどんどん作り変えられていくのが分かる。痛みが熱を持ち全身に回り、もうただ立つことすらも難しい。
「ッ………!…………!!」
身を焼く灼熱に耐える事体感数時間、現実時間およそ十数秒。
痛みはスッとひいていき、代わりに体の底から信じられない程力が湧き出てくるのを感じた。直後に脱力し、思わず膝をつく。
どうやら適合には成功したらしい。あまりの痛みにすわ適合失敗か、このまま喰われて終わるのか、なんて考えてたもんだから正直安堵した…。
正直前世で死ぬ原因になった食中りなんかよりよっぽどつらかった……!!
何気なく手の中にある神機を持ち上げると、その見た目の重量感に反して恐ろしく軽くて驚いた。流石に羽のようにとまではいかないけど、これならいくら振り回しても大丈夫そうだ。
神機から何か黒い木の根の様ななものが伸びてきて腕輪の穴へと入り接続され、血管が黒く脈動する。言葉ではうまく表せないけど、なんとなく先程より神機との繋がりを強く感じられる。
「―――――これで、俺もゴッドイーターか」
嫌だ嫌だと思ってたけど実際になってみると少しだけ、感慨深いものがあるな……。
何となく軽く神機を振ってみる。訓練所の床に結構深そうな刀傷が入った。わァ怖い、俺シーラネ。
戦々恐々としながら手の中の神機を見ているとまた支部長の声が流れてきた。
『おめでとう。君がこの支部
「……は?」
―――――――なんだって?
訓練所にかなり深い傷を作った事がバレテないのか気にされてないのかお咎めなしというのもまるで喜べなくなる衝撃的宣言が俺の脳をダイレクトアタック。
新型ってのはまあいい。銃身も刀身もあるから寧ろ納得した。
極東支部、初?待て待て待て、頼むからちょっと待ってくれ。そのポジションは俺には必要ない。むしろ喜んで返上させてくれ。
俺は防衛班とかでいいんだ。小型や中型を主に狩って、偶に襲撃してくる大型を皆で相手する。そんなゴッドイーターでいいんだ。ホラ、新型でもバースト初登場のアネットとかフェデリコとかいたじゃないか。俺はその他の名も無きゴッドイーター『モブA』でいいんだよ。
なんでよりによってソロでウロヴォロスとか接触禁忌種とか戦わないといけない主人公ポジなんだ!生存率1%切ってんじゃねーか!!
ここは物語じゃなくて、現実なんだろ?そりゃ生きてる年が同じだから登場人物たちはいるかもしれないけどさ。俺は何の関係もないだろ?
『適性試験はこれで終了だ。次は適合後のメディカルチェックが予定されている』
時間は混乱してる俺を待ってはくれないらしい。支部長はどんどん話を進めていく。同時に、俺の記憶がフラッシュバック。頭に蘇るのは、昔画面越しに見た今の状況そのもの。
『始まるまでその扉の向こうの部屋で待機してくれたまえ。気分が悪いなどの症状がある場合はすぐに申し出るように』
支部長の声がやたら遠くに聞こえる。気分は非常に悪い、主に前世の記憶のせいで。
だけどこれは申し出てはならない事柄ベスト1だと俺は思う。
そもそも、「ここは元々ゲームの世界で、お前らは登場キャラクター」なんざ信じてもらえるはずがない。と言うよりふざけんな、て感じだろう。それぞれが自分の理想や目的を持って戦ってるのに、《俺はてめーらの未来を知っている》なんぞ言い始めるやつは詐欺師の言葉以外の何物でもない。信憑性ゼロどころかマイナスだ。
それに俺という不確定要素がいるために何もかもおかしくなる可能性だってある。加えてまだ本当に俺のポジションが主人公だと決まったわけじゃない。そもそもゲームがなんだってんだ。あんな綺麗に纏まった終わりがこの世界に都合よく来るはずがない。
そう、ここは現実。ご都合主義なんて決して働かない、生きるか死ぬかの戦場。ゴミをあさり泥をすすって生きる現実だ。甘い夢なんざ捨ててしまえ。
『…期待しているよ』
最期に激励らしき言葉を受け、俺は思考を振り切るように訓練場を出た。
待機するように命じられた場所で発見したのは、自分と同じくらいの歳で黄色の服を着て帽子をかぶった茶髪の少年。何もかもが、どうしようもなく記憶にある物と被って見える。
―――――これから、俺はどうなる…?
プロローグ、最後までお読みいただきありがとうございました^^
もう一つの小説よりこっちの方があっという間に筆が進むなーっと思ってたんですが、考えてみれば当然ですね。
今の所既にある流れにちょっと付け足してるだけなんだから。オリジナルとか色々考えないといけないですねー…