第三話、投稿します!
ゴッドイーターになって早五日。俺の訓練は佳境に入っていた。
コレ、教官や先輩ゴッドイーター達曰く「頭おかしい速度」らしい。俺が今から行う捕喰形態を含めた戦闘訓練は、通常は自らの神機に慣れる訓練開始後二週間程で行われるそうだ。本来時間を割くべき体力の増強や戦闘時の動きが初期段階からほぼ問題なかったからこその速度だろう。
ちなみにこれまでは課題とされていた実戦での神機の変形訓練や一対多での状況での戦闘訓練、コウタとの共同訓練を続けてきた。少なくとも、この≪ナイフ≫を誰よりも上手く使いこなせる様になったぜ!!…尤も、誰もこんな初期装備使ってるヤツいないわけだが。
『訓練を開始する。既に分かっていると思うが、今回は捕喰形態を解禁する。ダミーをノンアクティブモードに変更する。一度実際に使ってみろ。』
目の前に現れたダミーは確かにピクリとも動いてない。神機を構え、捕喰形態へ。装甲の間から黒く巨大な顎が出現し、喰らい付くのを今か今かと待っている。この顎、不思議な事に適合者の動きと連動していて、腕を突き出せば自動で喰らい付く。命じれば構えたままでも喰らい付いていくけどな。初日にコウタと訓練してる時一回使い教官の大目玉食らったのは嫌な思い出。
ダミーの体を神機から出た巨大な顎が抉りとるように喰い千切り、咀嚼する。同時に体から更に力が溢れてくる。バーストモードーーー神機にアラガミを捕喰させる事で一時的に能力を底上げする事ができる、近距離型神機の特徴の一つ。
ところで、ダミーを喰ってバーストモードになれるって事はこいつもオラクル細胞でできてるのだろうか?
って事はこのダミーは人工のアラガミ…おかしくはないな。無印ラスボスだって人工アラガミだったわけだし。もしかしたら、このオウガテイルもどきってアルダノーヴァ製作のための実験体?…流石に考えすぎか。
それにしても体が軽い軽い!既に十分過ぎる位だったのに、もはや自分の重量を感じないレベルまで昇華されてる。何より二段ジャンプが楽しすぎる。バーストモードになるのが癖になりそうだ。
『感覚は掴んだな?その状態なら空中ジャンプなどの動作も可能だ。そしてもう既に使用して知ってるとは思うが、戦闘中にアラガミを捕喰する事でアラガミバレットと呼ばれる特殊なバレットを入手できる。これは敵に撃てば大きなダメージを与えられ、味方に撃てば
ついでに言うとリンクバーストしたコウタは正しく「最高にハイってやつだアアア!」な状態で、高速移動しながら撃ったバレット全てを命中させていた。バーストモードに入ったとしてもあそこまで強化されるヤツって珍しいんじゃなかろうか。比較対象がいないために実際にどうなのかはわからないが。
『このダミー20体を相手に戦闘してみろ。今迄の訓練を活かす事が出来れば、お前からすれば余裕のはずだ。』
いや、20体はおかしくないだろうか。今まで精々10体だっただろう?2倍ってどーゆーこと?大体リンクバーストは訓練しなくていいんだろうか。確かにコウタは別の訓練を受けてるため、今ここにはいない。それでも近くにはいるんだから呼び出すくらい簡単だろう。それとも、初日に間違えて使った時に既に出来てたからokってことだろうか?一回だけじゃ不安が残るんだが……。
愚痴言ってても仕方ない。とりあえず片付けよう。
ホントに余裕でした。何故だ。
―――翌日。これで俺も今日からは戦場に出るわけだ。相手がオウガテイルとはいえ流石に緊張するな。…いや、オウガテイルとは限らないのか。受ける任務によってはザイゴートだったりコクーンメイデンだったりするかもしれない。新人の任務だから小型アラガミなのは間違いないだろうが。
「よう、ユウイチ!今日から実戦なんだって?まだゴッドイーターになって1週間も経ってないってのに、ホント頭おかしいなお前」
「あ、どもタツミさん。頭おかしいのは俺じゃないです、俺を実戦に出そうとしてる人です」
「ツバキさんの頭がおかしいとかお前が勇者か」
「ゴメンナサイ」
そう言う意味になるとは思わなかった。ツバキさんいなくて助かった……!
声をかけてきたのはタツミさん。さっきまでオペレーターのヒバリさん口説いてたけれど、どうやらまた失敗したらしい。今思ったんだが、まだアナグラに来て1週間経ってないのに口説いてる姿見るのが30回超えるってどういうことなの…。
まあ、声をかけてくれたのは有難い。色々アドバイスとか聞けるだろうし。
「確かに最初って何事も緊張するよなー。俺もそうだった、今思うと懐かしいぜ。誰が同行することになってるんだ?」
「雨宮リンドウ少尉ですね」
「ああ、やっぱリンドウさんか。安心しろユウイチ。リンドウさんが一緒なら間違いなく帰還できるぞ。なんたってあの人滅茶苦茶強いからな!」
流石リンドウさん。まだ会ったことないけどここまで信頼されてるとか…。早く会ってみたくなってきたぞ。
「お前だって訓練でツバキさんのお墨付き貰ってんだろ?なら尚更心配する事なんかねーよ!あの人が実力見間違えるなんてまず無いからさ。姉弟揃って凄いんだぜ、あの人達」
「ああ、苗字が一緒だと思ってたら姉弟だったんですか」
勿論知ってる事ではあるが、後になって何かの拍子にボロを出せば色々マズイから。こんな親切にしてくれる人に嘘をつくみたいな真似をしなければならないってのは心苦しいな…。
「ああ。だから皆二人を苗字じゃなくて名前で呼んでるんだ。まあ本人達も堅苦しいのは嫌いみたいだしな。…おっと、俺もそろそろ任務に行かなきゃいけないんでな。もう行くわ。頑張れよ、今度飯奢ってやるから!」
ホント親切な人が多いよ、
気づけば不安はもう消えていた。
そのまま待つこと10分。とうとうリンドウさんがやってきた。
「あ、リンドウさん。支部長が見かけたら顔を見せに来いと言ってましたよ?」
受付で仕事していたヒバリさんが呼び止めるが、
「オーケー、見かけなかったことにしといてくれ」
あっさり断った。NOと言える男がここにいる。ただし内容が上官からの命令無視。カッコいいけど駄目な大人。なんだろう、ちょっと憧れる。
「よう、新入り。俺は雨宮リンドウ。形式上はお前の上官にあたる。が、まあ呼ぶときはリンドウでいいぞ」
「はい、木瀬ユウイチです!よろしくお願いします、リンドウさん!」
「おー、元気がいい新入りだな。じゃあユウイチ、めんどくさい話は省略させてもらうが、取り敢えずとっとと背中預けられるくらいに育ってくれ。な?」
「うっす!了解っす!」
「キャラ変わってないか?」
ヤベぇ、さっきと違う緊張を味わってるよ。なんかこの人フレンドリーなのにカリスマ凄いんだけど。言葉づかい変になっちまった。
リンドウさんの雰囲気に飲まれて気づけなかったけど、いつの間にか女性が一人リンドウさんの横に立っていた。
「あ!もしかして新しい人?」
新しい人ってなんかすごい言い方だと思う。普通に新人でいいと思うんだが…まあ間違ってはないけど。
「あー、今厳しい規律を叩き込んでるんだからあっち行ってなさい。サクヤ君」
「了解です、上官殿」
めんどくさいって言って全略したのに規律も何もないでしょうに。それとやっぱこの人がサクヤさんか。確かに美人だ。うむ、横乳は伊達じゃない。
この人もリンドウさんが碌に何も言ってない事を分かってるんだろう。苦笑してこちらに手を振ってから立ち去った。
「よし、ユウイチ。今から実戦に出てもらうが、今回の緒戦の任務は俺が同行する。準備はできてるな?時間だ。出発するぞ」
「今回の任務って一体なんですかね?」
「ん?あー、そう言えば伝えてなかったか。任務名は『悪鬼の尾』。贖罪の街でオウガテイルを一体ぶっ倒せばいい。新人向けの軽いお仕事だ」
オウガテイルか。それならよっぽど油断さえしてなければ大丈夫のハズだ。そうだな、上から襲われないようにだけは気を配っておこう。
贖罪の街。かつて人間が繁栄していた影はもう無い。そこかしこにある建築物は喰い荒らされ壁を失い、倒壊しているものも多い。そして何よりインパクトが強いのは、遠くにある超高層ビル。どう喰われたらああなるのか、丸く大穴が開いている。よく倒れなかったもんだ。
「随分と荒れちまってるだろ?お前は知らないだろうが、ここは昔はキレイなもんだったんだぞ。ま、俺もガキの頃の話であんまり覚えてないんだがな…。と、そんな話はどうでもいいか。よし、ユウイチ。実地演習を始めるぞ。」
「了解!」
「元気が良くて大変よろしい。命令は3つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ。あ、これじゃ4つか」
これは俺の緊張を解こうとしてくれてるんだろう。気持ちは嬉しい。が、命令するときのリンドウさんの顔は真面目そのものだった。名言に感動してる場合じゃない。この命令が俺が生き残るための助けになるのは間違いないんだ。
「生き延びろ。この命令を守ればあとは万事どうにでもなる」
そう。ゴッドイーターになる時決意した通り、生き延びる。リンドウさんの言葉を裏返せば、死んでしまえば人類破滅も世界崩壊も糞もないって事だ。死んでしまった人間は、もう何も感じることなどできないのだから。
「今回俺は援護に徹する。お前の実地演習だからな。俺が手を出すのはどうしても危ないと感じた時だけだ。…まあ、それは姉上さえ唸らせたお前の実力なら問題ないと思うけどな!さて、おっ始めるとしようか!」
「Yes,Sir!!」
「せめて返事は統一しろよ……」
――――小型アラガミ、オウガテイル。発生地はアメリカ大陸とされていて、現時点で世界で最も個体数が多いとされてるアラガミだ。一体一体はそれほど強くない。針を真っ直ぐ飛ばすか突進、噛みつきと尻尾での薙ぎ払い位しか攻撃パターンがない。小型アラガミだけあって、針と突進以外のリーチも極小さいものだ。ただし、これが複数出てくると話が別になる。数の暴力はどんな世界のどんな時代でも脅威だ。
ただ、今回は一体だけだと確認されていた。仮に数が出てきたとしても、訓練でダミーとはいえ散々と戦った相手だ。行動パターンとタイミングは掴めている。今の俺なら少なくても5体、多くても倍の10体までなら捌ける自信がある。実際、今さっき一体軽く仕留めたところだ。
しかし。だがしかしだ。それがオウガテイルではなかったらどうだろう?
そう、今俺たちの目の前にいるのは全く別の存在。無印のパッケージを飾り、序盤で数々のプレイヤー達を手古摺らせた雷を纏いし虎の姿を象るアラガミ。
―――――――『ヴァジュラ』だ。
どうしてこうなった!?というより観測班何してたんだよ、こんなデカいの普通見逃さねーだろ!
俺も大型アラガミをこの目で見るのは初めてだ。襲撃の時は防衛班のゴッドイーター達が率先して倒してくれていたから、大体は防壁の付近で倒されて居住区に入ってくることは無かった。一度でも見ていれば耐性がついていたかもしれないが、今更そんな事言っても仕方ない。
足一本だけで、既に大の大人より大きい。そういえば、ゲームのOPムービーでもこれ位でかかったけ。おぼろげながら車を踏み潰してた記憶があるな。
現実逃避していた俺は、リンドウさんの声で引き戻された。
「こちらリンドウだ。贖罪の街にてヴァジュラに遭遇。新人を連れ帰るから援軍頼む。以上」
『え、ちょ、リンドウs』
どうやら援軍を要請していたようだが、ヒバリさんの返答を待たずに通信を切っていた。
「よし、撤退だ。って言ってもコイツが素直に帰してくれるわけないか…。おいユウイチ、命令覚えてるな?」
未だに呆然としてよく回らない頭から記憶を必死に引っ張り出す。
「『死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ』、ですね?」
「ああ、それでいい。はっきり言うぞ?この状況はマズい。俺一人ならまだしも新人のお前を守りながらってのはな。お前が新人としては抜きんでていても、コイツはそれだけで勝てるような相手じゃない。分かるな?」
頷くことで肯定を示す。力だけなら既に倒せるレベルまで到達してるのかもしれない。ただ、経験が圧倒的に足りてない。
「俺が引き付ける。お前は援軍が来るまで援護に徹しろ。援軍がきたら退却だ。生きる事だけ考えろ。いいな?」
「了解しました」
「よし、なら行くか。向こうさんも我慢の限界みたいだしな」
ヴァジュラの方に目を向けると、確かに既に帯電を始めていた。
最初の任務からこれだ。ホント、勘弁してくれよ…!
第三話読了、ありがとうございました^^
初任務でヴァジュラ。今ならナイフでも倒せますが初見の頃だと結構キツイと思います。『カウボーイ』で初めて戦った時雷球に自分から突っ込んで危うく死にかけたのはいい思い出。