神喰らう世界をナイフ一本で切り開く   作:石ノ心

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 もともと前話とセットで書いてたため早く投稿できました!

 第四話、始まります。



第四話 絶望と希望

 大型アラガミ『ヴァジュラ』。背中のマント(らしき器官)から強力な電撃を放つことができ、その虎の様な姿からも予測できる通り、巨体ながらに恐ろしいほどの俊敏さを持っている。前足での薙ぎ払いにせよ突進による攻撃にせよ、あの巨体から繰り出される威力は半端じゃない。

 

 はっきり言おう。ゲームの知識?そんなもん当てになるか!!そもそも実地演習でコイツ(ヴァジュラ)が出てくる時点でおかしいわ!

猫とか子猫とか呼ばれてたがそんな可愛いもんじゃねーよ、実物を見てみろ。突進に巻き込まれた建築物がぶっ壊れ、薙ぎ払いをガードしても勢いだけで後ろへ弾き飛ばされる。撃ち出された雷球は弾丸の如きスピードで迫り、直撃した場所を炭化させる。とんでもない俊敏さを持ってるせいで逃げようにも逃げられない。ゴッドイーターの身体能力的にモロに一発もらっても耐えられるかもしれないが、二発もらえばしばらく行動不能、三発もらえば死だ。どこからどう見てもただの化け物だろ!!

 

 リンドウさんが突っ込み俺がスナイパーで牽制。隙ができたら俺も切り込む。今はこの流れでやっていけてるんだけど、そもそも俺の装備は全てにおいて何の強化を施していない初期装備。威力が全くと言っていいほど期待できない。

 

 銃弾は種類はレーザー。貫通威力が効きやすい胴体を狙っているし、俺の神機の銃身パーツであるファルコンはヴァジュラの弱点である神属性の弾を撃つときの威力が下がってしまうため、少しでも威力を上げるため氷属性の弾を撃ちこんでいる。が、それだって唯の気休めだ。敵からすれば煩わしい石礫が飛んでくる程度の認識でしかないに違いない。

 

 

 なんだかんだ言って、結局全てリンドウさんに頼ってしまっている。俺は、有望株だと言われて舞い上がってただけだったようだ…結局、何にも変わってない。生きるための力を手に入れるためゴッドイーターになったのに、守ってもらうことしかできてない。俺がこれから配備されるのはほぼ間違いなく第一部隊。敵がヴァジュラだろうと他の大型アラガミだろうと、今のままなら俺は間違いなく、死ぬ。

 

 足手まといは御免だ。今できることを考えろ。何もできないなら、せめて何かリンドウさんの助けになるような事を…!今もなお激しく続いてる戦闘を見て、その後自分の神機に目を落とす。

 

 ―――――――閃いた。

 

 「リンドウさん、スタングレネードいきます!」

 

 「了解だ!頼んだぞ!」

 

 使えるものは全て使う。よろず屋のおっちゃんには感謝しなきゃいけないな。

 

 グレネードがはじけ凄まじい閃光が視界を埋め尽くし、爆音が辺りを包み込んだ。

 

 『ガアアアアアアッ!!!』

 

 ヴァジュラは一時的に混乱状態へと陥る。どんな生物でも視界を潰された上、聴覚まで頼りにならなくなったら狼狽えるのは当前だ。リンドウさんがここぞとばかりに畳み掛け、俺も次の準備へと移る。強化された身体能力をフルに使い、ビルとビルの間を壁を三角飛びを繰り返すことで屋上へと登っていく。屋上へと着いた瞬間下でのたうち回るヴァジュラへ狙いを定め、神機を捕喰形態へ変形。そのまま飛び降りる。

 

「喰らえぇぇッ!!」

 

俺の神機が、ヴァジュラのマントの一部を抉り取った。

 

 そう、俺が思いついた策はゲームでのOPムービーを()()にしている。違うのはここからだ。確かに捕喰には成功したが、俺はこれで終わるなどと思ってるわけじゃない。捕喰形態の威力は基本、刀身パーツに依存している。何の強化も施してないナイフの威力なんて説明するまでもない。自由落下の速度を含めたとしても小型のオウガテイルはともかく、大型のヴァジュラには大したダメージは与えられないのは自明の理。だから、こうする。

 

 即座に神機を銃形態へと変形。ヴァジュラの背から飛び降りると共にリンドウさんへと向けて今手に入れたアラガミバレットの全てを射出する。俺の神機が新型だからこそ可能な『リンクバースト』のLV3だ。訓練の時、コウタに撃ったアラガミバレットは一つ。つまりLV1。その状態のコウタが普通では出せないような身体能力を発揮し、さらには弾を全て標的に当てて見せた。仮にリンドウさんがリンクバーストする事での戦闘能力上昇幅がコウタより多少低かったとしても、効果は十分以上に見込めるはず。

 

 結局他力本願なのは変わらない。だが変えていくためにまず何かしらの行動を起こしたかった。この戦いで俺にできるのは、ここまでだ。

 

 

 「よくやった、ユウイチ!」

 

 次の瞬間、強化されたリンドウさんが振り抜いたロングブレードが、ヴァジュラの顔面を斬り捨てた。

 

 断末魔と共に倒れ伏す化け物を見て安心し、アラガミバレットの受け渡しでバーストモードが解除されたことによる脱力感に見舞われた俺の意識は、あっという間に闇へと沈んだ。

 

 

 

 

 その後の事を記しておこう。戦場で気を失ってしまった俺を放置するわけにはいかず、要請していた援軍が来るまでリンドウさんはその場に待機。そもそも疲れによって倒れてただけの俺は回収されて数分しか経たない内に目を覚ました。

 

 アナグラに帰還した後は結構な騒ぎだった。それもそのはず、今噂の極東支部初の新型神機使いが訓練開始後一週間経たない内に実地演習へ行き、しかもそこでヴァジュラと死闘を繰り広げたんだ。実際にはリンドウさんの存在が無ければ死んでいたとは言え、当のリンドウさんが何故か自慢げに(しかも大げさに)俺が如何に活躍したかなんて語り始めるから大変だった。途中でツバキさんが来てくれてなかったらいつまで騒ぎが続いたか分からない。リンドウさんはその後ツバキさんにシバかれていた。

 

 そうそう、今回の任務で倒したヴァジュラの素材をリンドウさんが全部譲ってくれたんだ!シユウの素材が無いからまだ剣の強化には使えないけどな。とりあえず、低強度チタンが2つ手に入ったから『ナイフ』を『ナイフ 改』に強化して貰えるよう帰ってきた時に整備士のリッカさんに頼んでおいた。割とすぐ出来上がると言っていたから今から取りに行くんだ。武器はしっかり強化しておかないとやっぱりマズイ事が今回の任務で嫌というほど分かったからな…。

 

 

 

 

 

 「ああ、ユウイチ君!大変!大変だよ!!」

 

 整備室に向かったらやたらと慌てた様子でリッカさんが声をかけてきた。

 

 「こんちはー。何が大変なんですか?」

 

 「あ、こんにちは。…じゃなくて!!これ見てよ!」

 

 指差された方向にあったのは俺の神機。刀身パーツは付いてないけど間違いはない。何が大変なのか見当がつかないぞ?

 

 「これがどうかしたんですか?パーツはちょっと足りないけど特に問題ない気が…」

 

 「喰べちゃったんだよ!」

 

 「は?」

 

 よく分からない。喰べちゃった?何が、というと恐らく俺の神機だろう。しかし一体何を喰った?

 

 …整備士の誰か?成程、それは大変だ!

 

 「君の神機が、『ナイフ 改』を喰べちゃったんだよ!!」

 

 「………は?」

 

 流石に予想外にも程がある。神機が『ナイフ 改』を喰った…だと?自分に装着されたパーツを?刀身がないのはそれでか!なんで!?

 

 「え、なんでそんな事に?」

 

 最近驚くことが多すぎるぞ!刀身が無けりゃどうやって戦えばいいんだよ、俺近接メインなんだけど!?

 

 呆然としながらも取り敢えず原因を聞いてみたが、リッカさんは首を横に振った。

 

 「ちょっと前例が無い事だから私にも分からない。博士に連絡しておいたから、何か分かれば教えてくれるはずだよ」

 

 「そうですか…。ありがとうございます。じゃあちょっと博士の所に行ってきます」

 

 「うん、コッチも色々と試してみるよ。博士によろしくね」

 

 とりあえず礼を言って研究室まで猛ダッシュ。場合によっては俺の命に関わってくる。焦らずにはいられない。

 

 「博士!!」

 

 「やあユウイチ君、よく来たね。君自身と言い君の神機と言い、ホントに興味が尽きないよ。今度は神機が刀身を捕喰したんだって?」

 

 確かにリッカさんからの連絡があったらしい。

 

 「なんでこんな事になったか分かりますか!?」

 

 「…フム。ただの推測でしかないけど、聞くかい?」

 

 「是非!」

 

 このまま何も打つ手がなければ死ぬ。今回の任務で学んだこと全てが無に消えるなんて認めたくない。

 

 「分かった。まず君は神機がどういう物か、どこまで知っているかな?」

 

 「アラガミに対する唯一の対抗手段で、オラクル細胞で出来てるんですよね」

 

 ここまではゴッドイーターなら余程不真面目でもない限り誰でも知っている。というか世界でも常識だ。

 

 「そう、アラガミのオラクル細胞の結合を喰い破るためには同じオラクル細胞、と言うわけだ。そう、大事なのはそのオラクル細胞で構成されているという所にある。言ってみれば神機は『人為的に調整されたアラガミ』なんだよ」

 

 そういえばそんな事を言っていたな。でもそれが今回の件とどう繋がりがあるのかが分からない。アラガミでも調整されているなら使用者に実害はないはずだろ?

 

 「アラガミが『偏食』という特性を持っているのは知ってるね?君たちの神機にも応用されている特性だ。私は、この件はその偏食に起因しているものだろうと考えている。我々人間が調整する事で神機は確かに敵を捕食するための兵器として使用することが可能となった。でもね、技術こそ発展はしていても、未だに我々はオラクル細胞の全てを解析するに至っていないんだ。恐らくはその弊害だよ」

 

 「『偏食』が原因?」

 

 となると、俺の神機が好んで喰うのは……

 

 「君の神機の偏食は、人工的に加工されたアラガミの素材に向いてるんじゃないかな。調整のおかげでしっかり敵も捕喰はできてるみたいだけど」

 

 「ちょっと待って下さい!『ナイフ』だってコクーンメイデンの素材の妖精棘を使って作られていたはずですよ!?それなら今まで俺は戦えなかったんじゃ…」

 

 「でも戦えていたんだろう?これもまた推測でしかないけど、『ナイフ 改』以上の…つまり『ナイフ』よりランクの高い物が偏食の対象なんだろうね」

 

 『ナイフ 改』がダメで『ナイフ』なら大丈夫…?確かどちらもRankは1だったはず。俺の神機は実質Rank1のパーツで、その中でも最弱の武器防具しかない装備できないって事か……!?

 

 想像してみた。今回のヴァジュラより巨大とされるアラガミ、ウロヴォロスやその堕天種、そして接触禁忌種のアマテラスなんかと戦う自分の姿を。

 

 山のような巨体に対峙する俺の手に握られている神器は、全て初期装備のまま。『ナイフ』、『ファルコン』、『対炎タワー』。…なんだこの絶望感。どう足掻いても勝てる気がしねえ!!

 

 ――――詰んだわ、コレ。

 

 

 

 しかし絶望してる俺に、博士が予想外の言葉をかけてきた。

 

 「そう悲観する事じゃない。君の神機は確かにあまり強い武器は装備できない。でもね、今君の神機は、()()しているんだ!!言っただろう?興味が尽きないって。どういう風に進化していくかは分からないけど従来の神機、いや、君以外の新型でも進化するなんて起った事が無いんだよ!今はまだ無理でも、きっとすぐに戦えるさ」

 

 ホント、どうなってんだよ。もう驚きを通り越して呆れたよ。俺の神機はどこへ向かってるんだ?喰いまくって終末捕喰とか起こさないでくれよ。

 

 ただ、希望は確かに見えた。確かに進化する神機があるなら、大型アラガミに対抗できるかもしれない。幸いにも俺の適合率は高い。きっと勝つ事だってできるに違いない!……『ナイフ』だけど。

 

 

 

 

 

 ――――――この後リッカさんに色々検証してもらった結果、Rank1装備でも初期装備以外は装着できなかったらしく、偏食の対象について博士と共に頭を唸らせることになった。

 

 

 

 

 

 




第四話読了、ありがとうございました^^

いつかきっとここの主人公はナイフでマガツキュウビに挑んでいく事でしょう。まず無理。
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