魔道具製作者の受難 作:お給料
それはそれとして、給料日まだだから今月の生活がピンチなんですが。
頼まれた救助依頼をこなす三人は現在ボロボロの満身創痍。
マルタ、灯火の誘導により、セシルの一撃でゴライアスの片眼は何とか奪えたが、あの巨人はまだまだ動く。
「リーダー、どうします?」
「後ろから瓦礫を撤去している音が聞こえますぞ」
「残りの結界を使えば、逃げられるか…」
魔道具に込められた結界は、残り二発。一発は序盤で使ってしまった。
セシルは考える。
ゴライアスが道を塞いでるせいで前へ進めない。後ろでは瓦礫の山。
「粘ろう」
「「!?」」
愚行とも取れる行動に目を見開く。
「正気ですか?」
「残念ながら」
「…何か策が?」
「敢えて言うなら、先輩と慕ってくれてる後輩かな?」
「…フェイ殿は、本当に来るのですか?」
「あらゆる局面を見据える彼だよ?来ない方が可笑しい」
「なるほど。私はまだまだ甘ちゃんでした」
セシルの言葉にマルタは前を向く。
「やりましょう。フェイ君が来るまでとことん足掻くよ」
灯火ヤレヤレと、観念したように指示に従う。
冒険。
三人の冒険者は冒険をする。
「マルタは、引き続き囮をお願い!」
「了解!」
素早い動きで翻弄する。毛が逆立っているので獣化のスキルだろう。この場面に全てを賭けているのだ。
「灯火は短文詠唱の魔法を!完成したらあの顔面にぶつけてやって!」
「御意!」
灯火は詠唱を始める。彼の魔法は短文と長文の二つだけ。スキルは身体強化の一つだけ。エルフとヒューマンの血をバランスよく受け継いでいる。
「ゴライアスがそっちに気付きました!気を付けて!」
マルタの声が十七階層に響く。
「私の出番だね!」
セシルは魔道具を目の前にかざす。全ての魔道具は使用者の魔力に依存する。だが、例外がある。
「ミノタウロス、ヘルハウンドの魔石を注入!」
フェイが強化種をヒントに作り出したもう一つの効果。魔石に含まれる魔力を注入することで能力を強められる。
結界が光を放つ。
ゴライアスの拳が結界と衝突するが、
「よし!弾いた!!」
反射した。
「完成しましたぞ!」
「タイミングは任せた!」
セシルは走り出す。目的はもう一つの片眼ではない。
灯火の魔法が絶妙なタイミングで顔面にぶつかった。威力は低いが怯ませるのは充分だった。
「はあああっ!!」
狙いは足の腱。二足歩行の生物なら機動力を奪える。
斬った。
誰もがそう思った瞬間、全員が目を見開いた。
「跳んだ!?」
「退避しろぉぉ!!」
口調が変わった灯火の叫びで二人は下がる。セシルは残り一発の魔道具を発動する。幸いマルタが近くにいたので庇うことが出来た。
着地の衝撃で、二人は吹き飛ばされた。灯火は遠くにいたので風圧を堪えるだけで済んだ。
「みんな無事?」
「なんとか」
「お二人ともお下がりください。もう打つ手は無いです」
灯火の言う通り、魔道具は効力は失い、先程の攻防で全員の体力はもう限界を迎えた。
「こんなゴライアス、過去に居なかった…!」
【アストレア・ファミリア】のサポーターとして同行した時、何度かゴライアスと戦闘を行った。
その気持ちは二人も同じである。マルタも灯火もファミリアの遠征でゴライアスと対峙している。
「これが異常種か…!」
「もう駄目か、も?」
諦め掛けた時、マルタの犬耳が何かを察知した。
「どうしたの?」
「何か聞こえます。風を切っている音?でしょうか…」
「風切音?それが正しければ…」
「うおおおおおおおお!!」
「「「!」」」
猛スピードでゴライアスに突っ込んだ人影を三人は捉えた。
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巨人がバランスを崩した影響で砂埃が舞い上がる。フェイが晴れた先に居る人影を確認する。
「三人とも、見っけ!」
戦場に相応しくない間抜けな声に、
「「「フェイ君(殿)(様)!!」」」
歓喜の声を上げる三人。それを確認したフェイは不敵な笑みを浮かべる。
ごめんよ三人とも!こんな事になるなんて思わなかったんだ!ゴライアス、それも異常種が生まれるなんて予測出来なかったし!これも全てあのギルド長が悪い!諸悪の根源許すまじ(暴論)
「そこに居て。あとは僕がやるから」
絶望(ゴライアス)と対峙するフェイは、紛れもない英雄に見える。セシル達は目を話すことが出来ない。
うん、怖い。
フェイの大見え切った心境である。
「行くよ」
両手の人差し指に取り付けた二つの指輪を起動させる。すると、
「凄い…」
辺り一面に光り輝く無数の球が現れる。
フェイはかく乱するように自由自在に飛ばしていく。ポーチに入れてある内の一つの直剣を構えて走り出す。
光球がゴライアスに殺到する。威力はそこまでだが、怯ませるのには充分だ。
三人がやった行動を一人で軽々行うフェイだが、既視感があった。
「フェイ逃げて!」
「え?」
二度目の跳躍。一回で戦闘不能にしたゴライアスの回避と攻撃を兼ね備えた抜群の行動。
しかし、真下のフェイは動じない。
叫ぶセシルだが、目を見開いた。
「な、何が起きたんだ…?」
「分からない。目で追えなかった…」
「まさか、あの刹那の瞬間に切り裂いたの…?」
「「!?」」
マルタの分析を聞く。
しかし、ありえないことではない。なぜなら、目の前にいる男は、オラリオで英雄と呼ばれる冒険者なのだから。
焦った~。跳躍した瞬間に、『反射指輪』を起動させてなかったら死んでたわ。明日の朝刊には“『製作王様』自分が派遣した冒険者を助けられずに犬死に(笑)”そうならんで良かったわ。
内心ドキドキのフェイだが、ゴライアスが起き上がり咆哮する。
凄まじい威圧に呼吸を忘れる。そんな中でフェイが取った行動は、
「魔剣『
魔剣による一発。
『鍛冶』と『神秘』の両方を持つフェイ特製の魔剣。ある鍛冶師に作成方法を教わった。
追加で、術式を付与できる魔法を持つフェイが上乗せした効果により、ゴライアスの巨躯を焼き焦がす。
「と、取り敢えず避難しよう!」
三人の下へ走り出す。戦闘に見惚れている。
「この瓦礫どかして十八階層に逃げよう!それしかない!」
「でもどうやって…!」
「穴を掘る魔道具があります!今なら行ける!」
現実は非情だ。
「待て!ゴライアスが動き出したぞ!?」
「フェイ様の攻撃を喰らって、まだ動くというのですか?」
「もう駄目だ…」
誰もが絶望した時、
「下がってなよ。僕が何とかするから」
英雄は再び前に立ち塞がる。
ゴライアスは今も燃えている。一部分は炭化しているのに動くのは、冒険者を倒すという執着心。
あ、死んだ。
フェイは燃え盛る巨人を見てそう思った。
「ん?」
「どうしたのマルタ?」
「…誰か来ます」
「「「え?」」」
たしかに耳を澄ませばコツコツと足音が聞こえる。この音はヒールの音だろうか?
…ん?ヒール?
冷や汗がドッと流れる。
ゴライアスの後ろから姿を現したのは、
「うるさいぞ雑音が」
聞き覚えが凄くある
いったい、なにフィアさんなんだ!?
次で第壱章を終わらせます!第弐章から原作に触れていくつもりです。