魔道具製作者の受難   作:お給料

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母親を想うほど効果が上昇する。ベルが発現させた成長補正スキルです。


第弐章 …え?どういう状況?

 

 「遅刻だ遅刻~!」

 

 【ロキ・ファミリア】が開催する宴にお呼ばれされていた事を思い出した僕は、街灯に照らされた夜の街を走る。

 

 休業日でやることなく暇だった僕は、武器を鍛えようと【ヘファイストス・ファミリア】から借りている工房に籠っていたのだ。

 

 集中し過ぎていた。店のみんなには後で合流すると伝えていたから僕一人。工房から【星の玩具店】に戻り、会場である【豊穣の女主人】までダッシュで向かっている。

 

 正直に言おう。疲れた。体力が予想以上に落ちている。

 

 「お、見えてきた!」

 

 息を切らしながら店の前に立つ。

 

 呼吸を整えて中に入ると、ワイワイガヤガヤと酒を飲んで楽しんでいる光景…ではなくて、

 

 「…いつから世紀末になったの?」

 

 アルフィアさんが狼人をボロ雑巾にして踏んずけているではないか。周りのみんなも顔を青ざめて戦々恐々としている。

 

 「フェ、フェイ…」

 

 「アイズじゃん。元気にしてた?」

 

 今言うことではないだろ!あれを何とかしろ!という視線を【ロキ・ファミリア】が送る。フェイは気付いてないが。

 

 眼鏡が若干ズレたカレンがこちらに詰め寄ってくる。

 

 「フェイさん!?今までどこに居たんですか!」

 

 「ごめんごめん。製作に集中しててさ」

 

 「あれを何とかしてください!」

 

 「やっぱ訓練とかじゃなかったんだ」

 

 「当たり前です!」

 

 「まあ、任せてよ」

 

 僕はアルフィアさんのもとに歩く。ゴクリと息を吞む音が聞こえてくる。

 

 「アルフィアさん、落ち着いて」

 

 「私は落ち着いてるぞ?ただ、私の息子を貶したこの犬を躾けている最中だ」

 

 なるほど。だいたい事情を把握した。

 

 倒れているこの人が息子(甥っ子)さんを馬鹿にした。アルフィアさんは冷たい印象を持たれているけど、愛する者を馬鹿にされて黙ってられるほど冷たい人ではない。

 

 簡単に言えば、虎の尾を踏んだのだ。

 

 「ならもう大丈夫ですよ」

 

 「…何?」

 

 「気絶しているから、今は躾けられないでしょ?」

 

 僕の言葉に足を退ける。彼の仲間であるリヴェリアさん達が心配して近づいてくる。

 

 「帰る」

 

 「…付き添いは?」

 

 「必要ない」

 

 背を向けて帰っていった。帰ると言っているが、恐らく息子さんの所に行くのだろう。いつもより早歩きだったし。

 

 ザルドさんとリリがいないのは、先に向かったからだと想像できる。

 

 フィンさんが言葉を発する。

 

 「すまない」

 

 「それは何に対してですか?」

 

 「ベートが罵倒した事と、それとベートを助けてくれた事だ」

 

 「謝罪は不要ですよ。それでも気が済まないのならアルフィアさんの息子さんにしてください」

 

 「少し怖いけど…分かった。僕が直接謝罪しに行くよ」

 

 僕は店員に声を掛けて席に座る。こんな状況でもお腹が空いたのだ。

 

 「これ迷惑料です。お納めください」

 

 「次は容赦しないからね」

 

 「了解です」

 

 店主のミアさんにお金を渡す。賄賂じゃないよ?机とか椅子とか壊されてるからね。

 

 「フェイ…」

 

 「ん?どうしたんだアイズ?」

 

 「私も謝罪したい」

 

 「謝罪?でもフィンさんがするって言ってたよ」

 

 「私が、怖がらせちゃったから…」

 

 「あ~そういう事か…分かったよ。アルフィアさんに聞いて機会を作ってあげる」

 

 「いいの?」

 

 「うん」

 

 「ありがと」

 

 「どういたしまして」

 

 僕は食事を楽しんだ。両隣にはカレンとアイズが座っている。羨ましがられるか睨まれる視線が突き刺さる。流石の僕でも感じ取れるぞ。

 

 「どうしたの?」

 

 「何かありましたか?」

 

 「何でもないよ。気にしないで」

 

 二人に勘付かれたか。なら、この視線も感じ取ってくれないか?別に良いんだけどね。

 

 食事を楽しんだ。

 

~~~~~~~~~~~

 

 帰り道。

 

 「こんばんわ」

 

 甘ったるい声が背後から聞こえてくる。振り返ると、

 

 「フレイヤ様じゃないですか。こんばんわ」

 

 「ええ。月が綺麗に輝いて、いい夜ね」

 

 カレンは大物女神の登場に目を見開いている。そんなカレンに、

 

 「僕だけを見ていて。美の女神の魅了は毒だ」

 

 「は、はい!フェイさんは大丈夫なんですか?」

 

 「今の所は、ね」

 

 小声でカレンと会話する。僕は状態異常に耐性があるが、神相手には自信が無い。頼みの綱である魔道具も、今は身に付けてない。

 

 「二人だけの内緒話?妬いちゃうわね」

 

 「ごめんなさいフレイヤ様。それより、貴方だけですか?」

 

 「もちろん護衛がいるわ。私だけで行きたかったのだけど…」

 

 少し不機嫌になってるね。それにしても本当に人間味があるな。この女神は。

 

 「本日はどのような件で?」

 

 「貴方よ、()()()?」

 

 間髪入れず即答する。そう、昔からフレイヤ様はカレンに目を付けているのだ。魂を気に入ったのだろうな。

 

 名指しされたカレンがビクリと震え、僕の肩を強く掴んだ。若干震えるその手を、僕の手で優しく包み込む。

 

 「大丈夫だよカレン。強引な手は使わないと思うから」

 

 「そうね。『静寂』と『暴食』、そして貴方を敵に回したくないもの」

 

 「あの二人と並べるなんて、思ったより高評価なんですね」

 

 「神の間で囁かれている、敵に回したらヤバいランキング一位よ。知らなかったの?」

 

 なんだそれ!知らなかったんだけど!

 

 「手に入れないからこそ美しいものがある」

 

 「「?」」

 

 「またお話しましょうね」

 

 そう言って闇に消えていった。本当に誰よりも綺麗で、誰よりも恐ろしい神だよ。

 

 「帰ろうか」

 

 「は、はい…あ、あの」

 

 「ん?」

 

 「もう少しだけ…手を、繋いでくれませんか?」

 

 「ん」

 

 今も微かに震える手を握ると、カレンも握り返す。

 

 フレイヤ様がいつカレンに目を付けたのか不明だ。でも、同じ店の従業員であるカレンをこれからも守っていく。

 

 月が綺麗な夜だった。

 

 

 




ベル>カレン>>>フェイ
誰も手に入れられないね。
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