魔道具製作者の受難 作:お給料
「モンスターだぁぁぁぁ!!」
大通りから聞こえてくる絶叫。危機感のない阿保な僕でも理解できる。本当は現実逃避したいけど。
おさらいであるが【怪物祭】とは、冒険者がモンスターを調教するお祭りである。地上であるにも関わらず、モンスターが現れる理由は一つしかない。
脱走。
事故か事件かは知らないが、【ガネーシャ・ファミリア】の厳重な警備を潜り抜けられるのは、純粋にすごいと思った。
脱獄経験があるから、自画自賛になっちゃうんだけど!
「どうしよう…って、あれ?」
遠目で見えていたモンスターが一瞬で灰に変わる。見知った金髪剣士がこちらを見て僕の姿を確認して近寄って来きた。
「フェイ、モンスターが…」
「引き続き討伐に当たろうか。数体ほど任せてもいいかな?」
「うん!」
どことなく嬉しそう表情を浮かべて元気いっぱいに返事をした。
分かるぞアイズ。頼られるのって最高に嬉しいよな!
「もう大丈夫かな?アイズがいるし」
オラリオでも十本の指に入る(適当)アイズが動いたのだ。カレン達にはアルフィアさんとザルドさんの二傑がいる。遭遇したモンスターが可哀想なほどである。同情するね。
楽観しながら辺りを見渡すと周囲の人間の様子が変だ。騒ぎの方向に逃げ惑う一般人を捕まえて事情を聞くことにした。
「あの、どうかしました?」
「は、放せ!…って、『製作王様』!?どうしてここに!?」
「それより事情を聞かせて欲しいな~なんて…」
怖いなこの一般人。僕より強いんじゃね?取り敢えず下手に出ることにした。
「モンスターが出たんだ」
「それならアイズが…『剣姫』が討伐して周ってるはず…?」
「違うんだ!向こうに現れたのは、第一級冒険者二人を相手取る新種のモンスターなんだ!」
「…え?」
今、なんて?第一級冒険者を…それも二人を相手取る新種のモンスターって言ったか?うん、非力な僕が行っても足手纏い確実だな。静観しようそうしよう。
しかし、現実はそう甘くはない。
「でもこれで助かったな」
「ん?」
「第一級冒険者の中で最強と謳われる『製作王様』がやって来たんだからな!」
最強?最弱の間違いじゃなくて?ってか、声大きいよ!
「え?『製作王様』がいるのか?」
「本当だ!あそこにいるのがそうじゃない?」
「俺達は助かったんだ!」
歓声が響き渡って収拾が付かなくなった。外出の際は変装しようと思いました。だが、混乱するよりはいいかな?
「【ガネーシャ・ファミリア】【アストレア・ファミリア】が避難誘導をしていると思うから皆さんは指示に従って!安全第一に考えて行動を!」
「「「「「はい!!」」」」」
いい返事!僕も例の場所に向かいつつ、安全第一に考えるね!
背中に期待の眼差しを背負いつつ走っていくこと数分。新種のモンスターを確認できた。花だなまるで。
アイズ経由で知り合ったヒリュテ姉妹と、かなりの重症である怒ると怖いエルフさん。
「お~い…ってヤベェ!?」
声を掛けようとしたらグリンっと音がしそうな勢いで頭部がこちらに向く。僕何かした?
「気を付けてフェイ!そいつら魔力に反応する!」
魔力?僕、魔法は一切使ってないよ?なのになんでこっちを向いてんの!?
僕は自衛のための魔道具を取り出そうとして、気付いた。
十中八九魔道具のせいじゃん。
魔道具には個体差があれど、発動に必要な魔力が大量に内包してある。つまりやつらにとって僕は、
「美味しい料理じゃん…」
命を奪うための触手が飛んでくるが、いつもの魔道具がそれを防ぐ。これが無かったら十六歳まで長生きしてないよ。
防げている今がチャンス。お姉ちゃんアマゾネスのほうはたしか、短剣使ってたような気がする。
「お姉ちゃんこれ貸してあげる!」
「ありがとう!それと、お姉ちゃんはやめろ!気色悪い!」
投げた二振りの短剣を素早くキャッチしながら異議を唱える。お姉ちゃんは不評だったようだ。
「私にもある!?」
「大きいのはない!短剣ならあと一つある!」
「ならそれ貸して!無いよりマシだから!」
同じようにキャッチする。
「これ凄い!切ったところが焼けてる!」
「戦いに集中しなさい!でも本当ね!こっちは凍ってるわ!」
あれも魔道具の一種。斬り付ければ属性ダメージが発動する仕掛けだ。長時間の使用はできない欠点があるが、並みの武器より切れ味も耐久力もあるので充分だろう。
新種は狙いを姉妹に変更する。距離が近い方を優先してるのかな?ダメ出しとばかりに、
「みんな」
「「アイズ!!」」
脱走したモンスターを倒し尽くしたアイズが登場した。ますます激化する。僕はコソコソと動き、
「今治療するよ」
「あ、ありがとうございます…」
寝っ転がっていたエルフさんを回復させる。腹部の風穴は綺麗に塞がった。
「あ、あの!」
「ん?」
「時間を稼いでください!」
「…え?」
やる気を滾らせた瞳で見据えられたら断れないじゃないか。
「みんな聞いて!」
「「「?」」」
「詠唱が完了するまで時間を稼いで欲しい!」
僕一人では無理。あと二、三回で効果切れちゃうし。展開する魔法陣。魔道具がかすれるほどの魔力に新種が反応する。
僕は仁王立ち。一見堂々としているが、怖くて足が動かないのだ。
前衛の三人が足止めし、中衛(?)の僕が最終的な盾になる。完璧な布陣だ。チラッと周りを見れば、一般人に紛れて冒険者がこちらを見ている。
見てないで手伝ってよ!
「離れてください!」
後ろからの声で全力で横に倒れる。アイズたちも分散した。
見渡す限りの銀世界が広がっていたので、
「終わったか…」
呟きと同時に歓声が広がった。
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おまけ
あの戦いの後、大勢の人から感謝された。僕は全然活躍していなかったので、かなり居心地悪かった。
子どもから
「ありがと!お兄ちゃん!」
そう言われた時、激しく罪悪感に襲われた。
トボトボと店に帰ると、
「あれ?アルフィアさんとザルドさんは?」
「アルフィアさんなら、首謀者のところにカチコミ…お説教に行って、ザルドさんはそれを阻止するために走っていきましたよ?」
「はあ…」
大きな溜息を吐いた。残って片づけをしているリリとカレンは疲れている僕を見て首を傾けた。