魔道具製作者の受難   作:お給料

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第弐章 二人とも時間あるか?/僕に何を期待してるの!?

 

 【怪物祭】での一幕から数日後。

 

 モンスターを脱走させた首謀者のファミリアを粗方病院送りにしたアルフィアさんが口を開いた。

 

 「二人とも時間あるか?」

 

 部屋に居た僕とリリにアルフィアさんが話し掛けたのだ。彼女から何か尋ねてくることはたいして珍しいことではない。

 

 僕は、訓練か!?と身構えていたらどうやら違うらしい。

 

 「ベルのサポーターを頼みたい」

 

 それを聞いて安心したと同時に、

 

 「…僕必要ないですよね?」

 

 「ああ。英雄様の凛々しい姿を見せたかっただけだ」

 

 「凛々しい姿、ねえ…?」

 

 リリが僕を見て呟いた。どこか馬鹿にしている顔なのだが気にしない。

 

 「リリは大丈夫ですよ。しばらく遠征はなさそうですし」

 

 「分かった。ついて来い」

 

 アルフィアさんの背中をリリがトコトコ着いて行く。

 

 嵐が過ぎ去ったと安堵するも束の間、ドタバタと階段を上がり廊下を走って来る音が聞こえてくる。段々と近づいてくる。

 

 「久しぶりフェイ!一緒にダンジョンに行くわよ!」

 

 真っ赤に燃える髪の毛を振り回しながら、部屋に突っ込んで来たのは我らが団長。

 

 「久し振りですアリーゼさん。でも僕は忙しいのでお断りs…」

 

 「行くわよ!」

 

 「ういっす…」

 

 有無を言わせずダンジョン行となった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

 「皆さんは今どこに?」

 

 「皆は冒険者依頼が終わった後、拠点に帰って寝ているわ」

 

 ファミリアの規模が大きくなると、ギルドから依頼を押し付けられる。彼女達【アストレア・ファミリア】だと、難易度が跳ね上がるらしい。

 

 僕達は【アストレア・ファミリア】に籍を置いているのだが、何故か別に冒険者依頼を渡される。

 

 ザルドさんとリリが【ロキ・ファミリア】の遠征に着いて行った時に、ついでに終わらせて貰った。

 

 ふと、疑問が浮かぶ。

 

 「…あれ?アリーゼさんも行ったんですよね?」

 

 「そうよ?それがどうかした?」

 

 「疲れてないんですか?」

 

 「フッフーン、私はいつでも元気いっぱいの完璧美少女よ!疲れなんて知らないわ!」

 

 この人おかしい。だって、冒険者依頼は深層だよ?なんで帰ってすぐダンジョンに行ってんの?

 

 完璧美少女より脳筋少女だろ。

 

 「何か馬鹿にされた気がするわ!?」

 

 「気のせいです。さっさと行きましょう」

 

 ちなみに現在十七階層。異常種のゴライアスと激闘を繰り広げた通路にいる。あの戦場の面影がさっぱり無くなっているのは、少し変な気持ちだ。

 

 「そう言えば」

 

 「?」

 

 「セシルをここに送ったんだって?」

 

 だよな~、バレてるよな~。

 

 「は、はい。ギルド長に押し付けられた依頼に手伝って貰いました」

 

 変に誤魔化さず正直に話す。どんな罰でも甘んじて受け入れよう。あ、殴らないでくれたら嬉しいな。

 

 「…ずるい」

 

 「…え?」

 

 アリーゼさんは小さく呟いた。難聴系なので上手く聞き取れなかった。

 

 「セシルばっかズルい!」

 

 「うえ!?」

 

 ズ、ズルい!?なんで!?全然、意味が分かんないんだけど!

 

 「私もフェイとデートしたかったぁぁぁぁ!!」

 

 「で、デート?い、いや、デートじゃなくて冒険なんですが!?」

 

 あれをデートとは呼ばない。冒険者が言うデートが殺し合いのことを指すならそうなのだが、そんな物騒なこと今までの人生で聞いたことが無い。

 

 アリーゼさんは駄々こねるのを止めて、

 

 「今からするわ!」

 

 「はぁ!?」

 

 「…フェイは私とデートは嫌なのかしら?」 

 

 「その言い方はズルくないですか?」

 

 「なら決定ね!行くわよ!十八階層に!」

 

 「まさかの無視!?って、うわぁぁぁぁ!?」

 

 体ごと引っ張られ、突っ走っていく。謎の浮遊感が襲い、僕は気を失った。

 

 この時はまだ知らなかった。十八階層であんなことが起きるなんて。

 

~~~~~~~~~

 

 夢を見た。

 

 まだオラリオに行く前に居たあの山、小屋で魔道具製作をしていた時のことだ。

 

 「出来た!」

 

 「ん?今度はどんな物が出来たんだ?」

 

 当時六歳の時かな?まだ名前を知らない師匠と暮らしていたんだ。

 

 「じゃ~ん!『呪いの指輪』だよ!」

 

 「良い笑顔で恐ろしい物を報告するんじゃない!」

 

 「効果は小指を机の角にぶつけた痛みが常時発動するんだ!」

 

 「そんなの嫌だ!生き地獄じゃないか!」

 

 「…試したいな?」

 

 「やめろ、こっちを見るな!お、おい!瞳をウルウルさせるんじゃない!」

 

 「…駄目?」

 

 「くっ!?」

 

 師匠は根負けして装備してくれたんだっけ。痛みで転げまわる師匠を見て成功だ!って叫んだなぁ。その後は味を占めてどんどん試して貰ったっけ?

 

 あれ?

 

 恐ろしい真実に辿り着く。

 

 「失踪したの僕のせいじゃね?」

 

 失踪の謎が判明した時、目が覚めた。目の前には目を瞑って眠っているアリーゼさん。そして、

 

 「んん?なんか柔らかい…」

 

 後頭部が柔らかく温かい何かの上にある。一瞬で、足だわこれ。答えに導かれた。

 

 「…ん?起きた?」

 

 「おはようございます。そしてここはどこですか?」

 

 「私の膝です」

 

 「それはありがとうございます。じゃなくて、ここは?それになんか騒がしいような…?」

 

 木の下から日差し?が見えている。ダンジョンにいたはずでは?

 

 そんな疑問を解消してくれたのは、

 

 「リヴィラ、だよ。おはようフェイ」

 

 「ああ、おはようアイズ…え?アイズ?」

 

 「アイズだよ?」

 

 友人のアイズ・ヴァレンシュタインだった。それにリヴィラ?

 

 「やっと起きたかよ『製作王様』。こっちは事件で大変だってのに呑気なものだな」

 

 不機嫌そうに現れたのはリヴィラを仕切る親玉ボールスさん。

 

 「まあまあボールス。彼が目覚めたんだ。これで解決したようなものだよ」

 

 「そうだな。フェイはかなりの切れ者だから、見落としていた重要な情報を見つけて解決に導いてくれるさ」

 

 「それに期待しているから、呑気に寝ているこいつに腹が立ってんだ」

 

 いやいやいやいや。まだフィンさんとリヴェリアさんが一緒に居るのは良い。問題は、

 

 「…何に期待してるんだ?」

 

 分かったことと言えば、波乱の幕開けだってことだ。

 





 チビっ子フェイはクズい。今もか。
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