魔道具製作者の受難   作:お給料

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第零章 一難去ってまた一難…

 

 「し、死ぬかと思ったpart2…」

 

 魔道具『銀鷲』が急降下したことで、真下にある住居に墜落してしまったのだ。命を守る魔道具はもちろん装着している。それでも怖いのは変わらない。

 

 キョロキョロ見渡して、人がいないことを確認する。巻き込んでしまったらヤバい。不在であることにホッと安堵の息を吐く。

 

 「取り敢えず外に出よう。ここに落ちたことがバレたかもしれないし…」

 

 人目の着く空中で、あれだけ派手に飛び回ったのだ。バレてない方がおかしい。

 

 扉を開いた先にいたのは、

 

 「い、生きとったか…」

 

 「信じられん…」

 

 どこかで見たことある、ボロボロのエルフとドワーフの二人組。

 

 「…」

 

 目を閉じた黒ドレスの女性。

 

 「…どういう状況?」

 

 立ちすくんでいると、黒ドレスさん(名前を知らないからそう呼ぶ)が口を開く。

 

 「死にたくないのなら消えろ」

 

 ええ~、物騒…でも、

 

 「怪我人を放置できない」

 

 二人に駆け寄る。追撃の気配はない。勝てると踏んでいるのだろう。

 

 「お、おい」

 

 「回復させる。それと、作戦がある。耳を貸して」

 

 「「!?」」

 

 おそらくこの二人は味方だ。このエルフは噂程度しか知らないけど恐らく王族。それだけで理由になる。

 

 簡潔に説明すると二人の目が見開く。この作戦は100%信じてくれないと成功しない。

 

 「僕が落下して生きていることが証明になる」

 

 「それに乗ってやろう、小僧!」

 

 「!本気か、ガレス!?」

 

 「それしかあるまい。それに、やられっぱなしは腹が立つからのう!」

 

 「決まりだね。まずは回復させる。『癒光の十字架』」

 

 手のひらサイズの十字架を取り出す。これも魔道具。効果は回復というシンプルなものだが、

 

 「傷が癒えた、だと…」

 

 「お前はいったい…」

 

 「手筈通りにお願いね」

 

 二人の疑問を放っておいて向き合う。黒ドレスさんに隙は無い。回復させたところで、と思っているのだろう。

 

 「回復させたところで、私にまたやられるだけだ」

 

 ほら、やっぱり。

 

 「どうだろうね。やってみないと分からないよ?」

 

 「ほう。勇敢通り越して蛮勇だな、小僧」

 

 「じゃあ、行くよっ!」

 

 手に持つ球状の魔道具を地面に叩きつけた瞬間、白い煙が辺りに放散され、視界を遮った。

 

 「煙幕か。見栄を張って逃亡とはな」

 

 だが、その予想は外れる。白煙から飛び出してくる二つの影。

 

 「おおおおおお!!」

 

 「はあああ!!」

 

 力の限り拳を握るドワーフと、自身の杖を持って接近するエルフが、黒ドレスさんに挑む。しかし、

 

 「滑稽だな。魔導士が前衛の真似事か?」

 

 「どうせ、魔法は無効化される。それならば、貴様を直接殴るのも悪くない!」

 

 攻撃が躱されていく。敵のスペックは、かつての最恐【へラ・ファミリア】のLv.7。Lv.5の二人が肉薄したところで、届くはずがない。

 

 「福音(ゴスペル)

 

 当たり前だが反撃される。耐久に自信があるドワーフでも一撃で致命傷となり得る凶悪の魔法。だが、

 

 「効いてない、だと…!」

 

 「やっとすまし顔を辞めたか!」

 

 一瞬驚くも、すぐさま冷静になって態勢を整えられるのは、この女もまた、歴戦の冒険者だからだろう。

 

 「福音(ゴスペル)

 

 「「~~~~~~~~!!」」

 

 二度目の魔法を放つ。蝶短文詠唱から放たれる強力な魔法で二人は吹き飛ばされた。

 

 「どんな手品を使ったかは知らないが、これで終わりだ」

 

 地面にひれ伏す二人を見て呟いた。【ロキ・ファミリア】の副団長二人を仕留めた。冒険者の士気を下げられる。挑む者はこの二人以外誰も…

 

 (いや、あの小僧がいない…!)

 

 逃げたか?その線は無い。あの小僧は、勝ちに行く眼をしていた。絶望に抗う者の眼だ。

 

 「どこに隠れた?」

 

 煙はもう晴れた。周りにあるのは建物だけ。人の気配はない。全くない。 

 

 「僕の勝ちだね」

 

 「!?」

 

 突如として背後から声が聞こえる。咄嗟に蹴り飛ばそうとしたが、体が動かず転倒する。

 

 「ふぅ~、上手くいって良かったよ」

 

 「…何をした?」

 

 「魔道具で拘束した」

 

 「は…?」

 

 自身の身体を見やるが、巻き付いてる物は無い。しかし、締め付けられる感覚はある。

 

 「おっと、見えてなかったね…『可視化』っと」

 

 自身に鎖が巻き付いていた。見落とす可能性もない。だが、ここで諦める訳にいかない。

 

 「福音(ゴスペル)!」

 

 少年相手にオーバーキル。そもそも、ある目的のために人殺しを厭わない決意をしたのだ。だが、

 

 「発動、しない…だと?」

 

 精神枯渇の線は無い。枯渇する程使っていない。

 

 「無駄だよ黒ドレスさん。その鎖の効果は、束縛。いくら高レベルだろうと、神の恩恵ごと無力化する。僕の最高傑作の一つだよ」

 

 嘘ではないのだろう。鎖程度なら、自分の力でも引き千切れる。先程から試しているが、破ることが出来ない。

 

 「…かつて【災禍の怪物】だのと恐れられた私が、小人族ではないただの少年に敗けるとはな」

 

 「僕だけでは無いよ。あの二人がいなかったら、そもそも成功してなかったから」

 

 「名を名乗れ。小さき英雄」

 

 「英雄はよしてよ。フェイ・ハーグ。魔道具を製作出来るだけの子どもだよ」

 

 「フェイは『神秘』持ちか?ならば上級冒険者か」

 

 「神秘?上級冒険者?」

 

 聞き覚えが無いのか、単語を反芻しながら首を傾ける。

 

 「知らないのか?待て、お前のレベルは幾つだ?」

 

 「0」

 

 「………は?」

 

 「そもそも恩恵を授かってない」

 

 この言葉に呆気にとられる。Lv.1ですらないただの一般人に敗けたのか。これは、

 

 「ふふっ」

 

 「?」

 

 思わず失笑してしまう。だって可笑しいだろう?私相手に恩恵無しで勝利した。それではまるで、()()()()()みたいじゃないか。

 

 「私の完敗だ。逃げも隠れもしない。焼くなり煮るなり好きにしろ」

 

 「しないよそんなこと!?と、取り敢えずあの二人を回復させて来るから!」

 

 そう言って、倒れるドワーフとエルフを回復させる。

 

 不思議な少年。フェイに抱いた印象だった。

 

 「リヴェリア、ガレス、大丈夫か!?」

 

 駆け寄って来たのは、【ガネーシャ・ファミリア】の団長。戦闘音が聞こえなくなったので、増援を引き連れてやって来たのだ。

 

 「私達はいい。それより『静寂』を連れて行け」

 

 「…二人がやったのか?」

 

 「それは違う。こやつを捕えたのはこの坊主じゃ。まことに信じられないがな」

 

 「坊主?ここにいたのか!何故抜け出している!警備はどうした!」

 

 「なんじゃ、知り合いか?」

 

 「魔石工場に突っ込んできた破天荒な少年だ。闇派閥の作戦を台無しにしたことで狙われることを危惧した我々は、身柄を拘束して牢屋に閉じ込める名目で保護していたんだ」

 

 「あはは、脱獄しちゃった…」

 

 「がっはっは!!ガネーシャ・ファミリアから逃げるとは、全く勇敢な小僧じゃ!!」

 

 そう言って笑うガレスに呆れの視線、大人し気な顔してやる事が大胆な少年に視線が行く。

 

 「もう一度お前を逮捕する。今度はじっくり説教をしてやるからな…!」

 

 「それは勘弁…何でもないです、はい」

 

 「脱獄しないようにじっくり監視しといてやる」

 

 「おっふ…」

 

 当分出られそうにないや。フェイは諦めた。

 

 「待てシャクティ。その前に坊主、所属と名を名乗れ」

 

 「フェイ・ハーグ。しがない魔道具製作者だよ。恩恵を授かってないから無所属ってことになるね」

 

 「「「「「「はあ!?」」」」」」

 

 僕、何かやっちゃいました?

 




 『』前回ちょろっと出た指輪。今回は、ガレス、リヴェリアに持たせて特攻させた。
 
 『癒光の十字架』回復効果を持つ魔道具。病気と毒、呪詛を治すことが出来る。チート魔道具。

 『』姿を消す魔道具。相手の意識の外に抜け出せて、人が発する全ての気配ごと消せる。チート魔道具。

 『』アルフィアを拘束した鎖。不可視と無力化させる束縛効果付き。チート魔道具。

 今回は、前回と比べて、凄まじい効果を発揮する魔道具を登場させました。魔道具の詳しい設定はまた後日。
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