魔道具製作者の受難 作:お給料
命を狩るための凶刃が迫る。
アイズを庇うために友人の前に出たフェイに流れるのは、明確な死のイメージではなく、今まで自分が体験した数々の記憶。
「フェイ!」
後ろからアイズの声が聞こえる。普段の落ち着いた声ではない。大事にしている物が壊れた時のどこか泣きそうな声。
ごめんアイズ。
僕は心の中で友人に謝罪する。声に出せない。だから心の中での謝罪。
もう死んだ。僕は死んだ。最後に魔道具を作りたかった!いや、かなりの量を作ってるけどさ?作り足りないんだ。今もアイデアがバンバン溢れてきてるんだ。だから記憶記憶ぅ!もう意味無いと思うけど!
「フェイ!」
ちょっと今いい所!後で喋り相手になるからあっちに行ってなさい!
「…フェイ?」
分かってくれたかアイズ。死にゆく僕の願いを聞き取ってくれたのか!流石僕の友人…あれ?斬られてない?
「はっ!?」
目が覚めた。遠くでフィンさんとリヴェリアさんが敵と戦っている。フィンさんの拳が顔面にクリーンヒットしぶっ飛んだ。
あれ?気絶してた?
「フェイ、良かった…」
「え、あ、うん。間に合ったんだねフィンさん達」
僕の腕に抱き着くアイズを撫でてやる。距離がいつもより近い気がするが気にしない。
「フェイ大丈夫!?」
「アイズさん!」
「「アリーゼさん(レフィーヤ)」」
それだけではない。遠くからヒリュテ姉妹も駆けつけて来るのが確認できる。僕達は助かったのだ。
「私の方が分が悪い。アリアもフェイ・ハーグも殺せなかったが、ここは退くとしよう」
「逃がすと思うかい?」
食人花を呼び出し敵が逃げる。どうやら調教師でもあったようだ。
「ちょ、アイズ!?」
何を思ったか、アイズが逃げる敵目掛けて走り出した。風を付加しているから必死である。
何か話しているようだが聞こえなかった。
アリーゼさんに連れて行かれた十八階層での戦いは幕を閉じた。
「はぁ~~~~~~~~~」
「どうしたんですか?ため息なんか吐いて」
一日経った今、僕は自分の店である【星の玩具店】にいる。今は客が少ないから暇つぶしを兼ねてカレンとお喋りする。
変化があったと言えば、アイズと僕の命を狙っていると知った【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】が手を組んだこと。
利害の一致。仲間の命が掛かっているのだ。使える手は何でも使う精神だ。
僕はカレンにぶっちゃける。
「いや…僕は命狙われてるらしいじゃん?おちおち外も出れないと考えるとさ…?」
「お気持ちは察しますけど…貴方英雄ですよね?」
「英雄もビビる時はとことんビビる」
「ビビり過ぎでは?ここにはあの二人が居るんですよ?」
アルフィアさんとザルドさん。あの二人が居る場所は確かに安全だ。しかし、
「常に居るわけじゃないでしょ?アルフィアさんはリリ連れて行っちゃったし、ザルドさんは鍛えるために深層に行っちゃったし」
「で、でも【アストレア・ファミリア】の皆さんが交代で来てくれるんですよ?」
「対峙したあの人はアイズを余裕で倒せる力を持った実力者だよ?僕という足手纏いを抱えて戦えないよ」
「足手纏いって…貴方は『勇者』が来るまで時間稼ぎしていたと聞きましたが」
「これのお陰だよ」
僕はお馴染みの指輪を見せる。戦いが終了した後、健在の指輪を調べてみたら全て効果切れ。あの一撃を喰らっていたら間違いなく死んでいた。
ブルリと震えて冷や汗が頬を伝う。僕があの戦いで導き出した答えは、
「やっぱダンジョンに行くのは間違ってるよ」
「冒険者の人生を否定する言葉ですよ、それ」
そんな話をしていると、
「フェイ様いますよね?」
「あれ?リリじゃん」
「この人が英雄…」
リリが店にやって来た。後ろには白髪赤目で兎を彷彿とさせる冒険者が居た。萎縮した態度に親近感が沸く。そう言えばダンジョンじゃなかったけ?
「ベル様に魔道具を見繕ってくれませんか?」
「ベル様?」
はて?どこかで聞いた名前だな。
「へ、【ヘスティア・ファミリア】所属、ベル・クラネルと言います!あ、貴方の活躍はお義母さんから聞いてます!」
【ヘスティア・ファミリア】とベル・クラネル。そしてお義母さん。ちょっと待て。この子はリリが連れて来た冒険者だ。
「君はアルフィアさんの!」
「はい!お義母さんがいつもお世話になってます!」
この子がアルフィアさんの血縁者か。あの人より礼儀正しい。似てないね(失礼)
「いやいや。いつもこっちがお世話になってますよ。むしろボコボコにされてますよ」
「英雄に何してるの、お義母さん!?」
「まあ、入って入って。君に合った魔道具を渡すから」
「お、お邪魔します!」
僕はベル君を中に招き入れる。店だからお邪魔しますは必要ないよ?
「弟みたいだなぁ…」
「え?」
「何でもないよ」
さっきまで感じていた不安が綺麗さっぱり無くなっていた。
~~~~~~~~~~
「ありがとうございました!」
「また来てね。サービスするから」
「はい!」
ベル君は最初から最後まで礼儀正しい。構ってやりたい可愛がりたいという保護欲も沸いてくる。それはカレンも同じのようで表情が優し気になっていた。
今日も仕事を頑張るかとやる気を漲らせると、
「久し振りだなフェイ…なんだその顔は」
「あ、いやいや気にしないでくださいよ。ベル君とは真反対な貴方にガッカリとかしてませんから!」
「ちょ、フェイさん!?」
目の前に居るのは、筋肉で構成されてるんじゃないか?と思わせるほどの巨漢。ザルドさんをライバル視している猪人。加えて女神一筋。
「相談がある」
「え、相談?オッタルさんが?」
実力主義の塊、【フレイヤ・ファミリア】の頂点で団長『猛者』オッタルだ。
脳筋なのに相談があるのか?って思ったら駄目だ(クソ失礼)
奥の部屋で話を聞いてみた。
どうやらランクアップに行き詰ってるようだ。レベルが上がるにつれて器の昇華は困難となる。偉業のハードルが上がるからね。
どうしようと考えた時、思いついたのが僕の慧眼(?)に頼る事。
「お前は仲間だけでなく、傘下の連中の力を見極めて試練を課している」
「誰だよ、そんな噂流した奴…」
「その証拠に、以前ゴライアスが出現するタイミングで救助依頼を出した。それに参加した者がランクアップを果たしている」
「え、そうなの?」
「はい。マルタさんはLv.3に、灯火さんはLv.4に上がってます」
後ろに控えるカレンが耳打ちしてくれた。今考えると本当にヤバかったよなぁ。
「俺を強くしてくれ」
Lv.7が僕に頭を下げる。プライドそっちのけの行為に驚いた。
「頭を上げてくださいよ」
そんなことされたら調子に乗っちゃうよ?丁度いいから、人知れず届いたあの依頼を任せてみるか。
「カレン。依頼が一つ届いていたよね?」
「あ、あれを受けさせるんですか?」
「俺は構わん」
「ほら、本人もそう言ってることだしさ」
「わ、分かりました…」
カレンは依頼書を取り出してオッタルさんに手渡した。
「これは…」
「中層で起きたモンスターの異常発生の調査依頼。これを任せたい」
無駄に良い顔を作って面倒ごとを押し付けた。
自分の設定を忘れてそうで怖い。間違えていたと感じたらコメントしてください。