魔道具製作者の受難   作:お給料

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第参章 その服装で接客は無理でしょ

 

 色々あったけど今日も今日とて開店日。

 

 「合わせて12000ヴァリスだ…おい、聞いているのか?」

 

 「え…ああ、すいやせん。これで足りますかね…?」

 

 「ふむ、丁度だな」

 

 「で、ではこれで…」

 

 「ああ」

 

 接客をしているのは、なんと都市最強と恐れられる『静寂』のアルフィアさん。

 

 『才能の権化』『災禍の怪物』だけあって物覚えがいい。それどころか機転を利かせて応用してしまう実力者。戦闘以外にも変わらない通り名に敬礼。

 

 アルフィアさんが手伝ってくれるのは大変珍しい。いつもなら奥で読書に耽っているか、ただただ外を眺めているか、あるいは別の事をしている。

 

 でも今日みたいに働く日は、神々や冒険者、ひいては一般人から珍しがられ客足が増えるのだ。僕とカレンは手伝ってくれる&売上増加で万々歳だ。

 

 先程の男性客がぎこちないのは、有名人で彼女が持つ雰囲気が誰にも寄せ付けない強者のそれだということが分かるからだろう。でもこれは一つの要因でしかない。

 

 「なんだったんだ。さっきの客は」

 

 「アルフィアさんに緊張してたんだと思いますよ」

 

 若干苛立っている彼女を、僕はそう言って宥めるが原因がはっきり分かっている。

 

 簡単に言えば服装に問題がある。

 

 アルフィアさんはいつものドレスにエプロンを着用している状態だ。接客している時は椅子に座り机で金勘定。

 

 それを正面から見てみよう。

 

 まず机で隠れて下半身は見えない。次にドレスの紐がエプロンの紐の下になって隠れている。最後に客の目線がどうしても下にいってしまう。座っているからである。

 

 どうみても、

 

 (裸エプロン、なんだよなぁ…)

 

 僕は心の中で呟いた。

 

 横から見ればそうでない事は一目瞭然。でも真正面から見れば裸エプロン。魔道具は建前で、これを目当てで主に男性客がたくさん訪れる。

 

 「最強のくせにけしからん……」「『新妻』のアルフィア……最高かよ」という声がチラホラと聞こえてくる。

 

 幸いなのは本人に聞かれていない事だろう。これらを聞かれていたら音の暴力(ゴスペル)がこの店を襲う。

 

 正面からずっとアルフィアさんを見ているわけにもいかないので、商品を補充するため奥の部屋に行く。

 

 「あ、ここに居ましたか」

 

 「? どうしたの?」

 

 店に出す魔道具の整理をしていたらカレンが声を掛けてきた。口振りから僕に用があるのだろう。

 

 「フェイさんに用がある方がお見えになっていますが、どうします?」

 

 「僕に?そうだな…」

 

 怖い人じゃなかったら別に大丈夫か。

 

 「因みにどちら様?」

 

 「『万能者』アスフィ・アル・アンドロメダ様です」

 

 「アスフィさんが?」

 

 彼女が僕に?主神経由で何かしら伝える事があるのだろうか?

 

 「分かった。客室に案内して。僕も向かうから」

 

 「了解しました」

 

 さ~て、鬼が出るか蛇が出るか。どちらも出て欲しくないが、経験上どっちも現れるんだよなぁ。

 

~~~~~~~~~~~~

 

 「お久しぶりです、フェイ」

 

 「こちらこそ、アスフィさん」

 

 机を挟んで正面に座るのは【ヘルメス・ファミリア】団長だ。公式ではLv.2の上級冒険者で僕と同じ魔道具製作者。

 

 僕がいなかったら間違いなくこの人が名を馳せていた。

 

 「まずは、うちの団員を救ってくれたことに感謝します」

 

 「救った?」

 

 「ええ。十八階層で『剣姫』と貴方に救われたと言っていましたが」

 

 十八階層。本気で死にかけた苦い記憶が蘇る。恐らく、救助者の中に居たのだろうと結論づけた。

 

 「気にしないでくださいよ。人として当然の行動ですから」

 

 「…貴方は不思議な人ですね」

 

 「え?」

 

 「第一級冒険者にも関わらず、強者の持つ近寄り難い雰囲気を隠してまで色んな人と関わろうとしている。冒険者として欠点になりますが、貴方の場合は純粋な美点ですね」

 

 めっちゃ褒めるじゃん。っていうか、雰囲気を隠してないよ。素でこれだよ。色んな人と関わるのは、僕を守ってくれる盾が欲しいからだよ。下心100%です。

 

 少々照れるので、本題に入って貰った。

 

 「私が貴方を訪ねたのは、この依頼の事についてです」

 

 「あれ?これって…」

 

 「知っているんですか?」

 

 「まあ、はい。同じのを貰いましたから」

 

 「そうなんですか!?」

 

 「うおっ!?」

 

 身を乗り出すアスフィさんに驚いた。自身の行動に顔を赤くし、「失礼」と言って誤魔化す様に咳払いした。

 

 内容は、中層で大量発生したモンスターについてだ。どっかの脳筋女神信者に渡したわ。

 

 「貴方も来てくれるのですか…?」

 

 「行きませんよ」

 

 「そ、そんな…!」

 

 いや、絶望し過ぎじゃない?僕が行っても足手纏いになるだけだよ?

 

 「まあ、大丈夫ですよ」

 

 「…え?」

 

 「全滅はありえないから」

 

 だってあの人に押し付けたもん。

 

 「一応、援軍を送りましたから」

 

 「援軍ですか?」

 

 「そしてこう言ってやってください。『~~~~~』」

 

 「了解です」

 

 「それとこれを渡しておきます」

 

 「指輪…ですか?」

 

 「はい。気休め程度ですが持っておいてください」

 

 いつもの致命傷を回避する指輪を渡しておいた。これでこの人は死なないだろう。多分。

 

 「ふふっ。ありがとうございます」

 

 「いえいえ」

 

 「あ、そうだ」

 

 「?」

 

 「彼女がもうすぐ戻る、という伝言を」

 

 「彼女…?あ、もしかして!」

 

 「ええ」

 

 都市外に居るもう一人の従業員。

 

 「『森人』からの伝言です」

 

~~~~~~~~~~~

 

 おまけ

 

 十八階層のとある酒場

 

 「『猛者』…!」

 

 「『剣姫』か。どうやら至ったようだな」

 

 「何しにここへ…!」

 

 「身構えるな。用があるのはここだ」

 

 「ここ?私と同じ…?」

 

 二人は中に入る。

 

 「お~『剣姫』じゃねえか…って、『猛者』ぁ!?ええええええっ!?」

 

 ビッグネームの登場にアイズの顔見知りのルルネが驚いた。正確にはこの場に居る全員が。

 

 「…注文は?」

 

 「「ジャガ丸くん小豆クリーム味」」

 

 オッタルが言うと、なんかシュール。口に出す度胸がないが。

 

 「貴方方が援軍で間違いないようですね。全くフェイは、とんでもない人を援軍に呼びましたね」

 

 「『猛者』は、フェイが呼んだの?」

 

 「ああ。だが、俺一人で行く。足手纏いは必要ない」

 

 「そう言うと思ってフェイが貴方宛てに伝言です」

 

 「フェイが…?」

 

 「『依頼達成と全員を生還させることが貴方の試練。ザルドさんならこれくらい可能ですよ』です」

 

 「ほう…?」

 




参戦!オッタルぅ!!
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