魔道具製作者の受難 作:お給料
「良い天気だね…」
僕は部屋に差し込む日差しを浴びながら呟いた。
今日は休日として設定しているので、店を開いてないのだ。因みに今は僕一人だけ。カレンは外出、リリ&アルフィアさんはベル君の所らしい。
手持ちの魔道具をフキフキ磨くしかやる事がない。メンテナンスは終わらせたし。
そんな時だった。
「ごめんくださー-い!」
「ん?」
玄関から大きな声が聞こえてきた。声量、声色からして冒険者。ごっついもん。
「今日は店じまいですよ~」
「あ、いや。自分客ではなく、【ロキ・ファミリア】の者なんですが」
「【ロキ・ファミリア】?」
ごつめの男が説明に入る。なんでも、主神のロキが僕を呼んでいるらしいのだ。正直、関わりたくない。
「…お断りすることは?」
僕がそんな事を聞くと、目の前の男性は複雑な表情になる。「お前はろくにおつかいも出来ないのか」と無能扱いされると思い込んでいる顔だ。
「分かりましたよ。準備次第すぐ行きます」
「準備?あ、はい!お待ちしております!」
そう言って出て行った。
準備に疑問を浮かべていたようだが、僕にとっては命が掛かっているとても大切なことなのだ。
【ロキ・ファミリア】は第一級冒険者が沢山いる。それ以下の冒険者も大勢いるが、どの人も滅茶苦茶強い。
ひ弱な僕があそこに行けば、格好の餌だ。
「あ~あ、せっかくの休日が…」
憂鬱な気持ちを抱えながら準備に取り掛かった。
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「お待ちしておりました!案内します!」
「あ、はい…」
先程の男性の後ろをトコトコ歩いていくと、
「お~い!フェ~~~イ!!」
ロキ様が僕の姿を確認し、ブンブンと手を振って名前を叫ぶ。どうやらお茶をしているらしく、ロキ様の後ろにはレフィーヤさん、正面には金髪の男神とその付き人のエルフが居た。
案内人の男性は「失礼します!」と言って立ち去った。
「お茶会ですか?ご招待ありがとうございます」
絶対違うと思いつつ、和やかなお茶会であることに一縷の希望を抱く。
「せやで~。お茶会をしながら、この前のお祭りについてお喋りしよか」
ここ最近のお祭りと言えば【怪物祭】か。それほど楽しかったのかな?
「ちょっとしたハプニングがありましたが、楽しかったですよね」
「ちょっとした…ねぇ」
あれ?なんか間違えた?二神の反応がおかしいんだけど。
「フェイ。自分はどう思っとるん?」
「え?そりゃあ…」
「「…」」
お祭りではモンスターが脱走する事件が発生したんだよね。でもその犯人を特定したアルフィアさんが殴り込んだ。あの女神様は気に入った人を見つけたら気ままに動くけど、理不尽の塊みたいなアルフィアさんがいれば、
「すぐ解決すると思いますよ?凄い人がいますから」
僕の言葉に目を見開いた。僕は紅茶を一口飲む。熱くて火傷した。
「自分がそう言うなら間違いない、か…」
「ロキ、彼を信じるのかい?未来視じみたことが出来ると噂があるが」
「ディオニュソス。ウチらはそれに助けられとる。現に、五年前のあれを覚えとるか?」
「五年前…。もちろん覚えているとも」
生き残りの闇派閥が二十七階層で罠を張っていたあの事件。【アストレア・ファミリア】を中心に構成された派閥連合がそれに立ち向かった…だっけ?曖昧なんだよなぁ。
「『死者が一人も出なかった奇跡の生還!闇派閥を完全撃破!!』って、オラリオ中に取り上げられてお祭り騒ぎやったわ」
「ああ。犠牲者無しだったのは正直目を疑ったよ。闇派閥だって頭が切れる参謀はいたんだ。無策では無かっただろうに……まさか」
「せや。フェイはそれを見越して魔道具と援軍を派遣したんや」
「なっ…!」
「偶々ですよ、偶々」
盛り上がる二柱に口を挟む。神々はすーぐ悪ノリしちゃうからなぁ。
「謙虚やなぁ、フェイは」
「事実ですから」
「『製作王様』に聞きたい」
「はい?」
「今回の黒幕はギルドか?」
「はぁ?自分、ギルドを疑ってるんか?」
「ああ。モンスターをうんたらかんたら」
「ありえんやろ。第一うんたらかんたら」
「あーはいはい。そうですねー」
僕そっち抜くで話し出す。面倒臭くなったので適当に相槌を打つ。
「で?君はどう思ってる?」
「どうって、黒幕のことですか?」
コクリと頷いた。
「ギルドではないです」
フレイヤ様です。
「嘘ではないか…」
「ほれ見ろ!だから言ったやんか!」
どうやらギルドの疑いが晴れたらしい。僕に感謝してよね!
「最近、二十四階層に異変が起きてるらしい」
「ああ、ギルドが騒がしかったなぁ」
「臭うと思わないかい?」
「まあ、きな臭いと思うけど…ん?」
「あれは伝書鳩か何かかな?」
ロキ様の頭に紙が落ちる。どうやら何かの手紙らしい。
「『依頼を受けたので二十四階層に行ってきます。心配しないでください。アイズ』」
「ブフゥ!?」
ディオニュソス様は口に含んでいた紅茶を噴出した。僕はそんな神様を見て吹き出しそうになった。
二十四階層?そう言えば…
「オッタルさんにお願いした場所だったな」
「「「「はぁ!?」」」」
全員が目を見開いて驚いた。
ちょっとした食い違いが発生した。
フェイはモンスターの脱走だと思ってる。ロキ達は新種の事だと思ってる。