魔道具製作者の受難 作:お給料
「どうなってんだ、こりゃあ…」
調査依頼を受けた【ヘルメス・ファミリア】の一人が呟いた。その呟きは全員が抱いている感想と一致する。
「
道中の大量のモンスターを蹂躙した後、入り口付近から冷たい空気が流れるのを感じ取った一行が進んだ先は、冬景色を思わせる凍てつく場所だった。
オッタルもアイズも、これまで見たことが無かった光景に目を奪われていたが、
「行くぞ。覚悟が無いのなら引き返せ」
「この先に元凶が居るのなら…進まないと」
すぐに切り替える。
「あの男はこれを見越していたのか…?」
「フェイなら可能」
何故かドヤ顔で答えるアイズを尻目にオッタルは進んでいった。本来なら撤退を決めていたアスフィも団員に進むように命じる。
それほど心強いのだ。
この先に居るのはただのモンスターではない。ヒシヒシと全員が感じ取った。
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「頼むフェイ!アイズたんの所に向かってくれ!報酬は弾むから!」
「お断りします」
「なんでやぁ~~~~~!!」
何でかって?怖いから。忘れかけてたトラウマがグツグツ湧き上がって来てるんだ。絶対あの赤髪の敵さんがいるよ。
「私からもお願いします!アイズさんの助けになってくれませんか!?」
「オッタルさんが居るから平気ですよ」
「そうやけどさ。ウチの勘がアカン奴だって言うとるんよ。せやから…」
神の勘は高確率で当たる。それを聞いて友人の事が心配になってくるが、僕が行っても足手纏いになるだけ。むしろそこまで辿り着けそうにない。
こういう時、ザルドさんに頼むのだが今は深層に行っている。アルフィアさんは身内が居ない限り絶対に行かない。オッタルさんが居ると知れば尚の事。
「動かせる第一級冒険者は居ないんですか?」
「う~ん…レフィーヤ、ちょっとあいつ連れて来てくれへん?」
「あいつ?」
「せや、今暇しとんはベートだけや」
「うわっ、ベートさんか…」
「フェイはベートが苦手だったなぁ、そう言えば」
「顔が怖いんですよねぇ、顔が。何を食べればあんなおっかない顔に「おい」え?」
ボロクソ言う僕の後ろから声と共に殺気が飛んでくる。振り返れば、
「や、やあベートさん!丁度貴方の話をしていたんですよ」
「ああ、そうみてぇだな」
「…因みにどこから聞いてました?」
「ロキの頼むフェイ!からだ」
「最初からですか?耳良すぎですね」
「ふん、獣人だからな」
「流石ベートさん!マジリスペクトっす!」
「おい。勢いで乗り切ろうとしてんじゃねえ」
「さーせんした」
「そんな事よりアイズに何かあったんじゃねえのか?」
「せや!中層に行ってアイズたんを追い掛けてくれ。レフィーヤも一緒にな」
「ええ!?私もですか…!?」
「却下だ。足手纏いを連れて行く理由がねえ」
「ああ、そうだ」
足手纏いで思い出した僕は話に混ざる。
「オッタルさんは自分よりレベルが低い集団を全員生還させるつもりで挑んでますよ」
「…すぐに準備しろ」
「は、はい!」
僕の言葉に目の色変える。大方、オッタルさんに対抗心を燃やしたんじゃないかな?
「ロキ。フィルヴィスも同行させてくれないだろうか?」
「俺は構わねえぜ」
「私もです!」
「僕も…あ、いや、何でもないです。はい」
援軍のメンバーが決まったので一段落した。
今日の夕食は確か僕が当番だった気がする。ハンバーグの気分なので、挽肉を買って帰ろ。
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場面は変わって【食糧庫】に移る。
大量の食人花が襲い掛かり、アイズと分断された一行は広い部屋まで来た。当初、「アイズをどうするか?」と質問があったが、
「進むぞ」
「このまま進みます」
二人の判断でこうなった。ランクアップを遂げたアイズなら大丈夫だからである。
行き付いた場所に居たのは、お馴染みの食人花と白いローブを着込んだ集団。それを纏めるリーダーらしき男と、
「あれもモンスター、なのか…?」
「あれも新種のモンスターと見て間違いないでしょう。信じたくありませんが」
「ああ。全く、フェイはとんでもない依頼を寄越したな」
そう言っているが、オッタルの口元は笑みが浮かんでいる。あれを倒すことで、いや、全員を生還させる事で高みに至れると確信した。
普段呆けているフェイに内心感謝しまくっているオッタルさん。
「馬鹿な!『猛者』だと!?」
敵が一行の姿を確認して初めての言葉。都市最強が出しゃばって来るとは予想外だったみたいだ。
白ローブの集団にどよめきが走る。
「まあいい。我々には『彼女』が着いている!恐れるな!」
「「「うおおおおおおお!!」」」
落ちかけた士気が向上する。
「来ます!全員構えなさい!」
「行くぞ」
両者の陣営が激突する。
氷像の眼がほんの少しだけ見開いた。