魔道具製作者の受難 作:お給料
「アスフィ様は大丈夫でしょうか…?」
「え?」
カレンが呟いた。僕がオッタルさんに押し付けた、あの依頼の事を言っているのだろう。でも大丈夫。
「オッタルさんが居るから大丈夫だよ」
そうだ。三番目の都市最強と謳われる彼が居るのだから、心配事何てない。欲を言えば、ザルドさんが向かってくれたら嬉しい。
帰り道に何とかしてくれないかな。
「逆に、『猛者』に頼るほど困難な依頼なんですよね?」
「……え?」
「生産系派閥の【ヘルメス・ファミリア】には酷なのでは?」
そんな事言われたらすっごい不安になって来るんだが。大丈夫だよね?モンスターの調査依頼だもん。第三者の介入なんてあるのかなぁ。
僕の頭にここ最近起きた出来事がよぎる。
【怪物祭】で現れた新種。十八階層でも現れた新種とその階層主。追加でアイズを追い込むほどの実力を持つ殺人事件の犯人。
すぅー-ー---。
「ロキ様が言ってたのって…」
間違いなくこれだわ。やべぇ。見当違いな事言っちまった…。
「や、ヤバい!ど、どうしよ!どうすればいい!?カレン!」
「ちょ、ちょっと!?いきなり慌てないでくださいよ!その反応は、やっぱり不味かったんですよね!?」
「すっごい不味い。でも一旦、落ち着こうか。状況を整理しよう」
僕は店を閉めてホワイトボードに色々書いていく。
・【怪物祭】及び、十八階層に現れた新種のモンスター。
・アイズを圧倒する実力者(敵)
・二十四階層付近の調査依頼
・依頼にはオッタルさんと【ヘルメス・ファミリア】が。アイズも行ったらしい。
・遅れて【ロキ・ファミリア】のベートさん、レフィーヤさん、【ディオニュソス・ファミリア】の団長もアイズを助けに行った。
「全部関係ありますよね…?むしろ無いって方がありえないのでは?」
「だよなぁ」
「嬉しい誤算が、第一級冒険者の『凶狼』が向かってくれたことでしょうか?それに、『千の妖精』の魔法は強力ですから助けになるでしょう」
彼女の言う通りだ。あれ?希望が見えてきた?
「お~い、誰か居ないのか?」
下から声が聞こえてきた。聞き覚えがある声に僕とカレンは顔を見合わせた。すぐさま廊下を走って彼の下へ向かう。
「「ザルドさん、こっちです!」」
「お、おう。どうしたお前ら…」
怪訝そうにこちらを見て来るザルドさん。そんなの関係ない。一大事に現れた一縷の希望なのだから。
そんな時だった。
「…ただいま」
裏口から妖精が入り込んだ。
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「どうなってやがる…!」
二十四階層で起きている異常事態にベートは悪態を吐く。
辺り一面に広がる銀世界。それだけなら、例え足手纏いを抱えようが関係ない。問題は、目の前に現れた、
「こ、この新種は、十八階層で現れた女型と同じ…!」
通路を塞ぐようにソレは突然現れた。アイズと合流する前にこいつを討伐しないと先には進めない。
「ハッ!上等だ!ぶち殺してやるよ!」
「え、詠唱始めます!」
「ならば私が守ろう。非常に癪だが、奴の動きに合わせられないからな」
それぞれが役割をこなすために動き出した。
「アアアアァァー----!!」
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「ううっ!?」
鼓膜が張り裂けるような雄叫びが階層中に響き渡った。
思わず耳を塞ぐが敵は待たない。それに釣られるように階層主級の新種が興奮したように暴れ出した。
「アアァァー-!!」
「くそがっ!!」
仲間を守るために彼は前線へ。
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「…精霊が、苦しんでる」
「「「?」」」
帰還した仲間が突然動きを止めたと思ったら、よく分からない事を口にする。
彼女の名前は、リーフィア・ハナリス。『森人』という二つ名を授けられたLv.3のエルフ。寡黙で、今みたいに意味深な事を急に口にする不思議ちゃん。
事情があって都市外で活動している。
「フェイ」
「うん?」
「付いて来て…?」
「…因みにどこまで?」
「ダンジョン」
あ~あ、二十四階層案件だわ。これ。
人物紹介
リーフィアは、精霊と交信できる貴重なエルフ。サラマンダーウールなどの精霊由来の魔道具を入手するために、外交官的な役割をしている。事情を知っているエルフから尊敬されている。理由は神聖視されている精霊とお喋りできるため。